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チンチラの疾病

2024年2月26日 月曜日

高齢チンチラの橈尺骨骨折(外固定法)

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは、高齢のチンチラの骨折治療報告です。


チンチラのハク君(19歳、雄、体重640g)は高い所から飛び降りてから、左前足を拳上するようになったとのことで来院されました。



左の前足は、力が入らず下垂してます(下写真黄色丸)



チンチラの平均的寿命は10~20歳と言われてます。

平均寿命の幅が広いのは、飼育環境で疾病罹患率の変動が大きいという事でしょう。

適切な環境で飼育し、疾病予防(歯牙疾患、消化器疾患など)に留意していただければ、チンチラは思いのほか犬猫以上に長寿な動物です。

今回のハク君は年齢が19歳ということで、かなりの高齢です。

チンチラは20歳で人間の年齢に換算すると97~100歳になります。

当然のことながら骨の硬度は脆くなっているでしょうから、骨折が気になります。

まずは、レントゲン撮影しました。



明らかに左の前腕骨(橈尺骨)が骨折しているのがお分かり頂けると思います(下写真黄色丸)。





骨折部位を如何に整復するかが問題です。

ハク君が高齢である点、加えて橈尺骨の骨髄内径が1.0㎜に満たない点から骨髄ピンによる内固定法は困難です。

創外固定法による整復も考慮しましたが、19歳という高齢であり、創外ピンを固定するパテの重さのストレスに耐えられるかという心配もあり止めました。

飼い主様と相談した結果、ギプスによる外固定法を提案させて頂きました。

過去の記事でチンチラの上腕骨骨折(外固定法による整復法)を載せていますので、興味のある方はクリックして下さい。

前腕骨外固定の手法は、上腕骨骨折とほぼ同じです。

ハク君に全身麻酔を施します。

イソフルランを麻酔導入箱に流します。



数分で麻酔導入は完了です。



外固定のキャスト材として、成形可能な熱可塑性材レナサーム®を使用します。

必要とするサイズにレナサーム®を切りそろえ、熱湯中に浸漬します。

レナサームは65℃以上のお湯で軟化して、冷却することで硬化が開始されます。

下写真は熱湯中に浸漬中のレナサーム®です。



ガスマスク装着し、イソフルラン単独で全身麻酔を施しています。



骨折部位の剃毛をバリカンで行います。



下写真の黄色丸が骨折による内出血です。



黄色矢印は骨折部位を示します。





患肢の内外側にサージカルテープを貼り、後に外固定のずれの調整に活用します。

骨折部位の皮下組織・筋肉を、時間をかけてストレッチングを実施して、骨折部の整復を行います。

この骨折部の整復は指先による感覚での整復でレントゲン透視下によるものではありません。



ある程度ストレッチングで筋肉がほぐれたところで、レナサームを装着します。



レナサームでスプリント(外固定のためのフレーム)を作成します。





レナサームが硬化する前にテーピングを実施します。



外固定が完了して、最終的に自傷保護のために弾性包帯ラップでスプリントを巻きます。





イソフルランによる維持麻酔を切り、酸素吸入してます。



麻酔から覚醒したハク君です。

患部を齧らないようにyoke collar(マフラー)を作成しました。





覚醒後にICUに入り、歩行するハク君です。

ぎこちないですが何とか患肢で荷重出来ています。





その後、ハク君は自宅療養して頂き、定期的に患肢のチェックを受けて頂きました。



下レントゲンは1か月後の患部です。

まだ骨折部を架橋する仮骨は形成されていません。





続いて、2か月後の患部です。

骨皮質に膨隆する形で仮骨が形成されてます。

しかし、骨折部の仮骨架橋は出来ていません。





術後3か月のハク君です。

スプリントにも馴染んで日常生活は問題なく送れているようです。

砂浴び時の砂が患部のテープに付いてます。





下レントゲン写真は3か月後で骨折部に仮骨が形成されており、まだ一部不完全ではありますが架橋も進行しています。





術後5か月のハク君です。

日常生活では健常時と同じくらいに運動性も戻りました。

そろそろスプリントを外して治療も終了出来そうです。





下写真をご覧頂くと骨折部の仮骨架橋も完成されており、骨癒合は完了しています。

加えて癒合部の再構築も進行してるようです。






19歳という高齢での骨折のため、骨折部癒合不全が懸念されましたが、最終的に骨折は修復できました。

完治にほぼ5か月を要しました。

これは、飼い主様の愛情ある看護あってのことです。

飼い主様、ご苦労様でした。

ハク君にしても長い期間にわたり、スプリントを装着し、不快で不便な思いをされていたと思います。

人間同様、高齢動物は骨密度が加齢とともに低下し、運動能力もおぼつかなくなり、容易に骨折します。

そのため、高齢動物の飼い主の皆様、飼育環境や室内での遊ばせ方にはご注意下さい。

ハク君、お疲れさまでした!







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投稿者 もねペットクリニック | 記事URL

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