アーカイブシリーズ
2024年2月 4日 日曜日
デグーマウスのリンパ腫
こんにちは 院長の伊藤です。
本日ご紹介しますのは、デグーマウスのリンパ腫です。
リンパ腫は血液の腫瘍です。
白血球中のリンパ球がガン化して発症します。
発生する部位はリンパ系組織とリンパ外臓器に分かれます。
リンパ系組織はリンパ節、胸腺、脾臓、扁桃などです。
リンパ外組織は骨髄や肺などの臓器です。
リンパ系の組織は全身に分布していますので、リンパ腫は全身どの部位でも発症する可能性があります。
デグーマウスのたけちゃん(雄、3歳、体重185g)は左の頚部に大きな腫瘤が出来て、頭部の動きもままならないとのことで来院されました。
下写真、赤矢印の部位が問題の腫瘤です。
細胞診を実施しましたが、細菌と炎症系の細胞(白血球やマクロファージ、リンパ球)が大部分を占める構成であり、腫瘍細胞は確認できませんでした。
エキゾチックアニマルの場合、腫瘤の表層部は、自ら掻破したりして細菌感染を起こしている場合が多いため、腫瘍自体が基底部に隠れている場合もあります。
腫瘍が大きすぎるということもあり、首を曲げての摂食も満足に出来ません。
少しでもたけちゃんのストレスを軽くしたいという飼主様の意向です。
結論として、腫瘍を可能なだけでも外科的に摘出するということになりました。
たけちゃんを全身麻酔します。
イソフルランで麻酔導入を行います。
この大きさの腫瘤(下写真黄色丸)になりますと前足で餌を把持することは困難と思われます。
麻酔導入が効いて来たようです。
腫瘤が大きいため、横になっても頭部が持ち上がってしまいます。
イソフルランを維持麻酔に変えて電極版の上にたけちゃんを乗せます。
腫瘍で顔面が隠れてます。
電気メス(モノポーラ)を使用して腫瘤の外周から皮膚を切開して行きます。
続いてバイポーラを使用して皮下組織を止血・切開します。
表層部の腫瘤(下写真黄色矢印)は硬結した脂肪組織のようです。
その下の腫瘤層(下写真白矢印)は血管に富んだ脆弱な組織です。
この脆弱な腫瘤の裏側には太い動脈が走行していましたので、バイクランプでシーリングします。
さらに続いて、バイポーラで切除を続けます。
切除出来る範囲の腫瘤を摘出完了しました。
すぐ下には頸静脈が走行しています。
思いのほか、根深い腫瘤でしたので広範囲の皮膚を切除することとなりました。
そのため、皮膚縫合のための縫い代を十分に取るため、皮膚と皮下組織の間を外科剪刃で鈍性に剥離していきます。
耳根部にまで切除域が及んでいます。
5-0ナイロン糸で皮膚を縫合します。
縫合部の緊張が高いと皮膚が簡単に裂けてしまうため、かなり細かく縫合します。
皮膚縫合は終了です。
麻酔から覚醒直後のたけちゃんです。
縫合部の血行障害もなさそうです。
摘出した腫瘤です。
直径5㎝ほどありました。
下写真は腫瘤の表層部です。
腫瘤の裏側から見た写真です。
病理検査に出した結果、大細胞型リンパ腫との診断でした。
高倍率の写真です。
独立円形細胞腫瘍が認められます。
核仁が明瞭で、核の大小不同を示しています。
核の分裂が非常に活発で増殖活性の高い腫瘍であるため、摘出した患部の局所再発は免れないであろうとの病理医からのコメントを頂きました。
加えて、体腔内臓器への腫瘍の波及も考慮する必要があります。
たけちゃんの術後経過は患部の疼痛のためか、食欲不振が認められました。
縫合部が広範囲にわたってるため、縫合糸で口が引っ張られて、左側の開口運動がしづらそうです。
