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産科系・生殖器系の疾患/犬

2018年9月20日 木曜日

犬の子宮蓄膿症(その3)

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは、犬の子宮蓄膿症です。

避妊手術していない高齢犬では、この子宮蓄膿症の罹患率は高いです。

子宮内に膿が貯留することで、細菌の産生する毒素が血流を介して全身に回り、最悪死亡する場合もある怖い産科系疾患の一つです。

過去の症例報告で犬の子宮蓄膿症犬の子宮蓄膿症(その2)を興味のある方はクリックしてご覧ください。

子宮蓄膿症もいろんな症例(臨床所見、開腹時の子宮の状態、術後の経過など)がありますので、機会を見て順次報告する予定です。


雑種犬のまなちゃん(7歳3か月齢、雌、体重8.4kg)は、食欲不振で来院されました。



この時点では、子宮蓄膿症に特有の多飲多尿や嘔吐などの症状は認められませんでした。

しかし、血液検査では白血球数が28,000/μl(正常値の上限は17,000)、CRP(炎症性蛋白)が7.0㎎/dlオーバー(測定不能な高値)と明らかに体内で大きな炎症が起こっていることが判明しました。

レントゲン撮影を実施しました。

下写真の黄色丸は子宮が大きく腫大している部位を表します。





次いでエコー検査を行いました。

下写真の黄色矢印は、子宮が液体状のものを内腔に貯留して腫大していることを表しています。



以上の検査結果から、まなちゃんは子宮蓄膿症を発症してることが判明しました。

子宮蓄膿症は緊急疾患の一つです。

全身状態がまだ良好なので、薬(ホルモン製剤や抗生剤)で散らすのではなく外科手術を優先して行います。

速やかに卵巣・子宮の全摘出手術を行うこととなりました。



全身麻酔を施されたまなちゃんです。



導入及び維持麻酔も順調に施されています。



皮膚及び腹筋を正中切開します。



腹筋を開腹したところ、腹腔内から子宮が飛び出してきました。



注意深く子宮を少しづつ、体外に引き出していきます。



左右の子宮角を体外に出したところ、思いのほか子宮が腫大していました。





左卵巣動静脈をバイクランプでシーリングします。



子宮間膜の血管も怒張しています。



卵巣動静脈や子宮間膜の血管をメスで離断します。



右卵巣動静脈を同じくシーリングしてます。



子宮頚部を残して体外に子宮を出したところです。



子宮の中は膿が貯留しているはずです。

子宮角の太さ・長さは健常時のおそらく3~4倍に腫大していると思われます。

かなり子宮は腫れており、早めに手術を実施出来て良かったと思いました。





子宮頚部を縫合糸で結紮して離断します。



離断した子宮頚部断端を縫合します。

これで卵巣子宮全摘出は終了です。



腹筋を縫合します。



皮膚を縫合して手術は終了しました。



全身麻酔覚醒直後のまなちゃんです。

無事、手術は終了しました。





摘出した子宮の全容です。

すでに、子宮内の細菌はまなちゃんの全身にも飛んでいますので、暫く入院して抗生剤の投与が必要です。



手術後4日目でまなちゃんは退院して頂きました。

経過は良好です。



まなちゃんの場合は、8歳を前にしての子宮蓄膿症の発症でした。

避妊していない雌の場合は、シニア世代と言われる7歳以降になると子宮蓄膿症の罹患率は一挙に上昇します。

毎回、申しあげていますがこの子宮蓄膿症や乳腺腫瘍を回避するためには、初回の発情前に避妊手術を受けて頂くのが最善です。

まなちゃん、お疲れ様でした!





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投稿者 もねペットクリニック | 記事URL

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