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産科系・生殖器系の疾患/うさぎ

2014年8月10日 日曜日

ウサギの血尿にはご注意を!(子宮内膜炎・内膜過形成)

こんにちは 院長の伊藤です。

ウサギの外来の中で、血尿の主訴で来院されるケースが非常に多いです。

一口に血尿と言っても、その原因は様々です。

子宮出血の他に腎盂腎炎・膀胱炎・尿道炎・尿路結石などが可能性として挙げられます。

それでも4歳以上の雌ウサギの場合、高い確率で子宮疾患が絡んでいることが多いです。



本日ご紹介しますのは、ミニウサギのさつきちゃん(4歳5か月齢、雌、体重1.8kg)です。

さつきちゃんは数か月前より血尿が認められるとのことで来院されました。

この出血は常時出ているのではなく、出るときもあれば出ないときもあるとのことです。



陰部を良く診ますと下写真の様に激しい出血が認められrます。







血尿の原因は何かを探るためにレントゲン撮影をしました。





レントゲン像から、膀胱内には高カルシウム尿の蓄尿が認められます。

このカルシウム尿の中に結石が隠れていれば、それは膀胱結石が血尿の原因と言えます。

結論として、さつきちゃんの場合は膀胱結石は認められませんでした。

加えて腎盂結石、尿管結石、膀胱結石、尿道結石は陰性です。

子宮については、健常な子宮であればレントゲン上には認識されません。

子宮水腫や子宮腺腫等に罹患していれば、腹腔内の他の臓器とのコントラストで子宮の存在が認識されます。

今回のさつきちゃんの子宮は特にレントゲン像には写っていません。

さつきちゃんの血尿は量も多く、膀胱炎での出血のようなレベルではないと思われました。

ちなみに膀胱出血の場合は尿の色に関係なく常に潜血反応は陽性です。

一方、子宮からの出血は潜血反応が陽性であったり、陰性であったり一定しないことが多です

今回の血尿には、何らかの子宮疾患は絡んでいるものと推察されます。

飼い主様の意向もあり、避妊の目的も併せて卵巣・子宮全摘出手術を実施することとしました。



点滴のルート確保のために前足に留置針を入れます。





これで手術の下準備はできました。



出血のある個体なので、慎重に全身状態をチェックします。

下写真は手術前の血液検査です。

特に貧血も認められず、手術にも十分耐えられる状態であるのが判明しました。



あとはICUの入院室に入って頂き、40%の酸素を吸入して手術まで待機してもらいます。



落ち着いたところで、全身麻酔に移ります。

麻酔前投薬を注射し、イソフルランで麻酔導入・維持します。







下腹部を正中線に従ってメスで切開します。



下写真は、子宮を体外に出したところです。

子宮自体の大きさは正常です。

ところが、右子宮角に異常が認められました。

黄色矢印は、右子宮角です。

その部位が腫大しており、内部で出血が認められます。



おそらくこの部位(下黄色丸)から出血があり、血尿に至ったと推察されます。



いつものようにバイクランプで卵巣動静脈をシーリングします。



両側卵巣を摘出したところです。

黄色丸が病巣部です。



子宮頚部を結紮します。



子宮頚部を離断します。



腹筋と皮膚を最後に縫合します。



術後に患部を自咬する個体が多いため、当院ではステープラー(医療用ホッチキス)で皮膚縫合する事が多いです。





さつきちゃんは麻酔の覚醒も速やかで、術後の経過も良好でした。

摘出した子宮ですが、病変部は子宮内膜炎と子宮内膜過形成であることが判明しました。

下写真は患部をカットしたところです。




退院直前のさつきちゃんです。

術後の出血もなく、食欲も良好です。



子宮内膜炎や子宮内膜過形成は、投薬による内科的療法での完治は難しいと思います。

そして4,5歳以降のシニア世代になってから、子宮疾患に罹患する確率はかなり高いと思われます。

むしろ早い時期に卵巣子宮を全摘出することが最善の選択です。



飼い主様は、手術で無事生還できるか心配されていましたが、さつきちゃんは退院後の経過も良好だそうです。

血尿も退院後、認められません。

高度の子宮腺癌の場合、術後の予後不良のため死亡に至る場合もあります。

統計学的にもウサギの血尿は子宮疾患につながるケースが多いことを認識して下さい。





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投稿者 もねペットクリニック | 記事URL

2014年6月19日 木曜日

ウサギの子宮腺癌・子宮水腫(その3)