大きな腫瘍を摘出できたので、四肢の動きは円滑に出来るようになりました。
残念ながら、術後4日目にして、たけちゃんは逝去されました。
リンパ腫ですから体腔内に腫瘍の転移もあったでしょうし、手術前までギリギリのところで頑張っていたのだと思います。
今回はリンパ腫という全身性の腫瘍ですから、外科的な皮膚腫瘍摘出で全ての治療が終了とはいきません。
おそらく、たけちゃんの術後経過が良好でも、化学療法が必要となったと思われます。
とにかく小さくても腫瘍の可能性を感じられたら、病院を受診して下さい。
小さなエキゾッチクアニマルであるほどに、早めの対処をすべきだと思います。
何しろ、犬の体表面積の何十分の1という小さな動物達です。
特に外科的摘出で解決できる腫瘍であるほどに、小さなサイズの腫瘍であれば、腫瘍の種類によりますが完治の可能性はあります。
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リンパ腫は血液の腫瘍です。
白血球中のリンパ球がガン化して発症します。
発生する部位はリンパ系組織とリンパ外臓器に分かれます。
リンパ系組織はリンパ節、胸腺、脾臓、扁桃などです。
リンパ外組織は骨髄や肺などの臓器です。
リンパ系の組織は全身に分布していますので、リンパ腫は全身どの部位でも発症する可能性があります。
デグーマウスのたけちゃん(雄、3歳、体重185g)は左の頚部に大きな腫瘤が出来て、頭部の動きもままならないとのことで来院されました。
下写真、赤矢印の部位が問題の腫瘤です。
細胞診を実施しましたが、細菌と炎症系の細胞(白血球やマクロファージ、リンパ球)が大部分を占める構成であり、腫瘍細胞は確認できませんでした。
エキゾチックアニマルの場合、腫瘤の表層部は、自ら掻破したりして細菌感染を起こしている場合が多いため、腫瘍自体が基底部に隠れている場合もあります。
腫瘍が大きすぎるということもあり、首を曲げての摂食も満足に出来ません。
少しでもたけちゃんのストレスを軽くしたいという飼主様の意向です。
結論として、腫瘍を可能なだけでも外科的に摘出するということになりました。
たけちゃんを全身麻酔します。
イソフルランで麻酔導入を行います。
この大きさの腫瘤(下写真黄色丸)になりますと前足で餌を把持することは困難と思われます。
麻酔導入が効いて来たようです。
腫瘤が大きいため、横になっても頭部が持ち上がってしまいます。
イソフルランを維持麻酔に変えて電極版の上にたけちゃんを乗せます。
腫瘍で顔面が隠れてます。
電気メス(モノポーラ)を使用して腫瘤の外周から皮膚を切開して行きます。
続いてバイポーラを使用して皮下組織を止血・切開します。
表層部の腫瘤(下写真黄色矢印)は硬結した脂肪組織のようです。
その下の腫瘤層(下写真白矢印)は血管に富んだ脆弱な組織です。
この脆弱な腫瘤の裏側には太い動脈が走行していましたので、バイクランプでシーリングします。
さらに続いて、バイポーラで切除を続けます。
切除出来る範囲の腫瘤を摘出完了しました。
すぐ下には頸静脈が走行しています。
思いのほか、根深い腫瘤でしたので広範囲の皮膚を切除することとなりました。
そのため、皮膚縫合のための縫い代を十分に取るため、皮膚と皮下組織の間を外科剪刃で鈍性に剥離していきます。
耳根部にまで切除域が及んでいます。
5-0ナイロン糸で皮膚を縫合します。
縫合部の緊張が高いと皮膚が簡単に裂けてしまうため、かなり細かく縫合します。
皮膚縫合は終了です。
麻酔から覚醒直後のたけちゃんです。
