アーカイブシリーズ

2023年12月26日 火曜日

ウサギの橈尺骨骨折(その3 創外固定法の術後管理)

こんにちは 院長の伊藤です。

先回はウサギの創外固定法の詳細を載せました。

具体的には、ネザーランドドワーフのラテちゃん(雌 7か月齢)の橈尺骨骨折を創外固定法で整復したところまで写真と文章を載せました。

詳細はこちらをご確認下さい。


これまでの経緯をレントゲン写真で説明します。

骨折直後のラテちゃんの橈尺骨です。



創外固定法により整復した患部です。





骨折の治療は、骨折の状態に適した整復術式を選択し整復します。

手術が成功したからといって、それで骨折部が確実に癒合できるとは限りません。

患者が行動的であれば、骨折部の固定は場合によっては破たんすることもあります。

結果、骨癒合不全に至り再手術が必要となります。

ウサギの骨の特性は骨密度が低く、脆弱であるため骨折整復後は運動制限が重要なポイントです。

ラテちゃんの飼主様にはその点をご理解いただき、必要最低限の運動で安静を保たれました。


1~2週間ごとに来院して頂き、創外ピンが刺入している箇所の点検と洗浄消毒を丹念に継続させて頂きました。

その実際は以下の通りです。


まずはテープを外して患部を確認します。



創外ピンの周辺をしっかり洗浄消毒した後に、抗生剤の軟膏や皮膚潰瘍・褥瘡治療剤(イサロパン)を塗布します。





最後にスプリントで患肢を保護します。



創外ピンが障害物にあたって患部に振動が及ばないようにパテの周囲をしっかり脱脂綿とテープで巻きます。



このような患部のケアを定期的に行い、経過を観察して行きます。

この術後の管理がラテちゃん本人も、飼主様にもストレスを感じて長く辛い時期だったと思います。

ラテちゃんの場合は術後管理に2か月近くかかりました。





ラテちゃんの術後1か月のレントゲン写真です。

下写真の黄色丸の部分が骨折部位になります。

仮骨が良好に形成されているのが分かります。




術後2ヶ月のレントゲン像です。

骨折部位(写真黄色丸)の仮骨による癒合はほぼ完成の状態になってます。

刺入した創外ピンを骨皮質が取り巻くように仮骨を形成しています。

このステージになると創外ピンが緩み始めますので、早急にピンを抜去することとしました。




創外ピンを抜去する場合は、ギブスカッターを用いてパテをカットしてピンを抜去します。

ラテちゃんには全身麻酔で寝て頂き、パテにカットを入れます。

今回は、パテを切るため変速ディスク・グラインダーを使用しました。





高速で回転していますので取り扱いに注意しながら、パテをカットします。



グラインダーが創外ピンに干渉したりしたら、骨に亀裂が入ることもあり得ますので、ある意味手術時よりも緊張します。





このような形でパテに切り込みを入れます。



あとはニッパーで創外ピンをカットします。



下写真は創外ピンごとパテを外したところです。



創外ピンを抜去しています。



ピン抜去後のレントゲン写真です。

骨折部の骨癒合は良好です。





再度、患部を消毒した後、スプリントで固定します。

ピン抜去直後は、ピンの穴が4つ開いていますので患部保護のためにスプリント固定は必要です。







この2週間後のラテちゃんです。

皮膚もほぼ綺麗になりました。

スプリントも患部のテーピングによる保護も必要ありません。



その1か月後のラテちゃんです。

患部の被毛もしっかり生えて、患肢もまったく健常時同様に機能出来ています。









ラテちゃんはまだ7か月齢という若さでしたので、骨癒合までの時間は短く済んでいると思われます。

どちらかというとウサギの場合は、高齢になってから骨密度低下に伴って骨折するケースが多いように思います。

そうなると完治までには、最低数か月は必要になります。

犬の骨折も大変ですが、ウサギの骨折はさらに苦労します。

くれぐれも骨折にはご注意ください。

ラテちゃん、飼主様お疲れ様でした!






