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ヘビの疾病

2017年8月20日 日曜日

ボールパイソンの卵詰まり

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのはヘビの卵詰まりです。

当院のホームページにも鳥の卵詰まりをご紹介させて頂くことが多いですが、爬虫類にも卵詰まりは起こります。

過去にもカメレオンヒョウモントカゲモドキの卵詰まりを掲載しましたので興味のある方はご覧ください(下線をクリックして下さい)。

いずれにしても、最悪の場合は開腹手術が必要となる場合もあります。


ボールパイソンのかりんちゃん(3歳、雌、体重1.45kg)は3週間ほど前から産卵準備期に入り、3日前に数個の産卵があったとのこと。

その後陣痛が何度かあるものの、産卵には至ってないとのことで来院されました。



総排泄腔(お尻の穴)から10~15㎝上あたり(下写真黄色丸)が腫大しているのがお分かり頂けると思います。







腫大している箇所は卵が存在していると思われます。

早速、レントゲン撮影を実施しました。

レントゲン写真の黄色矢印は卵を示します。

2個卵があるようです。



下写真にありますように総排泄腔のすぐ上に卵は降りてきています。



ヘビの産卵に関わるメカニズムはまだ分からない点が多いとされます。

有精卵の中の胎児が発達して、母体からの酸素の供給が足りなくなった時点で、卵が何らかの化学物質を放出して、母体に合図を送り、産卵が始まるのではないかと考えられてます。

つまり、産卵開始の決定権は胎児にあると推察されています。

ヘビのひと腹で産卵する卵数をクラッチといいます。

ボールパイソンは1クラッチが約4~8個とされます。

1クラッチで卵管内の卵がすべて産卵されているなら良いのですが、卵詰まりが途中で生じて一日以上の間が空くと、卵管内に残っている有精卵は全て死亡するとされています。

今回、かりんちゃんの1クラッチで産卵したのが3日前とすると、すでに残っている2個の卵も死んでる可能性は高いです。

まずは卵詰まりの部位を優しくマッサージして産卵してくれないか、試してみました。

しばらくマッサージを続けていると陣痛が始まりました。



いけるかなと思っていても、すぐに力が尽きて卵は元の位置に戻ってしまいます。



かりんちゃんの何度かの陣痛の波に合わせて、なんとか産卵解除に成功させようとしました。

下写真黄色矢印は卵管から顔を出している卵です。



卵管壁に傷をつけないように綿棒を挿入して卵殻をてこの原理で外へ押し出していきます。





少しづつ卵が全貌を表し始めています。





何とか一個目の解除が完了です。



次に2個目をレントゲンで確認します。



黄色丸は2個目の卵を示します。



かりんちゃんに何とか頑張ってもらい、残りの卵を産卵してもらいます。



1個目に比べ短時間で介助できました。



右が1回目の卵で左が2回目の卵です。

卵殻自体が非常に柔らかく表面が凸凹しています。

一般的にヘビの卵は卵殻が柔らかいです。

今回の卵は皺も多く、変形の傾向もあります。





卵の内容を確認のため開いてみました。



ヘビの卵は鳥の卵の様に卵黄と卵白は分離しておらず混ざり合っています。

発達の初期段階においては、卵のなかは卵黄らしきものでほとんど満たされており、卵を切開しても、透明な液体はほとんど見られません。

卵白がないため液体(卵白)のクッションを介して胚の回転が出来ません。

従って、ヘビの有精卵は産み落とされると卵の上面に胚が形成され、ここで卵の向きを下に変えると胚が呼吸できずに死亡します。

そのため、卵の上面に印をつけて動かすときは元の上面を上にする必要があります。

またヘビやトカゲの卵は卵白を持たないので、水分補給は周囲の土などから水分を吸収して育ちます。

有精卵を孵卵させるためには、卵をタッパーに入れ底面に十分に水を吸ったミズゴケを敷き詰めて、温度・湿度を管理して行います。

鶏の卵の孵化に比べて、非常に煩雑なケアが必要とされます。




薄い卵殻を切開しますと、内容は前述のとおり卵白や卵黄が一緒になった固形の栄養分が認められます。



赤くなっている上面を切開しますと胎児が確認できました。



下写真がヘビの胎児です。

眼が確認できます。



卵の横断面です。

下写真の黄色丸は胎児が存在していた卵の位置です。



2個目の卵の内容です。



1個目の卵の胎児と比べて内容物に埋没して胎児のシルエットも不明瞭です。

胎児は明らかに死亡しています。



かりんちゃんの卵は残念でしたが、卵詰まりはそのままにしておきますと母体の命まで奪います。

有精卵が腐敗すると細菌の毒素が血中に入り、敗血症に至ります。

緊急事態であれば、体側面から針を刺して卵の中身を吸引する方法や開腹して卵管を切開して卵を摘出する方法を選択します。

今回は腹部を温めてマッサージすることで陣痛を促し産卵介助できました。

卵が総排泄腔に近い位置にあったのも良かったと思います。

今後も産卵する機会があるかと思いますので、慎重な対応が必要ですね。

かりんちゃん、お疲れ様でした!







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投稿者 院長 | 記事URL

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