猫の疾病
猫の全臼歯抜歯処置
以前、猫の難治性口内炎というテーマをコメントさせて頂きました。
猫の歯肉口内炎は、難治性口内炎や慢性潰瘍性歯肉口内炎やリンパ球性形質細胞性歯肉口内炎等など色んな呼び方をされています。
最近では、この歯肉口内炎を口腔後部口内炎と呼ぶようになってきました。
今回、ご紹介させて頂きますのはソマリのまる君(4歳、去勢済)です。
まる君は1年近く前から歯肉口内炎でよだれがあり、食欲がふるわなく悩んでみえました。
当院でステロイド剤(デポ・メドロール)による内科的治療を継続していましたが、次第にステロイドも効果が弱くなってきました。
結局、飼い主様の意向を伺って、臼歯を全て抜歯する全臼歯抜歯処置を実施することとしました。
猫の難治性口内炎の記事にも書きましたが、全臼歯抜歯処置により、患者の多くは食生活が改善されます。
下写真は、全身麻酔をかけ始めのまる君です。
下写真で口腔内の歯肉炎の状況がお分かり頂けるかと思います。
臼歯歯肉及び周辺組織が発赤、腫脹、潰瘍を起こしています。
上写真を拡大したものです。
黄色丸の部分が炎症を起こしています。
ダイヤモンドバーを用いて臼歯の歯根部を分割します。
下写真の黄色丸は、上顎部の臼歯を抜歯した後です。
上写真は左下顎部の臼歯抜歯の跡です。
抜歯した後の抜歯窩周囲の骨をロンジュールでトリミングしています。
抜歯後は抜歯窩を綺麗にトリミングした後に歯肉を縫合します。
下写真の黄色丸は歯肉の縫合が完了したところです。
以上の処置で、全臼歯抜歯処置は無事終了しました。
この処置後は、暫くの間は内科的治療(ステロイド、抗生剤、免疫抑制剤など)が必要です。
最終的に数か月以内に内科的治療も必要なくなることが多いです。
その中には、この全臼歯抜歯を実施しても際立った改善が認められない症例もあります。
そんなケースではその後、切歯や犬歯を全て抜歯する全顎抜歯をとることもあります。
その後のまる君の経過は良好で食欲もしっかり戻っています。
猫の歯肉口内炎は、難治性口内炎や慢性潰瘍性歯肉口内炎やリンパ球性形質細胞性歯肉口内炎等など色んな呼び方をされています。
最近では、この歯肉口内炎を口腔後部口内炎と呼ぶようになってきました。
今回、ご紹介させて頂きますのはソマリのまる君(4歳、去勢済)です。
まる君は1年近く前から歯肉口内炎でよだれがあり、食欲がふるわなく悩んでみえました。
当院でステロイド剤(デポ・メドロール)による内科的治療を継続していましたが、次第にステロイドも効果が弱くなってきました。
結局、飼い主様の意向を伺って、臼歯を全て抜歯する全臼歯抜歯処置を実施することとしました。
猫の難治性口内炎の記事にも書きましたが、全臼歯抜歯処置により、患者の多くは食生活が改善されます。
下写真は、全身麻酔をかけ始めのまる君です。
下写真で口腔内の歯肉炎の状況がお分かり頂けるかと思います。
臼歯歯肉及び周辺組織が発赤、腫脹、潰瘍を起こしています。
上写真を拡大したものです。
黄色丸の部分が炎症を起こしています。
ダイヤモンドバーを用いて臼歯の歯根部を分割します。
下写真の黄色丸は、上顎部の臼歯を抜歯した後です。
上写真は左下顎部の臼歯抜歯の跡です。
抜歯した後の抜歯窩周囲の骨をロンジュールでトリミングしています。
抜歯後は抜歯窩を綺麗にトリミングした後に歯肉を縫合します。
下写真の黄色丸は歯肉の縫合が完了したところです。
以上の処置で、全臼歯抜歯処置は無事終了しました。
この処置後は、暫くの間は内科的治療(ステロイド、抗生剤、免疫抑制剤など)が必要です。
最終的に数か月以内に内科的治療も必要なくなることが多いです。
その中には、この全臼歯抜歯を実施しても際立った改善が認められない症例もあります。
そんなケースではその後、切歯や犬歯を全て抜歯する全顎抜歯をとることもあります。
その後のまる君の経過は良好で食欲もしっかり戻っています。
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投稿者 院長 | 記事URL
仔猫の上部気道感染症
当院の周辺地域は、なぜかこの数週間、仔猫を拾われて健康診断を兼ねて来院する方が増えています。
その仔猫の何割かが、今回ご紹介します上部気道感染症に罹患しています。
上部気道感染症の特徴的な症状は、くしゃみ・鼻の漿液性または粘液性鼻汁・目やにです。
ヒトの風邪に似た症状から猫風邪とも言われます。
野良で拾われた もなかちゃん は生後約28日齢 です。
