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フクロモモンガの疾病

フクロモモンガの前肢断脚手術


こんにちは 院長の伊藤です。

フクロモモンガは他の動物と比較して、疾病の罹患率は低いと思います。

しかしながら、飼育法や飼育環境が問題となって、自傷行為事故による外傷が多い動物です。


今回、ご紹介しますのは保温のために巣箱に入れておいた毛布の線維が前肢に絡んで起こった悲劇です。

フクロモモンガのパゲロー君(雄、2歳)は右前肢に線維が巻き付いて外れなくて、本人が肢を齧っているとのことで来院されました。

下写真の黄色丸が右前肢の患部です。

ピンク色の線維が絡んでおり、パゲロー君は患部に触れると痛そうで抵抗します。



まずは繊維を外そうとしますが、絡み合って手強いです。

前肢を自咬して皮膚は裂け、筋肉層が露出しています。



繊維を外したあとの前肢は、干からびた小枝の様に指が硬く乾燥しています。

手根関節は既に可動することはできず、杖の様に硬化しています。



詳しく診ますと肘関節から指先にかけて、どす黒く変色があり、既に壊死が起こっています。



選択の余地なく、速やかに断脚手術を施すこととなりました。

全身麻酔を実施します。





患部をしっかり剃毛、消毒します。





犬や猫の場合は前肢断脚の場合は肩甲骨から下を離断することが一般的です。

肩甲骨まで離断すると胸を保護する筋肉層(浅胸筋、深胸筋)も一緒に摘出することになります。

フクロモモンガは垂直方向の動きをしますので、絶えず胸は環境中の障害物などとの干渉が予想されますので、あえて上腕骨近位を離断して筋肉で離断端を包括する方法を選択しました。

生きている組織にメスを入れていきます。



出血量を最小に抑えるため、電気メス(バイポーラ)で止血をまめにしていきます。





上腕骨を残して軟部組織は分割完了です。



骨剪刃で上腕骨を離断します。



離断したところです。特に出血も認めらません。



上腕骨離断面を筋肉で包み込むように縫合します。



筋肉の縫合終了です。



次いで皮下組織と皮膚を別々に縫合します。



パゲロー君の断脚手術は完了です。



あとは患部を自傷しないようカラーをして保護します。

術後に皮下にリンゲル液を輸液します。



パゲロー君の覚醒は速やかで、今のところ患部を自傷する傾向は認められません。



3本の肢でもしっかり、ケージに掴って移動することが出来ます。





冒頭で申し上げましたが、飼育環境の問題(今回は毛布の線維)が原因となって自傷行為による前肢の壊死に至ってます。

過去にもフクロモモンガの自傷行為は症例を載せていますので、興味のある方はこちらを参照下さい。

少なくとも、爪の過長に伴う事故を防ぐために定期的な爪切りはして下さい。

パゲロー君はあと約2週間、このカラー生活が必要です。

くれぐれも患部を自ら傷つけないで頂きたく思います。




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投稿者 院長 | 記事URL

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