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産科系・生殖器系の疾患/犬

2014年3月15日 土曜日

柴犬の精巣腫瘍(セルトリ細胞腫)摘出手術


出生後に本来、陰嚢に降りてくるはずの精巣が、そのまま腹腔や皮下組織に残ってしまう状態を停留睾丸(陰睾)と称します。

実際、この停留睾丸をそのままにしておくとシニア世代になってから、腫瘍化すると定説になっています。

通常の精巣が腫瘍化する場合よりも、停留睾丸が腫瘍化するのは10倍近い発生率だそうです。


本日、ご紹介しますのは柴犬の精巣腫瘍の摘出例です。

柴犬の三四郎君(11歳10か月齢、雄)は陰茎の右側が腫れあがってきて、本人も気にしているとのことで来院されました。



下腹部を診てみますと、陰茎の右側が大きく膨隆しているのが分かります。



12歳を前にしてまだ去勢をしていなかった三四郎君ですが、右側停留睾丸が腫瘍化してしまったようです。

精巣腫瘍にはセルトリ細胞腫、精上皮腫、間質細胞腫と3種類に分類されます。

これらの腫瘍は、リンパ節や他の臓器に転移することもあり、外科的摘出を飼主様にお勧めさせて頂きました。

ご了解をいただき、早速手術することとなりました。



慎重に皮膚切開を行い、電気メスで止血して行きます。





指先に脂肪に包まれた充実した組織が触知できます。



脂肪を切開すると精巣が垣間見えました。



陰嚢に収まっている左側の精巣に比較して随分大きくなった腫瘍です。



精巣動静脈、精巣靭帯を縫合糸で結束して摘出します。





皮下組織内の停留睾丸であれば、この程度の切開で十分ですが、腹腔内ですとおへそに近い位置から陰茎のすぐ横に沿ってメスを入れなければならなくなることもありますので、大変です。



左側が正常な陰嚢内に収まっていた精巣です。

右側が皮下組織の停留睾丸が腫瘍化した精巣腫瘍です。



病理検査結果でセルトリ細胞腫と判明しました。

このセルトリ細胞腫の場合、エストロジェンホルモンを分泌するために脱毛・皮膚炎になったり、雌性化によって乳房が腫れたりすることもあれば、貧血が生じることもあります。

三四郎君の場合、幸いにも上記の症状は認められませんでした。

当院では、停留睾丸の場合は1歳未満の段階で摘出手術を受けて頂き、将来の精巣腫瘍化を未然に防ぐ方針で対処させて頂いてます。

ご家族の内、男性陣が去勢は可愛そうだとの見解で手術を拒否されるケースもあります。

一般論で申し上げるなら、去勢をしてない雄犬は高齢になり前立腺肥大や会陰ヘルニア、そして今回の精巣腫瘍になる確率は高いとされていますし、私自身そのように実感しています。

今回の三四郎君の場合は、皮下組織内の精巣腫瘍でしたが、腹腔内の精巣腫瘍になりますとさらに外科手技的にも難しくなります。

過去にミニチュア・ダックスで、排便困難になり、レントゲン・エコーで大きな塊を見つけ腹腔内腫瘍として、試験的開腹をしたところ10cmに及ぶ精巣腫瘍であった経験をしました。

