猫の疾病
猫の胸水
猫が呼吸困難な症状を呈している時、レントゲン撮影を実施しますと胸腔内に液体が貯留していることがあります。
この液体を調べることで、体のどこに問題があって胸腔内に液体が貯留したのかを知ることが出来ます。
今回、呼吸が非常に荒いとのことで来院されたのは猫のはるちゃん(6か月齢)です。
レントゲン撮影を行いました。
上のレントゲン写真の黄色丸で囲んだ部分は、いわゆる胸腔とよばれる部位です。
本来なら胸腔は空気が存在していますから、黒くレントゲン上で写らなければなりません。
ところが、はるちゃんの場合はすりガラスの様に白く胸腔内が写っています。
これは何らかの液体が存在することを意味しています。
液体が胸腔に溜まるにつれ、さらに呼吸は辛くなっていきますので胸腔内にドレインチューブを入れて液体を抜くこととしました。
はるちゃんは非常に元気な猫なので、軽く麻酔をかけて胸の肋骨間にメスで切開を入れ、鉗子で保持したドレインチューブを留置します。
胸腔内にドレインチューブを入れた直後に確認のためレントゲン撮影をしました。
黄色の矢印がドレインチューブです。
ドレインチューブをポンプで吸引しますと胸腔内から胸水(黄色矢印)が出てきました。
体重が2.5kgのはるちゃんですが、吸引した胸水は90mlに及びました。
胸水はその性状により、漏出液、変性漏出液、滲出液の3つに分別されます。
胸水を蛋白濃度や比重を測定してどんな種類の液体なのかを調べます。
はるちゃんの胸水は変性漏出液でした。
この変性漏出液は慢性の心疾患やリンパ腫や横隔膜ヘルニアの時に認めることが多いとされる胸水です。
心エコーにより肥大型心筋症や拡張型心筋症の確認をしましたが、どの型にも当てはまらず、心機能には問題がないようです。
はるちゃんは猫白血病(FeLV)や猫エイズ(FIV)の感染も受けていなく、肺の縦隔型リンパ腫の可能性もなさそうです。
胸水中の細胞を検査したところ、腫瘍細胞も見当たりませんでした。
加えて、猫伝染性腹膜炎(FIP)の可能性も考慮して、胸水中の猫コロナウィルスのDNA検査も実施しましたが検出されず、主たる原因も明らかにできない状況です。
上の写真のとおり胸腔内にドレインチューブを留置して、胸水を吸引しつつ、抗生剤・気管支拡張剤を投薬して治療を進めます。
当院のICUケージで、はるちゃんは入院することとなりました。
入院して数日で、すでに胸水も吸引されず、はるちゃんの呼吸も正常に戻りました。
レントゲン撮影をしたところ、胸腔もきれいになってきています(下写真)。
食欲もしっかり出てきて、ICUケージの中で動き回るようになってきましたので、退院して頂くこととしました。
胸水の原因が不明な点が気になりますが、経過をしっかり飼主様に観察して頂きます。
はるちゃん、呼吸も楽になり、走り回れるようになって良かったです。
この液体を調べることで、体のどこに問題があって胸腔内に液体が貯留したのかを知ることが出来ます。
今回、呼吸が非常に荒いとのことで来院されたのは猫のはるちゃん(6か月齢)です。
レントゲン撮影を行いました。
上のレントゲン写真の黄色丸で囲んだ部分は、いわゆる胸腔とよばれる部位です。
本来なら胸腔は空気が存在していますから、黒くレントゲン上で写らなければなりません。
ところが、はるちゃんの場合はすりガラスの様に白く胸腔内が写っています。
これは何らかの液体が存在することを意味しています。
液体が胸腔に溜まるにつれ、さらに呼吸は辛くなっていきますので胸腔内にドレインチューブを入れて液体を抜くこととしました。
はるちゃんは非常に元気な猫なので、軽く麻酔をかけて胸の肋骨間にメスで切開を入れ、鉗子で保持したドレインチューブを留置します。
胸腔内にドレインチューブを入れた直後に確認のためレントゲン撮影をしました。
黄色の矢印がドレインチューブです。
ドレインチューブをポンプで吸引しますと胸腔内から胸水(黄色矢印)が出てきました。
体重が2.5kgのはるちゃんですが、吸引した胸水は90mlに及びました。
胸水はその性状により、漏出液、変性漏出液、滲出液の3つに分別されます。
胸水を蛋白濃度や比重を測定してどんな種類の液体なのかを調べます。
はるちゃんの胸水は変性漏出液でした。
この変性漏出液は慢性の心疾患やリンパ腫や横隔膜ヘルニアの時に認めることが多いとされる胸水です。
