産科系・生殖器系の疾患/うさぎ
2018年7月 4日 水曜日
ウサギの子宮腺癌(その7)
こんにちは 院長の伊藤です。
本日ご紹介しますのはウサギの子宮腺癌です。
これまでにも多くの子宮腺癌の症例をご紹介させて頂きました。
これも、避妊手術を早期に実施することで回避することのできる疾病であることを、なるべく多くの飼主様に知って頂くために載せております。
ミニレッキスのミミちゃん(8歳、雌、体重3.0kg)は半年前から血尿が続くとのことで来院されました。
年齢からおそらくは子宮疾患が関与していると推察され、レントゲン撮影を行いました。
下写真の黄色丸の部位から子宮のマス(腫瘤)の存在が疑われます。
肺野には肺腺癌を疑う所見はありません。
半年間、血尿が不定期に出たり、治まったりを繰り返していたとのことです。
元気食欲はあるとのことで、手術に十分体力的にも耐えられると判断し、卵巣・子宮全摘出手術を勧めさせていただきました。
ミミちゃんをイソフルランによる維持麻酔で寝かせているところです。
患部の剃毛をします。
ウサギのような草食動物の場合は、手術台を平面のままでいますと胃腸の重さで横隔膜が圧迫されて、場合により心拍が停止することもあります。
それを防止する意味もあり、手術台を少し傾斜させて手術に臨みます。
腹筋を切開します。
開腹直後に腹腔内現れたのは、暗赤色を呈した子宮です。
下写真黄色丸が右子宮角に発生した腫瘤です。
おそらく子宮腺癌と思われます。
かなり大きな腫瘤であることがお分かり頂けると思います。
拡大像です。
卵巣の動静脈をバイクランプを用いてシーリングします。
80℃の熱で変性した動静脈や脂肪をメスで離断していきます。
卵巣動静脈や子宮間膜からの出血は全くありません。
摘出した卵巣・子宮を体外に出した写真です。
うっ血色は子宮角内に血液が貯留してることを意味します。
子宮頚部を鉗子で挟んで外科鋏で離断します。
子宮頚部の離断端を縫合して卵巣・子宮全摘出は終了です。
下写真で縫合部の下部は膀胱です。
次いで、腹筋を吸収糸で縫合します。
皮膚をナイロン糸で縫合します。
全ての処置が終了して、イソフルランの流入を停止します。
なお、下写真でスタッフが肉垂(頚部のマフラーのような脂肪の溜まってる部位)をつまんでいるのは、肉垂の自重で気道が圧迫され呼吸不全を起こすのを防ぐためです。
麻酔導入時に鎮静化のため投薬したメデトミジンを中和するためにアチパメゾールを静脈から投薬します。
数分内に覚醒します。
体を起こすところまで意識が戻って来ました。
完全に覚醒したミミちゃんです。
ミミちゃんは3日ほど入院の後、退院されました。
手術後には血尿は止まり、また退院後も元気・食欲も良好です。
下写真は抜糸のため、2週間後に来院されたミミちゃんです。
バリカンで剃毛した跡は、既に下毛が生え始めています。
抜糸が完了しました。
さて、前出の手術中の写真で黄色の丸で囲んだ右子宮角の腫瘤状病変について病理検査を実施しました。
結果として、多発性子宮腺癌(子宮内膜癌)であることが判明しました。
下写真はその病変部を切開したところです。
断面は子宮壁が肥厚・膨隆して血管が密に走行しています。
子宮角の他の部位にも腫瘍性の腫瘤が形成されていました。
顕微鏡の所見です(低倍)。
子宮内膜はびまん性に過形成されています。
中拡大像です。
強拡大像です。
異型性の明らかな上皮細胞(癌細胞)の腺管状・乳頭状増殖が特徴です。
子宮腺癌は良く見られる自然発生性腫瘍です。
この腫瘍の発生率は加齢とともに上昇していきます。
2~3歳の雌ウサギの子宮腺癌発生率は4%前後ですが、5~6歳では発生率は80%前後に上昇したという報告があります。
いずれにせよ、なるべく早い時期(1歳位までに)に避妊手術を受けて頂き、子宮腺癌にならないよう気を付けて頂きたいと思います。
子宮腺癌から腫瘍が肺に転移する事例もあります。
今回、半年と言う長い期間の血尿とのことですから、腫瘍の腹腔内播種はなかったようで幸いでした。
ミミちゃん、お疲れ様でした!
