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産科系・生殖器系の疾患/犬

2018年10月20日 土曜日

犬の子宮水腫

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは犬の子宮水腫です。

犬も10歳を超えるころになりますと避妊していない雌は、産科系疾患が多発します。

今回は、巨大に子宮内に水腫を形成した症例です。


ポメラニアンのサラちゃん(14歳、雌、体重4.25kg)は,お腹が3か月前から張り初めて、だんだん大きくなってきたとのことで来院されました。



触診しますと下腹部が高度に腫脹しています。

おそらく腹水が大量に貯留しているのではないかと思われました。

レントゲン撮影を実施しました。

下写真黄色矢印が腹腔内に水が溜まっていることを表しています。





血液生化学検査では、腎機能・肝肝機能共に問題なく、CRP(炎症性蛋白)は正常、CPK値(筋肉・小腸の疾患を表す)が若干上昇している位でした。

加えて完全血球計算では赤血球数も白血球数も正常で貧血、感染症も認められません。


念のため、エコー検査を実施しました。

下写真の黄色矢印は子宮内に貯留している液体を示します。

赤矢印は腫大した子宮に圧迫された小腸を表します。



サラちゃんの年齢からすると子宮蓄膿症の可能性は十分考えられると思いますが、CRP値とWBC値(白血球数)は正常であることから子宮内容物が膿の可能性は少ないと思われました。

サラちゃんの腹腔のスペースの限界まで、子宮が腫脹してる一方で、本人の全身状態は良好です。

大至急開腹して卵巣・子宮全摘出手術をすることとなりました。

全身麻酔下で仰向けになったサラちゃんですが、お腹がかなり張っているのがお分かり頂けると思います。



側面から見た下腹部です。



腫大した子宮が横隔膜を介して心臓を圧迫しますので、手術台を斜めに傾斜させます。



下腹部にメスを入れたところ、飛び出す勢いの腫れた子宮が認められます。



子宮が頭を出してきました。

この時点で子宮水腫であることが判明しました。



子宮を全部体外に出せるか否かを検討します。



予想以上に子宮が大きく腫大してますので、下腹部の切開ラインを頭側部に向けて広げます。



子宮の自重が重いため、無理に牽引すると卵巣動脈や子宮間膜の血管を千切ってしまう恐れがあるため、慎重に対応します。




右子宮角の腫大が著しいです。



右子宮角は左子宮角の4倍は腫れています。

サラちゃんの頭部と比較すると子宮の大きさがお分かり頂けると思います。





卵巣動静脈をバイクランプでシーリングしています。



子宮頸管に走行している子宮動静脈をシーリングします。



全摘出した卵巣・子宮です。

かなりのボリュームがあります。



腹腔内から子宮を摘出した後は、大きな空きのスペースが認められます。



手術が完了しました。

サラちゃんのウェストラインが認められます。



まだ半覚醒状態のサラちゃんです。



さて、摘出した子宮です。



鉗子で止めてるのが、子宮頸管です。

右と左の子宮角の大きさの違いが分かります。



子宮内の内容物を取り出しました。

混濁した粘性の無い貯留液です。



子宮摘出後のサラちゃんの回復は目覚ましく、翌日から活動性が認められました。

手術前のサラちゃんの体重は4.25kgでしたが、術後は2.45kgでした。

摘出子宮の重さはなんと全体で1.8kgでした。

子宮内の液体だけでも1.5L位はありました。


今回の子宮水腫ですが、子宮蓄膿症の様に細菌が子宮内に感染しておこるのではなく、発情ホルモンの異常により子宮内に分泌される分泌液が過剰に貯留して発症します。

なぜ子宮水腫の発生するのかは、まだ不明な点が多いようです。

ただ子宮蓄膿症の様に全身の細菌感染症ではなく、全身状態は良好なことが多いです。

本人も自覚症状がなく、飼主様はお腹が腫れてるのに気付いて来院されるケースが殆どです。

いづれにせよ、早期の避妊手術を受けることでこれらの疾病は回避できます。

サラちゃんのように高齢になってからの手術は非常にリスクが高いのでご注意頂きたく思います。




側面からのサラちゃんですが、かなり痩せているのが分かります。



術後2週間目で抜糸しました。

子宮でお腹が張っていた分、摘出後皮膚は随分たるんでいます。



大変な手術でしたが、元気になって良かったです。

これから少しづつ体重を増やして行きましょう。

サラちゃん、お疲れ様でした!





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投稿者 もねペットクリニック | 記事URL

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