心エコーにより肥大型心筋症や拡張型心筋症の確認をしましたが、どの型にも当てはまらず、心機能には問題がないようです。
はるちゃんは猫白血病(FeLV)や猫エイズ(FIV)の感染も受けていなく、肺の縦隔型リンパ腫の可能性もなさそうです。
胸水中の細胞を検査したところ、腫瘍細胞も見当たりませんでした。
加えて、猫伝染性腹膜炎(FIP)の可能性も考慮して、胸水中の猫コロナウィルスのDNA検査も実施しましたが検出されず、主たる原因も明らかにできない状況です。
上の写真のとおり胸腔内にドレインチューブを留置して、胸水を吸引しつつ、抗生剤・気管支拡張剤を投薬して治療を進めます。
当院のICUケージで、はるちゃんは入院することとなりました。
入院して数日で、すでに胸水も吸引されず、はるちゃんの呼吸も正常に戻りました。
レントゲン撮影をしたところ、胸腔もきれいになってきています(下写真)。
食欲もしっかり出てきて、ICUケージの中で動き回るようになってきましたので、退院して頂くこととしました。
胸水の原因が不明な点が気になりますが、経過をしっかり飼主様に観察して頂きます。
はるちゃん、呼吸も楽になり、走り回れるようになって良かったです。
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投稿者 院長 | 記事URL
猫疥癬症
外に自由に行き来する飼い猫は、野良猫との接触もあるため、いわゆる外部寄生虫の感染する機会も多いと言えます。
外部寄生虫の中でも、疥癬(ダニ)感染症は多く、顔面や耳介部の激しい痒みを伴います。
今回、ご紹介いたしますのは、猫小穿孔疥癬虫(ねこしょうせんこうかいせんちゅう)の感染例です。
むっとした表情のナナちゃんですが、いつも自由に外を闊歩する猫です。
この2週間ほど、顔面から耳介部にかけて非常に痒がるとのことで来院されました。
耳介部の内面も背面も瘡蓋(かさぶた)が出来ています。
黄色丸の部分は皮膚が凸凹の形状をしており、場所によっては藤壺のようになっています。
顔面にしても、痒みのため爪でひっかいて出血しています。
早速、皮膚をメスの刃で掻把して顕微鏡で検査しました。
上の写真に認められるのが猫小穿孔疥癬虫です。
この疥癬は猫の表皮に孔を開け、角質にトンネルを作ってそこに産卵します。
生存期間は3~4週間で、宿主から離れると数日で死亡すると言われています。
治療法としては、イベルメクチンの皮下注を10日間隔で2回に分けて実施します。
なぜ2回の注射が必要かと申しますと1回目の注射で親ダニは死滅しますが、卵に関してダメージを与えられないため、卵が孵化する頃を狙って2回目の注射をするということです。
寄生虫感染は世代をバトンタッチさせないことが治療の重要なポイントと言えます。
外部寄生虫の中でも、疥癬(ダニ)感染症は多く、顔面や耳介部の激しい痒みを伴います。
今回、ご紹介いたしますのは、猫小穿孔疥癬虫(ねこしょうせんこうかいせんちゅう)の感染例です。
むっとした表情のナナちゃんですが、いつも自由に外を闊歩する猫です。
この2週間ほど、顔面から耳介部にかけて非常に痒がるとのことで来院されました。
耳介部の内面も背面も瘡蓋(かさぶた)が出来ています。
黄色丸の部分は皮膚が凸凹の形状をしており、場所によっては藤壺のようになっています。
顔面にしても、痒みのため爪でひっかいて出血しています。
早速、皮膚をメスの刃で掻把して顕微鏡で検査しました。
上の写真に認められるのが猫小穿孔疥癬虫です。
この疥癬は猫の表皮に孔を開け、角質にトンネルを作ってそこに産卵します。
生存期間は3~4週間で、宿主から離れると数日で死亡すると言われています。
治療法としては、イベルメクチンの皮下注を10日間隔で2回に分けて実施します。
なぜ2回の注射が必要かと申しますと1回目の注射で親ダニは死滅しますが、卵に関してダメージを与えられないため、卵が孵化する頃を狙って2回目の注射をするということです。
寄生虫感染は世代をバトンタッチさせないことが治療の重要なポイントと言えます。
猫疥癬症にかかるとこんなに顔が引掻いて酷くなることに驚かれた方は
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