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本日ご紹介しますのはウサギの子宮腺癌です。
これまでにも多くの子宮腺癌の症例をご紹介させて頂きました。
これも、避妊手術を早期に実施することで回避することのできる疾病であることを、なるべく多くの飼主様に知って頂くために載せております。
ミニレッキスのミミちゃん(8歳、雌、体重3.0kg)は半年前から血尿が続くとのことで来院されました。
年齢からおそらくは子宮疾患が関与していると推察され、レントゲン撮影を行いました。
下写真の黄色丸の部位から子宮のマス(腫瘤)の存在が疑われます。
肺野には肺腺癌を疑う所見はありません。
半年間、血尿が不定期に出たり、治まったりを繰り返していたとのことです。
元気食欲はあるとのことで、手術に十分体力的にも耐えられると判断し、卵巣・子宮全摘出手術を勧めさせていただきました。
ミミちゃんをイソフルランによる維持麻酔で寝かせているところです。
患部の剃毛をします。
ウサギのような草食動物の場合は、手術台を平面のままでいますと胃腸の重さで横隔膜が圧迫されて、場合により心拍が停止することもあります。
それを防止する意味もあり、手術台を少し傾斜させて手術に臨みます。
腹筋を切開します。
開腹直後に腹腔内現れたのは、暗赤色を呈した子宮です。
下写真黄色丸が右子宮角に発生した腫瘤です。
おそらく子宮腺癌と思われます。
かなり大きな腫瘤であることがお分かり頂けると思います。
拡大像です。
卵巣の動静脈をバイクランプを用いてシーリングします。
80℃の熱で変性した動静脈や脂肪をメスで離断していきます。
卵巣動静脈や子宮間膜からの出血は全くありません。
摘出した卵巣・子宮を体外に出した写真です。
うっ血色は子宮角内に血液が貯留してることを意味します。
子宮頚部を鉗子で挟んで外科鋏で離断します。
子宮頚部の離断端を縫合して卵巣・子宮全摘出は終了です。
下写真で縫合部の下部は膀胱です。
次いで、腹筋を吸収糸で縫合します。
皮膚をナイロン糸で縫合します。
全ての処置が終了して、イソフルランの流入を停止します。
なお、下写真でスタッフが肉垂(頚部のマフラーのような脂肪の溜まってる部位)をつまんでいるのは、肉垂の自重で気道が圧迫され呼吸不全を起こすのを防ぐためです。
麻酔導入時に鎮静化のため投薬したメデトミジンを中和するためにアチパメゾールを静脈から投薬します。
数分内に覚醒します。
体を起こすところまで意識が戻って来ました。
完全に覚醒したミミちゃんです。
ミミちゃんは3日ほど入院の後、退院されました。
手術後には血尿は止まり、また退院後も元気・食欲も良好です。
下写真は抜糸のため、2週間後に来院されたミミちゃんです。
バリカンで剃毛した跡は、既に下毛が生え始めています。
抜糸が完了しました。
さて、前出の手術中の写真で黄色の丸で囲んだ右子宮角の腫瘤状病変について病理検査を実施しました。
結果として、多発性子宮腺癌(子宮内膜癌)であることが判明しました。
下写真はその病変部を切開したところです。
断面は子宮壁が肥厚・膨隆して血管が密に走行しています。
子宮角の他の部位にも腫瘍性の腫瘤が形成されていました。
顕微鏡の所見です(低倍)。
子宮内膜はびまん性に過形成されています。
中拡大像です。
強拡大像です。
異型性の明らかな上皮細胞(癌細胞)の腺管状・乳頭状増殖が特徴です。
子宮腺癌は良く見られる自然発生性腫瘍です。
この腫瘍の発生率は加齢とともに上昇していきます。
2~3歳の雌ウサギの子宮腺癌発生率は4%前後ですが、5~6歳では発生率は80%前後に上昇したという報告があります。
いずれにせよ、なるべく早い時期(1歳位までに)に避妊手術を受けて頂き、子宮腺癌にならないよう気を付けて頂きたいと思います。
子宮腺癌から腫瘍が肺に転移する事例もあります。
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2017年4月28日 金曜日
ウサギの陰嚢ヘルニア
こんにちは 院長の伊藤です。
本日ご紹介しますのはウサギの陰嚢ヘルニアです。
陰嚢ヘルニアとは精巣の精管・精巣動静脈が腹腔内へ入っていく孔を鼠径輪(そけいりん)と呼びます。
イラストで説明しますと下図のようになります。
この鼠径輪に何らかの原因で腹圧が上昇して、鼠径輪が広がり膀胱等の腹腔内臓器が脱出し、陰嚢内に納まる状態を陰嚢ヘルニアと呼びます。
脱出した臓器が膀胱であると会陰ヘルニア同様、排尿障害がおこり尿毒症に至る場合も考えられ、緊急処置が必要になることがあります。
ホーランドロップのラテ君(7歳、雄、体重2.6kg)は1週間くらい前から排尿がスムーズに出来ない、陰嚢が大きく腫大してきた、ということで来院されました。
下写真の黄色丸が陰嚢ヘルニアと思われる部位です。
さらにこの部位を拡大した写真です。
黄色丸の陰嚢が腫大した部位と赤矢印の右側陰嚢です。
右側陰嚢は床面との干渉か、ラテ君の自咬によるものか、炎症を起こして排膿しているのが分かります。
陰嚢をまずはレントゲンで撮影しました。
