アーカイブシリーズ
2024年4月12日 金曜日
排尿障害について
こんにちは 院長の伊藤です。
今回は尿の出が上手く出せない~排尿障害についてお話しします。
まず排尿障害とはですが・・・
決められたトイレの場所でおしっこができなくなった、尿漏れをするようになった、排尿をしようとするけれど出ていない、排尿の回数が増えたといったようなことが挙げられます。
さてこのような症状はどんな疾患に起因するのでしょうか?
いろいろと疾患はありますが・・・
椎間板ヘルニアや骨盤骨折といった排尿障害以外の症状が出るもの(震え、後肢麻痺など)を除けば、まずは尿の状態をみて判断していきます。
その中でやはり診療をしていて多いと感じているものは膀胱炎や尿路結石ですね。
どちらとも血尿や頻回尿、いつものトイレとは違う場所で排尿するといったことで来院されることが多く感じられます。
このふたつは尿の検査で結石であれば幾何学構造の結晶が出て、膀胱炎であれば細菌や膀胱粘膜の細胞や白血球といったものが認められます。
これはシュウ酸カルシウムの結晶体です。
正八面体の構造をしています。
またこの写真(ストラバイト結晶)のように結晶体はガラスの破片のように鋭利で膀胱の粘膜を傷つけるため、二次的に膀胱炎を起こします。
そして、この結晶体が膀胱で結石になると・・・
こちらはシュウ酸カルシウムの結石です。
そして、こちらはストラバイトの結石になります。
この大きさ結石ができている状態であるならば、少なからず尿路に小さな結石が詰まってほとんど尿が出なくなっている状態に近いため、尿毒症になってしまいます。
尿毒症は死に至る状態ですので、こうなる前に排尿時の異常に気が付き、治療をしていくことがとても重要です。
膀胱炎や尿路結石に比べてかなり少なく、滅多にないものにホルモン反応性失禁があります。
こちらは性ホルモンの血液中の濃度の低下によって、活動しているときは問題ないのですが、安静時や睡眠時に失禁してしまうものです。
最後に泌尿器の解剖学的異常ですが、これは先天的ーつまり遺伝的疾患です。
例えば、異所性尿管といった本来ならば腎臓で作られた尿は尿管を通って膀胱に蓄えられて尿道、膣と順に出ていくのですが、腎臓からきた尿管が膀胱に連絡せず、膣に繋がってしまうため、尿失禁が起こってしまいます。
この疾患の好発犬種はありますが、遺伝疾患なので交配の管理がちゃんとなされていれば、そうそう遭遇することはないと思います。
排尿障害に陥ってしまうと一刻を争う、緊急の状態になることもあります。
排尿時の仕草がいつもと違ってつらそうだ、尿に赤くなっている、いつもと違う場所で我慢できずに排尿しているといったことがあるのならば、それらは一つのシグナルですから、病院に診察を受けに行ってください。
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今回は尿の出が上手く出せない~排尿障害についてお話しします。
まず排尿障害とはですが・・・
決められたトイレの場所でおしっこができなくなった、尿漏れをするようになった、排尿をしようとするけれど出ていない、排尿の回数が増えたといったようなことが挙げられます。
さてこのような症状はどんな疾患に起因するのでしょうか?
いろいろと疾患はありますが・・・
椎間板ヘルニアや骨盤骨折といった排尿障害以外の症状が出るもの(震え、後肢麻痺など)を除けば、まずは尿の状態をみて判断していきます。
その中でやはり診療をしていて多いと感じているものは膀胱炎や尿路結石ですね。
どちらとも血尿や頻回尿、いつものトイレとは違う場所で排尿するといったことで来院されることが多く感じられます。
このふたつは尿の検査で結石であれば幾何学構造の結晶が出て、膀胱炎であれば細菌や膀胱粘膜の細胞や白血球といったものが認められます。
これはシュウ酸カルシウムの結晶体です。
正八面体の構造をしています。
またこの写真(ストラバイト結晶)のように結晶体はガラスの破片のように鋭利で膀胱の粘膜を傷つけるため、二次的に膀胱炎を起こします。
そして、この結晶体が膀胱で結石になると・・・
こちらはシュウ酸カルシウムの結石です。
そして、こちらはストラバイトの結石になります。
この大きさ結石ができている状態であるならば、少なからず尿路に小さな結石が詰まってほとんど尿が出なくなっている状態に近いため、尿毒症になってしまいます。
尿毒症は死に至る状態ですので、こうなる前に排尿時の異常に気が付き、治療をしていくことがとても重要です。
膀胱炎や尿路結石に比べてかなり少なく、滅多にないものにホルモン反応性失禁があります。
こちらは性ホルモンの血液中の濃度の低下によって、活動しているときは問題ないのですが、安静時や睡眠時に失禁してしまうものです。