縫合部の血行障害もなさそうです。
摘出した腫瘤です。
直径5㎝ほどありました。
下写真は腫瘤の表層部です。
腫瘤の裏側から見た写真です。
病理検査に出した結果、大細胞型リンパ腫との診断でした。
高倍率の写真です。
独立円形細胞腫瘍が認められます。
核仁が明瞭で、核の大小不同を示しています。
核の分裂が非常に活発で増殖活性の高い腫瘍であるため、摘出した患部の局所再発は免れないであろうとの病理医からのコメントを頂きました。
加えて、体腔内臓器への腫瘍の波及も考慮する必要があります。
たけちゃんの術後経過は患部の疼痛のためか、食欲不振が認められました。
縫合部が広範囲にわたってるため、縫合糸で口が引っ張られて、左側の開口運動がしづらそうです。
大きな腫瘍を摘出できたので、四肢の動きは円滑に出来るようになりました。
残念ながら、術後4日目にして、たけちゃんは逝去されました。
リンパ腫ですから体腔内に腫瘍の転移もあったでしょうし、手術前までギリギリのところで頑張っていたのだと思います。
今回はリンパ腫という全身性の腫瘍ですから、外科的な皮膚腫瘍摘出で全ての治療が終了とはいきません。
おそらく、たけちゃんの術後経過が良好でも、化学療法が必要となったと思われます。
とにかく小さくても腫瘍の可能性を感じられたら、病院を受診して下さい。
小さなエキゾッチクアニマルであるほどに、早めの対処をすべきだと思います。
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2024年2月 3日 土曜日
ラットの紅い涙
こんにちは 院長の伊藤です。
本日ご紹介しますのは、ラットの紅い涙です。
キリスト像の血の涙のような、宗教的な話題でもありません。
ファンシーラットのぽっけちゃん(雌、8か月)は眼から紅い涙を流しているとのことで来院されました。
診る限り眼球や瞼の外傷は見当たりません。
下写真黄色丸が赤い涙が流れた後です。
眼球を洗浄しました。
瞼周辺の紅いものも一緒に拭き取ってみます。
一見すると血液の様に思えますが、実はこれはラットによく現れるポルフィリンの涙です。
ぽっけちゃんは眼の周辺を洗浄すると特に問題はありません。
ポルフィリンとは有機化合物でピロールが4つ組み合わさって出来た環状構造を持つ物質です。
古代から使用されてきた貝紫(ポルフィラ)がその名の由来とされてます。
このポルフィリンはハーダー氏腺(涙腺と同様に存在する眼の分泌腺)から分泌されます。
正確には、このポルフィリンはhematoporphyrinという誘導体で光と反応して赤色を発する特性があります。
hematoporphyrin誘導体は現在、腫瘍に対する光線力学療法に用いられてます。
この誘導体は腫瘍細胞によく吸収される性質があり、光を当てることで活性化して腫瘍細胞を殺傷する効果が認められてます。
一般的には、ラットはストレスが溜まると紅い涙を流すとされます。
ストレス時にハーダー氏腺からのポルフィリン分泌量が増えるようです。
下は、ポッケちゃんに次いで同じく赤い涙で来院されたおこめちゃん(雌、10か月)です。
黄色丸の箇所は同じく赤い涙の流れた跡が分かります。
ポルフィリンはウサギでも尿中に排泄されて赤色尿・血尿と間違われることがあります。
ラットの場合は分泌されるのがハーダー氏腺という眼の分泌腺のため、血の涙もしくは鼻涙管を通じて鼻血ではないかと受診されるケースが多いです。
いずれにしても、疾病ではありませんのでご心配なく!
