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2024年4月20日 土曜日

チンチラの食滞

こんにちは 院長の伊藤です。

チンチラはモルモットと同じく完全草食動物です。

その寿命は10~15年とも言われ、エキゾチックアニマルの中では際立って長寿な齧歯類です。

そんなチンチラですが、バランスを欠いた食餌内容の不備から消化器疾患が多発する傾向があります。

胃から腸までの消化管の長さは全長2.5mから3.5mあるとされ、一旦消化器疾患に陥ると腸管蠕動停止に始まり、食欲不振から死の転帰をたどるケースもあります。


本日ご紹介するのは、チンチラのシノちゃん(6歳7か月、雌)です。

突然の頻発する嘔吐から食欲不振でぐったりしているとのことで来院されました。



以前からシノちゃんはカーペットの線維をかじる傾向があり、異物誤飲の可能性もあるかもしれないとのことでした。

もともとウサギと同様、モルモット、チンチラは嘔吐をすることができない解剖学的構造をしていると言われます。

それでも胃の疾患が高度に進行すると、餌を食べた直後に吐き戻しをする症状は何例か私自身診たことがあります。

まず、レントゲン撮影を実施しました。





黄色丸に示した胃に内容物とガスが貯留しているのがお分かり頂けると思います。

加えて盲腸部にもガスが貯留しています。

強制給餌をしても口から流動食を吐き戻すとのことで、シノちゃんも軽度のショック状態になっています。

腸蠕動亢進薬や消泡薬を投薬して経過をみるという内科的アプローチではこの局面を打開できないと判断しました。

胃を切開し、胃内容物を摘出して胃を一旦洗浄することとしました。

シノちゃんに全身麻酔をかけます。







皮膚・腹筋を切開したところ、いきなり胃が飛び出してきました。

胃内容物が溜まっているのが分かります。



胃を切開します。



胃内には毛球、未消化の線維(カーペット)やドライフルーツ等、様々な内容物が入っています。



鉗子で取り除いた胃内容の一部です。



上手く取れない内容物は生理食塩水で胃内洗浄して吸引器(下写真)で吸引しました。



切開した胃を縫合します。



腹膜・腹筋を縫合します。



齧歯類は術後患部を齧る傾向にありますので、咬めないようにステープラーで縫合します。



手術当日は、沈痛な表情のシノちゃんでしたが、翌日になると食餌にも関心が出て来ました。

青汁を少し飲んだりできるようになりました。



さらに術後3日目です。

インキュベーター内で入院してもらっていますが、窓からかを出して脱出を試みようとします。





術後5日です。

既にインキュベータ内を駆け回れるくらいに回復してきました。



術後6日目です。

食欲もかなり出て来ました。

ペレットもチモシーもいい感じで食べてくれます。




チンチラはウサギと比較しても非常にデリケートな印象があります。

今回は食餌の内容物が胃内で停留して、いわゆる食滞という症状を示していました。

胃および盲腸内にもガスが貯留していましたが、シノちゃんはおそらく食滞による疼痛で食欲不振であったと思われます。

食滞に至る原因は様々です。

低線維、高蛋白・高脂肪食、異物の摂取、ストレス等が引き金になって胃腸の蠕動が抑制されます。

口に餌が入った端から、嘔吐するくらいですから胃内は未消化の内容物で一杯であったと思われます。

このまま内科的治療にこだわっていたら、高度の衰弱・ショック状態から脱却できずにいたことでしょう。

外科的に胃切開を実施するか、内科的治療を継続するかの判断が、齧歯類の食滞治療には要求されます。

判断ミスが無いように注意深い診断が要求されますので、毎回苦悩すること頻りです。



術後7日で退院当日のシノちゃんです。

元気に退院できて良かったです!