最後に泌尿器の解剖学的異常ですが、これは先天的ーつまり遺伝的疾患です。
例えば、異所性尿管といった本来ならば腎臓で作られた尿は尿管を通って膀胱に蓄えられて尿道、膣と順に出ていくのですが、腎臓からきた尿管が膀胱に連絡せず、膣に繋がってしまうため、尿失禁が起こってしまいます。
この疾患の好発犬種はありますが、遺伝疾患なので交配の管理がちゃんとなされていれば、そうそう遭遇することはないと思います。
排尿障害に陥ってしまうと一刻を争う、緊急の状態になることもあります。
排尿時の仕草がいつもと違ってつらそうだ、尿に赤くなっている、いつもと違う場所で我慢できずに排尿しているといったことがあるのならば、それらは一つのシグナルですから、病院に診察を受けに行ってください。
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投稿者 もねペットクリニック | 記事URL
2024年4月10日 水曜日
犬の尿石症(シュウ酸カルシウム その2)
こんにちは 院長の伊藤です。
本日、ご紹介しますのは犬の尿石症です。
以前にも犬の尿石症(シュウ酸カルシウム尿石症)について報告させて頂きました。
シュウ酸カルシウム尿石症についての概論はそちらを参考にして下さい(左下線をクリック)。
チワワのラル君(4歳5か月齢、去勢済、体重3.6kg)は排尿時の疼痛、血尿が続くとのことで来院されました。
まずはレントゲン撮影を実施しました。
下写真で、膀胱内(黄色丸)に結石が確認されます。
直径が3㎜大の膀胱結石が十数個確認出来ました。
尿検査上、ストルバイト結晶やカルシュウム結晶といった膀胱結石のもとになるような存在は認められませんでした。
ラル君は3年ぐらい前から不定期に排尿の疼痛、頻尿を呈していたとのことです。
今回、この数ミリ単位の尿石を外科的に摘出して、尿石の分析を行い、術後の食餌療法を考慮させて頂くこととしました。
まずはラル君に全身麻酔を施します。
患部を剃毛します。
気管挿管後、ラル君の麻酔はしっかりかかっている状態です。
膀胱を切開し、尿石を摘出しますが、場合によっては膀胱内の尿石が移動して尿道に降りてくる可能性もありますので尿道カテーテルを挿入します。
雄の場合は、ペニスが正中部に存在しますので、ペニスを迂回して皮膚を切開します。
ペニスの傍らに走行している浅後腹壁動静脈を結紮し、周囲組織を剥離していきます。
腹筋を切開します。
蓄尿している膀胱を腹腔外へと牽引します。
膀胱内の圧を下げるために尿を注射器で穿刺吸引します。
次に膀胱に支持糸をかけます。
11番メス刃で膀胱壁を切開します。
切開部を鉗子で広げます。
この段階で膀胱内にいくつかの尿石が存在しているのが、触診で分かります。
鉗子で尿石を1個づつ摘出していきます。
加えて、尿道カテーテルを通して膀胱内へ生食注入します。
これは、すべての結石を残さず摘出するため、尿道付近に移動した結石を膀胱内へ戻す意味もあります。
術前にレントゲン上で確認された尿石の数が全て摘出出来ました。
念のためにレントゲン撮影を実施します。
下写真で膀胱内の結石は全て摘出されたのが分かります。
次いで、膀胱の切開部位を合成吸収糸で縫合します。
ここでしっかり縫合できているか、リーク(漏出)試験を行います。
先に入れてある尿道カテーテルから生食を適量注入して、膀胱を膨らませて、縫合部からの漏れを確認します。
特に患部からの漏れはなく、念のため2重内反縫合(クッシング―レンベルト縫合)を行いました。
これで、膀胱の縫合は終了です。
腹筋、皮下組織、皮膚と縫合を終えました。
麻酔を切り、半覚醒状態のラル君です。
下写真は術後3分のラル君です。
無事、手術は終了しました。
下写真は今回摘出した尿石です。
結石の分析を検査センターに依頼したところ、98%がシュウ酸カルシウムで構成された結石と判明しました。
シュウ酸カルシウム結石については、現在のところ効果的な内科的溶解療法はありません。
従って、外科的(今回のような膀胱切開術)もしくは非外科的(膀胱鏡を挿入して把持鉗子で摘出する)などの方法で対応するしかありません。
実際、今後ラル君の尿石症が再発する恐れもあります。
シュウ酸カルシウムを予防するためには水分摂取量を増やすこと、フロセミド(利尿剤)、ビタミンCやD、尿酸化剤などの投与を避けることが重要です。
それでも再発傾向があるなら、クエン酸カリウム、ビタミンB6やサイアサイド利尿剤(ヒドロクロロチアジド等)を投与して、尿pH を7.0~7.5でシュウ酸カルシウム結晶陰性を目指します。
ストルバイト尿石ならば結石を溶解させる療法食も存在します。
シュウ酸カルシウム尿石の場合は、完成された療法食が存在しないため、定期的な尿検査のモニタリングが必要です。
大変ですが、今後外科的手術は回避するよう頑張りましょう!
