アーカイブシリーズ
2023年12月21日 木曜日
トイプードルの橈尺骨骨折(骨プレート内固定法 その1)
こんにちは 院長の伊藤です。
一般にトイ種と呼ばれる小型犬種では、日常的に前腕部骨折に遭遇します。
今回は、トイプードル骨折とも呼ばれる橈尺骨骨折の症例をご紹介します。
体重が1.7kg足らずで今年1歳になるルルちゃんは飛び降りが原因で橈尺骨を骨折してしまいました。
レントゲン上で橈尺骨遠位端の骨折がお分かり頂けると思います。
ルルちゃんの橈骨は幅が6㎜で厚さが3~4㎜と非常に薄く脆い骨質です。
骨折の整復に当たり、プレートによる内固定を選択しました。
骨折端が手首の関節(手根関節)に近いため普通のプレートでなく、T字型のプレートを使用することとしました。
下の写真にあるタイプです。橈骨固定に必要な分をカットして使用します。
早速、手術に移ります。
骨折端を含めて、皮膚及び皮下組織、筋膜と切開していきます。
骨折部をプレート用骨保持鉗子で固定します。
レントゲンではこんな感じです。
T字プレートを適切な長さにカットして骨折部にあてます。
骨スクリューを入れるための1.5㎜のネジ穴をドリルで作ります。
橈骨遠位端骨折の場合はどうしても手根関節近くをアプローチするため、靭帯やら動脈やら細かく選り分けてのプレート装着のため、とても気を使います。
プレート固定も何とか無事終わり、レントゲンで確認しました。
10日ほど入院して頂き、無事ルルちゃんは退院されました。
暫くはスプリント固定の生活が続きますが、頑張って頂きます!
トイ犬種の橈骨骨折の癒合が遅い原因は、犬自体が活動的で落ち着きがなく、骨折部が不安定である点です。
また橈骨骨髄腔が非常に狭く、骨幹部から骨端部の血管密度が低いためとも言われています。
橈骨骨折の手術を受けても骨癒合不全に陥るケースも多いです。
まずはトイ犬種を飼われている飼主様は、犬を落とさない! 踏みつけない!ことをくれぐれもご注意ください。
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一般にトイ種と呼ばれる小型犬種では、日常的に前腕部骨折に遭遇します。
今回は、トイプードル骨折とも呼ばれる橈尺骨骨折の症例をご紹介します。
体重が1.7kg足らずで今年1歳になるルルちゃんは飛び降りが原因で橈尺骨を骨折してしまいました。
レントゲン上で橈尺骨遠位端の骨折がお分かり頂けると思います。
ルルちゃんの橈骨は幅が6㎜で厚さが3~4㎜と非常に薄く脆い骨質です。
骨折の整復に当たり、プレートによる内固定を選択しました。
骨折端が手首の関節(手根関節)に近いため普通のプレートでなく、T字型のプレートを使用することとしました。
下の写真にあるタイプです。橈骨固定に必要な分をカットして使用します。
早速、手術に移ります。
骨折端を含めて、皮膚及び皮下組織、筋膜と切開していきます。
骨折部をプレート用骨保持鉗子で固定します。
レントゲンではこんな感じです。
T字プレートを適切な長さにカットして骨折部にあてます。
骨スクリューを入れるための1.5㎜のネジ穴をドリルで作ります。
橈骨遠位端骨折の場合はどうしても手根関節近くをアプローチするため、靭帯やら動脈やら細かく選り分けてのプレート装着のため、とても気を使います。
プレート固定も何とか無事終わり、レントゲンで確認しました。
10日ほど入院して頂き、無事ルルちゃんは退院されました。
暫くはスプリント固定の生活が続きますが、頑張って頂きます!
