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産科系・生殖器系の疾患/犬

2018年2月23日 金曜日

犬の卵巣嚢腫

こんにちは 院長の伊藤です。

卵巣に関わる疾病には各種あります。

今回は、その卵巣疾患の中で卵巣嚢腫について述べたいと思います。


卵巣嚢腫とは卵巣に液体成分が貯留して腫れている状態のことを指します。

ホルモン分泌の影響で卵巣に液体が溜まる非腫瘍性病変も、あるいは卵巣の外壁を構成する細胞が腫瘍化して分泌する液体が貯留することによる腫瘍性病変も一緒に合わせて、現在では卵巣嚢腫と呼ぶようです。


一般に卵巣嚢腫は初期の臨床症状は無症状です。

その後、脱毛や不規則な性周期、持続性の発情や無発情などの異常が認められる場合があります。



柴犬のクメちゃん(雌、年齢不明)は乳腺に腫瘍が出来たとのことで来院されました。



クメちゃんは保護犬で年齢は良く分かっていません。

拝見すると右第5乳房が乳腺腫瘍です(下写真)。

乳腺腫瘍が発生するくらいですから、おそらく7~8歳以上にはなっているでしょう。



飼い主様の意向もあり、避妊手術も合わせて実施することになりました。

全身麻酔を施します。



本編の主旨と異なりますが、乳腺を切除する場面も載せておきます。

下写真の黄色丸が乳腺腫瘍です。











今回は乳腺の部分切除に留めさせていただき、メスの切開ラインはこの乳腺切除部位から頭側に向けて切る予定で行いました。

つまり、避妊と乳腺腫瘍切除に切開ラインを一直線に仕上げることとしました。



下写真は、臍の下を切開したところ、いきなり腫大した卵巣が飛び出してきたところです。



卵巣内に液体が貯留しているのがお分かり頂けると思います。



卵巣に過剰な力を加えて破裂させないよう、慎重に卵巣を牽引します。



卵巣動静脈をバイクランプでシーリングしているところです。





両側の卵巣動静脈をシーリングして離断し、体外に出したところです。

卵巣嚢腫が確認できます。



以下、拡大写真です。







続いて、子宮頚部を離断して皮膚を縫合したところです。

乳腺腫瘍を摘出した部位と避妊手術切開部位を連結して縫合しました。



麻酔から覚醒し始めたクメちゃんです。





摘出した卵巣と子宮です。

卵巣自体の腫瘍と言うよりは、卵巣内に液体が多量に貯留したように感じます。

これだけ大きな嚢腫ですが、クメちゃんは無症状で、飼主様もまさか卵巣がこのような状態とは思いもよらなかったようです。











下写真は手術後、病理検査に出した組織標本です。

病理所見として、左右の卵巣は異型性のない単層扁平上皮によって内張りされた複数の嚢胞が形成されています(下写真)。

異型性のないとは腫瘍性ではないということです。

クメちゃんは卵巣腫瘍ではなかったです。



次に下写真2枚は、子宮内膜の病理像です。

子宮腺上皮細胞の過形成で子宮内膜が肥厚しています。



過剰あるいは長期にわたるエストロジェンおよびプロゲステロンによる子宮内膜の刺激が原因で子宮内膜過形成が起こります。

その結果、子宮腺や子宮内腔に漿液が貯留して、子宮内膜炎や子宮蓄膿症・腺筋症になったりします。



いづれにせよ、今回のクメちゃんの卵巣・子宮共に腫瘍は絡んでいなかったのは幸いです。

また、タイミング的にも卵巣・子宮全摘出ですべての問題はクリアされて良かったです。




クメちゃん、お疲れ様でした!



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投稿者 もねペットクリニック

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