腫瘍疾患/うさぎ
2014年11月22日 土曜日
ウサギの子宮腺癌(その4)
こんにちは 院長の伊藤です。
ウサギの子宮腺癌は過去にも何例もご紹介してきました。
今回は事前の検査(エコー・レントゲン)でも見つけられなかった症例です。
ネザーランド・ドワーフのてんちゃん(雌、5歳、1.2kg)は床に出血跡があり、どこか異常があるのではと受診されました。
4,5歳以降の血尿は子宮疾患が絡んでいるといつも申し上げています。
今回もその疑いで検査を進めさせていただきました。
まず尿検査では潜血反応は陰性、顕微鏡所見でも尿路結石の結晶や子宮腺癌の細胞は陰性となりました。
エコーでは膀胱内の結石はなく、子宮自体の腫大も認められません。
レントゲン所見は以下の通りです。
ただ子宮疾患でも初期のステージであれば、子宮腫大もなく、かつ不定期に出血が尿中に認められることはあります。
止血剤と抗生剤の投薬でしばし、経過観察としました。
その1か月後、てんちゃんの経過は良好ですが飼い主様の要望もあり、避妊手術を実施することとなりました。
いつものごとく、点滴の留置針を入れます。
腹筋を切開して開腹します。
下写真黄色丸が子宮です。
見た感じはきれいな正常な子宮に見えます。
バイクランプで卵巣動脈をシーリングしてます。
左右の子宮角もバランスが取れています。
子宮頚部を結紮します。
腹腔内に出血がないか、他の臓器に異常がないかを最後に確認します。
特に異常な所見は認められませんでした。
ステープラーで皮膚縫合します。
これにて避妊手術は終了です。
覚醒直前のてんちゃんです。
次に摘出した子宮を検査します。
よく注意して触診していくと、わずかですが小さな腫瘤が認められました(下黄色丸)。
側面からのアングルです。
この気になる腫瘤にメスを入れて(黄色矢印)、スタンプ染色しました。
下写真は低倍率の顕微鏡写真です。
次は高倍率写真です。
青紫に染まっているのが子宮腺癌の細胞です。
当初、床に出血跡が認められる程度の所見で、その後は出血がなかったというのは、まだ子宮腺癌が初期のステージであったということです。
これから、どんどん腺癌が増殖していくステージに移行したことでしょう。
この段階で早めに子宮を全摘出できて良かったと思います。
腫瘍の存在を摘出してから気付くというケースもあることを忘れないで下さい。
翌日、てんちゃんは無事退院されました。
4.5歳以降の血尿は子宮疾患を疑って下さい。
そして、可能な限り1歳までに雌ウサギは避妊手術を受けて下さい。
それが子宮疾患、特に子宮腺癌に罹患しないで済む唯一の選択肢です。
てんちゃん、お疲れ様でした!