トイ犬種の橈骨骨折の癒合が遅い原因は、犬自体が活動的で落ち着きがなく、骨折部が不安定である点です。
また橈骨骨髄腔が非常に狭く、骨幹部から骨端部の血管密度が低いためとも言われています。
橈骨骨折の手術を受けても骨癒合不全に陥るケースも多いです。
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2023年12月19日 火曜日
ウーパールーパーの異物誤飲(床材としての石)
こんにちは 院長の伊藤です。
本日ご紹介しますのは、ウーパールーパーの異物誤飲です。
両生類はウーパールーパーであれ、カエルであれ、異物誤飲は臨床の現場ではよく遭遇します。
特にウーパー君達は口腔内は広いのですが、咽頭部から食道にかけては、カエルと比較して狭くなってます。
そのため、咽頭部で異物を誤飲した場合は、口腔内でつかえてしまう事が多いです。
過去にウーパールーパーの異物誤飲を載せていますのでリンクを貼っておきます。
ウーパールーパーの異物誤飲
ウーパールーパーの異物誤飲(part2)
ウーパールーパーの異物誤飲(part3)
名前は未定のウーパールーパー君(93g、性別不明、1歳5か月齢)は飼育槽の底部に敷いた石を誤飲してしまったとのことで来院されました。
下写真にあるように下顎周辺が腫れているのが分かります。
下写真の黄色丸は、触診で硬く感じ、異物の存在を疑います。
検耳鏡で口腔内を診ますと異物らしきものが確認できます。
口腔内に傷をつけないようにリトラクター挿入して、てこの原理で少しずつ石を口腔外へ引き出します。
薄い朱色の石(ガラス製)が吐き出されました。
さらに口腔内を確認するともう一つの石があります。
下写真黄色矢印がまだ口腔内に残っている石です。
下顎に親指を添えて青矢印の方向へ押し出すとすんなりとピンク色の石を吐き出しました。
これでウーパー君の飲み込んでいた異物(石)を吐き出すことに成功しました。
当初、腫れあがっていた下顎の周囲は、石を吐き出した時点でスッキリしたのがお分かり頂けると思います。
両生類は比較的口が大きく開口できるため、異物誤飲は非常に多いです。
口の中に留まっているなら、今回の様に取り出すことも可能ですが、逆に1㎝以下となると胃内に流れてこんで摘出は極めて困難になります。
いざとなれば、開腹して外科的に摘出することになります。
麻酔の難易度もあり、また水の中で生活する動物であるため、術後の細菌感染も懸念されます。
いずれにせよ、両生類の異物誤飲は一つ間違えば、命がけの処置となることを飼主様、くれぐれも頭に入れておいて下さい。
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両生類はウーパールーパーであれ、カエルであれ、異物誤飲は臨床の現場ではよく遭遇します。
特にウーパー君達は口腔内は広いのですが、咽頭部から食道にかけては、カエルと比較して狭くなってます。
そのため、咽頭部で異物を誤飲した場合は、口腔内でつかえてしまう事が多いです。
過去にウーパールーパーの異物誤飲を載せていますのでリンクを貼っておきます。
ウーパールーパーの異物誤飲
ウーパールーパーの異物誤飲(part2)
ウーパールーパーの異物誤飲(part3)
名前は未定のウーパールーパー君(93g、性別不明、1歳5か月齢)は飼育槽の底部に敷いた石を誤飲してしまったとのことで来院されました。
下写真にあるように下顎周辺が腫れているのが分かります。
下写真の黄色丸は、触診で硬く感じ、異物の存在を疑います。
検耳鏡で口腔内を診ますと異物らしきものが確認できます。
口腔内に傷をつけないようにリトラクター挿入して、てこの原理で少しずつ石を口腔外へ引き出します。
薄い朱色の石(ガラス製)が吐き出されました。
さらに口腔内を確認するともう一つの石があります。
下写真黄色矢印がまだ口腔内に残っている石です。
下顎に親指を添えて青矢印の方向へ押し出すとすんなりとピンク色の石を吐き出しました。
これでウーパー君の飲み込んでいた異物(石)を吐き出すことに成功しました。
当初、腫れあがっていた下顎の周囲は、石を吐き出した時点でスッキリしたのがお分かり頂けると思います。
両生類は比較的口が大きく開口できるため、異物誤飲は非常に多いです。
口の中に留まっているなら、今回の様に取り出すことも可能ですが、逆に1㎝以下となると胃内に流れてこんで摘出は極めて困難になります。
いざとなれば、開腹して外科的に摘出することになります。
麻酔の難易度もあり、また水の中で生活する動物であるため、術後の細菌感染も懸念されます。
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2023年12月18日 月曜日
ウーパールーパーの異物誤飲(ビー玉)
こんにちは 院長の伊藤です。
今回の異物はビー玉を誤飲したウーパー君です。
さすがにウーパ―ルーパーではビー玉サイズになると嚥下は不可能なようです。
飼主様がビー玉を飲み込んだのを確認されての来院です。
黄色丸で囲んだウーパー君の下顎部が非常に腫れあがっているのがお分かり頂けると思います。
口を開けるとしっかりとビー玉が口の中一杯に食い込んでいます。
上写真の黄色矢印がビー玉です。
口内を傷つけないように優しく開口させて、下顎部から指先で圧迫をしてビー玉を押し出します。
何とかうまく取り出すことが出来ました!