下写真の黄色丸は膀胱です。
下2枚共に膀胱が腹腔内に存在していなくて皮下、いわゆる陰嚢内に存在しているのが分かります。
膀胱内が白く描出されているのは、尿中に炭酸カルシウムなどの結晶が大量に排出されているためです。
加えてエコーの検査を実施しました。
下に白く描出されている高エコーの膀胱内容物(黄色矢印)は高カルシウムの結晶が尿中に排出され、あたかも汚泥のように膀胱内に沈渣(スラッジ)してるのが分かります。
膀胱内スラッジの場合、汚泥の量が多ければ当然排尿困難になり、腹圧をかけて排尿するようになります。
いきんで排尿を重ねるごとに鼠径輪から膀胱が飛び出して、陰嚢ヘルニアになったものと考えられます。
ラテちゃんの全身状態は今のところ問題はありませんが、すでに排尿障害が認められますから陰嚢ヘルニアを整復手術することにしました。
ラテちゃんに全身麻酔を施します。
ずいぶんと左陰嚢が腫大しているのがお分かり頂けると思います。
尿道内にカテーテルを挿入して尿を吸引してみたのですが、尿の粘稠度が高く吸引することが出来ません。
さらに膀胱内の炎症が伴っているようでカテーテル内に出血が吸引されました(黄色矢印)。
まず先に去勢を実施します。
左右の精巣を摘出します。
次に左側の陰嚢に切開を加えます。
弾力性のある陰嚢内の物体を皮膚切開部に向けて圧迫します。
圧迫して出て来た物は思った通りの膀胱でした。
膀胱の外側から見ても膀胱内には黄土色の粘稠性の高い尿が詰まっています。
膀胱を圧迫している間に汚泥尿(スラッジ)が外陰部から排尿されています(黄色丸)。
次に膀胱を切開して、内容物を排出して膀胱内洗浄を行います。
膀胱を圧迫すると汚泥尿がゆっくりと排出されます。
大量の汚泥尿が出て来ます。
汚泥尿の殆どを圧排した後に膀胱切開部から生理食塩水を注入して洗浄します。
切開した膀胱を縫合します。
次に膀胱を鼠径輪から腹腔内へ戻します。
下写真の黄色丸が拡張した鼠径輪です。
膀胱を指先で腹腔内へ押し戻しました。
再脱出を防ぐために鼠径輪を縫合します。
これで陰嚢ヘルニア整復手術は終了です。
皮膚縫合の後が生々しいですが、膀胱が再脱出しなければ、今後排尿障害の心配はありません。
手術後のラテ君です。
まだ麻酔からの半覚醒状態です。
手術翌日のラテ君です。
動き回ることも出来るようになりました。
退院当日(術後4日目)のラテ君です。
床面との干渉もあり、縫合部が若干腫れています。
ラテ君は術後、排尿もスムーズに出来るようになりました。
スラッジ(汚泥状尿結晶)の生成を防ぐためには、イネ科乾草を中心の食生活を維持して頂きたいと思います。
ラテ君お疲れ様でした!
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本日ご紹介しますのはウサギの陰嚢ヘルニアです。
陰嚢ヘルニアとは精巣の精管・精巣動静脈が腹腔内へ入っていく孔を鼠径輪(そけいりん)と呼びます。
イラストで説明しますと下図のようになります。
この鼠径輪に何らかの原因で腹圧が上昇して、鼠径輪が広がり膀胱等の腹腔内臓器が脱出し、陰嚢内に納まる状態を陰嚢ヘルニアと呼びます。
脱出した臓器が膀胱であると会陰ヘルニア同様、排尿障害がおこり尿毒症に至る場合も考えられ、緊急処置が必要になることがあります。
ホーランドロップのラテ君(7歳、雄、体重2.6kg)は1週間くらい前から排尿がスムーズに出来ない、陰嚢が大きく腫大してきた、ということで来院されました。
下写真の黄色丸が陰嚢ヘルニアと思われる部位です。
さらにこの部位を拡大した写真です。
黄色丸の陰嚢が腫大した部位と赤矢印の右側陰嚢です。
右側陰嚢は床面との干渉か、ラテ君の自咬によるものか、炎症を起こして排膿しているのが分かります。
陰嚢をまずはレントゲンで撮影しました。
下写真の黄色丸は膀胱です。
下2枚共に膀胱が腹腔内に存在していなくて皮下、いわゆる陰嚢内に存在しているのが分かります。
膀胱内が白く描出されているのは、尿中に炭酸カルシウムなどの結晶が大量に排出されているためです。
加えてエコーの検査を実施しました。
下に白く描出されている高エコーの膀胱内容物(黄色矢印)は高カルシウムの結晶が尿中に排出され、あたかも汚泥のように膀胱内に沈渣(スラッジ)してるのが分かります。
膀胱内スラッジの場合、汚泥の量が多ければ当然排尿困難になり、腹圧をかけて排尿するようになります。
いきんで排尿を重ねるごとに鼠径輪から膀胱が飛び出して、陰嚢ヘルニアになったものと考えられます。
ラテちゃんの全身状態は今のところ問題はありませんが、すでに排尿障害が認められますから陰嚢ヘルニアを整復手術することにしました。
ラテちゃんに全身麻酔を施します。
ずいぶんと左陰嚢が腫大しているのがお分かり頂けると思います。
尿道内にカテーテルを挿入して尿を吸引してみたのですが、尿の粘稠度が高く吸引することが出来ません。
さらに膀胱内の炎症が伴っているようでカテーテル内に出血が吸引されました(黄色矢印)。
まず先に去勢を実施します。
左右の精巣を摘出します。
次に左側の陰嚢に切開を加えます。