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キリスト像の血の涙のような、宗教的な話題でもありません。
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診る限り眼球や瞼の外傷は見当たりません。
下写真黄色丸が赤い涙が流れた後です。
眼球を洗浄しました。
瞼周辺の紅いものも一緒に拭き取ってみます。
一見すると血液の様に思えますが、実はこれはラットによく現れるポルフィリンの涙です。
ぽっけちゃんは眼の周辺を洗浄すると特に問題はありません。
ポルフィリンとは有機化合物でピロールが4つ組み合わさって出来た環状構造を持つ物質です。
古代から使用されてきた貝紫(ポルフィラ)がその名の由来とされてます。
このポルフィリンはハーダー氏腺(涙腺と同様に存在する眼の分泌腺)から分泌されます。
正確には、このポルフィリンはhematoporphyrinという誘導体で光と反応して赤色を発する特性があります。
hematoporphyrin誘導体は現在、腫瘍に対する光線力学療法に用いられてます。
この誘導体は腫瘍細胞によく吸収される性質があり、光を当てることで活性化して腫瘍細胞を殺傷する効果が認められてます。
一般的には、ラットはストレスが溜まると紅い涙を流すとされます。
ストレス時にハーダー氏腺からのポルフィリン分泌量が増えるようです。
下は、ポッケちゃんに次いで同じく赤い涙で来院されたおこめちゃん(雌、10か月)です。
黄色丸の箇所は同じく赤い涙の流れた跡が分かります。
ポルフィリンはウサギでも尿中に排泄されて赤色尿・血尿と間違われることがあります。
ラットの場合は分泌されるのがハーダー氏腺という眼の分泌腺のため、血の涙もしくは鼻涙管を通じて鼻血ではないかと受診されるケースが多いです。
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2024年2月 2日 金曜日
レミングの耳垢腺癌(集団自殺説を含む)
こんにちは 院長の伊藤です。
レミングという動物をご存知でしょうか?
レミングはカナダ北部や北欧のツンドラ地方に棲息する小型齧歯類です。
体長は7~15㎝で体重は30~112gと報告されています。
冬眠はせず、越冬します。
体重の1.5倍の餌を毎日食べる大食漢だそうです。
このレミングは一定の周期で大量発生します。
不思議なことに大量発生の翌年には個体数が激減します。
こうしたレミングの極端な個体数の激増と激減は3~4年周期で起こるそうです。
大増殖した結果、レミングは新たな住処と餌を求めて集団移住をします。
その集団移住時に一部の個体が海に落ちて溺れ死ぬことがあり、この事象を以てレミングの集団自殺説が流布されています。
集団で川を渡ったり、崖から海に落ちる個体がいたりで絵的にはハメルーンの笛吹き男を彷彿とさせます。
加えてレミングの集団自殺説に拍車をかけたのがウォルト・ディズニーのドキュメンタリー(白い荒野)でレミングが崖から落ちるシーンや溺れ死んだ大量のレミングのシーンを上映したそうです。
実際は、自殺説は関係者の思惑による捏造で、あくまで集団移住時の事故であるとの見解が現在はなされています。
前説が長くなって申し訳ありません。
そんなレミングですが、本日ご紹介しますのは琥太郎君(3歳、雄)です。
琥太郎君は右頬が潰瘍になって肉がむき出しになっているとのことで来院されました。
下写真にありますように痛々しい状態です。
写真では撮影していないのですが、外耳道の末端部が潰瘍上になっており皮膚を穿孔して頬まで炎症が拡大しているようです。
患部を早速、細胞診しました。
上写真の黄色丸で囲んだ細胞群は、好塩基性の細胞質と著しい大小不同を呈する大型類円形核を有しています。
これは、以前同じく小型齧歯類のジャービルの腫瘍症例で報告した細胞と非常に似ています。
興味のある方はこちらをご覧ください。
腫瘍の発生部位から耳垢腺癌と診断いたしました。
この時点で琥太郎君は全身状態は良好で、お持ちいただいたケージ内の回し車で遊んだり出来ていました。
外科的な処置は不可能なので、内科的治療で経過を見ていくこととしました。
抗癌作用のあるD-フラクションや抗生剤の投薬を処方しました。
この5日後に残念ながら、琥太郎君は急逝されました。
レミングもジャービルも発症する腫瘍は同じであることを再確認させられました。
いろんな伝説と誤解の中で翻弄されてきたレミングですが、私からみると愛くるしい齧歯類です。
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レミングという動物をご存知でしょうか?