本来、ウーパー君はアルビノで体色は白なんですが、ビー玉摘出で暴れたり、苦しかったりで体色が赤くなっています。
口のサイズに合うものであれば、ウーパールーパーはまず飲み込んでしまうものだと思って下さい。
つまり、そのサイズ以下の物は水槽に入れないことです。
場合によっては、全身麻酔で開腹手術が必要になったりします。
くれぐれもご注意ください。
今回の異物はビー玉を誤飲したウーパー君です。
さすがにウーパ―ルーパーではビー玉サイズになると嚥下は不可能なようです。
飼主様がビー玉を飲み込んだのを確認されての来院です。
黄色丸で囲んだウーパー君の下顎部が非常に腫れあがっているのがお分かり頂けると思います。
口を開けるとしっかりとビー玉が口の中一杯に食い込んでいます。
上写真の黄色矢印がビー玉です。
口内を傷つけないように優しく開口させて、下顎部から指先で圧迫をしてビー玉を押し出します。
何とかうまく取り出すことが出来ました!
本来、ウーパー君はアルビノで体色は白なんですが、ビー玉摘出で暴れたり、苦しかったりで体色が赤くなっています。
口のサイズに合うものであれば、ウーパールーパーはまず飲み込んでしまうものだと思って下さい。
つまり、そのサイズ以下の物は水槽に入れないことです。
場合によっては、全身麻酔で開腹手術が必要になったりします。
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2023年12月17日 日曜日
ウーパールーパーのイカリムシ感染症
こんにちは 院長の伊藤です。
皆様はイカリムシという魚類や両生類に寄生体をご存知でしょうか?
本日、ご紹介させて頂きますのは、このイカリムシの感染したウーパールーパーのウーちゃんの症例です。
ウーちゃんの鰓(エラ)や体表部に白い棘のようなもの(イカリムシ)が現れたとのことで来院されました。
下写真のどこにこの寄生虫がいるか、お分かりでしょうか?
答えは黄色丸で囲んだ箇所にイカリムシが寄生しています。
側面の画像です。
イカリムシは下写真の黄色丸に存在しています。
イカリムシのイカリは、船の碇(イカリ)を指して呼びます。
一度身体に刺さると外れにくい形状を先端部がしている点から、イカリムシと呼ばれるようになったそうです。
魚を初め、両生類にも寄生するため、駆除が非常に大変です。
下写真は、今回摘出したイカリムシです。
黄色矢印はV字体の卵嚢です。
上のイカリムシを顕微鏡で撮影、拡大したのが下写真です。
上段写真:卵が詰まった卵嚢です。(黄色矢印)
中断写真:消化管(黄色矢印)
下段写真:口器(黄色丸)
イカリムシはどこから現れるのか?
