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イグアナ・トカゲの疾病

ヒョウモントカゲモドキの異物誤飲(床材 その2)

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは、ヒョウモントカゲモドキの異物誤飲です。

以前にも異物誤飲については、ヒョウモントカゲの異物誤飲(床材)という記事で掲載しておりますので、興味のある方はクリックしてご覧下さい。

ヒョウモントカゲの床材は各種素材が販売されてますが、床材の材質によって誤飲するケースがあります。

床材は飼育環境の温度・湿度に大きな影響を及ぼすため、慎重に選んで頂きたいと思います。

一般にヒョウモントカゲモドキの床材は、赤玉土やサンド系(ホワイトサンド、デザートサンド、カルシウムサンド、ウォールナッツサンドなど)あるいは両生類用に開発されたフロッグソイルなどが使用されています。

素材ごとにそれぞれ特徴がありますが、要は通気性・通水性が良好で保湿性に優れたものが理想です。

加えて、床材は誤飲しても体内に留まりにくく、体外に排出されやすいものがベストです。

床材を掘り起こすことで、ストレスを軽減するという効果もあります。

これまで、ヒョウモントカゲの異物誤飲で開腹手術に至ったケースで共通していた床材は、ウォールナッツサンドが多いようです。

それでは、異物誤飲の開腹手術の事例をご紹介します。


ヒョウモントカゲモドキのだいふく君(1歳10か月齢、雄、体重52g)は1か月前くらいから排便量が減少し始め、腹部が腫れてきたとの事で来院されました。



下写真で腹囲が腫れているのがお分かり頂けるでしょうか?



早速、レントゲン撮影を実施しました。

下写真黄色矢印は、内容物で腸が膨満状態になっているのを示しています。

腸蠕動も停止しており、腸内のガスが貯留しています。





だいふく君はおそらく異物誤飲により、腸閉塞(イレウス)に陥ってます。

既に内科的治療では効果は期待できず、早急な開腹手術が必要であると判断しました。

だいふく君は全身麻酔に耐えられる全身状態と思われましたので、麻酔前投薬を行います。

前投薬にはメデトミジンとケタミンを選択しました。

主要血管系のうち、爬虫類は腎門脈系が発達しています。

これは、下半身の尾静脈や下腹静脈、腸骨静脈に流入する領域に注射を打ったとしても、残りの循環系に入る前に腎臓で排出されてしまう場合があることを示します。

そのため、前投薬は前肢に接種します。



ついで、麻酔導入箱にだいふく君を入れて、イソフルランを流入します。



イソフルランの効果が現れ、だいふく君はぐったりしてきました。



麻酔導入が完了したところで、専用マスクで顔を覆い、維持麻酔に変えます。



下腹部が腫大しているのがお分かり頂けると思います。



四肢を紙テープで固定します。



これから手術となります。

赤丸はだいふく君の体を示し、黄色矢印はこれからメスを入れる下腹部となります。



トカゲ類は腹部の正中線に沿って、腹側腹部静脈が走行しています。

この太い静脈を傷つけないように正中部を外してメスを入れます。





ヒョウモントカゲの腹膜は非常に薄いため、外科鋏で切開して行きます。



下写真の黄色矢印は前述した腹側腹部静脈です。



滅菌綿棒を使用して腸へとアプローチします。



下写真黄色矢印は腫大している腸を示します。



腸に11号メス刃で切開を入れます。



腸内容物を取り出せる範囲に切開を広げて行きます。



腸内容を見ますと床材を含んだ硬化しつつある内容物が確認できます。





下写真黄色矢印は、床材として使用していたウォールナッツサンド(胡桃の殻を細かく砕いたもの)を示します。



綿棒で腸内容を少しづつ掻き出します。







この作業が一番時間がかかり、また腹腔内に内容物を落とさないように注意が必要です。







これでほぼ腸内容を取り出すことが出来ました。



下写真黄色丸が切開した腸の部位です。



6-0のモノフィラメント合成吸収糸で腸管を縫合します。

糸が非常に細いため、写真ではっきり分かりづらいかもしれません。





単純結紮縫合で縫い込んでいきます(下写真黄色丸)。





縫合は終了し、腹腔内を生理食塩水で徹底的に洗浄します(下写真青矢印)。



腹腔内の洗浄が終了しました。



次いで、腹筋を縫合します。



腹筋縫合が終了し、最後に傷口の洗浄をします。



皮膚縫合も終了です。



縫合部の拡大写真です。



イソフルランを止めて、酸素吸入のみでだいふく君の覚醒を待ちます。





麻酔を切って15分くらいで、だいふく君は覚醒し始めました。



無事、覚醒出来て良かったです。



今回、腸から摘出した内容物です。



腸内にこれだけの床材が貯留していれば、腸蠕動は停止し、イレウス(腸閉塞)に陥るのも頷けます。



麻酔覚醒10分後のだいふく君です。

保定を嫌い暴れます。



翌日のだいふく君です。

まだ絶食させてますが、動きはしっかりしています。

入院は1泊で退院して頂きました。



しばらくだいふく君は流動食で対応して頂きます(約2週間)。



3週間後に抜糸で来院されただいふく君です。

傷口は問題なく癒合していますので、抜糸しました。



爬虫類の皮膚縫合は、脱皮の時期が重なったりすると延期したり、スケジュールを合わせる煩雑さがあります。

今回は抜糸に至るまでスムーズに進行出来たのは良かったです。



床材は、各家庭の飼育環境に応じて選択されると良いですが、くれぐれも誤飲には注意下さい。

トカゲ類にとって、開腹手術はリスクの高い行為になります。

だいふく君、お疲れ様でした!





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投稿者 院長

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