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2024年4月19日 金曜日

チンチラの子宮蓄膿症

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは、チンチラの子宮蓄膿症です。

犬ではお馴染みの子宮蓄膿症ですが、私的にはチンチラの子宮蓄膿症は珍しいです。

一般にチンチラは齧歯類であることから、歯科疾患と消化器系疾患が圧倒的に多いです。


チンチラのナナちゃん(雌、5歳4か月、体重400g)は外陰部からおりものが出るとのことで来院されました。

受診時は既に外陰部をおそらく自身で舐めており、確認は出来ませんでした。



食欲がかなり落ちているとのことで早速、エコーで子宮を確認してみました。

下写真の黄色矢印は、子宮内部の低エコーから無エコー部を示しています。

これは子宮内に液体が貯留していることを示します。



子宮自体が何層にも折り重なる状態で描出されています。

何らかの液体が貯留して子宮が大きく腫大している点で子宮蓄膿症を疑います。

犬の子宮蓄膿症で度々申し上げていますが、子宮蓄膿症は全身感染症です。

緊急の疾患であり、全身状態が良ければ早急に卵巣子宮の全摘出が必要です。

飼い主様のご了解を頂き、早速全身麻酔下で卵巣・子宮全摘出手術を実施することとしました。

まずは麻酔導入を行います。





麻酔導入出来ましたので、導入箱から出て頂きマスクで維持麻酔を行います。







チンチラは体毛が密集していますので、実際の骨格は見た目よりも華奢です。

ナナちゃんは体重が400gですから、1歳のハリネズミとほぼ同じくらいでしょうか。



腹部に正中切開を入れます。





腹部を切開すると真下に腫大した子宮が認められます。



慎重に子宮を外に出します。



若干、黄色を帯びた子宮(黄色矢印)です。





子宮間膜の血管は充血怒張しています。



実際、私が手術している模様です。

腹腔内は非常に狭いため、傍から見ると何をやっているか分からないくらい細かな作業になります。



卵巣周辺の血管をバイクランプという器具でシーリングしています。



左右の子宮角です。

子宮角及び子宮頚部が腫大しており、健常なチンチラの子宮と比較して数倍大きくなってます。



子宮頚部を縫合糸で結紮しています。





腹腔内に臓器を収めて、出血がないことを確認し閉腹します。





これで手術は終了です。



手術終了時に外陰部から膿が出ているのを認めました。



ナナチャンは麻酔の覚醒も速やかです。





手術翌日のナナちゃんです。

患部を齧らないようにエリザベスカラーを付けたいところですが、齧歯類の中でもデリケートですから着衣で保護する方針で行きます。



術後2日目にして診察室内を走り回れるまで回復してます。







食欲も出てきました。



当院の病院犬ドゥがナナちゃんに挨拶してます。



ナナちゃんの摘出した子宮を切開しました。

子宮角にはクリーム状の膿が貯留していました。





患部の顕微鏡所見です。

子宮内膜細胞は変性壊死を起こし、白血球やマクロファージの細菌を貪食した後、壊死腐敗した所見が認められます。



ナナちゃん手術後3日目にして、元気に退院して頂きました。

ナナちゃん、お疲れ様でした!







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2024年4月17日 水曜日

犬の子宮蓄膿症とクッシング症候群

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは、子宮蓄膿症とクッシング症候群が合併症状として現れた症例です。

子宮蓄膿症は以前から他の記事で載せてありますのでこちらをご参照ください。



クッシング症候群については、副腎皮質機能亢進症ともいいます。

クッシング症候群は、副腎皮質から持続的に過剰分泌されるコルチゾール(副腎皮質ホルモン)によって引き起こされる様々な臨床症状及び臨床検査上の異常を示す病態を総称します。

その原因として以下の3つに分類されます。

①脳下垂体の腫瘍が原因で、副腎皮質刺激ホルモンが過剰に分泌されるタイプ。下垂体性腫瘍(PDH)と言います。犬のクッシング症候群の90%を占めます。

②コルチゾール分泌能を有する副腎皮質の腫瘍によるタイプ。機能性副腎腫瘍(AT)と言います。

③プレドニゾロンなどグルココルチコイド剤の過剰投与によっておこるタイプ。医原性クッシングともいいます。



クッシング症候群の症状は以下の通りです。

多飲・多尿
多食
腹部膨満
運動不耐性(動こうとしない)
パンティング(荒い呼吸)
皮膚の菲薄化




ミニュチュア・シュナウザーのリンジーちゃん(8歳7か月、雌)は1年近く前から多飲多尿の傾向があり、お腹が張って来たとのことで来院されました。

一日の飲水量が4Lを超えるそうです。



腹囲が張っているのがお分かり頂けるでしょうか?





