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猫の疾病

猫の大腿骨遠位端分離骨折


こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは仔猫の骨折の症例です。


猫のランちゃん(雌、5か月齢、2㎏)は二階のベランダから落下してしまい、その後右後肢を引きずるとのことで来院されました。



猫は高い所から、ダイビングして上手に着地するイメージがありますが、着地を失敗してしまうケースもあります。

特にランちゃんのように生後5か月齢ならなおのことです。

早速、レントゲン撮影をしました。

下写真の黄色丸の箇所が骨折しています。



さらに拡大します。

黄色矢印の部位が真横に骨折しているのがお分かり頂けると思います。



この真横に分離骨折している箇所は成長板と呼ばれる、成長期に認められる骨が縦軸方向に成長する部位で軟骨で形成されています。

そのため、この成長板を傷害するような骨折整復法を選択しますと左右の足の長さが最終的に変わってしまう事になります。

一般には骨折整復法には、プレート内固定、骨髄内ピン固定、創外固定法などが選択されることが多いです。

今回の症例は、成長板にダメージを与えず(成長板の胚細胞を保護する)に済む特殊な固定法を採用しました。

大腿骨顆(今回骨折している部位)をピンでクロスして固定するクロスピン法を実施しました。


骨折整復手術を実施します。

麻酔前投薬及び気管挿管します。







大腿骨遠位端を露出させるため、膝関節にメスを入れます。



膝蓋骨の傍らに切開を加え、大腿四頭筋、膝蓋骨、膝蓋靭帯を反転させます。





骨折部を目視してピンを打ち込む角度をイメージします。



ドリルでピンを打ち込んでいきます。





ピンの打ち込んだ位置を確認するためレントゲン撮影します。

下写真でイメージしたピンの位置にあることが確認できました。



次に反対側からピンを入れていきます。



同じくレントゲン撮影して位置の確認をします。



ピンをクロスさせて骨折部の固定が完了しました。



次はピンをカットして関節包を縫合します。



2本のピンをカットしました。

ピンの断端は少し曲げて膝の屈曲時に関節包との干渉の無いようにしました。



脱臼させていた膝蓋骨を元に戻します。



レントゲン撮影で最終チェックします。



関節包、膝蓋靭帯を縫合します。



最後に皮膚縫合して終了です。



ランちゃんはとても元気な仔猫なので、術後の安静が一番気になります。

今回はトーマス固定枠(下写真黄色矢印)を作って患肢を保護してみることとしました。



麻酔覚醒直後のランちゃんです。

お疲れ様でした!



手術の翌日、ランちゃんはトーマスの固定枠を反対の左足を器用に使って外してしまいました。

猫の場合は、犬と違って非常に神経質な個体が多く、術後の管理は注意が必要です。

結局、トマ―ス固定枠は無しで行くこととしました。

術後5日目のランちゃんです。



患肢をかばいつつも、歩行できるようになってきました。





ピンの端周辺に今後、液体貯留の可能性があります。

関節包内のピンの動きによる刺激で生じる漿腋腫と言われるものです。

ランちゃんはとても元気なため、厳しい運動制限は無理でしょう。

骨折端が癒合した時点でピンを抜去する予定でいます。

1歳未満でまだ成長期の動物の場合、成長板周囲の骨折はよく発生しますので高所からの飛び降りにはご注意ください。




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