ラル君、お疲れ様でした。
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本日、ご紹介しますのは犬の尿石症です。
以前にも犬の尿石症(シュウ酸カルシウム尿石症)について報告させて頂きました。
シュウ酸カルシウム尿石症についての概論はそちらを参考にして下さい(左下線をクリック)。
チワワのラル君(4歳5か月齢、去勢済、体重3.6kg)は排尿時の疼痛、血尿が続くとのことで来院されました。
まずはレントゲン撮影を実施しました。
下写真で、膀胱内(黄色丸)に結石が確認されます。
直径が3㎜大の膀胱結石が十数個確認出来ました。
尿検査上、ストルバイト結晶やカルシュウム結晶といった膀胱結石のもとになるような存在は認められませんでした。
ラル君は3年ぐらい前から不定期に排尿の疼痛、頻尿を呈していたとのことです。
今回、この数ミリ単位の尿石を外科的に摘出して、尿石の分析を行い、術後の食餌療法を考慮させて頂くこととしました。
まずはラル君に全身麻酔を施します。
患部を剃毛します。
気管挿管後、ラル君の麻酔はしっかりかかっている状態です。
膀胱を切開し、尿石を摘出しますが、場合によっては膀胱内の尿石が移動して尿道に降りてくる可能性もありますので尿道カテーテルを挿入します。
雄の場合は、ペニスが正中部に存在しますので、ペニスを迂回して皮膚を切開します。
ペニスの傍らに走行している浅後腹壁動静脈を結紮し、周囲組織を剥離していきます。
腹筋を切開します。
蓄尿している膀胱を腹腔外へと牽引します。
膀胱内の圧を下げるために尿を注射器で穿刺吸引します。
次に膀胱に支持糸をかけます。
11番メス刃で膀胱壁を切開します。
切開部を鉗子で広げます。
この段階で膀胱内にいくつかの尿石が存在しているのが、触診で分かります。
鉗子で尿石を1個づつ摘出していきます。
加えて、尿道カテーテルを通して膀胱内へ生食注入します。
これは、すべての結石を残さず摘出するため、尿道付近に移動した結石を膀胱内へ戻す意味もあります。
術前にレントゲン上で確認された尿石の数が全て摘出出来ました。
念のためにレントゲン撮影を実施します。
下写真で膀胱内の結石は全て摘出されたのが分かります。
次いで、膀胱の切開部位を合成吸収糸で縫合します。
ここでしっかり縫合できているか、リーク(漏出)試験を行います。
先に入れてある尿道カテーテルから生食を適量注入して、膀胱を膨らませて、縫合部からの漏れを確認します。
特に患部からの漏れはなく、念のため2重内反縫合(クッシング―レンベルト縫合)を行いました。
これで、膀胱の縫合は終了です。
腹筋、皮下組織、皮膚と縫合を終えました。
麻酔を切り、半覚醒状態のラル君です。
下写真は術後3分のラル君です。
無事、手術は終了しました。
下写真は今回摘出した尿石です。
結石の分析を検査センターに依頼したところ、98%がシュウ酸カルシウムで構成された結石と判明しました。
シュウ酸カルシウム結石については、現在のところ効果的な内科的溶解療法はありません。
従って、外科的(今回のような膀胱切開術)もしくは非外科的(膀胱鏡を挿入して把持鉗子で摘出する)などの方法で対応するしかありません。
実際、今後ラル君の尿石症が再発する恐れもあります。
シュウ酸カルシウムを予防するためには水分摂取量を増やすこと、フロセミド(利尿剤)、ビタミンCやD、尿酸化剤などの投与を避けることが重要です。
それでも再発傾向があるなら、クエン酸カリウム、ビタミンB6やサイアサイド利尿剤(ヒドロクロロチアジド等)を投与して、尿pH を7.0~7.5でシュウ酸カルシウム結晶陰性を目指します。
ストルバイト尿石ならば結石を溶解させる療法食も存在します。
シュウ酸カルシウム尿石の場合は、完成された療法食が存在しないため、定期的な尿検査のモニタリングが必要です。
大変ですが、今後外科的手術は回避するよう頑張りましょう!