まずは血液検査を実施しました。

白血球数が34,500/μlと高値(正常値は6,000~17,000/μl)を示しています。

CRP(炎症性蛋白)が7.0mg/dlオーバーとこれもまた高値(正常値は0.7mg/ml未満)です。

リンジーちゃんの体内で何らかの感染症や炎症があるのは明らかです。

次にレントゲン撮影です。

腹囲膨満が分かると思います。



気になるのは膀胱が過剰に張っていることです(下写真黄色丸)。

そして子宮(左右子宮角)も大きくなっており、下写真の白矢印で示した部位がそれに当たります。



側臥のレントゲン像です。



これも同じく膀胱(黄色丸)と子宮(白丸)を示します。



多飲多尿から、リンジーちゃんは排尿障害はでなく、スムーズに出来ています。

しかしながら膀胱がこれだけ大きく腫れている点から、慢性的に蓄尿期間が長かったのではと推定されます。

膀胱アトニ―といわれる膀胱壁が蓄尿によって伸びきってしまい膀胱の収縮が上手くできていない状態かもしれません。



次にエコー検査です。

白矢印は膀胱を示します。

黄色矢印は子宮を示し、低エコー像を表してます。



さらに調べますと、腫大した子宮角内に液体状の内容物(黄色矢印)が停留していることが判明しました。



以上の検査結果から、リンジーちゃんが子宮蓄膿症になっていることは明らかです。

加えて臨床症状からクッシング症候群の可能性もあるため、エコーで副腎の測定をしました。

下は、左副腎のエコー像です。

左副腎の長軸が4.2mmであり、健常な犬の副腎は6mm以下とされますので特に副腎の肥大は認められません。



次に右の副腎(下黄色丸)です。

右副腎は5.6mmでした。

こちらも正常な大きさです。



クッシング症候群については手術後に血液学的に内分泌検査を実施して確認することとしました。


子宮蓄膿症は緊急疾患です。

全身の感染症と見なすべきで、最善の治療は卵巣・子宮の摘出です。

まずは、リンジーちゃんの卵巣・子宮を摘出することとしました。

麻酔前投薬を行います。



リンジーちゃんのお腹を剃毛しました。

お腹が張っていることが分かると思います。





腹部正中線にメスを入れて切開します。



腹筋下に顔を出しているのは膀胱です。



随分と膀胱が腫大していますね。



子宮はこの膀胱の下に存在していますので、膀胱内の尿を吸引することとしました。



トータルで400mlの蓄尿が認められました。

尿を吸引するのに20分程もかかってしまいました。

下写真は吸引で小さくなった膀胱です。



やっと核心となる子宮を露出します。

大きなウィンナーソーセージが連結したような子宮が認められました。



腫大した分節上の子宮内にはおそらく膿が貯留しています。



卵巣動静脈をバイクランプでシーリングします。



子宮内膜の血管も同様にシーリングしていきます。



子宮頚部を縫合糸で結紮し離断します。





皮膚縫合して終了です。



麻酔から覚醒したリンジーちゃんです。



下写真は、摘出した卵巣・子宮です。

子宮蓄膿症は、全身性の感染症なので手術が終わったからといってすべて終了というわけではありません。

リンジーちゃんもこれから全身に回っている細菌を制圧するため、抗生剤の投薬をしていきます。



リンジーちゃんは入院中に先に申し上げたクッシング症候群の検査を受けて頂きました。



今回実施した検査はACTH刺激試験です。

この試験は、合成ACTH製剤(コートロシン)を筋肉注射し、ACTH投与前と投与1時間後の血中コルチゾールを測定して結果を評価します。

リンジーちゃんの検査結果はACH投与前は12.3μg/dl(正常値は1.0~6.0μg/dl)、投与後は29.3μg/dlと高値を示しました。

ACTH刺激試験でコートロシンに過剰に反応し、正常値を超える血中コルチゾールを示す点でクッシング症候群であることが確定しました。

加えて、副腎エコーで両副腎の大きさが正常範囲にある点で、リンジーちゃんは下垂体性腫瘍(PDH)であることが判明しました。

結局リンジーちゃんの場合は、多飲多尿の臨床症状は子宮蓄膿症によるものと、クッシング症候群によるものがブッキングしたものと思われます。



リンジーちゃんのクッシング症候群の治療は、アドレスタン(成分名トリロスタン)の内服を実施します。

このトリロスタンは全てのステロイドホルモン合成を阻害します。

結果、リンジーちゃんは暫くの間トリロスタンを内服して頂くことになりました。

子宮蓄膿症の術後の経過は良好で1週間後にはリンジーちゃんは元気に退院されました。



1か月後のリンジーちゃんです。

飲水量は一日あたり1L以下に治まってます。

腹囲も少し細くなりました。



リンジーちゃん、お疲れ様でした!






