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ハリネズミの疾病

2020年3月17日 火曜日

ハリネズミの卵巣腫瘍(顆粒膜細胞腫)

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは、ハリネズミの卵巣腫瘍です。

これまでにもハリネズミの産科系疾患を多く報告させて頂きました。

私自身の経験では、圧倒的に子宮角や子宮頚部の腫瘍が多いのですが、卵巣にも腫瘍が発生するケースもあります。

今回は卵巣腫瘍の中でも顆粒膜細胞腫というタイプの腫瘍です。


ヨツユビハリネズミのみいこちゃん(4歳10か月齢、雌、体重640g)は血尿が認められたのが1年半ほど前でした。

血尿は集中的に認められることなく、不定期に出ていたようです。

そのため、飼主様も卵巣子宮疾患としても積極的な摘出手術は考えていませんでした。

しかしながら、令和2年を迎えて血尿が集中して出始めたため、いよいよ手術となりました。

みいこちゃんはデリケートな性格で、すぐ丸くなり、なかなか顔を見せてくれません。



手術前にレントゲン撮影を実施しました。

ハリネズミの場合は、体を丸くするため臓器が重なり合い正確な評価が難しいです。

みいこちゃんの場合は、下写真黄色丸の部位にガスと液体が貯留していると推察されました。

腸管を圧迫しているようにみえるため、この時点ではおそらく子宮が腫大しているかもと考えました。





みいこちゃんを麻酔導入箱に入れてイソフルランを流します。



5分経過で仰向けになり、麻酔導入が遂行しました。



早速、みいこちゃんを導入箱から出して、維持麻酔に変えます。

黄色矢印は腹部が腫れているのを表します。

触診しますと下腹部に波動感が認められ、腹水が貯留しているようです。





生体情報モニターを装着して、これから開腹に移ります。



臍の位置より少し下方に切開を加えます。



腹膜を切開した時点で腹水が溢れ出してきました。





腹水の内容を調べるため注射筒で吸引します。



血尿による出血で腸管は貧血色を呈しています。



注意深く腹腔内を探ると液体を貯留した卵巣が認められました。



ブドウの房状の卵巣が飛び出してきました。

かなり大きく卵巣が腫大してます。



下写真の黄色矢印が子宮です。

赤矢印は膀胱を示します。

白矢印は卵巣です。

卵巣は各種色調を呈していますが、卵巣嚢胞という病態です。





中央部の卵巣嚢胞の外側面は、腫瘍の播種を疑う小結節が付着してます。



子宮頚部を結紮します。





子宮頚部を2か所にわたって結紮します。





見ずらいですが、子宮頚部を硬性メスで離断します。



離断した子宮頚部の断端です。



断端部を縫合します。



出血も最低限に抑えることが出来、卵巣子宮の摘出は終了です。



腹膜・腹筋を縫合します。





最後に皮膚縫合です。

4‐0ナイロン縫合糸で縫合します。



これで卵巣子宮の全摘出は完了です。



最後に頚部から胸部にかけての腫瘤が気になりました。

下写真の黄色丸がその腫瘤です。



皮膚の腫瘍の可能性もあり、念のため摘出します。

常日頃、ハリネズミは全身を触診することが出来ないため、手術本番になって触診して初めて、病変に気付くことがあります。



滅菌綿棒を使用して腫瘤と周囲組織を剥がしていきます。



患部の皮膚を縫合しました。

テンションがかかる胸部のため、3‐0のナイロン縫合糸を使用しました。



手術が終了し、皮下輸液を行います。



麻酔の覚醒は比較的早く、イソフルランを止めて約5分ほどで動き出しました。



みいこちゃんの意識はまだ朦朧としていますが、問題なく覚醒出来そうです。



術後30分のみいこちゃんです。

痛々しい感はありますが、インキュベーター内を徘徊してます。



さて、今回摘出した卵巣・子宮です。

黄色矢印は子宮です。

緑丸で囲んだのが右卵巣です。



右卵巣の卵巣嚢胞を呈している中央部の嚢胞は、表面に顆粒状の小結節を形成してます。

各卵巣内腔には漿液や血液が貯留して、独特の色彩を放っています。





下写真黄色矢印の子宮の内、青丸で囲んだのは左卵巣です。

左卵巣は正常な卵巣ですが、反対側の右卵巣は、その10倍以上の大きさに膨らんでいます。





下写真は腫大した頚から胸部にかけての腫瘤です。

腫大した浅胸リンパ節であることが判明しました。

リンパ腫ではありませんでした。



下写真は、子宮の病理像です。

中拡大像ですが、多発性の子宮内膜ポリープであることが判明しました。



下写真は子宮内膜です。

子宮内膜は過形成に肥厚しています。

子宮には、腫瘍性増殖を示す細胞や炎症反応は認められませんでした。



下写真は、卵巣嚢胞です。

卵巣実質において、内腔に淡好酸性漿液を容れる多嚢胞状病変が形成されています。



卵巣の中拡大像です。

軽度の異型性を示す多角形・紡錘形腫瘍細胞の小柱状・多嚢胞状の増殖巣が認められます。



下写真は高倍率像です。

腫瘍細胞は基底膜に対して柵状に配列し、空胞上の細胞質、大小不同を示する類円形の正染性核、小型の核小体を有してます。



結論として、みいこちゃんは片側性の顆粒膜細胞腫との病理医から診断を受けました。

ヒトでは比較的珍しい悪性の卵巣腫瘍です。

この腫瘍はハリネズミに限らず性ホルモンを産生し、子宮内膜過形成や白血球・血小板減少症を併発するとされています。

ハリネズミのおける卵巣顆粒膜細胞腫の詳細なる生物学的挙動や予後に関する知見は、現段階では不明です。

次いで、下写真はみいこちゃんの腹水の塗沫標本です。

腫瘍細胞が細胞集塊が認められます。



以上の病理所見からも、卵巣顆粒膜細胞腫が腹膜に転移し、今後悪性の挙動を示すことが予想されます。

みいこちゃんは定期的な健診が必要です。


術後2週間のみいこちゃんです。

抜糸のための来院です。



傷口は綺麗に治ってるため、抜糸してます。



みいこちゃんの経過は良好ですが、人見知りで顔の写真を撮るのが難しいです。



みいこちゃん、大変な手術でしたが、お疲れ様でした。





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投稿者 院長

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