ほとんどのイカリムシは外部からの持ち込みです。
水草であったり、餌としての金魚であったりします。
イカリムシの成虫は一度に300から500の卵を産卵します。
その寿命は2か月で15回ほどの産卵をします。
ウーちゃんには80匹以上のイカリムシが寄生(黄色丸)していました。
結局、イカリムシの駆除は一匹ずつ鉗子で抜いていくしかありません。
血液が集まる部位が好きなようで、鰓に一番集まっています。
鉗子で抜く時、気を付けないと簡単に出血を起こします(下写真)。
ウーちゃんの場合は、口の中にまでイカリムシが寄生していました。
内股にも寄生しています。
摘出したイカリムシの一部です。
イカリムシを体表部から摘出した直後は、出血もありウーちゃんは軽い虚脱状態になりました。
イカリムシ摘出後には、寄生されていた皮膚が発赤、内出血を起こしてます。
さて、このイカリムシ感染によるウーパールーパーの治療法です。
まず、取り残しのないように確実にイカリムシを摘出します。
寄生していた部位はエロモナス等の水棲細菌に汚染しますので、消毒が必要となります。
下写真はイカリムシ感染で潰瘍に至った皮膚をメチレンブルーとアクリノールの合剤で傷口を消毒しているところです。
個体の全身状態によって、薬浴を実施するかは判断します。
一般的には、ウーパールーパーは薬剤に弱いため、局所的な消毒で対処するケースが多いです。
水槽はイカリムシの卵や幼体で汚染されていますので、完全に消毒したつもりでもダメで水槽を新調する(リセットと言います)必要があります。
魚類のイカリムシ治療でリフィッシュ(トリクロルホン)を使用される方がみえますが、幼体のみにしか効果はありません。
むしろ毎日、水槽の水を新鮮な水と交換することで卵と幼体の絶対数を減らしていく方が安全です。
2か月ほど経過を観察して、イカリムシが出現しなくなれば治療は成功です。
治療後のウーちゃんの経過も良好で、食欲も増えてきて良く動けるようになってきました。
再診時のウーちゃんです。
寄生虫なる生物は内部寄生であれ、外部寄生であれ、巧妙に宿主の生活に、寄生虫自身のライフサイクルを組み込んで自己増殖していきます。
今回のウーちゃんはイカリムシの高度寄生例でした。
まだウーちゃんは成体で基礎体力もあり、感染に飼主様が気づかれてから来院まで速やかであったため、生還できました。
鰓に大量に寄生した場合、一挙にイカリムシを摘出しますと多量の出血でショック状態に陥ますので、細心の注意が必要です。
くれぐれも外部からの餌なり、水草を水槽に導入する際は、お気を付け下さい!
皆様はイカリムシという魚類や両生類に寄生体をご存知でしょうか?
本日、ご紹介させて頂きますのは、このイカリムシの感染したウーパールーパーのウーちゃんの症例です。
ウーちゃんの鰓(エラ)や体表部に白い棘のようなもの(イカリムシ)が現れたとのことで来院されました。
下写真のどこにこの寄生虫がいるか、お分かりでしょうか?
答えは黄色丸で囲んだ箇所にイカリムシが寄生しています。
側面の画像です。
イカリムシは下写真の黄色丸に存在しています。
イカリムシのイカリは、船の碇(イカリ)を指して呼びます。
一度身体に刺さると外れにくい形状を先端部がしている点から、イカリムシと呼ばれるようになったそうです。
魚を初め、両生類にも寄生するため、駆除が非常に大変です。
下写真は、今回摘出したイカリムシです。
黄色矢印はV字体の卵嚢です。
上のイカリムシを顕微鏡で撮影、拡大したのが下写真です。
上段写真:卵が詰まった卵嚢です。(黄色矢印)
中断写真:消化管(黄色矢印)
下段写真:口器(黄色丸)
イカリムシはどこから現れるのか?