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2024年4月16日 火曜日

犬の脂肪腫

こんにちは 院長の伊藤です。


本日ご紹介しますのは犬の皮下腫瘍の中でも最も一般的に遭遇する脂肪腫です。

脂肪腫は加齢や肥満と共にその発症頻度は増加して行きます。

顎下、腋下や胸垂や内股などに出来やすいように思います。

脂肪腫は良性の腫瘍で特に外科的に摘出する必要はありませんが、時と場合によっては摘出しないと生活の質が大幅に低下するケースがあります。

足の運行が脂肪腫によって妨げられて、普通に歩行が出来なくなったりする場合や側臥状態で寝ることが出来なくなったりする場合がそれに当たります。



イタリアングレイハウンドのケビン君(去勢済 14歳)は左の腋下から胸部にかけての腫瘤が1年くらいかけて次第に大きくなったとのことで来院されました。



細胞診したところ、明らかな脂肪腫でした。

しかし、かなりの大きさであるため歩行のバランスが取れなくなってきているとのことで、飼主様から外科的摘出の希望がありました。

腋下は太い血管や神経が集まっています。

加えてケビン君は14歳という高齢犬です。

慎重に手術を進めなくてはなりません。

血液検査等ケビン君の全身状態は良好でした。

早速、全身麻酔を施します。



イソフルランのガス麻酔も効き始めて来ました。





患部の剃毛に移りました。

スタッフの片手で余るくらいの大きさであることがお分かり頂けると思います。



下写真黄色丸の部位が脂肪腫を示します。

写真では、なかなかその大きさを表現するのが難しいです。





10cm×10cmは余裕である大きさです。

イタリアングレイハウンドのスマートな体格には余分な脂肪です。





皮膚を切皮します。



腫瘍は体幹皮筋の下にある深胸筋の真下に存在しています。





筋膜を切開して、脂肪腫にアプローチします。





何本も太い血管が走行してますので、電気メス(バイポーラ)で凝固・切開します。



脂肪腫の基底部を拳上するとさらに太い血管が走行しています。

これだけの大きさの腫瘍ですから、栄養血管も太いものが張り巡らされています。



バイクランプで栄養血管をシーリングします。



バイクランプは瞬間的に血管をシーリング出来ますので時間短縮に貢献できます。

従来は一本づつ縫合糸で結紮してました。





シーリングとメス切開を繰り返して、だんだん腫瘍の全容が判明してきました。











腫瘍は、私の片手では持ち上げることが難しい位の大きさです。



無事、腫瘍を摘出できました。



摘出後の患部です。

特に不正出血もありません。



切開した筋膜を縫合します。







最後に皮膚縫合します。





大きな腫瘍でしたが、皮膚のテンションをそれ程かけなくても縫合できたのは幸いです。



覚醒し始めたケビン君です。





摘出した脂肪腫の全容です。

重さは800gありました。

下写真は皮膚の直下側です。



こちらは筋肉層に接していた脂肪腫の裏側です。



個人的には、あまり脂肪腫を外科的摘出はしません。

今回のような事例は少ないですが、比較的短期間で急に増殖が進行するケースはあります。

再度、この摘出した腫瘍を検査しましたが脂肪腫でした。

