ヘビの疾病
2017年12月 4日 月曜日
ボールパイソンの原虫症
こんにちは 院長の伊藤です。
本日ご紹介しますのはヘビの下痢の原因と思われる原虫感染です。
一般に爬虫類はヘビに限らずトカゲであれ、カメであれ、何らかの寄生虫を腸管内に持っています。
哺乳類、特に犬猫では問題となる内部寄生虫でも、これら爬虫類では病気の原因となるのかというと不明な点が多いです。
爬虫類の腸内環境で他の腸内細菌とのバランスを取っており、やみくもに寄生虫を駆虫すべきではないという意見の研究者もいます。
何しろ、哺乳類の様に血液検査を初めとした精密検査自体が難しい動物ですから、診察する獣医師側からしても情報量の少ない中での診療展開となります。
ボールパイソン君(名称なし、性別不明、1歳)は数週間にわたり軟便・下痢便を繰り返すとのことで来院されました。
診察中にタイミング良く排便しました。
ご覧の通りの下痢便です。
早速、検便をしました。
多数の原虫が遊泳しているのを確認しました。
下写真黄色丸がその原虫です。
原虫はこれまでにも他の動物種で度々、ホームページの疾病紹介で掲載しています。
原虫は基本的に活動的で、顕微鏡写真でピントを合わせて撮影が難しいです。
今回も撮影には苦労したのですが、動きが早すぎて低倍率で多数の原虫をとらえることが出来ませんでした。
ボールパイソン君は高度に感染してましたので、明らかにこの原虫が原因であろうと思われました。
ただこの原虫が犬猫では一般的に認められるジアルジアやトリコモナスとは異なる種類です。
一方で、原虫の仲間でクリプトスポリジウムによる感染症が話題になったりしています。
ヘビの場合は慢性肥厚性胃炎の原因になったりします。
今回のこの原虫はこのクリプトスポリジウムではありません。
犯人が特定できない状態での治療となります。
一般的に原虫症にはメトロニダゾールという薬剤が選択されます。
ヘビの体重1㎏に対して50㎎のメトロニダゾールを1~2週間経口投薬します。
75~125㎎を一回投与して、2週間後にもう一回投与する臨床医もいます。
いづれにせよ、ヘビの投薬は慎重に行う必要があり、個体によっては拒食に至ります。
一般的には野生の個体でなく、飼育孵化・繁殖させた健康な個体においても、一定レベルの原虫は保有しています。
ところが、何らかのストレスに暴露されたりすると胃腸系に障害をもたらします。
原虫症は、今回のような下痢に始まり、嘔吐・胃腸内ガスによる鼓張、呼吸器感染といった多くの問題を引き起こします。
ボールパイソン君、早く下痢が治って欲しいです。
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本日ご紹介しますのはヘビの下痢の原因と思われる原虫感染です。
一般に爬虫類はヘビに限らずトカゲであれ、カメであれ、何らかの寄生虫を腸管内に持っています。
哺乳類、特に犬猫では問題となる内部寄生虫でも、これら爬虫類では病気の原因となるのかというと不明な点が多いです。
爬虫類の腸内環境で他の腸内細菌とのバランスを取っており、やみくもに寄生虫を駆虫すべきではないという意見の研究者もいます。
何しろ、哺乳類の様に血液検査を初めとした精密検査自体が難しい動物ですから、診察する獣医師側からしても情報量の少ない中での診療展開となります。
ボールパイソン君(名称なし、性別不明、1歳)は数週間にわたり軟便・下痢便を繰り返すとのことで来院されました。
診察中にタイミング良く排便しました。
ご覧の通りの下痢便です。
早速、検便をしました。
多数の原虫が遊泳しているのを確認しました。
下写真黄色丸がその原虫です。
原虫はこれまでにも他の動物種で度々、ホームページの疾病紹介で掲載しています。
原虫は基本的に活動的で、顕微鏡写真でピントを合わせて撮影が難しいです。
今回も撮影には苦労したのですが、動きが早すぎて低倍率で多数の原虫をとらえることが出来ませんでした。