こんにちは 院長の伊藤です。


ウサギは繁殖に特化した動物です。

自然界では肉食獣に捕食される立場にありますから、種の保存のためにも繁殖能力は秀でている必要があるわけです。

野生のウサギは年間5~6回出産するとされます。

一方、家庭でペットとして飼育されている妊娠させないウサギの子宮は1年中、過剰量の女性ホルモン(エストロジェン)に暴露されます。

ウサギの子宮疾患が多発する原因は上記の点にあります。

以前、ウサギの子宮腺癌ウサギの子宮腺癌(その2)にもその詳細を記載しました。

興味のある方は上記下線部をクリックして下さい。



前置きが長くなりました。

本日ご紹介しますのは、ウサギの子宮腺癌の第3弾です。

今回は子宮水腫も伴う症例です。

ロップイヤーのタックちゃん(6歳10か月齢、雌)はわずかながら陰部からの出血がしばらく続くとのことで来院されました。



タックちゃんの年齢から推察すると、子宮疾患を持っている可能性は高いように思われました。

飼い主様が避妊手術を希望されたこともあり、またタックちゃんの全身状態も良好なため一般の避妊手術としてお受けすることになりました。

手術を受けて頂くためには、犬猫以上にデリケートな動物なので入念な準備が必要です。

換気不全に陥らないようにICUの部屋(下写真)で高濃度の酸素を吸入させ、肺を酸素化します。



もし手術中に呼吸停止したとしても、わずか1~2分でもこの酸素化処置が効果を示し、緊急処置に対応できる場合があります。

次に血液検査を実施して、全身麻酔に耐えられるかチェックします。



次に前足の橈側皮静脈に点滴のラインを確保するため、留置針を入れます。



麻酔導入薬を投与した後、ガス麻酔でしっかり寝ていただきます。



これから手術に移ります。





腹部正中線に沿ってメスを入れます。



腹筋を切開したところで、腫大した子宮が外に出て来ました。

下写真黄色丸が子宮腺癌と思われる箇所で、黄色矢印は子宮水腫です。



子宮全体を入念に観察して、この部位以外に腫瘍と思しきものはないことを確認します。

卵巣動静脈をバイクランプでシーリングします。



7歳近くなると腹腔内も内臓脂肪も多くなり、脂肪組織内に潜んでいる血管を傷つけないよう卵巣と子宮の摘出を進めていきます。





最後に子宮頚部を離断します。



摘出した子宮です。



子宮腺癌と思われる部位を切開した断面です。



この断面をスタンプ染色した結果が下写真です。

炎症細胞と腫瘍細胞が認められます。



水腫の箇所を切開しました。

下写真にありますように子宮粘膜が炎症を起こし、一部出血・腐敗が始まっています。

これらの箇所から持続的にタックちゃんは出血があったものと思われます。



特に出血もなく無事卵巣・子宮を摘出し、閉腹します。

ウサギは術後、患部を齧ることが多いためステープルで縫合することが多いです。



縫合後の患部です。



手術直後のタックちゃんです。



ウサギの場合、術後にチモシー(乾草)を食べてくれるか否かで予後が分かります。

タックちゃんは術後しばらくしてチモシーを採食し始めました。

ウサギの手術後でホッとする瞬間です。

翌日のタックちゃんです。



水も飲み、ICU内で動き回れるようになっています。

無事タックちゃんは、元気に退院となりました。


4歳以降の未避妊雌の陰部出血は子宮疾患の可能性が高いとされます。

先に述べたとおり、ホルモンバランスの問題を雌ウサギは抱えています。

毎回、同じことを書いていますが、1歳になるまでに避妊手術を受けられることをお勧めします。

タックちゃんのように、子宮腺癌がまだ子宮全体に広がる前であれば予後良好ですが、子宮腺癌の末期ステージでは肺にも癌が転移するケースも多く、術後の生存率は低くなります。

雌ウサギを雄同様に長生きさせるためにも、避妊手術の必要性を感じます。





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投稿者 もねペットクリニック | 記事URL

2013年10月23日 水曜日

ウサギの精巣腫瘍(その2)

ウサギの精巣腫瘍については、以前コメントさせて頂きました。

興味のある方はこちらをクリックして下さい。

ウサギの精巣腫瘍はセルトリ細胞腫、精上皮腫(セミノーマ)、間細胞腫(ライディッヒ細胞腫)と3つの分類されます。

セルトリ細胞腫とセミノーマは悪性腫瘍とされ、ライディッヒ細胞腫は良性腫瘍に分類されています。

発生率はライディッヒ細胞腫が多いようです。


以前コメントしたケース事例では、精巣がかなり大きくなっており排便・排尿時に障害となり、肛門周辺が汚れて不衛生となっていました。

このようなケースでは、夏場では陰部・肛門周辺にハエが卵を産み付けてハエウジ症になることもあります。

したがって、精巣腫瘍が疑われるケースでは、早期摘出をお勧めしている次第です。


Mixウサギのまろん君(6歳9か月、雄)は、精巣の大きさが左側だけ大きくなってきた(黄色丸)とのことで来院されました。



腫瘍の可能性が高いことと、精巣が大きくなってから肛門周辺の衛生管理が大変になることを飼主様にお伝えしました。

結局、早速外科的に摘出をすることとしました。




去勢は15分くらいで終了する手術です。

まろん君は、術前の血液検査で問題なしと出ていましたので、麻酔前投薬はなしでそのままガス麻酔で導入・維持します。





精巣を覆っている総鞘膜という膜を切開したのが下写真です。

腫瘍の転移を考慮して、総鞘膜ごと摘出しました。



患部を縫合して終了です。





摘出した精巣は病理検査結果、間細胞腫(ライディッヒ細胞腫)と判明しました。

良性の腫瘍ということで、とりあえず良かったです。

10歳以上の高齢ウサギで、この精巣腫瘍となる事例は手術のリスク(特に麻酔)を考慮しなければなりません。

精巣が少しでも大きくなってきたな、と感じられたら最寄りの動物病院の受診をお勧めします。




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2012年12月24日 月曜日

ウサギの子宮内膜過形成(子宮内膜炎伴う)