弾力性のある陰嚢内の物体を皮膚切開部に向けて圧迫します。
圧迫して出て来た物は思った通りの膀胱でした。
膀胱の外側から見ても膀胱内には黄土色の粘稠性の高い尿が詰まっています。
膀胱を圧迫している間に汚泥尿(スラッジ)が外陰部から排尿されています(黄色丸)。
次に膀胱を切開して、内容物を排出して膀胱内洗浄を行います。
膀胱を圧迫すると汚泥尿がゆっくりと排出されます。
大量の汚泥尿が出て来ます。
汚泥尿の殆どを圧排した後に膀胱切開部から生理食塩水を注入して洗浄します。
切開した膀胱を縫合します。
次に膀胱を鼠径輪から腹腔内へ戻します。
下写真の黄色丸が拡張した鼠径輪です。
膀胱を指先で腹腔内へ押し戻しました。
再脱出を防ぐために鼠径輪を縫合します。
これで陰嚢ヘルニア整復手術は終了です。
皮膚縫合の後が生々しいですが、膀胱が再脱出しなければ、今後排尿障害の心配はありません。
手術後のラテ君です。
まだ麻酔からの半覚醒状態です。
手術翌日のラテ君です。
動き回ることも出来るようになりました。
退院当日(術後4日目)のラテ君です。
床面との干渉もあり、縫合部が若干腫れています。
ラテ君は術後、排尿もスムーズに出来るようになりました。
スラッジ(汚泥状尿結晶)の生成を防ぐためには、イネ科乾草を中心の食生活を維持して頂きたいと思います。
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2016年4月21日 木曜日
ウサギの子宮水腫(その2・著しき高度水腫)
こんにちは 院長の伊藤です。
この時期は動物病院は繁忙期になります。
狂犬病ワクチン接種やフィラリア予防等などで飼主の皆様には、長時間御待ち頂きご迷惑をおかけしてます。
私自身も連日の手術でブログを更新することが出来ずにいます。
読者の皆様にしばらく新作をお届けできなくてすみませんでした。
本日、やっと載せることが出来ます。
ご紹介させて頂きますのはウサギの子宮水腫です。
かなり進行して、よくこれだけのものが腹腔に納まっていたなという高度の子宮水腫です。
ミニウサギのハナちゃん(雌、7歳)は突然、倒れるとのことで来院されました。
診察中、陰部から出血が認められた(下写真)ので子宮疾患を疑いました。
まずはエコーで腹部をチェックします。
下のエコー写真で、黄色矢印は子宮の中に水が貯留しているのを示します。
加えて黄色丸は子宮内の腫瘤を示します。
いずれにせよ、ハナちゃんは子宮疾患、特に高度の子宮水腫に罹患してます。
かなり子宮が腫れているため、血流の循環障害で失神が起きたのかもしれません。
手術に耐えられるか、血液検査(下写真)を実施して問題なかったので外科的に卵巣子宮を摘出することとしました。
いつも通り、橈側皮静脈に点滴用の留置針を入れます。
腹部が腫大しているため、あまり全身状態は良好とは言えません。
麻酔前投薬としてメデトミジン・ケタラールを投薬し、その後イソフルランで維持麻酔します。
麻酔が安定してきましたので、早速手術に移ります。
腹筋を切開したところで大きな子宮が顔を表しました。
卵巣動静脈(下写真黄色丸)をいつものごとくバイクランプでシーリングします。
シーリングした卵巣動静脈は縫合糸で結紮することなく、メスで離断でき出血はありません。
両側の卵巣を離断して、子宮角から子宮体までを体外に出したところです。
子宮自体がすでにうっ血色を呈しています。
ついに子宮頚部を縫合糸で結紮してメスで離断します。
腹筋・皮膚を縫合して、手術は終了です。
摘出した子宮とハナちゃんを並べて比較しました。
ハナちゃんの体重が1.5kgで子宮の重さは250gでした。
いかに子宮水腫が大きいものであるか、お分かり頂けると思います。
イソフルランを切りますと、ハナちゃんはほどなく覚醒を始めました。
覚醒直後のハナちゃんです。
お腹がかなりスッキリしましたね。
ただあれだけの大きな子宮水腫ということは、循環血流量も一挙に減少することを意味しますので、これからが要注意です。
ショック死することもあり得ます。
術後3時間のハナちゃんです。
活動性も出て来ました。
さて摘出した子宮です。
子宮角の内容は血漿を主体とした血液成分から構成されてます(下写真青矢印)。
そして変性壊死した子宮内膜が膨隆(下写真黄色矢印)しています。
一部、子宮内膜に腺癌も認められました。
病変部をスタンプ染色しました。
子宮内膜の腫瘍細胞が認められます。
子宮内膜細胞がすでに壊死・融解を起こしてます。
ハナちゃんは術後5日目に退院して頂きました。
食欲も十分あり、排便排尿も問題ありません。
我々に対する威嚇・攻撃性も出て来ました。
退院当日のハナちゃんです。
退院10日後に抜糸のため、来院されたハナちゃんです。
傷口も綺麗に癒合してます。
元気に回復されて、ハナちゃん本当に良かったです。
多くの子宮水腫摘出手術を経験してきましたが、今回はトップクラスの子宮腫大でした。
最後に雌のウサギはシニア世代になると今回の様に産科疾患が多発します。
1歳までに避妊手術を受けられることをお奨めします。
ハナちゃん、お疲れ様でした!
