アーカイブシリーズ

2024年4月30日 火曜日

ウサギの子宮腺癌・子宮水腫(その3)

こんにちは 院長の伊藤です。


ウサギは繁殖に特化した動物です。

自然界では肉食獣に捕食される立場にありますから、種の保存のためにも繁殖能力は秀でている必要があるわけです。

野生のウサギは年間5~6回出産するとされます。

一方、家庭でペットとして飼育されている妊娠させないウサギの子宮は1年中、過剰量の女性ホルモン(エストロジェン)に暴露されます。

ウサギの子宮疾患が多発する原因は上記の点にあります。

以前、ウサギの子宮腺癌ウサギの子宮腺癌(その2)にもその詳細を記載しました。

興味のある方は上記下線部をクリックして下さい。



前置きが長くなりました。

本日ご紹介しますのは、ウサギの子宮腺癌の第3弾です。

今回は子宮水腫も伴う症例です。

ロップイヤーのタックちゃん(6歳10か月齢、雌)はわずかながら陰部からの出血がしばらく続くとのことで来院されました。



タックちゃんの年齢から推察すると、子宮疾患を持っている可能性は高いように思われました。

飼い主様が避妊手術を希望されたこともあり、またタックちゃんの全身状態も良好なため一般の避妊手術としてお受けすることになりました。

手術を受けて頂くためには、犬猫以上にデリケートな動物なので入念な準備が必要です。

換気不全に陥らないようにICUの部屋(下写真)で高濃度の酸素を吸入させ、肺を酸素化します。



もし手術中に呼吸停止したとしても、わずか1~2分でもこの酸素化処置が効果を示し、緊急処置に対応できる場合があります。

次に血液検査を実施して、全身麻酔に耐えられるかチェックします。



次に前足の橈側皮静脈に点滴のラインを確保するため、留置針を入れます。



麻酔導入薬を投与した後、ガス麻酔でしっかり寝ていただきます。



これから手術に移ります。





腹部正中線に沿ってメスを入れます。



腹筋を切開したところで、腫大した子宮が外に出て来ました。

下写真黄色丸が子宮腺癌と思われる箇所で、黄色矢印は子宮水腫です。



子宮全体を入念に観察して、この部位以外に腫瘍と思しきものはないことを確認します。

卵巣動静脈をバイクランプでシーリングします。



7歳近くなると腹腔内も内臓脂肪も多くなり、脂肪組織内に潜んでいる血管を傷つけないよう卵巣と子宮の摘出を進めていきます。





最後に子宮頚部を離断します。



摘出した子宮です。



子宮腺癌と思われる部位を切開した断面です。



この断面をスタンプ染色した結果が下写真です。

炎症細胞と腫瘍細胞が認められます。



水腫の箇所を切開しました。

下写真にありますように子宮粘膜が炎症を起こし、一部出血・腐敗が始まっています。

これらの箇所から持続的にタックちゃんは出血があったものと思われます。



特に出血もなく無事卵巣・子宮を摘出し、閉腹します。

ウサギは術後、患部を齧ることが多いためステープルで縫合することが多いです。



縫合後の患部です。



手術直後のタックちゃんです。



ウサギの場合、術後にチモシー(乾草)を食べてくれるか否かで予後が分かります。

タックちゃんは術後しばらくしてチモシーを採食し始めました。

ウサギの手術後でホッとする瞬間です。

翌日のタックちゃんです。



水も飲み、ICU内で動き回れるようになっています。

無事タックちゃんは、元気に退院となりました。


4歳以降の未避妊雌の陰部出血は子宮疾患の可能性が高いとされます。

先に述べたとおり、ホルモンバランスの問題を雌ウサギは抱えています。

毎回、同じことを書いていますが、1歳になるまでに避妊手術を受けられることをお勧めします。

タックちゃんのように、子宮腺癌がまだ子宮全体に広がる前であれば予後良好ですが、子宮腺癌の末期ステージでは肺にも癌が転移するケースも多く、術後の生存率は低くなります。

