モルモットの疾病
モルモットのリンパ腫
こんにちは 院長の伊藤です。
モルモットは、頚部に腫脹が認められることが比較的多い齧歯類です。
頚部に腫脹がある場合、患部を穿刺してその内容を確認すると膿瘍(歯根部の炎症による)であったり、化膿性リンパ節炎であったりすることが多いです。
本日ご紹介しますのは、そういった炎症性の病変ではなく血液の腫瘍といわれるリンパ腫の症例です。
モルモットのいちごちゃん(5歳5か月、雌)は、頚部が腫脹して呼吸が苦しそうで、元気食欲が消失してきたとのことで来院されました。
頚部が黄色丸に示したとおり、腫大しているのがお分かり頂けると思います。
頚部の腫脹から頸静脈が圧迫され、眼球も突出気味になっています。
患部を触診しますと硬い腫瘤が認められます。
膿瘍の様に内部に液体が貯留する波動感はなく、硬結している感じです。
早速、細胞診を実施しました。
下写真は低倍率像です。
次は高倍率像です。
リンパ芽球様の細胞が多数認められます。
残念ながら、いちごちゃんは悪性のリンパ腫であることが判明しました。
多中心型リンパ腫に分類される表在リンパ節が腫脹するタイプのリンパ腫のようです。
モルモットのリンパ腫については、レトロウィルスの感染が発生に関与していると推察されていますが、その詳細は不明です。
食欲不振に始まり、リンパ節の腫大、肝臓・脾臓の腫大、削痩から体重減少に至ります。
私の経験では、犬の様に完全寛解に至ることは難しく、最終的には死の転帰をたどるケースがほとんどです。
治療法として、フェレットのリンパ腫に準じてステロイド療法を実施します。
いちごちゃんは、ステロイドの内服を続けて頂きましたが、投薬14日目にして急逝されました。
飼い主様が異常に気付かれてから、リンパ腫の展開が非常に早く残念な結果となりました。
齧歯類の場合は、食欲廃絶から食滞にいたり、死の転帰を取るケースが多いです。
食滞についてはこちらを参照下さい。
小さな体格であり持久力がないこと、かつ草食獣である点で食欲が一旦消失してから復帰するのに時間がかかることが、治療をさらに困難にします。
如何に早く、リンパ節の腫れに気づくかが、治療のカギとなります。
一日一回はスキンシップを取って、触診をすることをお勧めします。
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投稿者 もねペットクリニック 院長 | 記事URL
モルモットのセンコウヒゼンダニ症
こんにちは 院長の伊藤です。
モルモットは一般的に外部寄生虫の感染で皮膚疾患に至るケースが多いです。
今回、ご紹介するのはセンコウヒゼンダニ感染症です。
イングリッシュモルモットのライゼ君(雄、年齢不明)は激しい脱毛、落屑(ふけ)があるとのことで来院されました。
下写真黄色丸に部分が脱毛、皮膚の発赤が認められる部位です。
患部をさらに拡大します。
下写真の黄色丸は落屑がたくさん溜まっています。
痒みと落屑が酷い点から外部寄生虫の感染を疑い、被毛と皮膚にセロテープを圧着させスライドガラスに張り付けて顕微鏡検査をしました。
下写真はその鏡見像(低倍率像)です。
下は高倍率像です。
この寄生虫はモルモットセンコウヒゼンダニです。
皮膚を穿孔してトンネルを掘り、孵化した第2世代が再度穿孔を繰り返して、皮膚にダメージを与えていきます。
感染を受けたモルモットは、体幹部から四肢末端に至るまで極度の掻痒感を呈します。
掻痒感故に搔き毟って、細菌性皮膚炎を引き起こす個体も多いです。
病変部の皮膚は乾燥・肥厚し、食欲不振・体重減少を招きます。
基礎体力のない個体では致命的となる場合もあります。
治療法としては、イベルメクチン(駆虫薬)の内服を1週間続けていただきます。
駆虫が成功すれば、皮膚炎も改善して発毛も始まります。
ライゼ君、しっかり治していきましょう!
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