ボールパイソン君は高度に感染してましたので、明らかにこの原虫が原因であろうと思われました。
ただこの原虫が犬猫では一般的に認められるジアルジアやトリコモナスとは異なる種類です。
一方で、原虫の仲間でクリプトスポリジウムによる感染症が話題になったりしています。
ヘビの場合は慢性肥厚性胃炎の原因になったりします。
今回のこの原虫はこのクリプトスポリジウムではありません。
犯人が特定できない状態での治療となります。
一般的に原虫症にはメトロニダゾールという薬剤が選択されます。
ヘビの体重1㎏に対して50㎎のメトロニダゾールを1~2週間経口投薬します。
75~125㎎を一回投与して、2週間後にもう一回投与する臨床医もいます。
いづれにせよ、ヘビの投薬は慎重に行う必要があり、個体によっては拒食に至ります。
一般的には野生の個体でなく、飼育孵化・繁殖させた健康な個体においても、一定レベルの原虫は保有しています。
ところが、何らかのストレスに暴露されたりすると胃腸系に障害をもたらします。
原虫症は、今回のような下痢に始まり、嘔吐・胃腸内ガスによる鼓張、呼吸器感染といった多くの問題を引き起こします。
ボールパイソン君、早く下痢が治って欲しいです。
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投稿者 院長 | 記事URL
2017年8月20日 日曜日
ボールパイソンの卵詰まり
こんにちは 院長の伊藤です。
本日ご紹介しますのはヘビの卵詰まりです。
当院のホームページにも鳥の卵詰まりをご紹介させて頂くことが多いですが、爬虫類にも卵詰まりは起こります。
過去にもカメレオンとヒョウモントカゲモドキの卵詰まりを掲載しましたので興味のある方はご覧ください(下線をクリックして下さい)。
いずれにしても、最悪の場合は開腹手術が必要となる場合もあります。
ボールパイソンのかりんちゃん(3歳、雌、体重1.45kg)は3週間ほど前から産卵準備期に入り、3日前に数個の産卵があったとのこと。
その後陣痛が何度かあるものの、産卵には至ってないとのことで来院されました。
総排泄腔(お尻の穴)から10~15㎝上あたり(下写真黄色丸)が腫大しているのがお分かり頂けると思います。
腫大している箇所は卵が存在していると思われます。
早速、レントゲン撮影を実施しました。
レントゲン写真の黄色矢印は卵を示します。
2個卵があるようです。
下写真にありますように総排泄腔のすぐ上に卵は降りてきています。
ヘビの産卵に関わるメカニズムはまだ分からない点が多いとされます。
有精卵の中の胎児が発達して、母体からの酸素の供給が足りなくなった時点で、卵が何らかの化学物質を放出して、母体に合図を送り、産卵が始まるのではないかと考えられてます。
つまり、産卵開始の決定権は胎児にあると推察されています。
ヘビのひと腹で産卵する卵数をクラッチといいます。
ボールパイソンは1クラッチが約4~8個とされます。
1クラッチで卵管内の卵がすべて産卵されているなら良いのですが、卵詰まりが途中で生じて一日以上の間が空くと、卵管内に残っている有精卵は全て死亡するとされています。
今回、かりんちゃんの1クラッチで産卵したのが3日前とすると、すでに残っている2個の卵も死んでる可能性は高いです。
まずは卵詰まりの部位を優しくマッサージして産卵してくれないか、試してみました。
しばらくマッサージを続けていると陣痛が始まりました。
いけるかなと思っていても、すぐに力が尽きて卵は元の位置に戻ってしまいます。
かりんちゃんの何度かの陣痛の波に合わせて、なんとか産卵解除に成功させようとしました。
下写真黄色矢印は卵管から顔を出している卵です。
卵管壁に傷をつけないように綿棒を挿入して卵殻をてこの原理で外へ押し出していきます。
少しづつ卵が全貌を表し始めています。
何とか一個目の解除が完了です。
次に2個目をレントゲンで確認します。
黄色丸は2個目の卵を示します。