ほとんどのイカリムシは外部からの持ち込みです。
水草であったり、餌としての金魚であったりします。
イカリムシの成虫は一度に300から500の卵を産卵します。
その寿命は2か月で15回ほどの産卵をします。
ウーちゃんには80匹以上のイカリムシが寄生(黄色丸)していました。
結局、イカリムシの駆除は一匹ずつ鉗子で抜いていくしかありません。
血液が集まる部位が好きなようで、鰓に一番集まっています。
鉗子で抜く時、気を付けないと簡単に出血を起こします(下写真)。
ウーちゃんの場合は、口の中にまでイカリムシが寄生していました。
内股にも寄生しています。
摘出したイカリムシの一部です。
イカリムシを体表部から摘出した直後は、出血もありウーちゃんは軽い虚脱状態になりました。
イカリムシ摘出後には、寄生されていた皮膚が発赤、内出血を起こしてます。
さて、このイカリムシ感染によるウーパールーパーの治療法です。
まず、取り残しのないように確実にイカリムシを摘出します。
寄生していた部位はエロモナス等の水棲細菌に汚染しますので、消毒が必要となります。
下写真はイカリムシ感染で潰瘍に至った皮膚をメチレンブルーとアクリノールの合剤で傷口を消毒しているところです。
個体の全身状態によって、薬浴を実施するかは判断します。
一般的には、ウーパールーパーは薬剤に弱いため、局所的な消毒で対処するケースが多いです。
水槽はイカリムシの卵や幼体で汚染されていますので、完全に消毒したつもりでもダメで水槽を新調する(リセットと言います)必要があります。
魚類のイカリムシ治療でリフィッシュ(トリクロルホン)を使用される方がみえますが、幼体のみにしか効果はありません。
むしろ毎日、水槽の水を新鮮な水と交換することで卵と幼体の絶対数を減らしていく方が安全です。
2か月ほど経過を観察して、イカリムシが出現しなくなれば治療は成功です。
治療後のウーちゃんの経過も良好で、食欲も増えてきて良く動けるようになってきました。
再診時のウーちゃんです。
寄生虫なる生物は内部寄生であれ、外部寄生であれ、巧妙に宿主の生活に、寄生虫自身のライフサイクルを組み込んで自己増殖していきます。
今回のウーちゃんはイカリムシの高度寄生例でした。
まだウーちゃんは成体で基礎体力もあり、感染に飼主様が気づかれてから来院まで速やかであったため、生還できました。
鰓に大量に寄生した場合、一挙にイカリムシを摘出しますと多量の出血でショック状態に陥ますので、細心の注意が必要です。
くれぐれも外部からの餌なり、水草を水槽に導入する際は、お気を付け下さい!
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2023年12月16日 土曜日
ヒョウモントカゲモドキの異物誤飲(床材 その2)
こんにちは 院長の伊藤です。
本日ご紹介しますのは、ヒョウモントカゲモドキの異物誤飲です。
以前にも異物誤飲については、ヒョウモントカゲの異物誤飲(床材)という記事で掲載しておりますので、興味のある方はクリックしてご覧下さい。
ヒョウモントカゲの床材は各種素材が販売されてますが、床材の材質によって誤飲するケースがあります。
床材は飼育環境の温度・湿度に大きな影響を及ぼすため、慎重に選んで頂きたいと思います。
一般にヒョウモントカゲモドキの床材は、赤玉土やサンド系(ホワイトサンド、デザートサンド、カルシウムサンド、ウォールナッツサンドなど)あるいは両生類用に開発されたフロッグソイルなどが使用されています。
素材ごとにそれぞれ特徴がありますが、要は通気性・通水性が良好で保湿性に優れたものが理想です。
加えて、床材は誤飲しても体内に留まりにくく、体外に排出されやすいものがベストです。
床材を掘り起こすことで、ストレスを軽減するという効果もあります。
これまで、ヒョウモントカゲの異物誤飲で開腹手術に至ったケースで共通していた床材は、ウォールナッツサンドが多いようです。
それでは、異物誤飲の開腹手術の事例をご紹介します。
ヒョウモントカゲモドキのだいふく君(1歳10か月齢、雄、体重52g)は1か月前くらいから排便量が減少し始め、腹部が腫れてきたとの事で来院されました。
下写真で腹囲が腫れているのがお分かり頂けるでしょうか?