停留睾丸が認められたら、正常側と一緒に両方摘出することをお奨めします。





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投稿者 もねペットクリニック | 記事URL

2013年11月16日 土曜日

犬の陥頓包茎



雄の犬でペニスが飛び出して戻らなくなってしまった!と来院されるケースがあります。

このペニスが戻らない状態とは何かと申しますと、包皮腔から突出した陰茎亀頭部が何らかの原因で包皮腔内へ戻れなくなっている状態を指します。

この状態を称して陥頓包茎(かんとんほうけい)といいます。

原因は、多くが包皮口の被毛が陰茎に絡まって発症します。

問題は巻き込まれた皮膚の圧迫をペニスが受け、血行障害に至り浮腫が生じます。

浮腫が進行すると、さらに包皮内にペニスは戻らなくなってしまいます。


今回ご紹介しますのは、チワワのマロン君(4歳、雄)です。

下写真の通り、陥頓包茎になっています(黄色丸)。



陥頓包茎に飼主様が気づかれてまだ半日くらいしかたっていませんが、ペニスが若干浮腫を起こしています。

今回の写真はピントがあまり合っていません。申し訳ありません。



浮腫の程度がまだ軽度であれば、ベビーオイル等で潤滑よくしておいて、包皮に戻すことは容易にできます。

マロン君の陥頓包茎はなってから、短時間でしたので簡単に戻ってくれました。

具体的な治療法は以前、デグーマウスの陥頓包茎についての当院ブログに詳細を載せました。

興味のある方はこちらをクリックして下さい。

重度の陥頓包茎の場合は、まずは浮腫を改善するため高濃度の砂糖水(20%以上)を患部に漬けて、浸透圧差を利用してペニスの浮腫を取ります。

冷湿布を患部にあて、浮腫を軽減する方法もあります。

以上の方法でも、ダメな場合は包皮をメスで切開して陰茎を戻します。

長時間にわたって陥頓包茎の状態が続きますとペニスが壊死を起こすこともあります。

何度もペニスが陥頓包茎になってしまう場合は、包皮口の被毛が長すぎることもありますので短くカットされた方がいいと思います。

ペニスが突出して戻らないと気づかれましたら、至急最寄りの動物病院で整復して頂くようお願い致します。





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投稿者 もねペットクリニック | 記事URL

2013年9月15日 日曜日

犬の子宮蓄膿症(その2)