雌ウサギを雄同様に長生きさせるためにも、避妊手術の必要性を感じます。





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2024年4月28日 日曜日

ウサギの子宮腺癌(その2)

こんにちは 院長の伊藤です。


ウサギの子宮疾患は色々な症状を示します。

発病初期は陰部からの出血例が70%位を示すと言われています。

来院される時は多くの飼主様が血尿が出ると申告されるケースが多いです。

血尿というとどうしても膀胱炎や尿石症をイメージしてしまいますが、4歳以降の雌ウサギであればむしろ子宮疾患を疑って欲しいと思います。

本日ご紹介するのは、ライオンラビットのらんちゃんです。

らんちゃんは数週間前から、血尿が出ているとのことで来院されました。



尿検査では潜血反応は陰性でした。

膀胱を早速エコー検査したところ、特に結石もなく出血の形跡もありません。

むしろ5歳を過ぎた雌と言いうことで、子宮疾患を疑って子宮を入念に検査しました。

結果は下の通りです。

黄色丸で示した部分が子宮の断面を描出しています。

子宮角に実質性の腫瘤があるようです。



腫瘍の可能性が大とみて手術に移ります。





黄色矢印の部分は子宮角にあたりますが、ここに非常に硬い結節が認められました。





卵巣動静脈をバイクランプでシールします。

ついで子宮頚部をシールしてメスでカットします。





子宮頚部の切断面をしっかり縫合します。





手術は無事終了しました。

摘出した卵巣と子宮が下の写真です。



緑の矢印が卵巣で黄色丸が子宮角のうち腫瘤を呈した部分です。摘出子宮全体がどす黒い色をしています。

この腫瘤をカットした写真です。



この部位をスタンプ染色しました。





結局、子宮内膜の過形成と子宮腺腫癌であることが判明しました。

らんちゃんの術後の経過は良好で、血尿も止まり食欲も回復しました。

退院当日のらんちゃんです。





毎回申し上げていますが、4,5歳以降になると子宮疾患のウサギが増えます。

犬猫と同様、できる限り早い年齢(1歳未満くらい)で避妊手術を受けられることをお勧めいたします。




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2024年4月27日 土曜日

ウサギの子宮腺癌

こんにちは 院長の伊藤です。


ウサギは繁殖力に特化した動物です。

そして、多くの避妊していないウサギは平均4歳以降に子宮疾患を起こします。

その理由は、死ぬまで発情期が続くため、子宮が長期間にわたりエストロジェンに暴露されます。

その結果として、卵巣・子宮の疾病を引き起こします。


今回、ご紹介するのはホーランドロップのクルミちゃん(8歳4か月)です。

最近、食欲不振・尿量低下で来院されました。



尿検査をしたところ、潜血反応陽性で、顕微鏡下での赤血球を確認しました。

高齢でもあり、血尿がからんでくると子宮疾患の可能性が高くなります。

レントゲン写真でも下腹部に腫瘤(マス)の存在を認めます。

幸い胸部の腫瘍は認められませんでした。




腹部の膨満が著しいため、急遽、卵巣子宮摘出を前提とした試験的開腹手術を実施することとしました。



仰向けの姿勢で既に下腹部が膨隆しているのがお分かりいただけると思います。



早速メスを入れたところ、腹膜下より子宮とおぼしき組織が出てきました。



慎重に内容を外に出します。



卵巣から子宮角、子宮間膜、子宮頚部へと大きな腫瘍が形成されています。



これだけ腫瘍が広い範囲に及んでおり、出血量も多いと見込まれましたのでバイクランプによる止血を実施しました。









これだけ大きな腫瘍ですから、手術も長時間にわたる覚悟でいましたが、バイクランプによる迅速な止血でわずか30分ほどで終了しました。



腫瘍摘出後の腹腔内出血もなく、実にすっきりした感があります。








皮膚縫合を終え、麻酔の覚醒を待ちます。







無事、麻酔から覚醒したところです。

クルミちゃん、よく頑張ってくれました!