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2023年12月25日 月曜日

ウサギの橈尺骨骨折(その2 創外固定法)

こんにちは 院長の伊藤です。

先回、ウサギの橈尺骨骨折(その1 外固定)をご紹介させて頂きました。

その詳細はこちらをクリックして下さい。

ネザーランド・ドワーフのラテちゃん(7か月齢、雌)は左橈尺骨遠位端を骨折されました(下写真黄色丸)。



幼若ウサギの骨の特性を踏まえて、包帯状熱可塑性キャスト材で外固定しました(下写真)。



しかしながら、肘関節と手根関節の間を確実に固定するのが難しく、翌日にはキャスト材は外されてしまいました。




次策として、骨折部位の固定のため創外固定法を選択することにしました。

創外固定法は、骨折部の遠位端と近位端にピンを刺入して整復する術式です。

創外固定法は刺入したピンで骨折部を整復しますので、骨折してから時間が経過しますと骨折部の筋肉が拘縮しますので整復の難易度がアップします。

外固定を外された翌日、早速手術となりました。



イソフルランによる導入・維持麻酔をします。



患部をカミソリで剃毛します。



骨折部(黄色丸)が発赤・腫大しているのが分かります。







整形外科手術は厳密に無菌的手技が要求されますので、慎重に患部周辺を剃毛消毒してから実施します。





ラテちゃんの麻酔状態は安定してきました。



骨折部を挟んで、創外ピン遠位端2本と近位端2本を刺入して整復します。

下写真はドリルで創外ピンを刺入してるところです。



ラテちゃんのような幼若ウサギの場合は、骨が柔らかく細いこともあり、骨の位置を目視するために皮膚に切開を入れて創外ピンを挿入します。

使用する創外ピンは直径が0.8mmのネジ付きタイプを使用します。





ピンは骨髄の中心を貫くように打ち込みます。

骨の表面は曲面ですから、思いのほか難しいです。







患部をレントゲン撮影した画像です。

骨折部を挟んで2本ずつのピンで挿入しました。



ピンの両端をペンチでカットします。





切皮した箇所を縫合します。

ピンの両端にパテ(エポキシ樹脂製)をつけて固定します。



この時点でのレントゲン像です。

骨折部がずれていますので、つま先を牽引して皮膚の上から骨折部の整復を指先で確認します。





骨折部は整復してありますが、牽引する手を緩めるとズレが生じます。

エポキシパテを片側にまず盛り付けて、数分で硬化するのを待ちます。



次いで反対側にパテを盛り付けて硬化を確認して終了です。



体に対してあまりにパテが大きすぎても宜しくなく、また自身でぶつけたりして破壊されても困ります。

かといって、パテが小さすぎればピンを固定する力が弱く、骨癒合までの長期間もちません。

その点は経験に応じて、盛り付けるパテの量・大きさを決めます。





手術終了時のレントゲン像です。

骨折部も綺麗に整復できました。



次にパテはむき出しのままですと色んな所にぶつけて、その衝撃がピンを介して骨に伝導します。

再骨折を回避するためにも、パテを脱脂綿などで保護します。



粘着テープを巻き付けます。



血行障害に陥らない程度の緩さで二重に巻きつけました。



犬猫であればこれで終了しますが、ウサギの場合骨が脆いのでアルミ製のスプリントでさらに固定します(下写真)。



最後にずれないように粘着テープで固定します。





麻酔から覚醒したラテちゃんです。



結果的には体の大きさに比べて患部が大きく見えますが、何とかこの状態で骨癒合まで頑張って頂きたいです。



床材のスノコに指を引っ掛けパニックに陥り、結果として骨折するウサギは多いです。

遊び盛りの月齢ですから、エリザベスカラーや創外固定装置で不自由な生活を強要されることは可哀そうです。

それでも癒合させるためには、安静な生活が必要不可欠です。

ウサギの骨折治療は、犬猫以上に術後管理が重要で時間もかかるから大変です。



最近は創外固定法を選択することで骨癒合までスムーズに到達しています。

創外固定法の場合、骨折部を開創せず少侵襲で整復できれば最短で完治できると思います。

ただウサギの骨の特性として、治癒まで時間がかかることはご了解ください。

ラテちゃんの場合は、骨癒合に2か月近くかかりました。



骨折治療は骨癒合するまでをさします。

したがって、骨折整復手術が成功したとしても、術後の管理が適当だったりすると骨癒合不全に至り、再手術が必要になったりします。

ラテちゃんの術後の経過を次回 ウサギの橈尺骨骨折(その3 術後管理)でお知らせします。

なるべく早く載せますので、宜しくお願い致します!