ケビン君はこれで気持ちよく疾走することが出来るようになると思います。

ケビン君、お疲れ様でした!





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2024年4月14日 日曜日

柴犬の精巣腫瘍(セルトリ細胞腫)摘出手術


こんにちは 院長の伊藤です。


出生後に本来、陰嚢に降りてくるはずの精巣が、そのまま腹腔や皮下組織に残ってしまう状態を停留睾丸(陰睾)と称します。

実際、この停留睾丸をそのままにしておくとシニア世代になってから、腫瘍化すると定説になっています。

通常の精巣が腫瘍化する場合よりも、停留睾丸が腫瘍化するのは10倍近い発生率だそうです。


本日、ご紹介しますのは柴犬の精巣腫瘍の摘出例です。

柴犬の三四郎君(11歳10か月齢、雄)は陰茎の右側が腫れあがってきて、本人も気にしているとのことで来院されました。



下腹部を診てみますと、陰茎の右側が大きく膨隆しているのが分かります。



12歳を前にしてまだ去勢をしていなかった三四郎君ですが、右側停留睾丸が腫瘍化してしまったようです。

精巣腫瘍にはセルトリ細胞腫、精上皮腫、間質細胞腫と3種類に分類されます。

これらの腫瘍は、リンパ節や他の臓器に転移することもあり、外科的摘出を飼主様にお勧めさせて頂きました。

ご了解をいただき、早速手術することとなりました。



慎重に皮膚切開を行い、電気メスで止血して行きます。





指先に脂肪に包まれた充実した組織が触知できます。



脂肪を切開すると精巣が垣間見えました。



陰嚢に収まっている左側の精巣に比較して随分大きくなった腫瘍です。



精巣動静脈、精巣靭帯を縫合糸で結束して摘出します。





皮下組織内の停留睾丸であれば、この程度の切開で十分ですが、腹腔内ですとおへそに近い位置から陰茎のすぐ横に沿ってメスを入れなければならなくなることもありますので、大変です。



左側が正常な陰嚢内に収まっていた精巣です。

右側が皮下組織の停留睾丸が腫瘍化した精巣腫瘍です。



病理検査結果でセルトリ細胞腫と判明しました。

このセルトリ細胞腫の場合、エストロジェンホルモンを分泌するために脱毛・皮膚炎になったり、雌性化によって乳房が腫れたりすることもあれば、貧血が生じることもあります。

三四郎君の場合、幸いにも上記の症状は認められませんでした。

当院では、停留睾丸の場合は1歳未満の段階で摘出手術を受けて頂き、将来の精巣腫瘍化を未然に防ぐ方針で対処させて頂いてます。

ご家族の内、男性陣が去勢は可愛そうだとの見解で手術を拒否されるケースもあります。

一般論で申し上げるなら、去勢をしてない雄犬は高齢になり前立腺肥大や会陰ヘルニア、そして今回の精巣腫瘍になる確率は高いとされていますし、私自身そのように実感しています。

今回の三四郎君の場合は、皮下組織内の精巣腫瘍でしたが、腹腔内の精巣腫瘍になりますとさらに外科手技的にも難しくなります。

過去にミニチュア・ダックスで、排便困難になり、レントゲン・エコーで大きな塊を見つけ腹腔内腫瘍として、試験的開腹をしたところ10cmに及ぶ精巣腫瘍であった経験をしました。

停留睾丸が認められたら、正常側と一緒に両方摘出することをお奨めします。







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