ウサギは犬猫の比べて組織自体が脆弱で取り扱いは細心の注意を要しますが、それ以上に麻酔の管理が大変です。

ですから、麻酔から確実に覚醒してくれた時が一番嬉しいです。

摘出した腫瘍は400gありました。ちなみにクルミちゃんの体重は1700gでした。




手術は成功したのですが、術後3日目にクルミちゃんは急逝されました。

原因はいろいろ考えられますが、体の4分の1にあたる腫瘍が循環血流量及び栄養分の多くを吸収していたはずですから、摘出後の循環血流量の低下に伴うショックが生じたと思われます。

犬のように輸血自体ができない動物なので、限界を感じます。

ただこの文章をご覧になっていただいてる皆様に申し上げたいのは、雌のウサギの子宮疾患発生率は犬よりも高く、予防するための唯一の手段は避妊手術しかありません。

可能な限り、若い1歳未満の時期に避妊手術をお受けいただくことを強くお勧めいたします。

 
 
合掌
 
 
 
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2024年4月26日 金曜日

ヨツユビハリネズミの肥満細胞腫(その3)

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは、ヨツユビハリネズミの肥満細胞腫です。

3年前と4年前に1例ずつ症例をご紹介させて頂いておりますが、いまだヨツユビハリネズミの肥満細胞腫は詳細が解明されていない腫瘍です。

過去の記事のリンクをこちらに載せておきますので、興味のある方はクリックして下さい。

ヨツユビハリネズミの肥満細胞腫、 ヨツユビハリネズミの肥満細胞腫(その2)