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この時期は動物病院は繁忙期になります。
狂犬病ワクチン接種やフィラリア予防等などで飼主の皆様には、長時間御待ち頂きご迷惑をおかけしてます。
私自身も連日の手術でブログを更新することが出来ずにいます。
読者の皆様にしばらく新作をお届けできなくてすみませんでした。
本日、やっと載せることが出来ます。
ご紹介させて頂きますのはウサギの子宮水腫です。
かなり進行して、よくこれだけのものが腹腔に納まっていたなという高度の子宮水腫です。
ミニウサギのハナちゃん(雌、7歳)は突然、倒れるとのことで来院されました。
診察中、陰部から出血が認められた(下写真)ので子宮疾患を疑いました。
まずはエコーで腹部をチェックします。
下のエコー写真で、黄色矢印は子宮の中に水が貯留しているのを示します。
加えて黄色丸は子宮内の腫瘤を示します。
いずれにせよ、ハナちゃんは子宮疾患、特に高度の子宮水腫に罹患してます。
かなり子宮が腫れているため、血流の循環障害で失神が起きたのかもしれません。
手術に耐えられるか、血液検査(下写真)を実施して問題なかったので外科的に卵巣子宮を摘出することとしました。
いつも通り、橈側皮静脈に点滴用の留置針を入れます。
腹部が腫大しているため、あまり全身状態は良好とは言えません。
麻酔前投薬としてメデトミジン・ケタラールを投薬し、その後イソフルランで維持麻酔します。
麻酔が安定してきましたので、早速手術に移ります。
腹筋を切開したところで大きな子宮が顔を表しました。
卵巣動静脈(下写真黄色丸)をいつものごとくバイクランプでシーリングします。
シーリングした卵巣動静脈は縫合糸で結紮することなく、メスで離断でき出血はありません。
両側の卵巣を離断して、子宮角から子宮体までを体外に出したところです。
子宮自体がすでにうっ血色を呈しています。
ついに子宮頚部を縫合糸で結紮してメスで離断します。
腹筋・皮膚を縫合して、手術は終了です。
摘出した子宮とハナちゃんを並べて比較しました。
ハナちゃんの体重が1.5kgで子宮の重さは250gでした。
いかに子宮水腫が大きいものであるか、お分かり頂けると思います。
イソフルランを切りますと、ハナちゃんはほどなく覚醒を始めました。
覚醒直後のハナちゃんです。
お腹がかなりスッキリしましたね。
ただあれだけの大きな子宮水腫ということは、循環血流量も一挙に減少することを意味しますので、これからが要注意です。
ショック死することもあり得ます。
術後3時間のハナちゃんです。
活動性も出て来ました。
さて摘出した子宮です。
子宮角の内容は血漿を主体とした血液成分から構成されてます(下写真青矢印)。
そして変性壊死した子宮内膜が膨隆(下写真黄色矢印)しています。
一部、子宮内膜に腺癌も認められました。
病変部をスタンプ染色しました。
子宮内膜の腫瘍細胞が認められます。
子宮内膜細胞がすでに壊死・融解を起こしてます。
ハナちゃんは術後5日目に退院して頂きました。
食欲も十分あり、排便排尿も問題ありません。
我々に対する威嚇・攻撃性も出て来ました。
退院当日のハナちゃんです。
退院10日後に抜糸のため、来院されたハナちゃんです。
傷口も綺麗に癒合してます。
元気に回復されて、ハナちゃん本当に良かったです。
多くの子宮水腫摘出手術を経験してきましたが、今回はトップクラスの子宮腫大でした。
最後に雌のウサギはシニア世代になると今回の様に産科疾患が多発します。
1歳までに避妊手術を受けられることをお奨めします。
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2016年2月 9日 火曜日
ウサギの膣過形成
こんにちは。 院長の伊藤です。
この3週間ほど休みなく診療に明け暮れていました。
休診日も関係なくほぼ毎日、メスを持って手術をしていました。
そのため、ホームページにかける時間が取れずに読者の皆様、ご迷惑をおかけいたしました。
特に外科に関わるブログネタは30件ほど溜まっておりますので、これから順次載せていきます。
さて、本日ご紹介しますのはウサギの膣過形成の一例です。
ミニレッキスのみかんちゃん(雌、1歳11カ月)は生まれてこの方、陰部から大きくなった腫瘤が排尿時に障害となり、尿かぶれが酷く、常時尿臭を伴っているとのこと。
他院で抗生剤などの内服を処方されているが、改善は認められないとのことで来院されました。
下写真の黄色丸をご覧ください。
拡大写真です。
外陰部からはみ出して、かなり大きな腫瘤が認められます。
おそらく尿道口から排出された尿が四方に飛散して、外陰部に残り尿臭のもとになっているようです。