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2024年4月 9日 火曜日
犬の尿石症(シュウ酸カルシウム尿石)
こんにちは 院長の伊藤です。
本日は、犬の尿石症についてコメントさせて頂きます。
以前、リン酸アンモニウムマグネシウム(ストルバイト)尿石について、症例報告しましたのでご興味のある方はこちらを参照下さい。
さて、犬の尿路結石には、ストルバイト、シュウ酸カルシウム、尿酸塩、リン酸カルシウム,シスチンなどがあります。
尿石症は、尿路である腎臓、尿管、膀胱、尿道などに先に挙げた結石が形成されることによる疾患です。
結石の大きさは様々ですが、物理的な刺激により尿路の炎症を起こしたり、尿管や尿道に大きな結石がつまることにより尿が排
出できなくなって、尿毒症や膀胱破裂など重篤な病気に発展する場合があります。
尿石症の好発犬種は存在し、ミニチュア・シュナウザーやシーズー、ダルメシアン、ヨークシャー・テリアなどが挙げられます。
本日ご紹介しますのは、シュウ酸カルシウムの尿石症です。
シーズーのマロン君(12歳4か月、去勢済)は8年ほど前にストルバイト尿石症に罹患しているのが判明しました。
その後、療法食を継続して頂き、尿石症に関する問題は落ち着いているかに見えました。
今回、マロン君は排尿困難でトイレで辛そうにいきんでるとのことで来院されました。
尿石症の確認を含めて、レントゲン撮影を実施しました。
下のレントゲン写真にあるように黄色丸が膀胱石です。
そして尿道内へと降りてきた尿道結石が赤丸で囲んであります。
膀胱内に10個の尿石が認められ、骨盤腔から下に降りてきた尿道に1個尿石が認められます。
膀胱内尿石は直径が4㎜ほどの均一な大きさです。
おそらくマロン君が排尿困難になっているのは、尿道に降りてきた赤丸で囲んである1個の尿道結石が原因と思われます。
実はマロン君は、今回来院のひと月前に後足の跛行で来院されています。
その時撮影したレントゲン写真と比較してみましょう。
下のひと月前の写真では、膀胱内に11個の尿石が認められてます。
つまり、膀胱内尿石11個のうちの1個が、1か月の間に尿道に降り始めてしまったようです。
このひと月前の診察時に、尿石が問題を起こす前に外科的に摘出することをお勧めしてました。
今回は実際、尿道に降りてきた尿石が原因となって排尿障害を起こしていますから、この尿石を含めて11個の尿石を摘出することになりました。
翌日にマロン君の膀胱結石摘出を実施することとし、手術当日に尿道カテーテルを入れてみました。
膀胱まで容易にカテーテルがすんなりと入りました。
下は、その時のレントゲン写真です。
10個の尿石が膀胱内に依然、存在していますが、尿道へ降りていた結石が見当たりません。
どうやら、手術直前に排尿した時に一緒に結石が外に排出されたようです。
尿道内に降りてきて、尿道内閉塞すると尿道結石を解除するのが非常に難しくなります。
この点は不幸中の幸いです。
マロン君に全身麻酔をかけます。
正中切開で開腹します。
雄の場合、陰茎骨が正中部に位置してますので、その脇を切開します。
下写真は腹部から支持糸で牽引した膀胱です。
膀胱内の圧を下げるため、尿を注射器で吸引しましたところ、こげ茶色の血尿が採れました。
膀胱内結石により、膀胱炎が起こり血尿が生じています。
膀胱壁にメスで切開を加えます。
膀胱内部に存在する結石を一つずつ取り出していきます。
麻酔時に入れた尿道カテーテルから生理食塩水をフラッシュして膀胱内の結石を外部へ排出します。
結石を一つずつ確認して摘出します。
摘出した結石10個と小さな破片が摘出されました。
最終的に取り残しの結石は無いか、確認のためにレントゲンを撮りました。
黄色丸の部位は尿道カテーテルが入っている膀胱です。
結石は、膀胱内及び尿道内に存在していないのが確認できました。
切開した膀胱を縫合します。
縫合部から漏れがないか、生理食塩水を注射器より注入して確認します。
特に漏れもないので、膀胱を腹腔内に納め閉腹します。
膀胱に蓄尿による内圧をかけないために尿道カテーテルを留置します。
しばらくはマロン君は尿道カテーテルから排尿して頂きます。
麻酔から覚醒したマロン君です。
術中にサンプリングした尿を顕微鏡で見たところ、シュウ酸カルシウムの1水和物が見つかりました(下写真黄色丸)。
下写真が今回摘出した結石です。
検査センターでどんなタイプの結石か調べてもらったところ、98%以上がシュウ酸カルシウムから構成されている尿石であることが判明しました。
シュウ酸カルシウム結石は、ヒトで良く見られる結石であり、ヒトの尿石の80%近くを占めるそうです。
一方、犬の尿石はアメリカでは80年代はストラバイトが80%でシュウ酸カルシウムは5%であるとの報告があります。
その後、90年代になるとストラバイトが34%、シュウ酸カルシウムが55%と増加傾向をしています。
食生活の変化もあってのことでしょう。
恐らく、日本でもアメリカと同様の傾向があると思われます。
ストラバイトを溶解する療法食の普及が、ストラバイト尿石の基となるマグネシウムの制限に一役買っているのかもしれません。
またシュウ酸カルシウム結石は、ストラバイトの様に療法食で容易に溶解できないため、外科的に摘出するしか摘出する方法がありません。
尿石は前述したようにストラバイトやシュウ酸カルシウムが単独で形成される場合もあれば、両方が混在する混合型も存在します。
マロン君はこの混合型であったようです。
今後は、混合型対応の療法食を継続して頂きます。
入院中も排尿は問題なくできるようになりました。
退院時のマロン君です。
飼い主様とのツーショットを最後に載せさせて頂きます。
マロン君、お疲れ様でした!
