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ハリネズミの疾病

2015年6月 1日 月曜日

ハリネズミの血尿(子宮内膜過形成・子宮内膜炎による)

こんにちは 院長の伊藤です。

ハリネズミがペットとして定着した感があるこの数年、雌のハリネズミの血尿の来院数が増えています。

これはウサギにも言えることですが、性的に成熟を迎えた4歳以降に産科系疾患(特に子宮疾患)が増加します。

犬猫と異なり、血尿イコール膀胱炎といかないのが、エキゾチックアニマルの世界です。

本日、ご紹介させて頂きますのはそんなハリネズミの血尿で開腹手術して子宮内膜過形成・子宮内膜炎が原因であった症例を紹介します。




ヨツユビハリネズミのハリーちゃん(雌、2歳、体重500g)は3週間ほど前から、排尿時に多量の血尿が認められるとのことで来院されました。



下写真のように新鮮血が尿中に出ています。



ハリネズミはなかなか触診をさせてくれない動物です。

非常にデリケートで直ぐに体を丸めて防御態勢に入ります。

そうなると、積極的な精密検査は出来なくなります。

せめて、レントゲンを撮って下腹部の状態を把握することにします。

血尿から、おそらくは子宮疾患であろうと推測してレントゲン撮影を実施しました。

下写真の黄色丸の箇所が子宮が腫大しているのを示しています。





飼い主様の希望もあり、状況次第で卵巣・子宮摘出する予定で試験的開腹を実施することになりました。

麻酔導入箱に入れて寝て頂きます。





ハリーちゃんはふらつき始め、起立姿勢が取れなくなってきました。



導入箱から出てもらい、手製マスクでイソフルランガスを送り込み、全身麻酔します。



患部を剃毛します。



続いて点滴をするために、橈側皮静脈に留置針を入れます。







点滴を開始し、麻酔モニターのセンサーをセッティングします。





これで手術の準備完了です。





皮膚にメスを入れます。



開腹直後に腹腔内から腫脹した子宮(下写真赤丸)が突出してきました。

子宮が飛び出るときの腹圧で、子宮内の貯留血が草色矢印の外陰部から多量に出血(黄色丸)しました。




下写真の子宮ですが、子宮自体は貧血色(薄いピンク)でところどころ貯留した血液が暗赤色を呈しています。

その一方で膀胱(下写真黄色丸)は正常で、膀胱壁の肥大もなく出血もありません。



以上の所見から、度重なる血尿は子宮から出たものであることが判明しました。

卵巣・子宮を摘出することとしました。

バイクランプで主要な血管をシーリングしていきます。



下写真は子宮間膜をメスで切開しているところです。



無事に卵巣・子宮を摘出し、腹筋を縫合します。



皮膚縫合して手術は完了です。



イソフルランガスを止めて酸素吸入を維持して、覚醒を待ちます。



5分ほどで、ハリーちゃんは覚醒しました。





出血が手術前までに多量にありましたので手術のリスクも大きく、生還をかけた手術でした。

何とか無事に手術終了です。

術後はしっかり食餌を取り、血液を増やしてもらいます。



体重500gの小さな体なので点滴のための留置針プラグが大きく感じられます。

出血がありましたので点滴は重要です。



摘出した子宮ですが、切開して子宮内部の確認をします。



子宮壁を切開しますと、中から薄茶色の塊が出て来ました。





この塊を取り出し、スタンプ染色を実施しました。



下写真はその顕微鏡像です。

塊自体はすでに壊死を起こした子宮内膜で、その壊死巣が剥離したものと思われます。



この塊以外の子宮の内膜部をスタンプしたのが下写真です。

中央部に認められる子宮内膜細胞が増殖しており、その一方で黄色丸に多数の細菌が認められます。



子宮腺癌と思しき腫瘍細胞は認められませんでした。

以上の点から、始めに細菌性子宮内膜炎を起こし、子宮内膜過形成が生じ、壊死が進行する中で内膜が剥離していき、出血が起こったと考えられました。

術後のハリーちゃんの経過は良好で食欲もあります。




3日後に退院して頂きました。

下写真は退院当日のハリーちゃんです。





雌のハリネズミは、ウサギ同様血尿が認められましたら、子宮疾患の疑いがあることを認識して頂くようお願い致します。

今回のハリーちゃんは、子宮腺癌は関係ありませんでした。

ハリネズミの子宮疾患は、子宮内膜炎を初めとして子宮内膜過形成、子宮水腫、子宮蓄膿症など様々です。


過去に、血尿が止まらなくて出血多量で既に亡くなられてしまったハリネズミの解剖所見を依頼されたことがあります。

剖検したところ、母指頭等大の腫瘍が子宮にできていました。

下写真の黄色丸がこの剖検時の子宮腺癌です(今回のハリーちゃんの子宮ではありません)。

写真右手にある左右の子宮角には、血液が貯留して青黒くなっています。



早期にこの腫瘍に気付いて、子宮摘出出来ていればと悔やまれます。




血尿が認められたら、早め早めの受診をお勧めします。

ハリーちゃん、お疲れ様でした!