かりんちゃんに何とか頑張ってもらい、残りの卵を産卵してもらいます。
1個目に比べ短時間で介助できました。
右が1回目の卵で左が2回目の卵です。
卵殻自体が非常に柔らかく表面が凸凹しています。
一般的にヘビの卵は卵殻が柔らかいです。
今回の卵は皺も多く、変形の傾向もあります。
卵の内容を確認のため開いてみました。
ヘビの卵は鳥の卵の様に卵黄と卵白は分離しておらず混ざり合っています。
発達の初期段階においては、卵のなかは卵黄らしきものでほとんど満たされており、卵を切開しても、透明な液体はほとんど見られません。
卵白がないため液体(卵白)のクッションを介して胚の回転が出来ません。
従って、ヘビの有精卵は産み落とされると卵の上面に胚が形成され、ここで卵の向きを下に変えると胚が呼吸できずに死亡します。
そのため、卵の上面に印をつけて動かすときは元の上面を上にする必要があります。
またヘビやトカゲの卵は卵白を持たないので、水分補給は周囲の土などから水分を吸収して育ちます。
有精卵を孵卵させるためには、卵をタッパーに入れ底面に十分に水を吸ったミズゴケを敷き詰めて、温度・湿度を管理して行います。
鶏の卵の孵化に比べて、非常に煩雑なケアが必要とされます。
薄い卵殻を切開しますと、内容は前述のとおり卵白や卵黄が一緒になった固形の栄養分が認められます。
赤くなっている上面を切開しますと胎児が確認できました。
下写真がヘビの胎児です。
眼が確認できます。
卵の横断面です。
下写真の黄色丸は胎児が存在していた卵の位置です。
2個目の卵の内容です。
1個目の卵の胎児と比べて内容物に埋没して胎児のシルエットも不明瞭です。
胎児は明らかに死亡しています。
かりんちゃんの卵は残念でしたが、卵詰まりはそのままにしておきますと母体の命まで奪います。
有精卵が腐敗すると細菌の毒素が血中に入り、敗血症に至ります。
緊急事態であれば、体側面から針を刺して卵の中身を吸引する方法や開腹して卵管を切開して卵を摘出する方法を選択します。
今回は腹部を温めてマッサージすることで陣痛を促し産卵介助できました。
卵が総排泄腔に近い位置にあったのも良かったと思います。
今後も産卵する機会があるかと思いますので、慎重な対応が必要ですね。
かりんちゃん、お疲れ様でした!
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本日ご紹介しますのはヘビの卵詰まりです。
当院のホームページにも鳥の卵詰まりをご紹介させて頂くことが多いですが、爬虫類にも卵詰まりは起こります。
過去にもカメレオンとヒョウモントカゲモドキの卵詰まりを掲載しましたので興味のある方はご覧ください(下線をクリックして下さい)。
いずれにしても、最悪の場合は開腹手術が必要となる場合もあります。
ボールパイソンのかりんちゃん(3歳、雌、体重1.45kg)は3週間ほど前から産卵準備期に入り、3日前に数個の産卵があったとのこと。
その後陣痛が何度かあるものの、産卵には至ってないとのことで来院されました。
総排泄腔(お尻の穴)から10~15㎝上あたり(下写真黄色丸)が腫大しているのがお分かり頂けると思います。
腫大している箇所は卵が存在していると思われます。
早速、レントゲン撮影を実施しました。
レントゲン写真の黄色矢印は卵を示します。
2個卵があるようです。
下写真にありますように総排泄腔のすぐ上に卵は降りてきています。
ヘビの産卵に関わるメカニズムはまだ分からない点が多いとされます。
有精卵の中の胎児が発達して、母体からの酸素の供給が足りなくなった時点で、卵が何らかの化学物質を放出して、母体に合図を送り、産卵が始まるのではないかと考えられてます。
つまり、産卵開始の決定権は胎児にあると推察されています。
ヘビのひと腹で産卵する卵数をクラッチといいます。
ボールパイソンは1クラッチが約4~8個とされます。