写真をご覧のとおり、目やに・膿性鼻汁による鼻づまり・くしゃみの症状です。
猫上部気道感染症の原因は細菌、ウィルス、真菌が挙げられます。
その中でも特に、猫ヘルペスウィルス(FHV-1)、猫カリシウィルス(FCV)が猫上部気道感染症の80%を占めるとされています。
この2つのウィルスは感染力が強く、一度感染を受けると保菌状態となり、ストレスによって神経細胞に潜伏するヘルペスウィルスは間欠的に排出されますし、カリシウィルスにあっては、生涯にわたって排出される場合もあります。
次は生後50日齢の拾われた仔猫(名前はまだありません)です。
結膜炎が酷く、目やにで瞼がしっかり開けられない状態です。
仔猫が運よく、母猫の初乳を飲むことができても5~7週で移行抗体は消失します。
この移行抗体が消失する時期に、母猫がすでにこれらのウィルスに感染している場合、鼻汁や眼脂に大量に含まれるウィルスを仔猫が口や鼻や結膜を通して取り込むことにより、感染が成立します。
多くの検査機関でFHV-1やFCVの血清検査は可能です。
しかしながら、この2つの感染症は治療法も同じですから、検査で鑑別する必要はないと思います。
仔猫の場合、これらのウイルス感染後に速やかに細菌感染が合併症で起こります。
そのため、まずは細菌感染症の治療を優先して行います。
つまり、抗生剤の投与・抗生剤点眼を今回の仔猫ちゃん達に実施しました。
加えて、熱発や脱水で食欲不振があれば点滴が必要ですし、栄養チューブから給餌を行います。
状況に応じて、抗ウイルス療法としてL-リジン塩酸塩やネコインターフェロンを投与します。
以上が一般的な治療となりますが、5日以内に治療に反応が認められない場合、免疫力を抑制する猫白血病(FeLV)・猫エイズ(FIV)の感染を受けている可能性があります。
そうなるとFeLV・FIVの検査が必要となります。
いづれにせよ、生まれて間もない仔猫たちは色んな病原体の感染を受けている可能性があります。
少しでも、気になる症状があれば、かかりつけの獣医師のチェックを受けて下さい。
その仔猫の何割かが、今回ご紹介します上部気道感染症に罹患しています。
上部気道感染症の特徴的な症状は、くしゃみ・鼻の漿液性または粘液性鼻汁・目やにです。
ヒトの風邪に似た症状から猫風邪とも言われます。
野良で拾われた もなかちゃん は生後約28日齢 です。
写真をご覧のとおり、目やに・膿性鼻汁による鼻づまり・くしゃみの症状です。
猫上部気道感染症の原因は細菌、ウィルス、真菌が挙げられます。
その中でも特に、猫ヘルペスウィルス(FHV-1)、猫カリシウィルス(FCV)が猫上部気道感染症の80%を占めるとされています。
この2つのウィルスは感染力が強く、一度感染を受けると保菌状態となり、ストレスによって神経細胞に潜伏するヘルペスウィルスは間欠的に排出されますし、カリシウィルスにあっては、生涯にわたって排出される場合もあります。
次は生後50日齢の拾われた仔猫(名前はまだありません)です。
結膜炎が酷く、目やにで瞼がしっかり開けられない状態です。
仔猫が運よく、母猫の初乳を飲むことができても5~7週で移行抗体は消失します。
この移行抗体が消失する時期に、母猫がすでにこれらのウィルスに感染している場合、鼻汁や眼脂に大量に含まれるウィルスを仔猫が口や鼻や結膜を通して取り込むことにより、感染が成立します。
多くの検査機関でFHV-1やFCVの血清検査は可能です。
しかしながら、この2つの感染症は治療法も同じですから、検査で鑑別する必要はないと思います。
仔猫の場合、これらのウイルス感染後に速やかに細菌感染が合併症で起こります。
そのため、まずは細菌感染症の治療を優先して行います。
つまり、抗生剤の投与・抗生剤点眼を今回の仔猫ちゃん達に実施しました。
加えて、熱発や脱水で食欲不振があれば点滴が必要ですし、栄養チューブから給餌を行います。
状況に応じて、抗ウイルス療法としてL-リジン塩酸塩やネコインターフェロンを投与します。
以上が一般的な治療となりますが、5日以内に治療に反応が認められない場合、免疫力を抑制する猫白血病(FeLV)・猫エイズ(FIV)の感染を受けている可能性があります。
そうなるとFeLV・FIVの検査が必要となります。
いづれにせよ、生まれて間もない仔猫たちは色んな病原体の感染を受けている可能性があります。
少しでも、気になる症状があれば、かかりつけの獣医師のチェックを受けて下さい。
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