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2023年12月24日 日曜日

ウサギの橈尺骨骨折(その1 外固定法)

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介するのはウサギの前腕骨(橈尺骨)骨折です。

この橈尺骨骨折はウサギに限らず、犬でもよく遭遇する骨折です。

細く繊細なウサギの骨だけに手術の難易度は高く、また術後管理にも気を遣います。


ネザーランドドワーフのラテちゃん(雌、7か月齢、体重1.4kg)は左前足がつかないとのことで来院されました。



触診をするとどうやら骨折をされているようです。

早速、レントゲン撮影を実施しました。

下写真の黄色丸が骨折している箇所です。





橈骨・尺骨が共に折れています。

特に橈骨は生木骨折のようです。

犬であれば橈尺骨骨折は、プレートによる内固定か、骨髄ピンによるピンニングか、創外固定法を選択する場合が多いです。

ウサギは犬に比べて骨組織が脆弱でプレート固定で再骨折するケースもあります。

ラテちゃんは非常に活動的なウサギで、プレート固定には不安があります。

創外固定法にしても体が小さなウサギですから、患部に突出した創外ピンが色んな場所で引掻けたり、ぶつけたりして破壊されないか不安です。


飼い主様とも相談して、ギブスによる外固定で骨癒合まで持っていこうという方針になりました。

後肢は関節部の可動域が広く、比較的外固定に適していますが、前肢はまっすぐ下に降りていますのでギブス装着の難易度は高いと言えます。

これまでにも何度か、ご紹介させて頂きましたが外固定の副子として包帯状熱可塑性キャスト材 レナサームを使用しました。

いづれにせよ、外固定であれ骨折整復手術であれ、全身麻酔を施します。



ガス麻酔でラテちゃんを寝かせます。





骨折のため、骨折部を中心に前腕部が腫脹しています。

趾端にサージカルテープであぶみを付けます。



前腕部にストッキネットを装着します。



次にシルキーテックスをストッキネットに巻き付けます。



キャストパッドプラスを最後に巻き付けます。



骨折部をレナサーム(下写真)で外副子(スプリント)代わりに成形して装着します。



必要な長さをカットして熱湯中にレナサームを入れます。



3分でレナサームは軟化しますので、速やかに外副子を成形します。

軟化してから4分で硬化が始まります。



この外副子による固定では、ギブス固定の様に血流障害は起こりにくく、皮膚の弱いウサギには理想的です。





外固定は骨折部を挟んで2か所の関節を固定して治療が始まります。

今回の様に橈尺骨遠位端骨折の場合は、手根関節と肘関節をこのレナサームで固定します。

外固定後の患部のレントゲン写真です。





物理的な構造として、肘を少し屈曲した姿勢で、外固定をしないとそのままレナサームは脱落してしまいます。

ラテちゃんは活動的なので、この外固定をいつまで維持できるものか不安です。



伸縮包帯によるテーピングを、皮膚の血流障害を招かない程度の力で行います。




外固定で安定するのを期待していたのですが、なんと翌朝、外副子ごと前足から外れていました。

非常に残念ですが、正攻法で骨折整復にあたることに進路変更することにしました。

創外固定による橈尺骨整復手術を実施することになりました。

この創外固定手術の模様は次回のウサギの橈尺骨骨折(創外固定法)でお伝えします。






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2023年12月23日 土曜日

トイプードル橈尺骨骨折(その3)術後経過とプレート抜去時期

こんにちは 院長の伊藤です。


本日ご紹介しますのは、トイプードルの橈尺骨骨折のプレート固定手術及び術後経過について載せます。

なお、以前載せた記事でトイプードルの橈尺骨骨折トイプードルの橈尺骨骨折(その2)のリンクを貼っておきますので、興味のある方はご覧下さい。



トイプードルのフラン君(体重2㎏、去勢済、2歳)は1mの高さから落下した後、左前足を跛行するため来院されました。



早速、レントゲン撮影を実施しました。

トイ種に発生率の高い前腕骨骨折(橈尺骨遠位端骨折)であることが判明しました。

下レントゲン写真の黄色矢印は骨折部位を示します。






フラン君は体重も小さく、橈骨も非常に細いため、整復手術の術式は限定されます。

当院では、橈骨骨髄にピンを入れて整復するケースが多いのですが遠位端(足先に近い側)の骨折であることと、橈骨自体が細く骨髄も狭小のため、ピンの髄内固定法は取りやめました。


結果として、骨プレートによる内固定法を選択しました。

骨プレートは骨折部に跨って、骨プレートを骨スクリューで固定する術式のため、術後長い時間、外副子で患部を保護しなくても良いです。

加えて、骨プレートは強固で安定した内固定が得られる点、プレートは完全に体内に埋没しているため、舐めたり齧ったりなどの術後の突発事故を防ぐことが可能です。

その一方、術後長い時間、骨プレートを患部内に入れておくとストレス保護現象が生じます。

骨折部には色々な方向からストレス(外力)が加わります。

それは、骨折部への圧縮力であったり、牽引力であったりしますが、これらの力に呼応して骨を作る造骨細胞や骨を吸収する破骨細胞が骨折部に分布して骨折部の骨癒合や元の骨の形に復元していく再構築現象が展開されます。