雌のウサギでは、雌性生殖器疾患は日常的によく見られます。

これまでにもウサギの子宮腺癌ウサギの子宮腺癌(その2)と書き込みましたが、4,5歳以降になると雌性生殖器疾患は多発します。

ほとんどの子宮疾患は、食欲不振を伴わないことが多く、そのため発見が遅くなる傾向があります。

多くは血尿が出るとの事で来院され、検査の結果、子宮疾患であると判明することが殆どです。

今回、ご紹介致しますのはネザーランドドワーフのココちゃん(2歳、1.8kg)です。



血尿が続くとのことで来院され、尿検査を実施したところ潜血反応陽性で、レントゲン検査、エコー検査共に子宮の腫大が認められました。

何らかの子宮疾患があることは明白です。

まだ若い個体なので、将来のことを考えると卵巣・子宮全摘出を実施された方が賢明と思い、また飼主様のご了解もいただきましたので手術を実施することとしました。

ウサギの場合、麻酔上の難しさもあり、当院ではICUの部屋に入ってもらい酸素化を行なってから、麻酔前投薬・導入・ガス麻酔と進めていきます。





開腹して子宮を確認したところ、子宮は腫大しており子宮内は出血して、暗赤色に変色している部分が認められました。

バイクランプで卵巣動静脈をシーリングしているところです。







下の写真は、摘出した子宮です。

バイクランプで主要な血管はシーリングしましたので、出血は最小限にとどめることが出来ました。



ココちゃんは術後の覚醒も速やかで問題ありませんでした。





術後はICUでしばらく入院してもらいます。



さて、摘出した子宮ですが子宮の内膜が炎症を起こしており、加えて内膜が嚢胞上に腫れていました(子宮内膜過形成)。





卵巣子宮摘出手術が適用となる生殖器疾患には、今回のような子宮内膜過形成の他に、子宮蓄膿症、子宮内膜静脈瘤、子宮水腫、子宮捻転、子宮腺癌などが挙げられます。

今回の子宮内膜過形成は、症状として排尿後の出血や間欠的な陰部からの出血、それに伴う貧血が主徴です。

食欲不振や元気消失が認められるようになると、かなり病状は悪化しているものと思って下さい。

血尿が数日でも続くのならば、病院を受診されることをお勧めします。

そして、毎回同じことの繰り返しになってしまいますが、早期の避妊手術をご考慮下さい。



ココちゃんは、2日間の入院後、元気に退院されました。

その後の血尿も認められません。




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2012年10月24日 水曜日

ウサギの子宮腺癌(その2)

ウサギの子宮疾患は色々な症状を示します。

発病初期は陰部からの出血例が70%位を示すと言われています。

来院される時は多くの飼主様が血尿が出ると申告されるケースが多いです。

血尿というとどうしても膀胱炎や尿石症をイメージしてしまいますが、4歳以降の雌ウサギであればむしろ子宮疾患を疑って欲しいと思います。

本日ご紹介するのは、ライオンラビットのらんちゃんです。

らんちゃんは数週間前から、血尿が出ているとのことで来院されました。



尿検査では潜血反応は陰性でした。

膀胱を早速エコー検査したところ、特に結石もなく出血の形跡もありません。

むしろ5歳を過ぎた雌と言いうことで、子宮疾患を疑って子宮を入念に検査しました。

結果は下の通りです。

黄色丸で示した部分が子宮の断面を描出しています。

子宮角に実質性の腫瘤があるようです。



腫瘍の可能性が大とみて手術に移ります。





黄色矢印の部分は子宮角にあたりますが、ここに非常に硬い結節が認められました。





卵巣動静脈をバイクランプでシールします。

ついで子宮頚部をシールしてメスでカットします。





子宮頚部の切断面をしっかり縫合します。





手術は無事終了しました。

摘出した卵巣と子宮が下の写真です。



緑の矢印が卵巣で黄色丸が子宮角のうち腫瘤を呈した部分です。摘出子宮全体がどす黒い色をしています。

この腫瘤をカットした写真です。



この部位をスタンプ染色しました。





結局、子宮内膜の過形成と子宮腺腫癌であることが判明しました。

らんちゃんの術後の経過は良好で、血尿も止まり食欲も回復しました。

退院当日のらんちゃんです。





毎回申し上げていますが、4,5歳以降になると子宮疾患のウサギが増えます。

犬猫と同様、できる限り早い年齢(1歳未満くらい)で避妊手術を受けられることをお勧めいたします。



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