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ウサギの疾病

フレミッシュ・ジャイアントのツメダニ症(ソアホック合併症)


本日は、ウサギの外部寄生虫症の中でもツメダニの感染をご紹介します。

ツメダニ感染症については以前、詳細をコメントしましたのでこちらを参照ください。

今回は、ツメダニ単独の寄生によって、結果的に足裏への負担が重なり、ソアホックに至ってしまったという症例です。


フレミッシュ・ジャイアントのたけし君(1歳2か月、雄)は、足裏に皮膚炎(軽度の潰瘍)があるとのことで来院されました。



その時のたけし君のソアホック治療の模様は、こちらをご覧下さい。

下写真の黄色丸にあるように足裏が炎症を起こして赤く腫れています。

左足に至っては軽度の潰瘍が認められます。



ソアホックは長時間にわたり同じ姿勢でいることで、ウサギの足裏の血行障害が生じて足裏の皮膚が炎症、潰瘍に至り歩行が困難になる場合もあり、注意を要する疾病です。

ソアホックについての詳細はこちらを参照下さい。


たけし君のソアホックにどうしても目が行ってしまうのですが、よくよく足裏を診ていますと爪の付根あたり(下写真黄色丸)に痂皮が出来てます。







ウサギのツメダニ感染症の場合、背中の体幹部の脱毛、落屑が顕著な症状で現れます。

まずは、この痂皮をメスの刃で掻破して顕微鏡で検査してみました。

真っ先に虫卵が見つかりました。



次にツメダニの成虫が発見されました。



拡大写真です。



このようなツメダニが認められましたので、早速駆虫のためにレボルーション®を投薬しました。



たけし君はフレミッシュ・ジャイアントというウサギの中でも巨大化する品種で、最大25kg位にまで成長する個体もあるそうです。



当然、足裏にかかる荷重も大きいです。

おそらく、ツメダニの感染が最初にあり痒みに耐えていたのでしょうが、後足の踵に荷重のバランスをかけて、自重の重さもありソアホックに至ったのではないかと思われます。

まだたけし君は、5kg足らずですがまだ成長する余地は十分です。

まずはツメダニの駆虫を経過観察することにしました。

1週間後のたけし君です。

下写真の矢印はまだ赤いですが、痂皮ははずれて綺麗になっています。





下写真は、さらに2週間後のたけし君です。

下毛も生えてきています。





ツメダニは完全に駆虫できており、患部を掻破検査してもダニは認められません。

ダニがいなくなる頃には、ソアホックもいい感じで治ってきました。

踵の下毛もしっかり生えそろいました。



犬猫のように、肉球を持たないウサギにとって足裏は重要な部位です。

今回の様に大型品種の場合は、ツメダニ感染が引き金になって、重度のソアホックに至る可能性もあるということを示唆しています。

爪の付根に痂皮が認められたら、最寄りの動物病院で診察を受けて下さいね。






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投稿者 院長 | 記事URL

ウサギの皮膚線維腫



ウサギにはいろんな皮膚腫瘍(乳頭腫、基底細胞腫、扁平上皮癌、毛芽腫など)があります。

以前にもウサギの毛芽腫についてコメントさせて頂きました。(興味のある方はこちらをクリックして下さい。)