1クラッチで卵管内の卵がすべて産卵されているなら良いのですが、卵詰まりが途中で生じて一日以上の間が空くと、卵管内に残っている有精卵は全て死亡するとされています。
今回、かりんちゃんの1クラッチで産卵したのが3日前とすると、すでに残っている2個の卵も死んでる可能性は高いです。
まずは卵詰まりの部位を優しくマッサージして産卵してくれないか、試してみました。
しばらくマッサージを続けていると陣痛が始まりました。
いけるかなと思っていても、すぐに力が尽きて卵は元の位置に戻ってしまいます。
かりんちゃんの何度かの陣痛の波に合わせて、なんとか産卵解除に成功させようとしました。
下写真黄色矢印は卵管から顔を出している卵です。
卵管壁に傷をつけないように綿棒を挿入して卵殻をてこの原理で外へ押し出していきます。
少しづつ卵が全貌を表し始めています。
何とか一個目の解除が完了です。
次に2個目をレントゲンで確認します。
黄色丸は2個目の卵を示します。
かりんちゃんに何とか頑張ってもらい、残りの卵を産卵してもらいます。
1個目に比べ短時間で介助できました。
右が1回目の卵で左が2回目の卵です。
卵殻自体が非常に柔らかく表面が凸凹しています。
一般的にヘビの卵は卵殻が柔らかいです。
今回の卵は皺も多く、変形の傾向もあります。
卵の内容を確認のため開いてみました。
ヘビの卵は鳥の卵の様に卵黄と卵白は分離しておらず混ざり合っています。
発達の初期段階においては、卵のなかは卵黄らしきものでほとんど満たされており、卵を切開しても、透明な液体はほとんど見られません。
卵白がないため液体(卵白)のクッションを介して胚の回転が出来ません。
従って、ヘビの有精卵は産み落とされると卵の上面に胚が形成され、ここで卵の向きを下に変えると胚が呼吸できずに死亡します。
そのため、卵の上面に印をつけて動かすときは元の上面を上にする必要があります。
またヘビやトカゲの卵は卵白を持たないので、水分補給は周囲の土などから水分を吸収して育ちます。
有精卵を孵卵させるためには、卵をタッパーに入れ底面に十分に水を吸ったミズゴケを敷き詰めて、温度・湿度を管理して行います。
鶏の卵の孵化に比べて、非常に煩雑なケアが必要とされます。
薄い卵殻を切開しますと、内容は前述のとおり卵白や卵黄が一緒になった固形の栄養分が認められます。
赤くなっている上面を切開しますと胎児が確認できました。
下写真がヘビの胎児です。
眼が確認できます。
卵の横断面です。
下写真の黄色丸は胎児が存在していた卵の位置です。
2個目の卵の内容です。
1個目の卵の胎児と比べて内容物に埋没して胎児のシルエットも不明瞭です。
胎児は明らかに死亡しています。
かりんちゃんの卵は残念でしたが、卵詰まりはそのままにしておきますと母体の命まで奪います。
有精卵が腐敗すると細菌の毒素が血中に入り、敗血症に至ります。
緊急事態であれば、体側面から針を刺して卵の中身を吸引する方法や開腹して卵管を切開して卵を摘出する方法を選択します。
今回は腹部を温めてマッサージすることで陣痛を促し産卵介助できました。
卵が総排泄腔に近い位置にあったのも良かったと思います。
今後も産卵する機会があるかと思いますので、慎重な対応が必要ですね。
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投稿者 院長 | 記事URL
2014年12月31日 水曜日
ボールパイソンの便秘(尿酸結晶による)
こんにちは 院長の伊藤です。
本日はヘビの便秘についてコメントさせて頂きます。
ボールパイソンのハローちゃん(6か月齢、性別不明)は、食欲はあるのだけれど4週間近く排便がないとのことで来院されました。
多くのヘビの給餌は、ピンクマウスを与えるケースが多いかと思います。
大雑把に給餌の目安は、ヘビの頭3個分の大きさのピンクマウスを1回分の給餌量とします。
最初の1~2年は週に2回与え、それ以降は週に1回、成体になれば10日に1回の給餌とします。