避妊手術をしていない雌犬が7,8歳以上のシニア世代になると、罹患しやすい疾病に子宮蓄膿症があります。

この疾病については、以前犬の子宮蓄膿症でコメントさせて頂きました。

その後も、頻繁に子宮蓄膿症の手術をしておりますが、受診される時には重篤な症状になっているケースも多く、飼主様への注意勧告のためにも、再度症例報告させて頂きます。



ミュニチュア・シュナウザーのショコラちゃん(未避妊、7歳)は数週間ほど前から陰部からおりものが多いとのことで来院されました。



陰部からの排膿は、経験的に子宮蓄膿症を疑います。

膣からの排膿は、子宮頸管の解放程度や貯留膿汁量により異なります。

一般的には、膣からの排膿量が多い犬の方が、子宮頸管が閉塞して排膿しない犬に比べて症状は軽いです。

犬の子宮蓄膿症の内、15~30%が子宮頸管閉鎖型で排膿が認められないと言われます。

今回のショコラちゃんは、陰部からの持続的排膿があり、この疾患の特徴的な症状は顕著に出ていませんでした。

子宮蓄膿症の症状は、多飲多尿、嘔吐、下痢、食欲不振、沈鬱、膣からの排膿です。

早速、レントゲン撮影を実施しました。

下写真の黄色丸内に腫脹した子宮の陰影が認められますが、以前報告したケースと比較して、そんなに子宮の腫脹は顕著ではありません。





血液検査を実施したところ、白血球数が54,200/μlと非常に高い数値を示しました。

犬の正常な白血球数は上限が17,000/μlとされてます。

体内に細菌が侵入した場合、この細菌をやっつけるために白血球が増産されるわけです。

子宮蓄膿症であることは紛れもなく、早速卵巣子宮全摘出手術を実施することになりました。



開腹した途端に、腹腔から子宮が飛び出してきました。



本来、子宮は平滑なY字の管状構造を呈しています。

子宮蓄膿症になりますと子宮内に貯留した膿汁で分節上に、あたかもソーセージのように腫脹します。



子宮を傷つけないよう、膿汁を外に漏出しないよう配慮しつつ手術を進めていきます。

バイクランプで大きな血管はシーリングしていきます。





正常な子宮と比較して何倍もの大きさです。



特に大きな問題もなく手術は終了しました。



摘出した子宮です。



手術が成功しても、決して安心はできません。

子宮蓄膿症の原因菌とされるブドウ球菌・大腸菌が産生するエンドトキシンが血中を回って血圧の低下・体温低下によるショック状態が現れる場合もあります。

ショコラちゃんは5日間入院して頂き、無事退院されました。

下写真は、患部の抜糸のため本日、来院されました元気なショコラちゃんです。



子宮蓄膿症の予防は、避妊手術を早期に受けることだと思います。

勿論、犬の自然の発情周期に従って、繁殖をするというのも一つの予防法でしょう。

しかし一般のご家庭で、年に2回ほどの発情が来るたびに出産させるというのは無理です。


過去に当院の患者様で体重65kgのセントバーナードがいました。

特に避妊もせず、6歳になった年に子宮蓄膿症を発症されました。

摘出した子宮の重さは9kgでした。

手術は成功したかに見え、本人も1週間ほど元気に過ごされたのですが、血中に残っていた細菌のトキシンショックで急逝されました。


先日は、8歳のチワワで子宮蓄膿症で来院されましたが、開腹した時点で腹腔内には子宮が破裂して膿が貯留してました。

術後、この子も治療の甲斐なく急逝されました。


子宮蓄膿症は全身の感染症であるということは忘れないで下さい。

手術すれば、完治すると安易に考えないで頂きたい。

新たに子犬から飼われる飼主様にあっては、1歳未満の若い時期に避妊することを真剣に考えていただきたいと思います。



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投稿者 もねペットクリニック | 記事URL

2012年6月10日 日曜日

犬の子宮蓄膿症

以前に、当院のホームページ、避妊去勢の項目でこの子宮蓄膿症を簡単にまとめて記載いたしました。

実際に子宮蓄膿症がどのような疾病であるか、手術時の写真も含めて、ご紹介したいと思います。


 シェルティのモカちゃんはこの一種間ほど、元気食欲が振るわないとのことで来院されました。

多飲多尿、嘔吐を初めとする子宮蓄膿症の症状はなく、ただお腹が腫れている点と血液検査で白血球数が26,600/μlと高いのが気になります。



早速、レントゲン撮影及びエコーで検査を行いました。

レントゲン写真は以下の通りです。





黄色い丸に囲まれた部分は大きなマス(塊)が認められます。

ついで超音波診断の結果ですが、低エコーレベルの領域が認められました(黄色い矢印)。



おそらく下腹部に大きなマスが存在しており、それは子宮の可能性が極めて高く子宮蓄膿症の疑いで早速、開腹手術を実施いたしました。





開腹した途端、大きなマスは子宮であることが判明しました。

実はあまりに大きくて、体外に出すのが非常に大変でした。





上の写真にあるアリス鉗子と比較しても非常に子宮が大きいのがお分かり頂けると思います。



