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チンチラの疾病

2023年1月29日 日曜日

チンチラの脛骨骨折(創外固定法 その1)

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは、チンチラの後肢骨折の症例です。

今回は骨折の中でも斜骨折・粉砕骨折という整復に大変なケースで創外固定法を選択しました。


チンチラのしずくちゃん(雌、1歳8か月齢、体重480g)は朝起きた時に右後肢を跛行(びっこ)が認められるとのことで来院されました(下写真黄色丸)。



右後肢がぶらぶらしており、触診で骨折が疑われたので、早速レントゲン撮影しました。

下写真黄色丸が脛骨骨幹部の斜骨折及び骨折部が一部粉砕しています。

飼い主様は、何が原因で骨折になったか不明とのことです。

経験的には、ケージの床のスノコに足先を挟んで暴れたり、2階3階建てのケージから落下して骨折というケース事例が多いようです。



側面のレントゲン像です。



さて骨折部の整復法ですが、骨髄ピンによるな内固定法では、骨折部に縦に亀裂が入り十分な固定が望めないと思われました。

チンチラは非常に脛骨の幅が狭く(脛骨の太い所で約4㎜、骨髄腔は1㎜)、犬とは比較にならないくらい細い骨です。

そのため、骨プレートによる内固定にしても、規格のプレートのサイズでは使用できません。

結果、患部にメスを入れることなく、閉鎖的に外部から骨折部の近位端と遠位端を数本のピンで固定する創外固定法を選択しました。

エキゾッチクアニマルの骨折は個人的に創外固定法を選択することが多いです。

過去の記事に創外固定法についてコメントしていますので、宜しかったら参照下さい。(ウサギの橈尺骨骨折その2ウサギの橈尺骨骨折その3



しずくちゃんに全身麻酔を施します。

麻酔導入箱に入ってもらい、イソフルランを流します。





麻酔導入が完了し、箱から出して維持麻酔に変えます。



骨折部の体毛を剃毛します。



チンチラの体毛は柔らかく細いため、完全に剃毛するのが大変です。



下写真黄色丸は骨折部です。

骨髄が破壊され、内出血している(黄色丸)のがお分かり頂けると思います。



これから手術に移ります。

創外固定法は、ピンを骨折部を挟み込むように打ち込みます。

骨折部にメスを入れることなく実施するため、打ち込む位置を認識するには空間把握能力が問われるところです。



これからドリルでピンを打ち込んでいきます。





脛骨近位端をピンドリルで貫通してます。







レントゲンを参考にノギスでピン刺入の位置を決めます。



2本目のピンを刺入します。







次いで、骨折部を挟んで脛骨の足根関節寄りにピンを刺入します。



脛骨遠位端にピンを刺入します。





3本目のピンを刺入れたところでレントゲンを撮りました。

狙いをつけた部位にピンは入っています。



4本目のピンを刺入します。



後でこれらのピンをパテで固めますが、パテの硬化後の安定性を高めるために、ピンの刺入角度を少し変えて打ち込みました。



パテとピンの接触面積を増やすために、折り曲げたピンの長さを長めにしてペンチでカットします。





ピンの折り曲げは下写真のような形でまとめます。



ピンを4本刺入したところのレントゲン像です。

ピンを近位端と遠位端で牽引して、骨折部の整復(ストレッチング)を行います。

骨折してから、時間が経過すると筋肉が拘縮してストレッチングが困難となります。

骨折部が粉砕しているため(下写真黄色矢印)、この状態が整復の限界です。

この状態を維持するために速やかにパテでピンを固定します。



ピンにパテを盛り付けます。

エポキシパテ金属用®という固定素材を使用します。

当院では、このパテをエキゾチックアニマルの創外固定に使用することが多いです。



エポキシパテは、手で揉んで10分で完全に硬化しますので、手際よくピンに絡めながら盛り付けていきます。



後肢の内側と外側にパテの盛り付ける量的バランスを考慮して、均等に盛り付けていきます。



これで、パテの固定は終了です。

ピン刺入部には、皮膚からの雑菌汚染を予防する意味で、イソジンゲル®10%を塗布してます。





仕上げの状態でレントゲン撮影しました。

骨折部に仮骨が形成され、骨折間隙を埋めてくれるまで、安静に務めてもらうことになります。



パテがケージや食器にぶつかったりするとピンを介して衝撃が骨に伝達され、場合によっては骨のピン刺入部から亀裂が入る場合があります。

それを防ぐために、脱脂綿でパテを包んで緩衝材とします。



最後に粘着テープで内外側のパテを包んで終了です。







大変な手術でしたが、しずくちゃんは耐えてくれました。



イソフルランを切り、半覚醒の状態です。



麻酔から覚醒したしずくちゃんです。



骨折の手術は、骨折部が癒合するまで安心は出来ません。

創外固定法は患部を切開して、観血的に手術を行うわけではないため、ある意味地味な手術かもしれません。

骨髄ピンや骨プレートで内固定する方法と比較して、術後の経過観察や創外ピンのメンテナンスが煩雑な点が短所と言えるかもしれません。

チンチラのように3次元的な動きをする動物は、パテで固められた創外ピンが各種障害物と干渉します。

チンチラからすれば、重いおもりを足にぶら下げているようなもので、限りなくストレスを感じていると思われます。



脛骨骨折でも単純な横骨折であれば、1か月位で骨癒合まで期待できると思います。

しずくちゃんの場合は、骨癒合まで数か月かかると思われますので、飼主様にしっかりお世話して頂く必要があります。


しずくちゃんが、完全に治癒するまでの経過をチンチラの脛骨骨折(創外固定法 その2)として近日中に載せますので、ご期待ください。

それでは、しずくちゃん、お疲れ様でした!



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投稿者 もねペットクリニック

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