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本日は、犬の尿石症についてコメントさせて頂きます。
以前、リン酸アンモニウムマグネシウム(ストルバイト)尿石について、症例報告しましたのでご興味のある方はこちらを参照下さい。
さて、犬の尿路結石には、ストルバイト、シュウ酸カルシウム、尿酸塩、リン酸カルシウム,シスチンなどがあります。
尿石症は、尿路である腎臓、尿管、膀胱、尿道などに先に挙げた結石が形成されることによる疾患です。
結石の大きさは様々ですが、物理的な刺激により尿路の炎症を起こしたり、尿管や尿道に大きな結石がつまることにより尿が排
出できなくなって、尿毒症や膀胱破裂など重篤な病気に発展する場合があります。
尿石症の好発犬種は存在し、ミニチュア・シュナウザーやシーズー、ダルメシアン、ヨークシャー・テリアなどが挙げられます。
本日ご紹介しますのは、シュウ酸カルシウムの尿石症です。
シーズーのマロン君(12歳4か月、去勢済)は8年ほど前にストルバイト尿石症に罹患しているのが判明しました。
その後、療法食を継続して頂き、尿石症に関する問題は落ち着いているかに見えました。
今回、マロン君は排尿困難でトイレで辛そうにいきんでるとのことで来院されました。
尿石症の確認を含めて、レントゲン撮影を実施しました。
下のレントゲン写真にあるように黄色丸が膀胱石です。
そして尿道内へと降りてきた尿道結石が赤丸で囲んであります。
膀胱内に10個の尿石が認められ、骨盤腔から下に降りてきた尿道に1個尿石が認められます。
膀胱内尿石は直径が4㎜ほどの均一な大きさです。
おそらくマロン君が排尿困難になっているのは、尿道に降りてきた赤丸で囲んである1個の尿道結石が原因と思われます。
実はマロン君は、今回来院のひと月前に後足の跛行で来院されています。
その時撮影したレントゲン写真と比較してみましょう。
下のひと月前の写真では、膀胱内に11個の尿石が認められてます。
つまり、膀胱内尿石11個のうちの1個が、1か月の間に尿道に降り始めてしまったようです。
このひと月前の診察時に、尿石が問題を起こす前に外科的に摘出することをお勧めしてました。
今回は実際、尿道に降りてきた尿石が原因となって排尿障害を起こしていますから、この尿石を含めて11個の尿石を摘出することになりました。
翌日にマロン君の膀胱結石摘出を実施することとし、手術当日に尿道カテーテルを入れてみました。
膀胱まで容易にカテーテルがすんなりと入りました。
下は、その時のレントゲン写真です。
10個の尿石が膀胱内に依然、存在していますが、尿道へ降りていた結石が見当たりません。
どうやら、手術直前に排尿した時に一緒に結石が外に排出されたようです。
尿道内に降りてきて、尿道内閉塞すると尿道結石を解除するのが非常に難しくなります。
この点は不幸中の幸いです。
マロン君に全身麻酔をかけます。
正中切開で開腹します。
雄の場合、陰茎骨が正中部に位置してますので、その脇を切開します。
下写真は腹部から支持糸で牽引した膀胱です。
膀胱内の圧を下げるため、尿を注射器で吸引しましたところ、こげ茶色の血尿が採れました。
膀胱内結石により、膀胱炎が起こり血尿が生じています。
膀胱壁にメスで切開を加えます。
膀胱内部に存在する結石を一つずつ取り出していきます。
麻酔時に入れた尿道カテーテルから生理食塩水をフラッシュして膀胱内の結石を外部へ排出します。
結石を一つずつ確認して摘出します。
摘出した結石10個と小さな破片が摘出されました。
最終的に取り残しの結石は無いか、確認のためにレントゲンを撮りました。
黄色丸の部位は尿道カテーテルが入っている膀胱です。
結石は、膀胱内及び尿道内に存在していないのが確認できました。
切開した膀胱を縫合します。
縫合部から漏れがないか、生理食塩水を注射器より注入して確認します。
特に漏れもないので、膀胱を腹腔内に納め閉腹します。
膀胱に蓄尿による内圧をかけないために尿道カテーテルを留置します。
しばらくはマロン君は尿道カテーテルから排尿して頂きます。
麻酔から覚醒したマロン君です。
術中にサンプリングした尿を顕微鏡で見たところ、シュウ酸カルシウムの1水和物が見つかりました(下写真黄色丸)。
下写真が今回摘出した結石です。
検査センターでどんなタイプの結石か調べてもらったところ、98%以上がシュウ酸カルシウムから構成されている尿石であることが判明しました。
シュウ酸カルシウム結石は、ヒトで良く見られる結石であり、ヒトの尿石の80%近くを占めるそうです。
一方、犬の尿石はアメリカでは80年代はストラバイトが80%でシュウ酸カルシウムは5%であるとの報告があります。
その後、90年代になるとストラバイトが34%、シュウ酸カルシウムが55%と増加傾向をしています。
食生活の変化もあってのことでしょう。
恐らく、日本でもアメリカと同様の傾向があると思われます。
ストラバイトを溶解する療法食の普及が、ストラバイト尿石の基となるマグネシウムの制限に一役買っているのかもしれません。
またシュウ酸カルシウム結石は、ストラバイトの様に療法食で容易に溶解できないため、外科的に摘出するしか摘出する方法がありません。
尿石は前述したようにストラバイトやシュウ酸カルシウムが単独で形成される場合もあれば、両方が混在する混合型も存在します。
マロン君はこの混合型であったようです。
今後は、混合型対応の療法食を継続して頂きます。
入院中も排尿は問題なくできるようになりました。
退院時のマロン君です。
飼い主様とのツーショットを最後に載せさせて頂きます。
マロン君、お疲れ様でした!