特に幼体期は食べさせるだけ食べさせて、体を大きくさせる必要があります。
排便も摂食量に応じて、量も回数も変動します。
ただ今回のように排便が4週間以上ないようですといわゆる便秘状態と考えられます。
鳥類や爬虫類は総排泄腔という一つの穴から排便、排尿、産卵を済ませるという解剖学的構造をしています。
念入りに体を触診しますと総排泄腔の少し上に硬い腫瘤の存在を触知しました。
下写真黄色丸が総排泄腔です。
下写真黄色矢印が少し赤みを帯びており、触診で硬い腫瘤が認められる部位です。
そして黄色丸が総排泄腔です。
この矢印の部位を優しく圧迫を加えながら、硬い腫瘤を総排泄腔へと誘導していきます。
丁度イメージとしては、鳥の卵詰まりの圧迫排卵の感じと言えばよいでしょうか。
まず、白い塊が出てきました。
これは尿酸です。
次に茶色い塊(下写真黄色丸)で排出されました。
これが、今回の便秘の原因かもしれません。
非常に硬い結晶体のようです。
続いて、再度尿酸が出て来ました。
下写真の草色矢印は尿酸(白色の排泄物)。
黄色矢印は硬い結晶(触ると非常に硬い石のようなもの)です。
尿酸と硬い結晶を排出した後、赤丸の糞便、そして尿が多量に出て来ました。
この硬い結晶の詳細を確認するために、砕いて顕微鏡で検査しました。
下写真は低倍率のものですが、尿酸の結晶体が確認されます。
さらに高倍率です。
ボールパイソンは定期的に尿酸を排泄します。
そもそも尿酸は、ヘビの体内でタンパク質代謝の結果生じる窒素化合物です。
尿酸は尿管を通過して腎臓から総排泄腔へと送り込まれます。
総排泄腔内で尿酸は白い粘液様のペーストとして、その一部が体内に再吸収されます。
今回は、たまたま尿酸ペーストの再吸収が進行して、硬化が進んでしまったものかもしれません。
あるいは、蛋白質の過剰摂取により、析出した尿酸がカルシウムと結合して結石を形成したのかもしれません。
尿酸の結石(尿酸塩)が犬では、ストルバイトやシュウ酸カルシウムと同様、尿石症の原因となる場合があります。
ただヘビの場合は総排泄腔での排泄になりますから、犬や猫であれば尿路結石となる尿酸塩が、今回は総排泄行のすぐ手前まで降りてきて総排泄行の閉塞(便秘)に陥った可能性があります。
ヘビの一般的な便秘(消化管内の糞便の停滞の場合)の原因は以下のように考えられています。
1:過食で運動不足
食欲は個体差がありますが、前述したように給餌量は適切に守ること、加えて狭いケージですと個体は運動不足に陥りやすくなります。
2:飼育環境の温度・湿度が低い
この場合、ヘビは体をパネルヒーターなどの熱源に巻き付いて、腹部を高温で温めることになり、結果便は硬化して石のように固くなり便秘に至ります。
便秘の治療法は
1:環境の改善
広いケージを用意する。
ケージ内の空気を乾燥させる床材(段ボール、おが屑、木材)を撤収する。
加湿器をケージ内に入れる。
2:お湯に全身をつける
ひと肌のぬるま湯に1日1回15分ほど全身を浸漬させて、4~5日継続することで消化管運動を促し排便を促進させる。
以上の点にご注意いただければと思います。
ハローちゃんは今回の便秘解除処置で、溜まっていた便や尿も一挙に出ましたが、表情は爬虫類ですから変わりません。
爬虫類の場合は食欲不振(拒食)にしても便秘にしても、哺乳類の様に表情に現れませんし、むしろ隠す傾向がありますので要注意です。
今年も無事、診察を終えることが出来ました。
来年も皆様のペット達が健康に暮らせますことを祈念いたします。
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本日はヘビの便秘についてコメントさせて頂きます。
ボールパイソンのハローちゃん(6か月齢、性別不明)は、食欲はあるのだけれど4週間近く排便がないとのことで来院されました。
多くのヘビの給餌は、ピンクマウスを与えるケースが多いかと思います。
大雑把に給餌の目安は、ヘビの頭3個分の大きさのピンクマウスを1回分の給餌量とします。