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投稿者 院長 | 記事URL

2014年10月13日 月曜日

ハリネズミの腫瘍


こんにちは 院長の伊藤です。

最近はハリネズミを新たに飼育される方が、急増されているように感じます。

当院では毎日、必ずハリネズミの診察が1件はあります。

その多くが皮膚病、特に疥癬がらみです。

そんな中で皮下にできる腫瘤で来院されるケースもあります。

本日は皮下腫瘤で腫瘍と判明した症例をご紹介させて頂きます。



ヨツユビハリネズミのチョコレートちゃん(4歳、雌、体重350g)は右の腋腹にしこりが認められるとのことで来院されました。



触診するまでもなく、右腋下部に2~3cmの大きな腫瘤が認められます。



この腫瘤の細胞診を実施しました。

その結果、毛芽腫であることが判明しました(下写真)。



念のためレントゲン撮影をしました。

下写真黄色丸が腫瘍です。

胸腔内への転移は認められません。





毛芽腫自体は良性腫瘍ですが、今回の腫瘍のサイズは大きいです。

腋下に存在しており前足の運航に影響を及ぼし、結果将来的な歩行困難につながるのを懸念しました。

飼い主様のご意向もあり、患部を外科的に摘出することとしました。


全身麻酔を実施するにあたり、イソフルランを導入するための導入ボックスにチョコレートちゃんを入れます。



イソフルランが効いてきました。

ハリネズミは気管挿管が出来ませんので、ガスマスクを口に当てて全身麻酔します。

この導入麻酔を完全にしておかないと体を丸めてマスクが出来なくなりますのでしっかりかけます。

チョコレートちゃんの導入麻酔が十分効果が出てきたようです。



次にガスマスクを当てて麻酔を実施します。



下写真黄色丸の箇所が腫瘍です。

小さな動物ですから腫瘍摘出のためのマージンは十分に確保できません。

毛芽腫であるため、皮下に存在する腫瘍本体を摘出することとしました。





出血量を最小に抑えるため、電気メスで皮膚切開していきます。



腫瘍が皮下で顔を表しました。



大きな腫瘍のため、周辺組織から太い栄養血管も走行しており、バイクランプで血管をシーリングします。



腫瘍は皮下組織内で特に癒着・浸潤も見る限りありませんが、栄養血管だけは確実に止血していきます。



最後に腫瘍を摘出する際に太い栄養血管が認められましたので、バイクランプでここもシーリングします。





栄養血管の炭化した箇所を切断します。



摘出した腫瘍の跡です。

大きかった分、腋下に大きな間隙が形成されてます。



皮膚を縫合します。





覚醒時のチョコレートちゃんです。



点滴が出来ませんので、皮下輸液を行います。



覚醒後のチョコレートちゃんは食欲もしっかりあります。





チョコレートちゃんは2日後に退院することになりました。

退院当日の写真です。



ハリネズミは縫合部を舐めたりはほとんどしないので、他の動物の様にエリザベスカラーは必要ありません。

傷口も綺麗なままです。

暫く抗生剤の内服を続けて頂きます。



下写真は摘出した腫瘍です。



割面です。



ハリネズミは、今回の毛芽腫以外にも各種腫瘍に罹患します。

乳腺腫瘍、リンパ腫、口腔内扁平上皮癌、肥満細胞腫、線維肉腫などが良く認められます。

犬猫の腫瘍については、その詳細が判明しており、治療も細分化している現状です。

一方、ハリネズミを初めとしたエキゾチックアニマルの腫瘍は病理学的に犬猫と同じ腫瘍であったとしても、その挙動は詳細が不明な点が多く、臨床の現場では手探りで対応せざる得ない状況にあります。

ただ確実に申し上げられるのは、腫瘤が認められたら出来うる限り早期にご来院下さい。

チョコレートちゃん、お疲れ様でした。




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投稿者 院長 | 記事URL

2014年1月 7日 火曜日

ハリネズミの扁平上皮癌


ハリネズミにも腫瘍はあります。

特に有名なのが扁平上皮癌という悪性の腫瘍です。

この扁平上皮癌は顔面や口腔内に発生することが多く、特に口腔内にできると摂食行動が制限されるため飼主様が強制給餌をするなどして介護してあげなくてはなりません。

本日は、この扁平上皮癌についてのお話です。


ヨツユビハリネズミのマロン君(5歳5か月、雄)は左上顎の歯茎が腫れているとのことで来院されました。



下写真の黄色矢印と黄色丸の部分が腫れて口がしっかり閉まらないのがお分かり頂けると思います。





マロン君自身もこの腫れている箇所が気になるらしく、自分で引掻いたりして出血も認められます(下写真黄色丸)。



実際、ヒトに馴れているハリネズミは少なく、口の中を探査することも容易ではありません。

まだマロン君は検査に協力的です。

早速、患部を針生検することにしました。

細胞診することで腫瘍なのか、あるいは他に原因があるか判明します。



採取した細胞を染色したのが下の写真です。





細胞質が青く好塩基性に染まり、核が濃縮・不整形の扁平上皮細胞がたくさん認められます。

残念ながら、扁平上皮癌と診断しました。

腫瘍治療の第一選択は外科手術です。

マロン君の場合、口腔内の腫瘍でしかも歯茎の中に浸潤していますので外科的摘出は不可能です。

犬の扁平上皮癌はシクロオキシゲナーゼ2(COX2)を発現しており、このCOX2を標的にする非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAID)による治療が有効であるとの報告があります。