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2024年4月 7日 日曜日
デグーマウスの低血糖症
こんにちは 院長の伊藤です。
本日ご紹介しますのは、デグーマウスの低血糖です。
低血糖とは、血液中のブドウ糖の値(血糖値)が低下している状態をさします。
この低血糖の状態が続きますと、いろいろな症状が出てきます。
そもそもブドウ糖は生体本能のエネルギー源となりますので、ブドウ糖が少なくなれば正常の細胞反応が行われなくなってしまいます。
具体的には、虚脱状態といって眼は虚ろになって動けなくなり、神経系のエネルギー不足により振戦(体の震え)、てんかん様発作、運動失調が起こります。
デグーマウスのチャーミーちゃんは朝突然、動けなくなり振戦、てんかん様発作を起こして来院されました。
早速、血糖値を簡易型血糖値測定装置で測定しました。
もともと小型げっ歯類で採血量も微々たる量しか採血できませんので、日常使用する生化学自動分析装置では測定不可能です。
デグーマウスの採血は尻尾の尾静脈から行います。
血糖値の測定結果はLoと出ました。
このLo表示は、血糖値が20㎎/dlに満たないことを示します。
デグーマウスの正常血糖値は約70㎎/dlとして、不足分のブドウ糖を補給しなくてはなりません。
20%ブドウ糖シロップを強制的に飲ませます。
加えてショック状態を改善するためにプレドニゾロンを注射します。
ショック状態から低体温になっていますので、インキュベーターに入れて体を温めます。
ここで犬・猫であれば静脈を確保してブドウ糖の点滴を実施するのですが、残念ながらそれは小さなデグーにはできません。
飼い主様にチャ―ミーちゃんの容態が、厳しい状況であることをご理解して頂きました。
それでも、この処置で翌日のチャ―ミーちゃんは、体を少しずつ動かすこともできるようになり、自ら採食できるまでに回復しました。
2日間の入院でチャ―ミーちゃんは元気に退院することが出来ました。
以前、デグーマウスの白内障の記事で、デグーはインシュリンの分泌能・活性能が低くて、体内に入って来た糖を貯蔵すること
が苦手な齧歯類であることをお伝えしました。
つまりは、糖を過剰に摂取しすぎるとすぐに高血糖になり、ひいては糖尿病から白内障になるとの警告をいたしました。
飼い主様はその点を気にされ、非常に粗食な食生活を徹底されていたようです。
過ぎたるは及ばざるがごとし、と言うこともあります。
ある程度はバランスの取れた食生活は大切ですね。
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本日ご紹介しますのは、デグーマウスの低血糖です。
低血糖とは、血液中のブドウ糖の値(血糖値)が低下している状態をさします。
この低血糖の状態が続きますと、いろいろな症状が出てきます。
そもそもブドウ糖は生体本能のエネルギー源となりますので、ブドウ糖が少なくなれば正常の細胞反応が行われなくなってしまいます。
具体的には、虚脱状態といって眼は虚ろになって動けなくなり、神経系のエネルギー不足により振戦(体の震え)、てんかん様発作、運動失調が起こります。
デグーマウスのチャーミーちゃんは朝突然、動けなくなり振戦、てんかん様発作を起こして来院されました。
早速、血糖値を簡易型血糖値測定装置で測定しました。
もともと小型げっ歯類で採血量も微々たる量しか採血できませんので、日常使用する生化学自動分析装置では測定不可能です。
デグーマウスの採血は尻尾の尾静脈から行います。
血糖値の測定結果はLoと出ました。
このLo表示は、血糖値が20㎎/dlに満たないことを示します。
デグーマウスの正常血糖値は約70㎎/dlとして、不足分のブドウ糖を補給しなくてはなりません。
20%ブドウ糖シロップを強制的に飲ませます。
加えてショック状態を改善するためにプレドニゾロンを注射します。
ショック状態から低体温になっていますので、インキュベーターに入れて体を温めます。
ここで犬・猫であれば静脈を確保してブドウ糖の点滴を実施するのですが、残念ながらそれは小さなデグーにはできません。
飼い主様にチャ―ミーちゃんの容態が、厳しい状況であることをご理解して頂きました。
それでも、この処置で翌日のチャ―ミーちゃんは、体を少しずつ動かすこともできるようになり、自ら採食できるまでに回復しました。
2日間の入院でチャ―ミーちゃんは元気に退院することが出来ました。
以前、デグーマウスの白内障の記事で、デグーはインシュリンの分泌能・活性能が低くて、体内に入って来た糖を貯蔵すること
が苦手な齧歯類であることをお伝えしました。