レミングはカナダ北部や北欧のツンドラ地方に棲息する小型齧歯類です。
体長は7~15㎝で体重は30~112gと報告されています。
冬眠はせず、越冬します。
体重の1.5倍の餌を毎日食べる大食漢だそうです。
このレミングは一定の周期で大量発生します。
不思議なことに大量発生の翌年には個体数が激減します。
こうしたレミングの極端な個体数の激増と激減は3~4年周期で起こるそうです。
大増殖した結果、レミングは新たな住処と餌を求めて集団移住をします。
その集団移住時に一部の個体が海に落ちて溺れ死ぬことがあり、この事象を以てレミングの集団自殺説が流布されています。
集団で川を渡ったり、崖から海に落ちる個体がいたりで絵的にはハメルーンの笛吹き男を彷彿とさせます。
加えてレミングの集団自殺説に拍車をかけたのがウォルト・ディズニーのドキュメンタリー(白い荒野)でレミングが崖から落ちるシーンや溺れ死んだ大量のレミングのシーンを上映したそうです。
実際は、自殺説は関係者の思惑による捏造で、あくまで集団移住時の事故であるとの見解が現在はなされています。
前説が長くなって申し訳ありません。
そんなレミングですが、本日ご紹介しますのは琥太郎君(3歳、雄)です。
琥太郎君は右頬が潰瘍になって肉がむき出しになっているとのことで来院されました。
下写真にありますように痛々しい状態です。
写真では撮影していないのですが、外耳道の末端部が潰瘍上になっており皮膚を穿孔して頬まで炎症が拡大しているようです。
患部を早速、細胞診しました。
上写真の黄色丸で囲んだ細胞群は、好塩基性の細胞質と著しい大小不同を呈する大型類円形核を有しています。
これは、以前同じく小型齧歯類のジャービルの腫瘍症例で報告した細胞と非常に似ています。
興味のある方はこちらをご覧ください。
腫瘍の発生部位から耳垢腺癌と診断いたしました。
この時点で琥太郎君は全身状態は良好で、お持ちいただいたケージ内の回し車で遊んだり出来ていました。
外科的な処置は不可能なので、内科的治療で経過を見ていくこととしました。
抗癌作用のあるD-フラクションや抗生剤の投薬を処方しました。
この5日後に残念ながら、琥太郎君は急逝されました。
レミングもジャービルも発症する腫瘍は同じであることを再確認させられました。
いろんな伝説と誤解の中で翻弄されてきたレミングですが、私からみると愛くるしい齧歯類です。
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投稿者 もねペットクリニック | 記事URL
2024年2月 1日 木曜日
ケヅメリクガメの尿酸結石
こんにちは 院長の伊藤です。
本日ご紹介しますのは、リクガメの尿酸結石の症例です。
一般にトカゲやカメの膀胱内には尿酸結石が発生しやすいとされます。
もともと爬虫類は尿酸塩を尿中に排泄しますので、尿酸塩が結晶化して膀胱内で結石になる可能性が高いです。
今回は、膀胱内の尿酸結石ではなく、総排泄腔で確認された結石の症例です。
ケヅメリクガメのかめまる君(雄、年齢不明、体重9.0kg)は総排泄腔から石が出てきたとの事で来院されました。
リクガメも体重が10㎏くらいになると迫力があります。
ケヅメリクガメはセネガルからエチオピアにかけてアフリカ中央部に分布するリクガメです。
成亀では甲羅の長さが70㎝以上、体重は60kg以上になると言われています。
成長速度が非常に早く、大型の飼育設備が必要とされます。
早速、レントゲン撮影を実施しました。
下写真の黄色丸は総排泄腔(クロアカ)に溜まっている尿酸結石です。
一般にクロアカ結石とも言い、尿酸塩の結晶化したケースが多いです。
全身状態のうち脱水が関与して、尿が濃縮した結果、尿中に存在する尿酸塩が総排泄腔内で結晶化が進行し、結石となったと思われます。