この外陰部から突出している腫瘤はおそらく膣壁が過剰に形成され、いわゆる過形成という状態になっている可能性が高いと思われました。
まずはこの腫瘤を細胞診しました。
この膣の腫瘤が平滑筋肉腫や扁平上皮癌といった悪性腫瘍でないかの確認が必要です。
幸いなことに腫瘍細胞はなく、膣壁の過形成であることが判明しました。
犬の膣過形成については、年齢が2~3歳以下の若い雌犬に発生が多いといわれています。
犬は発情前期及び発情期に過剰なエストロジェンが分泌され、これによって膣粘膜が浮腫上に肥大し、膣壁が過形成することが原因とされます。
ウサギの膣過形成も同じ原因で起こります。
問題は一旦、性的に成熟したウサギは周年発情動物で、犬の様に発情期というものはそもそもなく、いつも発情しています。
従って、この膣過形成を治療するにあたり、過剰な膣壁を切除して、卵巣・子宮を摘出するのがベストの選択と言えます。
飼い主様のご了解を得て、外科的摘出を行いました。
みかんちゃんに全身麻酔をかけます。
患部を綺麗に消毒・洗浄します。
患部は床面との干渉で表層部が剥離して紅くただれています。
電気メスにより患部を一部切除して、組織内容を確認します。
腫瘤内部は過形成した膣上皮でした。
さらに深部まで切除するることとしました。
切除した膣壁の断面です。
特に太い血管の走行はなく、切断面を縫合します。
縫合終了と共に牽引していた鉗子を外すと、患部はそのまま外陰部内へと納まりました。
加えて、みかんちゃんの卵巣・子宮摘出を行います。
みかんちゃんの子宮角には、一部子宮内膜炎による子宮壁の過形成が認められました。
閉腹して手術は終了です。
外陰部も腫瘤はなくなり、見栄えもよくなりました。
術後の経過も良好で、排便・排尿も問題なくできるようになりました。
4日間の入院でみかんちゃんは退院して頂きました。
下は退院前の写真です。
術後1か月のみかんちゃんです。
患部は見て頂いて分かるように腫瘤の再生もなく、綺麗に落ち着いています。
みかんちゃんは生後1か月位からこの膣過形成が始まっていたようです。
当院での手術を受けられるまでの2年近くを、陰部周辺の不快感を持ったまま我慢されてきたことになります。
今後は気持ちよく排尿できると思います。
みかんちゃん、お疲れ様でした。
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さて、本日ご紹介しますのはウサギの膣過形成の一例です。
ミニレッキスのみかんちゃん(雌、1歳11カ月)は生まれてこの方、陰部から大きくなった腫瘤が排尿時に障害となり、尿かぶれが酷く、常時尿臭を伴っているとのこと。
他院で抗生剤などの内服を処方されているが、改善は認められないとのことで来院されました。
下写真の黄色丸をご覧ください。
拡大写真です。
外陰部からはみ出して、かなり大きな腫瘤が認められます。
おそらく尿道口から排出された尿が四方に飛散して、外陰部に残り尿臭のもとになっているようです。
この外陰部から突出している腫瘤はおそらく膣壁が過剰に形成され、いわゆる過形成という状態になっている可能性が高いと思われました。
まずはこの腫瘤を細胞診しました。
この膣の腫瘤が平滑筋肉腫や扁平上皮癌といった悪性腫瘍でないかの確認が必要です。
幸いなことに腫瘍細胞はなく、膣壁の過形成であることが判明しました。
犬の膣過形成については、年齢が2~3歳以下の若い雌犬に発生が多いといわれています。
犬は発情前期及び発情期に過剰なエストロジェンが分泌され、これによって膣粘膜が浮腫上に肥大し、膣壁が過形成することが原因とされます。
ウサギの膣過形成も同じ原因で起こります。
問題は一旦、性的に成熟したウサギは周年発情動物で、犬の様に発情期というものはそもそもなく、いつも発情しています。
従って、この膣過形成を治療するにあたり、過剰な膣壁を切除して、卵巣・子宮を摘出するのがベストの選択と言えます。
飼い主様のご了解を得て、外科的摘出を行いました。
みかんちゃんに全身麻酔をかけます。
患部を綺麗に消毒・洗浄します。
患部は床面との干渉で表層部が剥離して紅くただれています。
電気メスにより患部を一部切除して、組織内容を確認します。
腫瘤内部は過形成した膣上皮でした。
さらに深部まで切除するることとしました。
切除した膣壁の断面です。
特に太い血管の走行はなく、切断面を縫合します。
縫合終了と共に牽引していた鉗子を外すと、患部はそのまま外陰部内へと納まりました。
加えて、みかんちゃんの卵巣・子宮摘出を行います。
みかんちゃんの子宮角には、一部子宮内膜炎による子宮壁の過形成が認められました。
閉腹して手術は終了です。