以前、リチャードソンジリスの扁平上皮癌についてコメントしました。

ジリスにNSAIDであるピロキシカムを投薬しての効果を期待しましたが、残念ながら発症から死の転帰までが早くその効果を確認することが出来ませんでした。

今回は、飼主様の了解をいただきこのピロキシカムの投薬を開始しました。

加えて、食餌が自身でうまく食べられないため、飼主様に高カロリーの経口栄養食を飲ませて頂くこととしました。

今後のマロン君の経過を引き続き報告させて頂きたいと思います。






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2013年12月 6日 金曜日

ハリネズミの低温火傷

先日、グリーンイグアナの火傷についてコメントさせて頂きました。

今回は、ハリネズミの低温火傷(第1度熱傷)を報告させて頂きます。



ハリネズミの空ちゃん(年齢不明、雌)は、下腹部が赤くなって食欲も不振とのことで来院されました。



ハリネズミの下腹部の視診は、簡単なようで実は大変です。

何しろ丸くなる動物ですから、背中は十分観察可能です。

しかし、下腹部に至っては、小さな音を立てただけで丸くなって診察は不可能になります。

そんな時の助っ人として、当院では魚の網焼きを利用します。

網焼きの上に空ちゃんを乗せて、下から皮膚を診ます。





実際、下から見上げるとこんな感じです。

下写真黄色丸で囲んだ箇所が発赤しているのがお分かりでしょうか?





飼い主様から寒くなってきたのでヒーターをつけいたところ、空ちゃんは気持ちよかったんでしょうね。

ヒーターの至近距離から動くことなく、長いことジッとしていたそうです。



残念ながら、空ちゃんは第1度熱傷になっているようです。

1度熱傷は表皮に限定される損傷です。

皮膚が紅斑、熱感、疼痛を認めます。

ヒトと比較して、動物は表在血管が少ないためほとんど水泡が形成されません。

犬猫ならば被毛が皮膚を守ってくれるでしょうが、ハリネズミは針だけでそれも、背中の防御に留まります。

下腹部は地肌が露出していますので、状況によっては1度熱傷も重症になる可能性があります。



点滴による輸液療法ができればよいのですが、まず不可能です。

皮下輸液も場所を選択すれば、できなくはありませんが空ちゃんはものすごく元気で、皮下輸液もあきらめました。

患部の感染対策として、抗炎症剤・抗生剤を処方させていただきました。

犬猫に限らず、エキゾチックアニマルも心地よい空間ですと、まったりしてしまうんでしょうね。

暖房を入れる季節になりましたが、飼主の皆さまくれぐれもご注意下さい!




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2013年11月 2日 土曜日

ハリネズミの脱髄性麻痺(ふらつき症候群)



今回ご紹介するのは、ハリネズミの疾病の中で神経系の致死率が高いとされているものです。

脱髄性麻痺(Wobby Hedgehog Syndrome)、別名ハリネズミのふらつき症候群です。

この疾病の症状は、最初に後肢に不全麻痺が生じ、ふらついているようになります。

次いで四肢に力が入らなくなり、やがて筋肉の委縮を伴い悪化していきます。

最終的には自分で採食できなくなり、排尿・排便が困難になり死亡します。


ハリネズミのチャコちゃん(4歳、雌)は後躯麻痺で来院されました。



後肢に力が入らず、指先がナックリングしてうまく前進できません。

前肢のみで匍匐前進するような感じです。






当初、脊椎損傷の疑いでレントゲン撮影を実施しました。





脊椎骨の骨折・脱臼・変形など、特に異常とおぼしき所見はありません。

ただ脊椎造影したわけではなく、単純レントゲン撮影のみですから残念ながら詳細は不明です。



まずはステロイド療法を実施することとしました。

このあと3週間ほどは経過が良くなりましたが、再度後躯麻痺が起こりました。

残念ながら数日でチャコちゃんはお亡くなりになりました。

今回、外傷による脊椎疾患が原因かは明確ではありません。





脱髄性麻痺は何が原因かは、まだ分かってません。

栄養不良やカルシウム・ビタミン不足、遺伝性などと推察されているものの、原因不明です。

原因不明のため、治療法も確立されていません。

ストレスの少ない生活環境を作って、飼主様がハリネズミの介護を施していかなくてはなりません。



この脱髄性麻痺は、ハリネズミの死後病理検査によって、神経線維を包む鞘(さや)が破壊されるのを認めて、初めて確定診断されます。

チャコちゃんは病理解剖をしておりませんので、はたしてこの脱髄性麻痺なのか否か不明です。


ただ臨床症状と経過をみると脱髄性麻痺の可能性が高いように思います。

ハリネズミはペットとしての歴史が浅く、まだまだ分かっていない疾病は多いと思います。

少しでも、新たな治療につながるように努力していきたいです。



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