つまりは、糖を過剰に摂取しすぎるとすぐに高血糖になり、ひいては糖尿病から白内障になるとの警告をいたしました。
飼い主様はその点を気にされ、非常に粗食な食生活を徹底されていたようです。
過ぎたるは及ばざるがごとし、と言うこともあります。
ある程度はバランスの取れた食生活は大切ですね。
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投稿者 もねペットクリニック | 記事URL
2024年4月 6日 土曜日
デグーマウスのリンパ腫
こんにちは 院長の伊藤です。
本日ご紹介しますのは、デグーマウスのリンパ腫です。
リンパ腫は血液の腫瘍です。
白血球中のリンパ球がガン化して発症します。
発生する部位はリンパ系組織とリンパ外臓器に分かれます。
リンパ系組織はリンパ節、胸腺、脾臓、扁桃などです。
リンパ外組織は骨髄や肺などの臓器です。
リンパ系の組織は全身に分布していますので、リンパ腫は全身どの部位でも発症する可能性があります。
デグーマウスのたけちゃん(雄、3歳、体重185g)は左の頚部に大きな腫瘤が出来て、頭部の動きもままならないとのことで来院されました。
下写真、赤矢印の部位が問題の腫瘤です。
細胞診を実施しましたが、細菌と炎症系の細胞(白血球やマクロファージ、リンパ球)が大部分を占める構成であり、腫瘍細胞は確認できませんでした。
エキゾチックアニマルの場合、腫瘤の表層部は、自ら掻破したりして細菌感染を起こしている場合が多いため、腫瘍自体が腫瘤の基底部に隠れている場合もあります。
腫瘍が大きすぎるということもあり、首を曲げての摂食も満足に出来ません。
少しでもたけちゃんのストレスを軽くしたいという飼主様の意向です。
結論として、腫瘍を可能なだけでも外科的に摘出するということになりました。
たけちゃんを全身麻酔します。
イソフルランで麻酔導入を行います。
この大きさの腫瘤(下写真黄色丸)になりますと前足で餌を把持することは困難と思われます。
麻酔導入が効いて来たようです。
腫瘤が大きいため、横になっても頭部が持ち上がってしまいます。
イソフルランを維持麻酔に変えて電極版の上にたけちゃんを乗せます。
腫瘍で顔面が隠れてます。
電気メス(モノポーラ)を使用して腫瘤の外周から皮膚を切開して行きます。
続いてバイポーラを使用して皮下組織を止血・切開します。
表層部の腫瘤(下写真黄色矢印)は硬結した脂肪組織のようです。
その下の腫瘤層(下写真白矢印)は血管に富んだ脆弱な組織です。
この脆弱な腫瘤の裏側には太い動脈が走行していましたので、バイクランプでシーリングします。
さらに続いて、バイポーラで切除を続けます。
切除出来る範囲の腫瘤を摘出完了しました。
すぐ下には頸静脈が走行しています。
思いのほか、根深い腫瘤でしたので広範囲の皮膚を切除することとなりました。
そのため、皮膚縫合のための縫い代を十分に取るため、皮膚と皮下組織の間を外科剪刃で鈍性に剥離していきます。
耳根部にまで切除域が及んでいます。
5-0ナイロン糸で皮膚を縫合します。
縫合部の緊張が高いと皮膚が簡単に裂けてしまうため、かなり細かく縫合します。
皮膚縫合は終了です。
麻酔から覚醒直後のたけちゃんです。
縫合部の血行障害もなさそうです。
摘出した腫瘤です。
直径5㎝ほどありました。
下写真は腫瘤の表層部です。
腫瘤の裏側から見た写真です。
病理検査に出した結果、大細胞型リンパ腫との診断でした。
高倍率の写真です。
独立円形細胞腫瘍が認められます。
核仁が明瞭で、核の大小不同を示しています。
核の分裂が非常に活発で増殖活性の高い腫瘍であるため、摘出した患部の局所再発は免れないであろうとの病理医からのコメントを頂きました。
加えて、体腔内臓器への腫瘍の波及も考慮する必要があります。
たけちゃんの術後経過は患部の疼痛のためか、食欲不振が認められました。
縫合部が広範囲にわたってるため、縫合糸で口が引っ張られて、左側の開口運動がしづらそうです。
大きな腫瘍を摘出できたので、四肢の動きは円滑に出来るようになりました。
残念ながら、術後4日目にして、たけちゃんは逝去されました。
リンパ腫ですから体腔内に腫瘍の転移もあったでしょうし、手術前までギリギリのところで頑張っていたのだと思います。
今回はリンパ腫という全身性の腫瘍ですから、外科的な皮膚腫瘍摘出で全ての治療が終了とはいきません。
おそらく、たけちゃんの術後経過が良好でも、化学療法が必要となったと思われます。
とにかく小さくても腫瘍の可能性を感じられたら、病院を受診して下さい。
小さなエキゾッチクアニマルであるほどに、早めの対処をすべきだと思います。