外陰部も腫瘤はなくなり、見栄えもよくなりました。
術後の経過も良好で、排便・排尿も問題なくできるようになりました。
4日間の入院でみかんちゃんは退院して頂きました。
下は退院前の写真です。
術後1か月のみかんちゃんです。
患部は見て頂いて分かるように腫瘤の再生もなく、綺麗に落ち着いています。
みかんちゃんは生後1か月位からこの膣過形成が始まっていたようです。
当院での手術を受けられるまでの2年近くを、陰部周辺の不快感を持ったまま我慢されてきたことになります。
今後は気持ちよく排尿できると思います。
みかんちゃん、お疲れ様でした。
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投稿者 もねペットクリニック | 記事URL
2016年1月14日 木曜日
ウサギの子宮腺癌(その6)
こんにちは 院長の伊藤です。
ウサギの子宮疾患で死亡率が高いのは、子宮腺癌です。
子宮に腫瘍が出来ますと腺癌に侵された子宮内膜から出血が始まります。
多くのウサギは血尿から、飼主様が異常に気づくことが多いです。
ここで動物病院を受診して、幸いにも子宮腺癌と診断されて外科的に卵巣子宮摘出手術を成功されれば理想です。
現実には、他院で犬猫と同様に膀胱炎の診断をされ、抗生剤と止血剤の内服を長期にわたり継続して、腹腔が子宮腺癌で膨満した状態で、セカンドオピニオンとして当院を来院されるケースが多いです。
こうなると、待ったなしの外科手術になります。
少しでも、飼主様にウサギの子宮腺癌についての見識をお持ちいただけるよう子宮腺癌の症例をご紹介させて頂いてます。
今回、ご紹介しますのはモシャちゃん(8歳6か月)です。
モシャちゃんは福島で震災に遭い、飼い主様のご実家である名古屋に戻られたという経験を持つウサギです。
去年の12月から血尿が続くとのことで他院を受診したそうですが、子宮疾患の疑いはないと否定されたそうです。
セカンドオピニオンで当院を受診された時には、出血の量も多くなっていました。
下写真はモシャちゃんをお預かりしてすぐに出た血尿です。
お腹の膨満感はありませんが、歯茎等の可視粘膜は貧血色を呈しています。
直ぐにエコーをしました。
下のエコー像の黄色丸で囲んだ部位が腫脹している子宮です。
かなり、膨大しており周囲の腸を圧迫しています。
この段階で子宮腺癌の確定診断は出来ましたので、そのまま手術で摘出することにしました。
貧血が酷い場合は、ある程度内科的治療を施して、体力が手術に耐えられるまで回復を待つこともあります。
モシャちゃんの場合は、これ以上内科的治療を継続することでの回復は望めないと判断しての手術です。
いつものことながら、静脈確保のための留置針処置です。
イソフルランで麻酔導入します。
モシャちゃんは長毛種で下腹部を剃毛するのが大変です。
正中切開でメスを入れます。
腹膜を切開したところで、すでに腫大した子宮が外からでも認識できます。
腺癌で腫大した子宮です。
健常な子宮の6~7倍くらい腫大しています。
卵巣動静脈も子宮間膜の血管も怒張しており、これもいつもの通りバイクランプのシーリングでほとんど無出血で両側卵巣を離断します。
最後に子宮頚部を縫合糸で結紮して子宮を摘出します。
あとは腹膜・腹筋・皮膚と縫合して終了です。
モシャちゃんは手術にしっかり耐えてくれました。
麻酔の覚醒も速やかです。
無事、手術は終了しました。
今回摘出した卵巣と子宮です。
右側子宮角です。
左側子宮角です。
子宮壁を切開してました。
腺癌が子宮内膜へ浸潤しており、子宮壁の一部は炎症から変性壊死してます。
この病変部をスタンプ染色しました。
腺癌の腫瘍細胞が認められます。
術後のモシャちゃんの経過は良好で3日後には退院して頂きました。
下写真は2週間後のモシャちゃんです。
抜糸のため来院されました。
首に付けたエリザベスカラーが邪魔みたいですが、傷口の保護のためには止むを得ません。
剃毛部した部位は既に下毛が生えてきています。
皮膚も綺麗に癒合してます。
抜糸後の皮膚です。
モシャちゃんは術後食欲が見違えるほどに旺盛になり、活動的になったそうです。
また血尿も術後はありません。
毎回、このウサギの子宮腺癌の紹介の文末に記載してますが、5歳以降の血尿は子宮疾患を疑って下さい。
そして速やかに、ウサギを診て頂ける動物病院を受診して下さい。
モシャちゃんの飼主様は5歳以降の避妊手術は危険でできないと思い込んでみえました。
モシャちゃんは8歳を過ぎた高齢でしたが、手術は可能でした。
救える命は、頑張って救ってあげたいと思います。
そして、できるなら1歳位には雌ウサギには避妊手術を受けさせてあげて下さい。
モシャちゃん、お疲れ様でした!
