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ハリネズミの疾病

2019年7月 7日 日曜日

ハリネズミの子宮内膜間質結節

こんにちは 院長の伊藤です。

本日、ご紹介しますのはヨツユビハリネズミの子宮内膜間質結節の症例です。

ハリネズミは子宮内膜炎、子宮内膜ポリープ、子宮内膜間質肉腫など子宮疾患が非常に多い動物種です。

そんな中で子宮頚部に非常に大きな結節が生じたケースで、病理学的には子宮内膜間質結節と言われる疾病です。




ヨツユビハリネズミのハルちゃん(雌、2歳6か月齢、体重310g)は血尿が出るとのことで来院されました。

下写真のように下半身は出血で汚れているのがお分かり頂けると思います。



ヨツユビハリネズミの雌で、2歳齢以降の血尿は子宮疾患を疑います。

出血による貧血などの全身状態は、まだ全身麻酔に耐えられると判断しました。

飼主様に可能であれば、早急に試験的開腹を行い、状況に応じて卵巣子宮を全摘出すべきであることをお伝えしました。

飼い主様の了解を得て、早速手術です。

ハルちゃんに麻酔導入ケースに入ってもらい、イソフルランによる麻酔導入を行います。



麻酔導入が完了しました。



マスクを装着してイソフルランによる維持麻酔に切り替えます。

生体情報モニターの電極を装着します。

メスを入れる皮膚をバリカンで剃毛します。



仕上げにカミソリで剃毛します。



患部を消毒します。



この姿勢でモニター監視のもと手術を行います。



硬性メスで皮膚を切皮します。



腹筋を切開します。



腹筋を切開した直後に直下に位置する子宮が飛び出してきました。



下写真で私がつまんでいるのが子宮頚部です。

今回の子宮頚部はかなり腫大しています。





下写真の黄色矢印は左右の子宮角と呼ばれる部位です。

白矢印は左右の卵巣動静脈です。



下写真の黄色矢印は膀胱です。

膀胱には腫瘍は浸潤していないように見えます。



卵巣を子宮頚部から分離するため、両側の卵巣動静脈をバイクランプでシーリングします。



メスでシーリング部を離断します。



次に子宮頚部の子宮動静脈をシーリングするため、血管を頚部から剥離します。



両側の子宮動静脈をシーリングします。



子宮動静脈のシーリングが完了したところです。

反対側の子宮動静脈も同じくシーリングします。



ご覧の通りに子宮頚部の腫大が著しいです。

本来ならば、この子宮頚部を縫合糸で結紮して外科鋏で離断して終了となります。

今回の腫大レベルでは縫合糸による結紮は不可能です。

膀胱は機能していますので温存できると判断しました。

あとは子宮頚部の内部の腫瘍ごとスッポと外せないか悩みました。

結果、膀胱の直上に二本の縫合糸をかけて、中間部を切開して腫瘍ごと引っこ抜くという術式を試みました。



二本の縫合糸を子宮頚部にかけます。



子宮動静脈をシーリングした部位に狙いをつけてメスで切り込みを入れます。



メスを入れると同時に子宮頚部筋層からの出血が始まりました。

この子宮頚部の内部からの出血が止まらないようなら、この縫合糸で結紮して止血する予定です。



切開した子宮頚部の内部からは変性した子宮内膜組織がはみ出る位の勢いで飛び出しました。



下写真黄色矢印は、子宮頚部の飛び出した内膜組織です。

大型のポリープ状腫瘤です。



下写真の黄色矢印方向に引き上げるとそのまま子宮頚部から剥離して外れ始めました。



予想した通りにポリープ状腫瘤は綺麗に外れました。



子宮頚部内部からの出血はそれほどはなく、準備していた縫合糸による結紮は必要ありませんでした。



そのまま子宮頚部を横断して切開します。





下写真の黄色矢印は綺麗に子宮頚部内膜組織が外れた後の頚部切断面です。



出血もほとんどない状態で、このまま頚部切断面を縫合します。







これで子宮頚部の縫合終了です。



最後に腹腔内の出血や腫瘍と思しき組織の有無を確認します。



腹筋を縫合します。



皮膚を縫合します。



手術は終了しました。

下写真は今回摘出した卵巣と子宮です。

特に子宮頚部の内膜組織(ポリープ状腫瘤)がいかに大きいかお分かり頂けると思います。



全身麻酔から覚醒したばかりのハルちゃんです。



術後10分で既に歩行しているのをみるとハリネズミはタフな動物であると感動します。



下写真は今回摘出した卵巣・子宮です。



黄色矢印は子宮角で、白矢印は子宮頚部、そして青矢印は子宮頚部離断面から突出したポリープ状の腫瘤です。





下写真は、病理写真(低倍像)です。

ポリープの表層部は自壊して壊死と炎症細胞が浸潤しています。



下は中拡大像です。

ポリープの中心部では多結節状に間質細胞が増殖しています。



間質細胞の中には細胞異型性(腫瘍細胞)が軽度から中等度で、核分裂像が認められます。

この腫瘍細胞は子宮内膜側に限局され、子宮筋層への浸潤はありません。



両卵巣に異常な所見は認められませんでした。

結論として、子宮内膜に由来する腫瘍性病変が認められましたが、これは良性の腫瘍でした。

病理組織学的な診断名は子宮内膜間質結節です。

また、病理医からの評価として病巣部は完全切除されており、良好な予後が期待できるとのことです。

今回、子宮頚部のポリープ状腫瘤(腫瘍)が子宮筋層まで浸潤しておらず、そのまま全部摘出できたのが良かったと思います。

過去に子宮頚部の内膜から筋層及び膀胱まで腫瘍が浸潤して、摘出を断念した症例もあります。

全てのハリネズミの子宮頚部の腫瘤が、今回のような子宮内膜間質結節ではありません。

子宮内膜と子宮筋層がヨツユビハリネズミの場合は綺麗に剥離できるのが興味深い点です。

犬や猫では今回の様には展開しません。

その点では、このような子宮頚部において内膜が結節上に腫大した事例は今後、今回の術式で対応できると思われます。




翌日のハルちゃんですが、しっかり食欲もあります。







ハリネズミのようにスキンシップがしっかり出来ない動物では、血尿でも気づかれない事例も多いです。

ヨツユビハリネズミは、2歳以降で血尿が継続する雌の場合は、子宮疾患を疑い、早めの受診をお願い致します。

ハルちゃん、お疲れ様でした!




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投稿者 院長

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