ひょっとしたら、総排泄腔内ではなく、膀胱内で形成された尿酸結石が総排泄腔へと降りてきたのかもしれません。
いづれにせよ、このまま結石が大きくなると排尿障害や総排泄腔炎(クロアカ炎)を引き起こす可能性があります。
結石は総排泄腔に存在していますので、先端が丸い把持用の鉗子(下写真)を用いて結石を取り出すことにしました。
かめまる君を仰臥姿勢にとり、総排泄腔から鉗子を挿入していきます。
飼い主様にお持ちいただいている尻尾の付根が総排泄腔の入り口となります。
鉗子を挿入します。
結石を鉗子で把持した感触としては、柔らかい紙粘土のような感じです。
取り出した尿酸結石です。
拡大写真です。
その直後、かめまる君は取り残した結石を排泄しました。
下写真は回収した尿酸結石です。
膀胱内で形成された尿酸結石は脱水や食餌中の過剰な蛋白質やカリウム、膀胱内容の排泄現象などにより、高密度な大型の結石に発達する場合があります。
膀胱結石になると腹甲の骨切り手術をしてから膀胱切開をして、結石除去する必要があります。
今回は、総排泄腔に留まっていた脆弱な尿酸結石でしたから、かめまる君に鎮静処置も必要なく、無事除去できたのは幸いでした。
かめきち君、お疲れ様でした!
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本日ご紹介しますのは、リクガメの尿酸結石の症例です。
一般にトカゲやカメの膀胱内には尿酸結石が発生しやすいとされます。
もともと爬虫類は尿酸塩を尿中に排泄しますので、尿酸塩が結晶化して膀胱内で結石になる可能性が高いです。
今回は、膀胱内の尿酸結石ではなく、総排泄腔で確認された結石の症例です。
ケヅメリクガメのかめまる君(雄、年齢不明、体重9.0kg)は総排泄腔から石が出てきたとの事で来院されました。
リクガメも体重が10㎏くらいになると迫力があります。
ケヅメリクガメはセネガルからエチオピアにかけてアフリカ中央部に分布するリクガメです。
成亀では甲羅の長さが70㎝以上、体重は60kg以上になると言われています。
成長速度が非常に早く、大型の飼育設備が必要とされます。
早速、レントゲン撮影を実施しました。
下写真の黄色丸は総排泄腔(クロアカ)に溜まっている尿酸結石です。
一般にクロアカ結石とも言い、尿酸塩の結晶化したケースが多いです。
全身状態のうち脱水が関与して、尿が濃縮した結果、尿中に存在する尿酸塩が総排泄腔内で結晶化が進行し、結石となったと思われます。
ひょっとしたら、総排泄腔内ではなく、膀胱内で形成された尿酸結石が総排泄腔へと降りてきたのかもしれません。
いづれにせよ、このまま結石が大きくなると排尿障害や総排泄腔炎(クロアカ炎)を引き起こす可能性があります。
結石は総排泄腔に存在していますので、先端が丸い把持用の鉗子(下写真)を用いて結石を取り出すことにしました。
かめまる君を仰臥姿勢にとり、総排泄腔から鉗子を挿入していきます。
飼い主様にお持ちいただいている尻尾の付根が総排泄腔の入り口となります。
鉗子を挿入します。
結石を鉗子で把持した感触としては、柔らかい紙粘土のような感じです。
取り出した尿酸結石です。
拡大写真です。
その直後、かめまる君は取り残した結石を排泄しました。
下写真は回収した尿酸結石です。
膀胱内で形成された尿酸結石は脱水や食餌中の過剰な蛋白質やカリウム、膀胱内容の排泄現象などにより、高密度な大型の結石に発達する場合があります。
膀胱結石になると腹甲の骨切り手術をしてから膀胱切開をして、結石除去する必要があります。
今回は、総排泄腔に留まっていた脆弱な尿酸結石でしたから、かめまる君に鎮静処置も必要なく、無事除去できたのは幸いでした。
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