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ハリネズミの疾病

2019年3月28日 木曜日

ハリネズミの組織球性肉腫

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは、ヨツユビハリネズミの組織球性肉腫です。

ヨツユビハリネズミには各種の腫瘍が発生しますが、この組織球性肉腫は骨髄起源の樹状細胞由来と考えられている悪性腫瘍です。

特にイヌでは多く報告されている腫瘍です。

当院HPでも犬の脾臓全摘手術(組織球性肉腫)として症例報告しています。

興味のある方は、こちらをクリックして下さい。



ヨツユビハリネズミのまるちゃん(2歳6か月、雌、体重450g)は背中に腫瘤が出来たとのことで来院されました。

当院のヨツユビハリネズミの患者様は600件ほどみえますが、その中でもこのまるちゃんは穏やかな性格で体を丸めることのほとんどない希少なタイプです。



腫瘍の可能性を考慮して細胞診を実施しました。

病理医からは、組織球増加を伴う慢性炎症との診断を受けました。

その後抗生剤の投薬を継続しましたが、結局患部はさらに増大し、3か月近く経過しました。

残念ながら、細胞診の結果と病変部の真実が異なることは、日常的に経験するところです。

このままでは、何の解決にも至りませんので飼い主様の同意を得て、外科的に切除することとなりました。

背部の腫瘤はかなり大きいため、針をカットして出来る限り術野を広く取る必要があります。

そのため、ニッパーを使用して長時間かかりますが針の切断を実施しました。







下写真の黄色丸が腫瘤を示します。

背部の四分の一くらいの面積を占める大きさです。





腫瘤は高さもあり、内部が柔軟な組織で充実しています。





まるちゃんを麻酔導入箱に入ってもらい、イソフルランを流します。



5分ほどで麻酔導入は完了しました。

麻酔導入箱からまるちゃんを出して、維持麻酔に切り替えます。



生体情報モニターのセンサー等を装着します。





この体勢で手術を実施します。





出来る限りの腫瘤周りのマージンを取りたいのですが、身体の小さな動物であるため限界があります。

縫い代を最低限、確保するために腫瘤の外周を皮膚切開して行きます。





電気メス(バイポーラ)を使用して皮膚を慎重に剥離します。



皮膚に付着して腫瘤が摘出されつつあります。





腫瘤への太い栄養血管が認められます(下写真黄色矢印)。



念のため、栄養血管を縫合糸で結紮離断します。



栄養血管の近位端・遠位端を縫合糸で結紮しているところです。





結紮部をメスでカットします。





無事、腫瘤を摘出出来ました。



ところが、またその下の皮下組織に新たな腫瘤が見つかりました。

皮膚の表層部の腫瘤に連結するような形で球状の腫瘤が真下に控えています。



私の指で把持しているところが新たな腫瘤です。



この腫瘤も同じ要領で摘出します。









腫瘤の基底部(背筋に近い部位)に太い血管が認識されたので、バイクランプでシーリングします。



最後はバイポーラでカットして摘出完了です。



摘出後の患部です。

広範囲の皮膚、深部の皮下組織まで摘出領域を取りました。

摘出時の出血は最小限に抑えることが出来ました。

これから皮下組織・皮膚の縫合を始めます。



極力、死腔を作らないように皮下組織に合成吸収糸をかけて縫合します。



皮下組織の縫合が完了したところです。



最後に5‐0ナイロン糸で皮膚縫合します。





これで手術は終了となります。



リンゲル液を用いて皮下輸液をします。



数分後には、まるちゃんは覚醒し始めました。



手術中、心拍数、血中酸素分圧共に安定していました。



麻酔から覚醒したばかりのまるちゃんです。



覚醒後に直ぐにフードを食べ始めています。



摘出した皮膚側の腫瘤です。



腫瘤の裏側です。



腫瘤に割を入れました。



さらにその下に存在していた腫瘤です。



割を入れたところです。



摘出した2個の腫瘤です。

2個並べるとまるちゃんの皮下組織は広い部分が占められていたのが分かります。



摘出した腫瘤を病理検査に出しました。

その結果、2個ともに組織球性肉腫であることが判明しました。

下写真は200倍の腫瘍病理像です。



さらに400倍の病理像です。

シート状に増殖する多形性・異型性を示す類円形・多角形・紡錘形の腫瘍細胞により構成されています。



組織球性肉腫の特徴は極めて悪性度が高く、急速に全身性に播種、転移します。

イヌでは、局所性組織球性肉腫と播種性組織球性肉腫に分かれ(樹状細胞由来)、その一方脾臓に発生することの多い血液細胞を貪食する血球貪食性組織球性肉腫(マクロファージ由来)も存在します。

イヌにおいては、局所性の場合は外科的切除プラス抗がん剤の治療で生存中央期間は128日、播種性は全身性のため抗がん剤の使用で生存中央期間は106日とも報告されています。

イヌにおいても病理学的分類が明瞭に分類されていない現状なのですが、ヨツユビハリネズミにおいてはさらに混迷しています。

今回のまるちゃんの組織球性肉腫がどのタイプなのかも不明なのですが、少なくても今後の転移が予想されます。

まるちゃんは術後の経過は良好で、術後3日で退院して頂きました。



術後2週目で抜糸で来院されたまるちゃんです。

皮膚の癒合は良好です。



患部の拡大写真です。



術部も良好で、元気そうなまるちゃんです。





ところが、術後1か月くらい経過した頃から、まるちゃんは緑便や緑尿が出るようになり、元気消失してきました。

当初懸念していた腫瘍の転移が症状として出て来たと思われます。

レントゲン撮影を実施したところ、肝臓の腫大・肺野の炎症像が確認されました。

内科的療法をその後、約1か月継続して頂きましたが、残念ながら力及ばずにまるちゃんは逝去されました。

とても愛くるしい子で、忘れることは出来ません。

腫瘍との戦いはどの動物でも厳しいものです。

しかし、皆が可能な限り長生きして天寿を全うできるように、努力していきたいと思います。





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投稿者 院長

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