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筋骨系の疾患(整形)/うさぎ

2020年4月 1日 水曜日

ウサギの脛骨骨折(骨髄内ピンニング整復法)

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは、ウサギの骨折手術です。

ウサギは筋力は発達していますが、骨の耐久性は犬猫と比較しても頑強ではありません。

そのため、突然ダッシュしたり、キックしたり、方向変換したりしても簡単に骨折する場合があります。

本日ご紹介するのは、後肢の脛骨骨折で骨髄内にピンを入れて整復手術した症例です。



ウサギのごまちゃん(6か月齢、雄、体重700g)は活動的な幼ウサギです。

暴れて突然、左後足が立てなくなったとのことで来院されました。





触診では、左後肢の骨折は明らかなようです。

レントゲンを撮りました。

下写真の黄色丸は骨折している箇所です。

左脛骨骨幹部の斜骨折です。





このままの状態では、骨折端が皮膚を貫通して開放創になります。

ひとまずトーマス固定枠(外固定)で脛骨を保護します。

骨折部の整復はピンニングやプレートティング、あるいは創外固定などの選択肢があります。

しかしながら、プレートによる内固定は、ごまちゃんが6か月齢の成長期であり、骨強度の問題で無理があります。

創外固定の場合は活動性の高い個体の場合、飼育ケージ内で創外固定ピンをぶつけたり、引っかけたりして、術後のケアが大変です。

結局、骨髄内ピンニングで整復する方法を選択することとなりました。


早速、ごまちゃんに麻酔前投薬を行い、イソフルランで維持麻酔を実施してます。



骨折部は骨組織と周辺組織の破綻で出血が起こり、内出血という形で認められます。



麻酔状態が安定してきましたので、これから執刀します。





骨折部にアプローチします。

骨折端を確認したところで、患部に貯留していた血液と骨髄からの新たな出血が起こりました。



下写真黄色矢印は骨折端を示します。

骨折端は斜めに折れており、断端部は欠けて粉砕しています。

骨に触っただけでも脆い感触があります。



骨折端の膝関節側(骨折近位部)に向けて、ハンドドリルで直径0.7㎜のピンを骨髄内に挿入します。

ピンニングの術式(橈尺骨骨折の場合)については、詳細はこちらをクリックして下さい。



黄色矢印方向にピンを進めて行き、反対の指の腹でピンの先端が膝関節を曲げた部位から突出するのを確認します。





下写真黄色丸は、飛び出したピンの先端です。





次に膝関節より突出したピンをハンドドリルに装着し直し、下写真黄色矢印方向へピンを進めます。



次に骨折端を整復します。

下写真、黄色丸が整復した骨折部です。



骨折整復部を貫いて足先(遠位端)に向けてピンを挿入します。



挿入したピンと同じサイズのピンを並べて、どの位骨髄(特に足根関節近くに)にピンが挿入されているかをチェックします。



ピンを挿入後のレントゲン像です。

黄色矢印が骨折部ですが、斜骨折のためピンニングだけでは十分な骨折部の固定・強度は期待できません。



そのため、骨折部をサークレージワイヤーで複数か所、締結します。



骨折部にある程度の固定力を付与するため、3か所ほど締結しました。



ワイヤーツイスターを用いて、骨折部を360°サークレージワイヤーで骨周囲を締結します。

これで骨折部位の旋回防止が出来ると思います。



下写真黄色丸はピンニングとサークレージワイヤー締結が終了したところです。

白丸は、骨癒合終了時にピンを抜去するため、脛骨近位端から突出させているピンの端です。



レントゲン写真でピンニングの結果を確認しました(下写真)。

ごまちゃんは生後6か月になったばかりで、まだ骨が成長する可能性があります。

ピンを最終的に抜去する時に、脛骨が縦方向に成長して骨髄内に取り残されてしまうと困ります。

そのため少し長めにピン端を脛骨から突出することにしました(下写真黄色丸)。





筋膜と皮下組織、皮膚を縫合します。



手術はこれで終了です。



最後にトーマス氏固定枠を作成します。

小さなごまちゃんには、大きな固定枠はストレスとなるでしょうが、一日も早く骨癒合を成功させるために我慢して頂きます。





重い固定枠に迷惑そうなごまちゃんです。



大変な手術でしたが、ごまちゃん、お疲れ様でした。



ごまちゃんは、術後6日後に退院して頂きました。

ウサギは、通常犬以上に後肢を角度を深く曲げた姿勢をとります。

瞬間的にキックすると場合によっては、再骨折する可能性があります。

患肢はトーマス氏固定枠で、外反する形になりますが我慢して頂きたい所です。



2か月後のごまちゃんのレントゲン像です。

骨折端の仮骨もスムーズに形成されています。





術後2ヶ月目になり、ごまちゃんに斜頚が起こり、旋回運動をするようになりました(下写真)。



エンセファリトゾーン(ECZ)を疑い、その治療をすることとなりました。

ECZについて、詳細はこちらをクリックしてご覧下さい。

本来ならば、ここでピンの抜去を実施したいところですが、ECZ感染下で麻酔をかけることはリスクが高いです。

ごまちゃんのECZ治療を優先して、最終的にピン抜去出来たのは術後4か月目になりました。

下写真は、術後4か月・ピン抜去時のごまちゃんです。



術後4か月のレントゲン像です。

この4か月で、ごまちゃんの脛骨は縦方向への成長もあり、膝に突出しているピンも短くなってます。





全身麻酔下でピン抜去を行います。



数ミリ出ているピンを把持し、抜去します。





下写真の青矢印は骨髄内に入っていたピンです。



サークレージワイヤーの1本は脛骨の裏側に回り、摘出が困難でそのまま残すことにしました。

下レントゲン写真で確認すると脛骨は外反した形で骨癒合しています。

斜骨折で骨折断端面が粉砕していた点を考慮すると、多少の後肢のアライメントがずれても、骨癒合は完了出来て良かったと思います。





ウサギの骨折は犬猫以上に治療に時間がかかることが多いです。

飼主様の愛情で4か月にわたる治療を頑張って乗り越えて頂きました。

飼い主様、ごまちゃん、お疲れ様でした。






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投稿者 もねペットクリニック | 記事URL

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