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水棲カメの疾病

2014年6月26日 木曜日

アカミミガメのハーダー氏腺炎

こんちは 院長の伊藤です。


本日、ご紹介しますのはカメのビタミンAが欠乏して起こる「ハーダー氏腺炎」という疾病です。

実はこの疾病は日常的に遭遇することが多いです。


アカミミガメのRUNA君(3歳、雄)は、両側性の瞼の腫れで眼が開かないとのことで来院されました。



上写真のRUNA君の眼を拡大します。



高度に瞼が腫脹しています。

両瞼が炎症(眼瞼炎)をおこしており、浮腫も伴っています。



RUNA君は眼を開けることができませんので、餌を満足に食べることが出来ません。

RUNA君の瞼を綿棒を用いて優しく開眼させます。



良く診ますと瞼内にクリーム状の膿が溜まっていました。(下写真黄色丸)



眼球を生理食塩水で洗浄処置を施しました。


なぜRUNA君はこのような疾病になってしまったのでしょうか?

それには、涙を産生する部位(涙腺)の構造から説明する必要があります。


今回の話題のハーダー氏腺は涙腺の一つなんですが、第三眼瞼(瞬膜線)という構造物の中に存在します。

第三眼瞼(瞬膜線)は全ての動物に存在する眼球構造物です。

ハーダー氏腺は、カメを初めとした爬虫類における主要な涙液分泌腺です。

この分泌液は脂を主体とする脂質腺液で、水棲動物の眼球をこの脂で守るという役目があります。

一方、犬猫などの哺乳類では、第三眼瞼腺(瞬膜線)が涙液分泌を担っている点が異なります。


そこで、カメの餌に含まれるビタミンAが不足するとハーダー氏腺の涙管、涙腺、結膜上皮細胞の変性が生じます。

それによって涙管などに変性組織が詰まってしまい、涙腺の分泌液が蓄積していきます。

結果的にカメの涙液分泌は減少していき、ドライアイを引き起こします。

以前、犬のドライアイ(乾性角結膜炎)についてコメントしましたので興味のある方はご覧ください。

爬虫類も哺乳類と同様、ドライアイになりますと二次的細菌感染を受け、結膜炎となります。

さらに症状が進行すると、眼瞼の痙攣・眼瞼の浮腫そして眼瞼炎へと悪化していきます。

そんな現象がRUNA君の小さな瞼の中で展開されていたわけです。



治療ですが、第一にビタミンAの供給です。

魚の切り身やエビなどの生肉のみを与えているケースで発症することが圧倒的に多いです。

ビタミンAのような脂溶性ビタミンは過剰摂取に要注意です。

RUNA君にはこのビタミンAの内服と抗生剤の点眼薬を処方させて頂きました。

飼い主様にお願いして、暫くの通院で眼球の洗浄もさせて頂くこととしました。

加えて水質が悪化して、水中内の雑菌が増加してくると眼瞼炎・結膜炎が憎悪しますので、水質に絶えず気を使っていただくようお願い致しました。


下写真は3週間後のRUNA君です。

瞼の炎症も治り、眼元がスッキリしているのがお分かり頂けると思います。






一般的なカメ用の配合飼料や小魚などの生餌を食していれば、このビタミンA欠乏症にはなりにくいと考えられています。

初期のハーダー氏腺炎であれば、適切な餌とビタミンAで治せます。

しかし、瞼が開かない状態まで進行した場合は、専門の治療をしない限り治療が困難になることも多いです。

瞼が少し腫れて、食欲不振に気づいたら、動物病院の早期受診をお勧めします。


幼体でこのハーダー氏腺炎に罹患しますと、食餌が不可能なため体力消耗が著しく死亡することが多いため、たかがビタミン不足と侮らないでくださいね!





RUNA君の飼主様は、治療に非常に熱心な方で短期間で回復されて良かったです。

RUNA君、飼い主様、お疲れ様でした。




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投稿者 もねペットクリニック | 記事URL

2014年6月 7日 土曜日

ビルマオオアタマガメの頭部鱗・研磨処置


院長の伊藤です。


本日ご紹介しますのはビルマオオアタマガメというオオアタマガメ属のカメです。

ビルマオオアタマガメはカンボジア・タイ・ベトナム・ミャンマー・ラオスに棲息します。

特徴は背中の甲羅が扁平で幅広い点と大きな頭部が鱗で覆われている点にあります。

嘴は鈎状にとがっており、カミツキガメに近い感じです。


一般にはカメは自身の頭を胴体に引っ込めて身を守るイメージが強いです。

しかし、このオオアタマガメは甲羅が扁平で幅が狭く大きな頭部を胴体に格納することはできません。

その代り、頭部に立派な鱗が存在して頭部を保護しています。

この鱗が問題で、場合によっては大きく伸びて眼球を覆う位置まで伸展するすると視界が邪魔されて捕食もままならなくなります。

今回は、そんな状況に陥ったオオアタマガメのお話です。



ビルマオオアタマガメ君(雄、3歳)は頭部の鱗が伸展して眼にあたるとのことで来院されました。






下写真黄色丸にありますように頭部鱗が眼の所まで伸びてきているのがお分かり頂けると思います。

ヘルメットのように感じるのは私だけでしょうか?



鱗と一般には呼ばれていますが、むしろ背中の甲羅が頭部に延長して来ているかのように感じます。



そこで伸展した鱗の処置になりますが、歯科処置する時に使用するマイクロエンジンのラウンドバーで研磨することとしました。









開口して威嚇するとカミツキガメのように凶暴なイメージもあります。

しかし、非常におとなしい個体なので研磨処置は順調に行うことが出来ました。



結果として、下写真の様に眼球の動きを邪魔しないように研磨することが出来ました。



正面からご覧いただくと頭部が大きいのが分かります。




以前はこのオオアタマガメはカミツキガメの近縁と分類されてました。

最近では、ゲノムDNAやミトコンドリアDNAの塩基配列の統計学的解析ではリクガメ科に含まれるとされているそうです。

水棲カメなのに意外ですね。

大分県安心院町にある3,000,000年前(鮮新世)の地層からこのオオアタマガメの化石が発見されており、しかもオオアタマガメの化石は世界的にも日本でしか発見されていないそうです。

そんな話を聞くと壮大な歴史の流れの中で、たくましく生き抜いてきた動物種なんだと改めて感銘を受けます。





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