早速、レントゲン撮影を実施しました。
下写真黄色矢印は、内容物で腸が膨満状態になっているのを示しています。
腸蠕動も停止しており、腸内のガスが貯留しています。
だいふく君はおそらく異物誤飲により、腸閉塞(イレウス)に陥ってます。
既に内科的治療では効果は期待できず、早急な開腹手術が必要であると判断しました。
だいふく君は全身麻酔に耐えられる全身状態と思われましたので、麻酔前投薬を行います。
前投薬にはメデトミジンとケタミンを選択しました。
主要血管系のうち、爬虫類は腎門脈系が発達しています。
これは、下半身の尾静脈や下腹静脈、腸骨静脈に流入する領域に注射を打ったとしても、残りの循環系に入る前に腎臓で排出されてしまう場合があることを示します。
そのため、前投薬は前肢に接種します。
ついで、麻酔導入箱にだいふく君を入れて、イソフルランを流入します。
イソフルランの効果が現れ、だいふく君はぐったりしてきました。
麻酔導入が完了したところで、専用マスクで顔を覆い、維持麻酔に変えます。
下腹部が腫大しているのがお分かり頂けると思います。
四肢を紙テープで固定します。
これから手術となります。
赤丸はだいふく君の体を示し、黄色矢印はこれからメスを入れる下腹部となります。
トカゲ類は腹部の正中線に沿って、腹側腹部静脈が走行しています。
この太い静脈を傷つけないように正中部を外してメスを入れます。
ヒョウモントカゲの腹膜は非常に薄いため、外科鋏で切開して行きます。
下写真の黄色矢印は前述した腹側腹部静脈です。
滅菌綿棒を使用して腸へとアプローチします。
下写真黄色矢印は腫大している腸を示します。
腸に11号メス刃で切開を入れます。
腸内容物を取り出せる範囲に切開を広げて行きます。
腸内容を見ますと床材を含んだ硬化しつつある内容物が確認できます。
下写真黄色矢印は、床材として使用していたウォールナッツサンド(胡桃の殻を細かく砕いたもの)を示します。
綿棒で腸内容を少しづつ掻き出します。
この作業が一番時間がかかり、また腹腔内に内容物を落とさないように注意が必要です。
これでほぼ腸内容を取り出すことが出来ました。
下写真黄色丸が切開した腸の部位です。
6-0のモノフィラメント合成吸収糸で腸管を縫合します。
糸が非常に細いため、写真ではっきり分かりづらいかもしれません。
単純結紮縫合で縫い込んでいきます(下写真黄色丸)。
縫合は終了し、腹腔内を生理食塩水で徹底的に洗浄します(下写真青矢印)。
腹腔内の洗浄が終了しました。
次いで、腹筋を縫合します。
腹筋縫合が終了し、最後に傷口の洗浄をします。
皮膚縫合も終了です。
縫合部の拡大写真です。
イソフルランを止めて、酸素吸入のみでだいふく君の覚醒を待ちます。
麻酔を切って15分くらいで、だいふく君は覚醒し始めました。
無事、覚醒出来て良かったです。
今回、腸から摘出した内容物です。
腸内にこれだけの床材が貯留していれば、腸蠕動は停止し、イレウス(腸閉塞)に陥るのも頷けます。
麻酔覚醒10分後のだいふく君です。
保定を嫌い暴れます。
翌日のだいふく君です。
まだ絶食させてますが、動きはしっかりしています。
入院は1泊で退院して頂きました。
しばらくだいふく君は流動食で対応して頂きます(約2週間)。
3週間後に抜糸で来院されただいふく君です。
傷口は問題なく癒合していますので、抜糸しました。
爬虫類の皮膚縫合は、脱皮の時期が重なったりすると延期したり、スケジュールを合わせる煩雑さがあります。
今回は抜糸に至るまでスムーズに進行出来たのは良かったです。
床材は、各家庭の飼育環境に応じて選択されると良いですが、くれぐれも誤飲には注意下さい。
トカゲ類にとって、開腹手術はリスクの高い行為になります。
だいふく君、お疲れ様でした!
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本日ご紹介しますのは、ヒョウモントカゲモドキの異物誤飲です。
以前にも異物誤飲については、ヒョウモントカゲの異物誤飲(床材)という記事で掲載しておりますので、興味のある方はクリックしてご覧下さい。
ヒョウモントカゲの床材は各種素材が販売されてますが、床材の材質によって誤飲するケースがあります。
床材は飼育環境の温度・湿度に大きな影響を及ぼすため、慎重に選んで頂きたいと思います。
一般にヒョウモントカゲモドキの床材は、赤玉土やサンド系(ホワイトサンド、デザートサンド、カルシウムサンド、ウォールナッツサンドなど)あるいは両生類用に開発されたフロッグソイルなどが使用されています。
素材ごとにそれぞれ特徴がありますが、要は通気性・通水性が良好で保湿性に優れたものが理想です。
加えて、床材は誤飲しても体内に留まりにくく、体外に排出されやすいものがベストです。
床材を掘り起こすことで、ストレスを軽減するという効果もあります。
これまで、ヒョウモントカゲの異物誤飲で開腹手術に至ったケースで共通していた床材は、ウォールナッツサンドが多いようです。
それでは、異物誤飲の開腹手術の事例をご紹介します。
ヒョウモントカゲモドキのだいふく君(1歳10か月齢、雄、体重52g)は1か月前くらいから排便量が減少し始め、腹部が腫れてきたとの事で来院されました。
下写真で腹囲が腫れているのがお分かり頂けるでしょうか?