最初の1~2年は週に2回与え、それ以降は週に1回、成体になれば10日に1回の給餌とします。
特に幼体期は食べさせるだけ食べさせて、体を大きくさせる必要があります。
排便も摂食量に応じて、量も回数も変動します。
ただ今回のように排便が4週間以上ないようですといわゆる便秘状態と考えられます。
鳥類や爬虫類は総排泄腔という一つの穴から排便、排尿、産卵を済ませるという解剖学的構造をしています。
念入りに体を触診しますと総排泄腔の少し上に硬い腫瘤の存在を触知しました。
下写真黄色丸が総排泄腔です。
下写真黄色矢印が少し赤みを帯びており、触診で硬い腫瘤が認められる部位です。
そして黄色丸が総排泄腔です。
この矢印の部位を優しく圧迫を加えながら、硬い腫瘤を総排泄腔へと誘導していきます。
丁度イメージとしては、鳥の卵詰まりの圧迫排卵の感じと言えばよいでしょうか。
まず、白い塊が出てきました。
これは尿酸です。
次に茶色い塊(下写真黄色丸)で排出されました。
これが、今回の便秘の原因かもしれません。
非常に硬い結晶体のようです。
続いて、再度尿酸が出て来ました。
下写真の草色矢印は尿酸(白色の排泄物)。
黄色矢印は硬い結晶(触ると非常に硬い石のようなもの)です。
尿酸と硬い結晶を排出した後、赤丸の糞便、そして尿が多量に出て来ました。
この硬い結晶の詳細を確認するために、砕いて顕微鏡で検査しました。
下写真は低倍率のものですが、尿酸の結晶体が確認されます。
さらに高倍率です。
ボールパイソンは定期的に尿酸を排泄します。
そもそも尿酸は、ヘビの体内でタンパク質代謝の結果生じる窒素化合物です。
尿酸は尿管を通過して腎臓から総排泄腔へと送り込まれます。
総排泄腔内で尿酸は白い粘液様のペーストとして、その一部が体内に再吸収されます。
今回は、たまたま尿酸ペーストの再吸収が進行して、硬化が進んでしまったものかもしれません。
あるいは、蛋白質の過剰摂取により、析出した尿酸がカルシウムと結合して結石を形成したのかもしれません。
尿酸の結石(尿酸塩)が犬では、ストルバイトやシュウ酸カルシウムと同様、尿石症の原因となる場合があります。
ただヘビの場合は総排泄腔での排泄になりますから、犬や猫であれば尿路結石となる尿酸塩が、今回は総排泄行のすぐ手前まで降りてきて総排泄行の閉塞(便秘)に陥った可能性があります。
ヘビの一般的な便秘(消化管内の糞便の停滞の場合)の原因は以下のように考えられています。
1:過食で運動不足
食欲は個体差がありますが、前述したように給餌量は適切に守ること、加えて狭いケージですと個体は運動不足に陥りやすくなります。
2:飼育環境の温度・湿度が低い
この場合、ヘビは体をパネルヒーターなどの熱源に巻き付いて、腹部を高温で温めることになり、結果便は硬化して石のように固くなり便秘に至ります。
便秘の治療法は
1:環境の改善
広いケージを用意する。
ケージ内の空気を乾燥させる床材(段ボール、おが屑、木材)を撤収する。
加湿器をケージ内に入れる。
2:お湯に全身をつける
ひと肌のぬるま湯に1日1回15分ほど全身を浸漬させて、4~5日継続することで消化管運動を促し排便を促進させる。
以上の点にご注意いただければと思います。
ハローちゃんは今回の便秘解除処置で、溜まっていた便や尿も一挙に出ましたが、表情は爬虫類ですから変わりません。
爬虫類の場合は食欲不振(拒食)にしても便秘にしても、哺乳類の様に表情に現れませんし、むしろ隠す傾向がありますので要注意です。
今年も無事、診察を終えることが出来ました。
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2014年11月13日 木曜日
ヘビ2題(臭腺炎・敗血症)
こんにちは 院長の伊藤です。
ここ2週間ほど多忙につき、ブログの更新が出来ずにいました。