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投稿者 もねペットクリニック | 記事URL
2014年11月17日 月曜日
ウサギの脂肪腫・毛芽腫摘出手術
こんにちは 院長の伊藤です。
ウサギの皮膚腫瘍は、これまでにも何例か報告させて頂きました。
今回ご紹介するのは脂肪腫と毛芽腫の両方が同一の個体に発症した症例です。
しかも大きさがかなり大きいです。
ウサギのマリオ君(6歳、雄)は、頸とお尻に大きなしこりが出来たとのことで来院されました。
腫瘍がどれくらいの大きさなのかは体毛が多く良くわからないため、剃毛直後の手術時の写真を先にお見せしておきます。
下写真の黄色丸がその患部になります。
お尻の腫瘍です。
この部位を細胞診しました。
毛芽腫と判明しました。
次に頚腹部の腫瘍です。
同じく細胞診を実施しました。
こちらは脂肪腫であることが判明しました。
毛芽腫と脂肪腫は共にウサギの皮膚腫瘍としては日常的に認められる良性腫瘍です。
ただマリオ君の場合は、腫瘍が巨大なため採食行動もままならないとのことで外科的に切除することとしました。
術前に血液検査を行い無事麻酔をかけられるか確認します。
血管を確保して点滴が出来るように留置針を頭側皮静脈に入れます。
麻酔が十分にかかったのを確認して切除手術にかかります。
切除後の皮膚です。
縫合後の皮膚です。
次に巨大な頚腹部の腫瘍です。
出血を極力抑えるために同様に電気メス(バイポーラ)で切除していきます。
皮膚を切開していくと皮下組織に腫瘍が顔を覗かせています。
腫瘍切除後の皮膚です。
大きな欠損ができました。
この部位は腋下部に及んでるため、皮膚が稼働する箇所でもあり、縫合部が前足の運行により吻開する可能性があるためステンレスワイヤー(細い針金)で実施することにしました。
ワイヤーの結紮部がハリネズミのように出ていて痛々しい感がありますが止むを得ません。
手術は無事終了し、覚醒を促すため静脈からアチパメゾールを注入します。
覚醒したマリオ君です。
下写真は摘出した腫瘍です。
随分大きいのがお分かり頂けると思います。
術後に患部を齧るウサギは多いため、保護のためストッキネットでポンチョを着せることにしました。
退院後にご自宅で患部を齧ったりして一部縫合部が吻開したりするアクシデントもありましたが、無事抜糸した4週間後のマリオ君です。
お尻の部位も綺麗に治りました。
今回はいずれも良性の腫瘍でありましたが、大きな腫瘍であるほどに術後の管理も重要です。
マリオ君お疲れ様でした!
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ウサギの皮膚腫瘍は、これまでにも何例か報告させて頂きました。
今回ご紹介するのは脂肪腫と毛芽腫の両方が同一の個体に発症した症例です。
しかも大きさがかなり大きいです。
ウサギのマリオ君(6歳、雄)は、頸とお尻に大きなしこりが出来たとのことで来院されました。
腫瘍がどれくらいの大きさなのかは体毛が多く良くわからないため、剃毛直後の手術時の写真を先にお見せしておきます。
下写真の黄色丸がその患部になります。
お尻の腫瘍です。
この部位を細胞診しました。
毛芽腫と判明しました。
次に頚腹部の腫瘍です。
同じく細胞診を実施しました。
こちらは脂肪腫であることが判明しました。
毛芽腫と脂肪腫は共にウサギの皮膚腫瘍としては日常的に認められる良性腫瘍です。
ただマリオ君の場合は、腫瘍が巨大なため採食行動もままならないとのことで外科的に切除することとしました。
術前に血液検査を行い無事麻酔をかけられるか確認します。
血管を確保して点滴が出来るように留置針を頭側皮静脈に入れます。
麻酔が十分にかかったのを確認して切除手術にかかります。
切除後の皮膚です。
縫合後の皮膚です。
次に巨大な頚腹部の腫瘍です。
出血を極力抑えるために同様に電気メス(バイポーラ)で切除していきます。
皮膚を切開していくと皮下組織に腫瘍が顔を覗かせています。
腫瘍切除後の皮膚です。
大きな欠損ができました。
この部位は腋下部に及んでるため、皮膚が稼働する箇所でもあり、縫合部が前足の運行により吻開する可能性があるためステンレスワイヤー(細い針金)で実施することにしました。
ワイヤーの結紮部がハリネズミのように出ていて痛々しい感がありますが止むを得ません。
手術は無事終了し、覚醒を促すため静脈からアチパメゾールを注入します。
覚醒したマリオ君です。
下写真は摘出した腫瘍です。
随分大きいのがお分かり頂けると思います。
術後に患部を齧るウサギは多いため、保護のためストッキネットでポンチョを着せることにしました。
退院後にご自宅で患部を齧ったりして一部縫合部が吻開したりするアクシデントもありましたが、無事抜糸した4週間後のマリオ君です。
お尻の部位も綺麗に治りました。
今回はいずれも良性の腫瘍でありましたが、大きな腫瘍であるほどに術後の管理も重要です。
マリオ君お疲れ様でした!
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