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ハリネズミの疾病

2016年3月24日 木曜日

ハリネズミの直腸脱(後編)

こんにちは 院長の伊藤です。

先回、ハリネズミの直腸脱(前編)を載せました。

直ぐに後編を載せる予定でしたが、日常業務に追われ遅れて申し訳ありませんでした。

前編の詳細についてはこちらをクリックして下さい。


さて、ハリネズミのまりぃちゃん(雌、5歳)は直腸脱を起こして来院されました。

脱出した直腸を整復しましたが、結局再脱出を繰り返して、外科的に脱出した直腸を切断して縫合することになりました。

2度に亘る直腸脱による疼痛でまりぃちゃんは苛立った表情を示しています。





早速、全身麻酔を行い外科手術を実施することとなりました。



全身麻酔が効いてから脱出直腸を洗浄・消毒します。



脱出した直腸(下写真黄色丸)です。



まりぃちゃんの麻酔状態を心電図・酸素分圧などモニタリングしながら全身麻酔を実施しています。





今回の外科的手技は、フェレットの直腸脱(後編 ぺんね君救済計画)を参考にして下さい。



直腸を牽引するために、脱出直腸壁に支持糸を複数個所かけていきます。





脱出した直腸粘膜部は、非常に脆弱な組織で強い力で支持すると簡単に千切れてしまいます。



フェレットの直腸と比較してハリネズミのそれは短く、そのため外部への牽引をしっかりしないと腹腔内へ直腸が引き込まれてしまいます。

のんびり牽引してると直腸壁が支持糸で避けてしまいそうで緊張する場面です。



脱出している直腸粘膜部(丸く腫瘤状になっている部位)をメスで離断します。





脱出直腸の離断面は血行障害もあって浮腫を起こしていました。



幸いに脱出直腸部は壊死を起こしておらず、離断後は出血が認められました。



次に離断した直腸粘膜断面部を円周状に縫合していきます。















離断直腸粘膜を縫合する際に対側部を縫合糸でひっかけないように鉗子を直腸に挿入して保護します。

フェレットの時の様に綿棒では太すぎるため、モスキート鉗子の先端を利用します。



直腸を誤って対側部まで縫合していないのを確認して、直腸壁の支持糸を外します。



縫合した直腸はスムーズに腹腔内に戻っていきます。



イソフルレンの主麻酔を切ったところで、まりぃちゃんは速やかに覚醒しました。



短期間に何度も全身麻酔をかけることは非常に心配でしたが、まりぃちゃんは頑張って耐えてくれました。





手術翌日のまりぃちゃんです。

食欲もありますが、少量の流動食でしばしの間、対応します。



術後に排便もしっかりできています。



縫合部の直腸が癒合するまでの2週間近くは、排便状態を注意して飼主様にお世話して頂きます。

エキゾチックアニマルは比較的長い期間、下痢が続くと腹圧をかける傾向があり、直腸脱を引き起こすことが多いです。

ハリネズミの場合は神経質な傾向もある一方で、瞬発的に怒ったりもしますので、加えて腹圧をかけることが多いです。


少しでも直腸脱の気配が認められたら、至急受診下さい。

直腸脱を起こして短時間であれば、前編のような整復処置で解決できます。

時間がたつにつれ、外科的直腸切除が必要になります。

退院当日のまりぃちゃんです。



まりぃちゃん、お疲れ様でした!




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投稿者 院長 | 記事URL

2016年3月14日 月曜日

ハリネズミの直腸脱(前篇)

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは、ハリネズミの直腸脱です。

エキゾチックアニマルは、鳥類も爬虫類も直腸脱が多いと感じています。

以前、フェレットの直腸脱についてコメントさせて頂きました。

直腸脱がなぜ生じるか、イラストを含めて詳説しておりますのでご興味のある方はこちらをクリックして下さい。




ヨツユビハリネズミのまりぃちゃん(雌、5歳)はお尻から黒いものが出ているとのことで来院されました。

お尻周りの疼痛のためか、不機嫌な表情を示しています。



ハリネズミはすぐに体を丸める傾向があり、今回肛門周囲を確認したかったのですが上手くできません。

焼き魚用の網に乗ってもらい、下から肛門を診てみます。

下写真黄色丸が肛門から突出している直腸です。



既に脱出した直腸は色が暗赤色になり、血行障害を疑います。

場合によっては、直腸が壊死してるケースもあります。

ハリネズミの病変部を確実に視診するためには、全身麻酔を実施しなければならないことが多いです。

まりぃちゃんを全身麻酔することとしました。



麻酔導入箱(上写真)にまりぃちゃんに入ってもらい、導入麻酔としてイソフルランを流し込みます。



段々麻酔が効いてきます。



完全に麻酔が効いて来たところで、麻酔導入箱を出てもらいます。

自作の専用マスクに切り替えて、維持麻酔を実施してます。



この状態で初めて、患部の詳細を診ることが出来ます。

下写真黄色丸が脱出している直腸です。



直腸の傷の有無や血行状態の確認のため、脱出した直腸を洗浄消毒します。





直腸は一時的に血行障害になってますが、整復することで十分回復すると判断して直腸を元に戻すことにしました。

直腸に抗生剤軟膏を塗布し滑りを良くします。





次に注射器の押し子を当てて、ゆっくりと整復して行きます(黄色矢印)。



直腸を傷つけないようにゆっくりと押し戻していきます。





無事、直腸はもとに戻りました。

しかし、このままでは再脱出してしまいますので、肛門の端を縫合して肛門を絞り込むことで脱出を防ぎます。









今回のまりぃちゃんの脱出は厳しい感じでしたので、肛門の両端部を2か所縫合しました。



直ぐに覚醒しました。







あとは、この状態で排便がしっかりできれば大丈夫です。

しかしながら、まりぃちゃんは翌日に直腸が再脱出してしまいました。

患部の写真です。



脱出しやすいということは整復しやすいという事でもあります。

比較的簡単に直腸は整復できました。



直腸が再脱出した時に縫合していた部位は1か所しか残ってませんでした(下写真黄色矢印)。

まりぃちゃんの腹圧に対して肛門の絞り込みが弱かったようです。



再脱出を予防するため、むらなく均等な力で肛門周囲を絞り込める巾着縫合を採用することにしました





肛門の外周に沿って縫合糸を縫い込んでいきます。







縫合糸の締結がきついと排便障害になりますので、綿棒を肛門内に挿入して(下黄色矢印)、締結の調整をします。



縫合糸の締結と同時に綿棒を抜き取ります。



これで直腸脱の整復は完了です。



フェレットの直腸脱をご覧いただいた方はもうお気づきかも知れません。

フェレットのぺんね君のケースと同様、まりぃちゃんも再脱出を繰り返す難治例と言えます。

直腸脱の非観血的に整復が難しい症例(今回のまりぃちゃんもそうです)は、最後は救済的処置として脱出してる直腸を切断して縫合する外科的アプローチが必要となる場合も多いです。



まりぃちゃんはこの巾着縫合の処置後、10日目にして残念ながら再脱出してしまいました(泣)。



次回は、まりぃちゃんの直腸切断手術をご紹介いたします。

乞うご期待下さい。




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投稿者 院長 | 記事URL

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