何しろ、犬の体表面積の何十分の1という小さな動物達です。
外科的摘出で解決できる腫瘍であれば、腫瘍の種類によりますが完治の可能性はあります。
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本日ご紹介しますのは、デグーマウスのリンパ腫です。
リンパ腫は血液の腫瘍です。
白血球中のリンパ球がガン化して発症します。
発生する部位はリンパ系組織とリンパ外臓器に分かれます。
リンパ系組織はリンパ節、胸腺、脾臓、扁桃などです。
リンパ外組織は骨髄や肺などの臓器です。
リンパ系の組織は全身に分布していますので、リンパ腫は全身どの部位でも発症する可能性があります。
デグーマウスのたけちゃん(雄、3歳、体重185g)は左の頚部に大きな腫瘤が出来て、頭部の動きもままならないとのことで来院されました。
下写真、赤矢印の部位が問題の腫瘤です。
細胞診を実施しましたが、細菌と炎症系の細胞(白血球やマクロファージ、リンパ球)が大部分を占める構成であり、腫瘍細胞は確認できませんでした。
エキゾチックアニマルの場合、腫瘤の表層部は、自ら掻破したりして細菌感染を起こしている場合が多いため、腫瘍自体が腫瘤の基底部に隠れている場合もあります。
腫瘍が大きすぎるということもあり、首を曲げての摂食も満足に出来ません。
少しでもたけちゃんのストレスを軽くしたいという飼主様の意向です。
結論として、腫瘍を可能なだけでも外科的に摘出するということになりました。
たけちゃんを全身麻酔します。
イソフルランで麻酔導入を行います。
この大きさの腫瘤(下写真黄色丸)になりますと前足で餌を把持することは困難と思われます。
麻酔導入が効いて来たようです。
腫瘤が大きいため、横になっても頭部が持ち上がってしまいます。
イソフルランを維持麻酔に変えて電極版の上にたけちゃんを乗せます。
腫瘍で顔面が隠れてます。
電気メス(モノポーラ)を使用して腫瘤の外周から皮膚を切開して行きます。
続いてバイポーラを使用して皮下組織を止血・切開します。
表層部の腫瘤(下写真黄色矢印)は硬結した脂肪組織のようです。
その下の腫瘤層(下写真白矢印)は血管に富んだ脆弱な組織です。
この脆弱な腫瘤の裏側には太い動脈が走行していましたので、バイクランプでシーリングします。
さらに続いて、バイポーラで切除を続けます。
切除出来る範囲の腫瘤を摘出完了しました。
すぐ下には頸静脈が走行しています。
思いのほか、根深い腫瘤でしたので広範囲の皮膚を切除することとなりました。
そのため、皮膚縫合のための縫い代を十分に取るため、皮膚と皮下組織の間を外科剪刃で鈍性に剥離していきます。
耳根部にまで切除域が及んでいます。
5-0ナイロン糸で皮膚を縫合します。
縫合部の緊張が高いと皮膚が簡単に裂けてしまうため、かなり細かく縫合します。
皮膚縫合は終了です。
麻酔から覚醒直後のたけちゃんです。
縫合部の血行障害もなさそうです。
摘出した腫瘤です。
直径5㎝ほどありました。
下写真は腫瘤の表層部です。
腫瘤の裏側から見た写真です。
病理検査に出した結果、大細胞型リンパ腫との診断でした。
高倍率の写真です。
独立円形細胞腫瘍が認められます。
核仁が明瞭で、核の大小不同を示しています。
核の分裂が非常に活発で増殖活性の高い腫瘍であるため、摘出した患部の局所再発は免れないであろうとの病理医からのコメントを頂きました。
加えて、体腔内臓器への腫瘍の波及も考慮する必要があります。
たけちゃんの術後経過は患部の疼痛のためか、食欲不振が認められました。
縫合部が広範囲にわたってるため、縫合糸で口が引っ張られて、左側の開口運動がしづらそうです。
大きな腫瘍を摘出できたので、四肢の動きは円滑に出来るようになりました。
残念ながら、術後4日目にして、たけちゃんは逝去されました。
リンパ腫ですから体腔内に腫瘍の転移もあったでしょうし、手術前までギリギリのところで頑張っていたのだと思います。
今回はリンパ腫という全身性の腫瘍ですから、外科的な皮膚腫瘍摘出で全ての治療が終了とはいきません。
おそらく、たけちゃんの術後経過が良好でも、化学療法が必要となったと思われます。
とにかく小さくても腫瘍の可能性を感じられたら、病院を受診して下さい。
小さなエキゾッチクアニマルであるほどに、早めの対処をすべきだと思います。
何しろ、犬の体表面積の何十分の1という小さな動物達です。
外科的摘出で解決できる腫瘍であれば、腫瘍の種類によりますが完治の可能性はあります。
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