開業して以来、10数年に及びお付き合いさせて頂いてきた患者様が、この2週間のうちに本当に何件も加齢に伴う腎不全や僧房弁閉鎖不全症から来る肺水腫でお亡くなりになりました。
生きている以上、いつかはお別れする時が来るのは必然ですが、それが連日連夜集中するということは医者の身であっても辛いの一言です。
仔犬、仔猫の頃から10数年にわたりお付き合いさせて頂いたペット君達、素敵な思い出を残してくれてありがとうございました。
そして、当院HPの読者の皆様、ブログ更新遅延いたしまして申し訳ありませんでした。
本日は福を呼ぶとのことでヘビについて2題、ご紹介させて頂きます。
まずはボールパイソン・アイリューシ(性別不明、6歳)君です。
ボールパイソンには体表色により各種バリエーションがあります。
その中でもひときわ目立つのがこのブルーアイリューシです。
体色は白、眼がブルーです。
とても神秘的なオーラを放っています。
写真でその魅力を十分伝えられないのが残念です。
このブルーリューシ君は下腹部が発赤しているとのことでの受診です。
上写真尾黄色丸が患部です。
そのすぐ隣が総排泄腔になっており、いわゆる臭腺が炎症を起こし腫れて赤くなっています。
ヘビの臭腺については以前、ブログに載せましたので興味のある方はこちらをご覧ください。
炎症を抑えるため、このブルーリューシ君には抗生剤を処方させて頂きました。
お次は同じくボールパイソン(雄、6歳)です。
実はこのボールパイソン君は皮膚に点状の出血斑が出てきたとのことで受診されました。
下写真は体表部の患部です。
広い範囲にわたる出血斑のため、局所的に物理的な打撲で出血したものではありません。
哺乳類に限らず爬虫類も、ウィルスや細菌感染によって血管・臓器が障害を受けますと点状出血が出現します。
問診では単独飼育であること、他の個体との接触がないことから感染のルートが不明です。
内服では十分な効果が期待できないと判断して抗生剤を注射しました。
1週間ほど抗生剤の注射を継続して経過を診る予定です。
敗血症の場合、細菌が作る毒素によってショック症状に至る場合もありますので注意が必要です。
2匹のボールパイソン君達、早く回復して頂きたいです。
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投稿者 院長 | 記事URL
2014年1月21日 火曜日
ヘビの外傷
ヘビの皮膚は鱗で覆われており、体表部の柔軟性・強靭性を保つことが可能です。
しかし、一旦皮膚が物理的に障害を受けて剥離してしまうと皮下組織の脆弱なヘビは、筋肉がむき出しになり、細菌や真菌の侵入を容易にしてしまいます。
本日ご紹介しますのは、ボールパイソンのボン君(約2歳、性別不明)です。
ボン君は猫に襲われて、爪の攻撃で皮膚が一枚剥がされてしまったとのことで来院されました。
黄色丸の部分が皮膚が剥離して筋肉がむき出しの箇所です。
ボン君は他院からの転院で、既に受傷されてから1週間くらい経過しているとのこと。
患部は化膿したりはしていませんが、乾燥している点が気になります。
患部を外用消毒液できれいに洗浄し、アイプリームや抗生剤軟膏を塗布します。
体表部の乾燥・雑菌感染を防ぐために閉鎖性ドレッシング剤で被覆します。
加えて抗生剤の注射をします。
ドレッシング剤だけですとヘビの動きでは簡単にはがれてしまうため、粘着テープでゆるくテーピングします。
鱗が剥離して皮膚が剥がれる位の障害であれば、脱皮と同じ経緯を辿ります。
床面が不衛生ですとどうしても細菌感染が絡んできます。
ポピドンヨードなどの消毒液を浸漬させたペーパータオルを、ケージの下に敷いてヘビをしばらくその消毒液に漬けておき、その後洗浄、抗生剤軟膏を塗布する方法もあります。
いづれにせよ、1か月位は治療にかかると思って下さい。
ボン君、早く皮膚が再生してくれると良いですね。
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