膿が大量に子宮角に溜まっており、卵巣動静脈を縫合糸で結紮するスペースを確保するのが厳しく、バイクランプを用いて血管をシーリングしました。

子宮を雑に扱うと破裂してしまう可能性もあり、慎重に摘出操作を進めます。

バイクランプの取り扱いもだいぶ慣れてきましたので、手術時間も大幅に短縮することが出来ました。







上の写真が摘出した卵巣・子宮です。

左側子宮角に多量の蓄膿が認められます。

これだけの大きな子宮を摘出するとモカちゃんの下腹部はすっきりしました。



麻酔覚醒後、大きな子宮を摘出したことで循環血流量の低下・血圧の低下もあり、意識は戻っているのですが自力で立ち上がることが出来ずに6時間ほど経過しました。



各種処置を施して6時間後には何とか起立できるようになりました。

この6時間がなんと長く感じられたことでしょうか。

モカちゃんは10日ほど入院生活を送り、無事元気に退院されました。


以前、私は60kgのセントバーナードの子宮蓄膿症の手術をしたことがあります。

摘出した子宮は8kgありました。

摘出と同時にバケツに子宮を入れたところ、子宮が弾けてバケツは膿だらけとなった経験があります。

モカちゃんにしてもお腹が圧迫されて、腹腔内で弾けたら腹膜炎から敗血症に至っていたかもしれません。


若い頃に避妊手術を受けてない雌犬は高齢(5~7歳以上)になってから、この子宮蓄膿症を罹患するケースが多いです。

子宮蓄膿症の最善な治療法は外科的摘出に尽きます。

また手術を受ける前にすでに重篤な症状を呈してる場合も多いです。

貧血や低蛋白血症を併発していれば輸血の必要性もあります。

加えて、手術が成功しても全身に回っている細菌が作り出す毒素(エンドトキシン)は術後に、低体温症や低血圧をまねきショック

症状に陥ることもあります。

子宮蓄膿症とは全身性感染症であることを忘れないでいただきたい。

そして、繁殖を考えないのなら最初の発情を迎える前に避妊手術を受けることをお勧めいたします。




子宮蓄膿症の怖さが少しでもお分かり頂けましたら
 

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2012年5月16日 水曜日

犬の精巣腫瘍(性腺芽腫)

精巣腫瘍は高齢犬で発生が高く、特に停留精巣では陰嚢内精巣の10倍以上発生率が高いそうです。

今回、ご紹介するのは11歳のシェルティのローリー君です。

数か月くらいの間で急に左側の精巣が大きくなり始め来院されました。

1歳未満の頃、特に発情を迎える前に去勢や避妊をお勧めしてはいますが、雌の場合は赤ちゃんを産ませないという必然性もあり積極的に手術を希望される飼い主様は多いのですが、雄の去勢については可哀そうだから止めます、という飼い主様(特に男性)も多いのが実情でしょうか。

去勢しないことで、中高年以降で多発する疾病の一つとして当院HPで会陰ヘルニアをご紹介しましたが、この精巣腫瘍もまさに未去勢犬で認められます。

ローリー君はこの大きくなった精巣のため、床の上で伏せの姿勢が上手にできなくなり、排尿排便にも不便を来すようになりました。問題解決のため、外科的に精巣を摘出することにしました。




下の写真にありますように黄色の円で囲んだ左側精巣の腫大が認められます。



メスで陰嚢基部を切開して総鞘膜ごと陰嚢から出します。





精管、精巣動静脈を縫合糸で結紮してメスで離断します。





次いで総鞘膜も腫瘍細胞が存在している場合も想定して、精巣と共に離断します。



傷口はこんな感じで手術は終了です。



摘出した精巣は左側は腫瘍化した精巣で右側は健常な精巣です。

この腫瘍化した精巣を病理検査に出しました。

下の写真はその病理標本(低倍率)です。

大小、不規則な形状の精細管様管状構造が多数認められ、その管状構造はセルトリ細胞様の細長い腫瘍細胞が密に内張りしています。



さらに高倍率の病理標本です。



セルトリ細胞様腫瘍細胞の間に細胞質の明るい胚細胞様細胞も存在しており、この腫瘍がセルトリ細胞と胚細胞の両者の腫瘍増殖によって形成されています。

病理専門医からこの特徴的な所見より、極めて稀な性腺芽腫という精巣腫瘍であると診断が下されました。

犬の精巣腫瘍はセルトリ細胞腫、セミノーマ、ライデイッヒ細胞腫の3種類に大別され、多くが良性腫瘍であることが多いといわれます。

今回の精巣腫瘍は、これら3つのカテゴリーに分類されないタイプの腫瘍のようです。

ローリー君の腫瘍は現時点で腫瘍臓器、各リンパ節への転移は認められず、経過は良好です。

やはり、腫瘍になってから慌てるよりも早い時期に去勢することで、防げる病気です。

特に男性の飼い主様、ちびっこの頃の去勢手術は可哀そうだからという前に、ご一考下さいね。

老齢犬になってからの手術がいかに大変でリスクが高いか、ワンちゃん本人の気持ちになって下さい。


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