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ウサギの子宮疾患で死亡率が高いのは、子宮腺癌です。
子宮に腫瘍が出来ますと腺癌に侵された子宮内膜から出血が始まります。
多くのウサギは血尿から、飼主様が異常に気づくことが多いです。
ここで動物病院を受診して、幸いにも子宮腺癌と診断されて外科的に卵巣子宮摘出手術を成功されれば理想です。
現実には、他院で犬猫と同様に膀胱炎の診断をされ、抗生剤と止血剤の内服を長期にわたり継続して、腹腔が子宮腺癌で膨満した状態で、セカンドオピニオンとして当院を来院されるケースが多いです。
こうなると、待ったなしの外科手術になります。
少しでも、飼主様にウサギの子宮腺癌についての見識をお持ちいただけるよう子宮腺癌の症例をご紹介させて頂いてます。
今回、ご紹介しますのはモシャちゃん(8歳6か月)です。
モシャちゃんは福島で震災に遭い、飼い主様のご実家である名古屋に戻られたという経験を持つウサギです。
去年の12月から血尿が続くとのことで他院を受診したそうですが、子宮疾患の疑いはないと否定されたそうです。
セカンドオピニオンで当院を受診された時には、出血の量も多くなっていました。
下写真はモシャちゃんをお預かりしてすぐに出た血尿です。
お腹の膨満感はありませんが、歯茎等の可視粘膜は貧血色を呈しています。
直ぐにエコーをしました。
下のエコー像の黄色丸で囲んだ部位が腫脹している子宮です。
かなり、膨大しており周囲の腸を圧迫しています。
この段階で子宮腺癌の確定診断は出来ましたので、そのまま手術で摘出することにしました。
貧血が酷い場合は、ある程度内科的治療を施して、体力が手術に耐えられるまで回復を待つこともあります。
モシャちゃんの場合は、これ以上内科的治療を継続することでの回復は望めないと判断しての手術です。
いつものことながら、静脈確保のための留置針処置です。
イソフルランで麻酔導入します。
モシャちゃんは長毛種で下腹部を剃毛するのが大変です。
正中切開でメスを入れます。
腹膜を切開したところで、すでに腫大した子宮が外からでも認識できます。
腺癌で腫大した子宮です。
健常な子宮の6~7倍くらい腫大しています。
卵巣動静脈も子宮間膜の血管も怒張しており、これもいつもの通りバイクランプのシーリングでほとんど無出血で両側卵巣を離断します。
最後に子宮頚部を縫合糸で結紮して子宮を摘出します。
あとは腹膜・腹筋・皮膚と縫合して終了です。
モシャちゃんは手術にしっかり耐えてくれました。
麻酔の覚醒も速やかです。
無事、手術は終了しました。
今回摘出した卵巣と子宮です。
右側子宮角です。
左側子宮角です。
子宮壁を切開してました。
腺癌が子宮内膜へ浸潤しており、子宮壁の一部は炎症から変性壊死してます。
この病変部をスタンプ染色しました。
腺癌の腫瘍細胞が認められます。
術後のモシャちゃんの経過は良好で3日後には退院して頂きました。
下写真は2週間後のモシャちゃんです。
抜糸のため来院されました。
首に付けたエリザベスカラーが邪魔みたいですが、傷口の保護のためには止むを得ません。
剃毛部した部位は既に下毛が生えてきています。
皮膚も綺麗に癒合してます。
抜糸後の皮膚です。
モシャちゃんは術後食欲が見違えるほどに旺盛になり、活動的になったそうです。
また血尿も術後はありません。
毎回、このウサギの子宮腺癌の紹介の文末に記載してますが、5歳以降の血尿は子宮疾患を疑って下さい。
そして速やかに、ウサギを診て頂ける動物病院を受診して下さい。
モシャちゃんの飼主様は5歳以降の避妊手術は危険でできないと思い込んでみえました。
モシャちゃんは8歳を過ぎた高齢でしたが、手術は可能でした。
救える命は、頑張って救ってあげたいと思います。
そして、できるなら1歳位には雌ウサギには避妊手術を受けさせてあげて下さい。
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