ヨツユビハリネズミのまろん君(6歳4か月齢、体重370g)は右前肢から腋下部にかけて腫瘤が発生し、次第に増大傾向を示すとのことで来院されました。

まろん君は高齢であり、また腫瘍が思いのほか大きいため、外科的に摘出は困難とのことで、他院からの紹介でした。

下写真の黄色丸がまろん君の腫瘤です。





体を丸めると腫瘤のため、前肢は格納することが出来ず、また自らの針で前肢を傷つけてしまいます。

細胞診で肥満細胞腫の疑いもあり、かつ飼主様のまろん君の生活の質(QOL)を改善することを強く望まれましたので、外科手術を実施することとなりました。




まろん君をイオフルランで麻酔導入します。



5分くらいで麻酔導入は完了しました。



麻酔導入箱から出たばかりのまろん君ですが、患部腫瘤は右肘から腋下部にまで及んでいます。



患部腫瘤は既に自壊しています。



自壊した患部内は細菌感染も併発しており、蓄膿が確認出来ます。



維持麻酔に切り替えたまろん君です。

生体情報モニターのための電極を装着しています。



患部を剃毛・消毒します。



確実に腫瘍を摘出できるかという点と腫瘍の取り残しがあれば、術後の再発を考慮しなければなりません。

断脚は確実な腫瘍を排除する手術法ですが、飼主様の意向は前肢は温存したいとのことです。

体重は400gを切る小さな体ですから、犬猫のように体腔内への腫瘍の転移・浸潤は詳細に把握できません。

体表リンパ節の腫脹はありませんでした。



可能な限り腫瘍を摘出し、皮膚を如何に形成外科的に復元できるかが問題です。

皮膚をモノポーラで慎重に切開して行きます。



腫瘍は筋肉層まで固着しておらず、バイポーラでスムーズに焼烙・剥離出来ました。















腫瘍の摘出が完了したところです。



ただ皮膚との固着が強く、マージンを出来る限り、腫瘍と共に切除しましたので、広範囲の皮膚欠損を伴う結果となりました。



腫瘍摘出よりも皮膚形成が今回の課題です。

出来る限り、皮膚を筋肉層と鈍性に剥離して、皮膚が縫合時に伸展出来る様にします。





5-0のナイロン糸を用いて皮膚縫合を実施します。





下写真の黄色矢印は、既に縫合するべき皮膚が確保できなくて、欠損したままの状態で開放創として創傷管理していくこととしました。



開放創の部位には肉芽組織の造生を促すためにイサロパン®をつけます。



創傷管理のため、ドレッシング用のスポンジを貼付します。



血行障害を起こさないように緩めにテーピングをします。



これで手術は終了となります。





麻酔を切り、覚醒し始めたまろん君です。

皮下にリンゲル液を輸液します。



爪を切ってます。



まろん君は、高齢ですが、頑張って麻酔にも耐えてくれました。

開放創の創傷管理が重要となります。





摘出した腫瘍です。

全長は3㎝ほどあります。



自壊していた体表(表側)の腫瘍です。



腫瘍の裏側(筋肉層側)です。



検査センターで病理検査を依頼しました。

下写真は高倍率像です。

中等度に異型性を示す類円形・紡錘形細胞(腫瘍細胞)から腫瘤は形成されています。

腫瘍細胞間には好酸球が浸潤しています。



さらに油浸レンズによる高倍率の病理像です。

細胞質に豊富な顆粒を持つ肥満細胞(下写真黄色丸)が認められます。



病理学的検査結果は低分化度の肥満細胞腫でした。

近傍リンパ節や遠隔臓器への転移を経過観察していく必要があります。

まろん君の術後の経過は良好です。





術後3週目に抜糸のため、来院されたまろん君です。

軽い鎮静をかけて抜糸しました。



縫合した皮膚は良好に癒合し、開放創にした部位も肉芽組織がシートして皮膚に分化していました。

ひとまず、手術は無事終了出来て良かったです。



犬の肥満細胞腫のように遺伝子の変異型(c-KIT遺伝子検査)の存在や分子標的薬(イマチニブやトセラニブ)の効果の有無など不明な点がまだ多いとされています。

腫瘍が非常に多いヨツユビハリネズミにおいても、肥満細胞腫はまだ発症例も散発的であり、日本国内においても、日常的な遭遇率は低いと思われます。

今後も臨床の現場から飼主の皆様に情報を発信できればと思います。



まろん君、お疲れ様でした。








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2024年4月24日 水曜日

ヨツユビハリネズミの肥満細胞腫(その2)