しかし、骨プレートはステンレス等の硬い頑丈な金属で出来ていますので、プレート固定下の骨は機械的ストレスから保護される結果となり、上記のストレスから解放される代わりに、自然な骨再構築の過程は望めません。

つまり、プレートを骨折固定に用いた場合、正常な生理的反応が妨げられ、再構築過程で骨破壊が骨形成を上回り、骨粗しょう症や骨スクリューの緩みの発生及びプレート両端部の骨の再骨折などのリスクが生じるとされます。

そのため、3歳齢以下の犬の長管骨骨折に用いた骨プレートは、ストレス保護現象を避けるため一定期間後に除去するのが一般的です。

逆に言えば、中年齢以降の犬においては、骨プレートは除去する必要は必ずしもないと言えます。

上述した理由で、フラン君については、骨プレートをインプラントした後に一定期間を通した後、除去する方針で骨折整復手術を実施しました。



早速、プレートによる内固定整復手術を実施します。

フラン君の患部を剃毛し、消毒します。




骨折部を観血的にアプローチするためにメスを入れます。





下写真黄色丸は、骨折端を示します。



骨折部と周辺の軟部組織を傷つけないよう組織分割していきます。



下写真の黄色矢印は骨折端です。



骨折端をかみ合わせます。





骨折端がずれたりしない様に骨把持器で骨折部を固定します。





次いで、骨プレートを骨折部に載せます。



骨折部に骨プレートを跨るように配置し、近位端と遠位端が骨スクリューが均等に配置するようにします。

今回、フラン君のサイズに合わせて、6穴のプレートを用意し、骨折部に1穴をあてて、近位端に3本、遠位端に2本の骨スクリューを入れます。




今回、直径1.5㎜の骨皮質スクリューを使用します。

ドリルガイドを用いて、直径1.1㎜のドリルビットで下穴を作ります。

この後、ねじ山を切るため(タップ)に直径1.5㎜のタッピングを行います。






タッピングは終了し、骨スクリューを入れる穴(下写真黄色丸)を作りました。



次いで、骨スクリューを挿入します。





以下同じ手順で骨スクリューの穴を作成、骨スクリューの挿入を実施していきます。







順次、骨スクリューを挿入します。









骨プレートのサイズのバランスで近位端から4番目のホールは骨折ラインの直上に当てました。



筋膜、筋肉、皮下組織を縫合します。





皮膚縫合して終了です。



患部はスプリントで保護します。





術後のレントゲン像(スプリント装着後)です。



その拡大像です。

骨折部は一部骨皮質が欠損している部位がありますが、最終的には骨癒合します。



麻酔から覚醒して落ち着いたフラン君です。



手術は無事終了したフラン君ですが、その後は継時的にレントゲン撮影を実施し、骨癒合が完了したところでプレートを抜去する予定です。



以下に載せたレントゲン像は拡大したものですが、解像度の限界で不明瞭な点はご容赦下さい。

下写真は術後30日です。

骨折部はまだ仮骨で架橋されてなく、黄色矢印は骨折部の間隙を示します。



次に下写真は術後44日です。

骨折部の仮骨による架橋(黄色矢印)は進行していますが、まだ完全でありません。



下写真は術後72日目です。

骨折部の仮骨による架橋は完成されています。



下写真は術後93日です。

赤丸はプレートの端を包み込むように骨組織が盛り上がっています。

骨折部(黄色丸)は骨癒合が完了しています。

前述したストレス保護現象が現れています。



骨プレート除去の時期は10か月齢から3歳未満の場合、術後5~14か月と報告されてます。
Wade O.Brinker, Marvin L.Olmstead, Geoffrey Sumner-Smith, W.Dieter Prieur(1997: 296)
Manual of Internal Fixation in Small Animals. Second Revised and Enlarged Edition.
Medical Science.