早速、レントゲン撮影を実施しました。
下写真黄色矢印は、内容物で腸が膨満状態になっているのを示しています。
腸蠕動も停止しており、腸内のガスが貯留しています。
だいふく君はおそらく異物誤飲により、腸閉塞(イレウス)に陥ってます。
既に内科的治療では効果は期待できず、早急な開腹手術が必要であると判断しました。
だいふく君は全身麻酔に耐えられる全身状態と思われましたので、麻酔前投薬を行います。
前投薬にはメデトミジンとケタミンを選択しました。
主要血管系のうち、爬虫類は腎門脈系が発達しています。
これは、下半身の尾静脈や下腹静脈、腸骨静脈に流入する領域に注射を打ったとしても、残りの循環系に入る前に腎臓で排出されてしまう場合があることを示します。
そのため、前投薬は前肢に接種します。
ついで、麻酔導入箱にだいふく君を入れて、イソフルランを流入します。
イソフルランの効果が現れ、だいふく君はぐったりしてきました。
麻酔導入が完了したところで、専用マスクで顔を覆い、維持麻酔に変えます。
下腹部が腫大しているのがお分かり頂けると思います。
四肢を紙テープで固定します。
これから手術となります。
赤丸はだいふく君の体を示し、黄色矢印はこれからメスを入れる下腹部となります。
トカゲ類は腹部の正中線に沿って、腹側腹部静脈が走行しています。
この太い静脈を傷つけないように正中部を外してメスを入れます。
ヒョウモントカゲの腹膜は非常に薄いため、外科鋏で切開して行きます。
下写真の黄色矢印は前述した腹側腹部静脈です。
滅菌綿棒を使用して腸へとアプローチします。
下写真黄色矢印は腫大している腸を示します。
腸に11号メス刃で切開を入れます。
腸内容物を取り出せる範囲に切開を広げて行きます。
腸内容を見ますと床材を含んだ硬化しつつある内容物が確認できます。
下写真黄色矢印は、床材として使用していたウォールナッツサンド(胡桃の殻を細かく砕いたもの)を示します。
綿棒で腸内容を少しづつ掻き出します。
この作業が一番時間がかかり、また腹腔内に内容物を落とさないように注意が必要です。
これでほぼ腸内容を取り出すことが出来ました。
下写真黄色丸が切開した腸の部位です。
6-0のモノフィラメント合成吸収糸で腸管を縫合します。
糸が非常に細いため、写真ではっきり分かりづらいかもしれません。
単純結紮縫合で縫い込んでいきます(下写真黄色丸)。
縫合は終了し、腹腔内を生理食塩水で徹底的に洗浄します(下写真青矢印)。
腹腔内の洗浄が終了しました。
次いで、腹筋を縫合します。
腹筋縫合が終了し、最後に傷口の洗浄をします。
皮膚縫合も終了です。
縫合部の拡大写真です。
イソフルランを止めて、酸素吸入のみでだいふく君の覚醒を待ちます。
麻酔を切って15分くらいで、だいふく君は覚醒し始めました。
無事、覚醒出来て良かったです。
今回、腸から摘出した内容物です。
腸内にこれだけの床材が貯留していれば、腸蠕動は停止し、イレウス(腸閉塞)に陥るのも頷けます。
麻酔覚醒10分後のだいふく君です。
保定を嫌い暴れます。
翌日のだいふく君です。
まだ絶食させてますが、動きはしっかりしています。
入院は1泊で退院して頂きました。
しばらくだいふく君は流動食で対応して頂きます(約2週間)。
3週間後に抜糸で来院されただいふく君です。
傷口は問題なく癒合していますので、抜糸しました。
爬虫類の皮膚縫合は、脱皮の時期が重なったりすると延期したり、スケジュールを合わせる煩雑さがあります。
今回は抜糸に至るまでスムーズに進行出来たのは良かったです。
床材は、各家庭の飼育環境に応じて選択されると良いですが、くれぐれも誤飲には注意下さい。
トカゲ類にとって、開腹手術はリスクの高い行為になります。
だいふく君、お疲れ様でした!
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