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは、ヨツユビハリネズミの肥満細胞腫です。

この肥満細胞腫は以前にもご報告させて頂きました(頭部に生じた皮膚型肥満細胞腫)。

詳細について興味のある方はこちらをクリックして下さい。


肥満細胞腫はイヌにおいては皮膚腫瘍の中で最も発生頻度が高いとされています。

ハリネズミについてはまだその詳細は解明されていません。

肥満細胞は体の中でアレルギー反応や炎症過程に不可欠な役割を果たしています。

免疫グロブリン(IgE抗体)が肥満細胞表面に結合すると、肥満細胞はヒスタミンやヘパリンを局所及び循環血中に放出し、アレルギー反応を引き起こします。

このヒスタミンは好酸球を引き寄せる特徴があり、またこの好酸球はヒスタミンを中和します。

そんな肥満細胞が腫瘍を惹起させたのが肥満細胞腫で、悪性腫瘍です。



ヨツユビハリネズミの吉田大福君(雄 4歳11か月齢)は左腋部に大きな腫瘤が出来たとのことで来院されました。

下写真の黄色丸がその腫瘤を示します。

腫瘤の皮膚表面は床面との干渉で裂けて痂皮が形成されています。



かなり大きな腫瘤ですが、見る限り腫瘍の可能性が大きいと思われました。



早速、細胞診をしてみましたが、紡錘形細胞が大量に認められ、軟部組織肉腫が疑われました。

飼い主様の了解を得て、腫瘍の外科的摘出を実施することとしました。

麻酔導入箱に吉田大福君を入れます。





イソフルランは効いて来たようで吉田大福君は寝てます。



導入箱から出てもらい、維持麻酔をします。



患部周辺は滲出液で汚染されていますので、消毒洗浄をします。



患部にメジャーをあててみました。



長軸方向だけでも40㎜を超える大きさがあります。



側面からのアングルですが、うっ血色を呈しており、触診では皮下脂肪の中を背側面まで浸潤しているように思われました。



生体情報モニターにセンサーをつなげていよいよ手術を行います。







腫瘍を囲い込むように船形に皮膚切開を施します。



電気メス(バイポーラ)を使用して、止血しながら慎重に組織を分離していきます。



腫瘍の至るところに太めの栄養血管が分布してます。



血管を傷つけないように滅菌綿棒を使って、ゆっくり腫瘍を健常組織から剥がします。



なるべく麻酔時間を短縮したいので、太い栄養血管の縫合糸による結紮は避けて、バイクランプでシーリングして血管を離断します。



バイクランプとバイポーラの併用で何とか、出血も回避できそうです。





一先ず、これで手術は終了かと思われたのですが。



かなり大きな腫瘍でしたが、その真下に新たに腫瘤が控えていました(下写真黄色丸)。



当初、私はこれは腋下のリンパ節かと思っていたのですが、病理検査にこの組織を出してみて新たな発見が得られました。

取り敢えず、リンパ節であれ廓清のためにも、この組織を摘出することとしました。



どちらかと言うと周りの組織から単離した感のある組織でした。



バイポーラで摘出したところです(下写真黄色丸)。



摘出した部位は皮下組織内も筋肉組織にも腫瘍を思わせる組織はありません。

出血も最小限で抑えることが出来ました。



最後に皮膚縫合を5-0ナイロン糸で縫合します。





これで吉田大福君の手術は終了です。





皮下輸液(乳酸リンゲル液)を実施してます。





麻酔から覚醒し始めた吉田大福君です。



術後1時間立たないうちにフードを食べ始めています。



摘出した皮膚表層部から背側面の筋肉層まで伸びていた腫瘍です。

吉田大福君の300gの体重からすれば、巨大な腫瘍です。





下写真は上の巨大な腫瘍の真下に存在していた組織です。



二つの腫瘤を並べてみました。



大きな腫瘍は重さが27gありました。

吉田大福君の体重の約1割にあたります。

50㎏の体重の大人なら5kgに匹敵する腫瘍です。



手術2日後の吉田大福君です。

退院直前の写真です。





食欲もしっかりあり、元気に退院して頂きました。



さて、摘出した腫瘍のうち、大きな方の病理写真です(中拡大像)。



下はその高倍率像です。

多形性・異型性に富む腫瘍細胞(紡錘形、多角形、類円形)のシート状・錯綜状・束状増殖が特徴です。

これらの腫瘍細胞は、分化度が低く起源が特定できない高悪性度肉腫との病理医からの判定でした。



続いて、私がリンパ節と思い込んでいた組織の病理写真です(中拡大像)。



下写真はその高倍率像です。



多形性のある円形・類円形細胞のシート状増殖によって特徴づけられます。

腫瘍細胞の周囲には多数の好酸球が認められます。

特殊染色(トルイジンブルー染色)等でさらに厳密な判定をしていただいた結果、肥満細胞腫であることが判明しました。

巨大な腫瘍とこの肥満細胞腫との関連は不明です。

全く、タイプの異なる腫瘍が混在していたのかもしれません。

いづれにせよ、ハリネズミは腫瘍が多い動物種であると感じます。



最近の当院では、ハリネズミの手術は9割近くが腫瘍の摘出になってます。

子宮の腫瘍が一番多いですが、皮膚の腫瘍も次いで増加傾向にあります。

今回の様に巨大でも皮下脂肪に留まる腫瘍は、比較的安全に摘出が可能です。

しかしながら、筋肉層や腹腔内、口腔内、食道・気管内に及ぶ腫瘍は摘出は困難です。

何しろ、体重が300~400gの動物ですから限界があります。

それでも、摘出を希望して当院を受診される飼主様もお見えです。

出来る限り、ご要望に応えられるように、今後も最善を尽くしたいと思います。




下写真は、抜糸のため来院された吉田大福君です。

傷口も綺麗に治り、体のラインもスリムに見えます。

今後は、再発や転移がないか、経過観察が必要です。






吉田大福君、お疲れ様でした!







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