下写真は術後121日目です。

骨折部の癒合も完了しています。



下写真は術後164日目です。

骨折部周囲の橈骨は太く再構築されています。

そろそろ骨プレート除去のタイミングと判断しました。

まずはプレート中央部の骨スクリューを2本抜去します。

一度にプレートと5本のスクリューを除去すると、スクリューの穴が5本分生じますので再骨折の可能性が出て来ます。

再骨折を回避するため、スクリューをまずは2本だけ除去します。

その後、2本のスクリュー跡が新しい骨組織で補てんされたら、残りのスクリュー3本とプレートを除去します。



下写真は、術後164日でスクリューを2本抜去しているところです。

プレート表面は皮下組織で厚く被覆されており、抜去する予定のスクリュー直上をメスで切開します。



スクリューをドライバーで外します。



2本のスクリューを抜去しました。



さらに術後193日目のレントゲン像です。

約一か月前に2本の骨スクリューを抜去した跡は、新しい骨組織に補てんされているのが確認出来ます。

プレートとスクリューすべてを除去することとしました。



下写真は、プレートを覆うように骨膜が盛り上がってます。



骨組織にプレートが埋没するくらいの感じで、プレート周辺の骨組織がプレートを異物として取り込もうと組織反応しており、単純にプレートを外すのに苦労します。



プレートを取り巻く軟部組織を切開して、骨ノミを軽くプレートに当ててプレートを外します。



プレートを摘出したところです。



摘出直後の側面のレントゲン像です。

プレート直下の橈骨表面は、プレートの形状のまま押し付けられたような跡を残しています。

ストレス保護現象が既に進行していたと思われます。



下写真は正面から撮影した画像で、摘出した3本の骨スクリューの穴が確認されます。



プレート・スクリュー除去後は、1週間はスプリントを装着して患肢を保護します。

麻酔から覚醒したフラン君です。

小型犬の橈尺骨骨折は、その骨の細さから整復手術の難易度も高いとされます。

そのため、骨癒合まで時間を要します。

術後も運動制限をはじめとした経過観察が重要です。

手術から完治まで半年以上要しました。

フラン君、お疲れ様でした!






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2023年12月22日 金曜日

トイプードルの橈尺骨骨折(骨プレート内固定法 その2)

こんにちは 院長の伊藤です。

トイ種の前腕部骨折(橈尺骨骨折)は日常的に起こりがちな骨折です。

以前、トイプードルの橈尺骨骨折を載せました。

その後も、橈尺骨骨折は途切れることなく起こっています。

手術手技の難しさもあり、受傷年齢が若いこともあり、また骨癒合不全に陥りやすい部位であることから、完治まで時間がかかる骨折であることを認識して頂きたく思います。

飼い主様への注意を喚起するためにも、今後もこの骨折については症例報告を続けていきたいと考えています。



トイプードルのロック君(7か月齢、雄、体重2.6kg)はダイニングテーブルから飛び降りて、前足がブラブラしているとのことで来院されました。



患部をレントゲン撮影しました。





黄色丸で囲んだ部位が骨折部です。

この状態は、いわゆる若木骨折と称される骨折形態をとっています。

若木骨折については、以前オカメインコの若木骨折でご紹介させて頂きましたので、そちらをご参照ください。

体重がある程度あり、骨折ラインも橈骨遠位端でもまだ中央寄りということで、プレートによる内固定を実施することとしました。

しっかり内固定するためにも、上3穴・下3穴の6穴タイプのプレートをインプラントします。



下写真にありますように骨折部が腫れあがって、内出血しています。



骨折部は骨皮質・骨髄が破たんしていますので、それなりに出血はあります。



りトラクターで骨折部を確認します。

骨折部は若干、斜骨折になっているようです。



骨折部をプレート用骨保持鉗子で固定します。



直径1.5㎜の骨皮質スクリューを使用します。

直径1.1㎜のドリルビットでしっかり下穴を作ります。

この後、ねじ山を切るため(タップ)に直径1.5㎜のタッピングをします。





スクリューの穴ができた所で、1か所ずつスクリューを締めていきます。



6本のスクリューでプレートの固定が完了しました。



後は筋肉、皮下組織を縫合しました。



最後に皮膚縫合で終了です。



レントゲン撮影を行い、内固定の最終チェックです。



しばらくは、スプリントで患肢を保護する生活を送って頂くことになります。



橈骨骨折はある程度までは、飼主様の注意で防ぐことは可能です。

一旦、橈骨骨折しますと骨癒合まで時間はかかり、ワンちゃんはもとより飼い主様も介護に気を遣わなくてはなりません。

もし、癒合不全に陥れば、完治までさらに時間を要します。



手術の模様がリアルすぎるとのご指摘を受けることもあります。

しかし、痛い思いをするのは皆様が飼われているワンちゃんであることを忘れないでください。

そして、いくら上手な文体で飼主様の注意を引こうとしても限界はあります。

そんな中、私個人としては血が出ていたり、患部が露出していたりしても、リアルな写真であるほどに飼主様の意識改革につながるなら良しと考えてます。

ロック君、術後はなるべくおとなしく生活していてくださいね!






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