本日ご紹介しますのは、その皮膚腫瘍の中でも線維腫と言う良性の腫瘍です。


ウサギのパン君(10歳、雄)は数か月前くらいから胸腹部の腫瘤が大きくなってきたとのことで来院されました。



ウサギで10歳となるとヒトの80歳から90歳の年齢層になります。

触診してみますとかなりの大きさの腫瘤です。

おそらく腫瘍と思われました。

パン君は胸の毛がしっかり生えていますので外貌を写真で写してもわからないと判断して、話は前後しますが手術時の剃毛後の患部写真(下)をご覧いただきます。



2~5cm以上の腫瘍が合体してとても大きくなっています。

実際、パン君が伏せの姿勢でいると床面との干渉があり、ストレスになっているようです。

まずは患部の細胞診を実施しました。





コラーゲンを作る繊維芽細胞が過剰に増殖しておこる腫瘍を線維腫と言います。

パン君はこの線維腫であるとの診断を病理医から頂きました。

この線維腫と似た腫瘍に線維肉腫という悪性腫瘍がありますが、今回のパン君は良性の物ですから年齢との関係で外科手術を強行すべきか悩みました。

非常に熱心な飼い主様で、外科手術を希望され、慎重に腫瘍摘出手術を行うことになりました。

広い範囲にわたる皮膚の切除が必要となると思われました。

高齢のウサギの麻酔で問題となるのは、呼吸管理です。

ウサギは鼻呼吸を基調として、腹腔に対する胸腔の割合が著しく小さいこと。

口腔が小さく、軟口蓋が気管開口部を覆うように位置していることが長時間の麻酔管理を難しくしています。

1分でも早く確実に手術を終了させなければなりません。



イメージ的には下写真黄色丸のエリアを全て腫瘍のマージンを含め切除します。







電気メスで血管を止血しながら皮膚切除していきます。







この腫瘍は思った以上に深く浸潤しており、胸部皮筋に及んでいました。



腫瘍の最深部は石灰化が起こっており、非常に摘出が難しくなってます(下写真)。



メスを入れた各部位からジワジワ出血が始まります。





下写真は、摘出後の腫瘍です。



腫瘍を全摘出後の患部です。

皮膚欠損は広範囲に及びます。



患部の縫合後の皮膚緊張が大きくなることから、ステンレスワイヤーで縫合しました。



下写真をご覧いただけるとステンレスワイヤー縫合でも、皮膚が緊張しているのがお分かり頂けると思います。



麻酔覚醒直後のパン君です。



麻酔覚醒して10分と経たない状況でパン君はチモシーを食べ始めています。

10歳とはいえ、基礎体力と気力によるところが大きいですね。





パン君は術後の経過も良好で、2日後に退院していただきました。

10日後に抜糸のため来院されたパン君です。

傷口もいい感じで治っているようです。

抜糸させて頂きました。



線維腫の場合、皮膚広範囲に及ぶ浸潤も珍しくありません。

ウサギは、もともと体表面積が小さい動物ですから、皮膚腫瘍は術後の皮膚癒合が一番問題となります。

今回はストレス軽減のため、パン君はエリザベスカラーの装着はしてませんので、術後自咬による患部の傷が開かないのを祈念します。




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投稿者 院長 | 記事URL

ウサギの根尖膿瘍(眼窩膿瘍)


ウサギの歯にまつわる疾病は多く、日常的にも歯科診療の占める割合は多いと言えます。

特に歯周病が原因で生じる膿瘍を目にします。

歯根部からの細菌感染から皮下膿瘍、眼窩膿瘍に至る症例をご紹介します。


ウサギの まるちゃん(3歳4か月、雌)はこの1,2か月前から右眼が突出して来て、眼の周辺の皮膚が腫れているとのことで来院されました。



下写真黄色丸にあるように右眼球が突出しています。





眼の周辺を触診しますと粘稠性のある液体が貯留しています。

それはおそらく膿であり、皮下膿瘍、場合によっては眼窩膿瘍が生じていると思われます。

まずは、レントゲン撮影を実施しました。

黄色丸で囲んだ部位が突出している眼球と皮下の膿瘍と思しきmass(塊)を表します。



側面の画像では、黄色丸の部位が石灰化を起こした上顎臼歯の根尖膿瘍部(歯根部の膿瘍)を表しています。



患部を排膿するため、皮膚を注射針で穿孔します。



穿刺と同時にクリーム状の膿が皮下から流れ出してきました。





膿瘍を圧排した後、消毒液で患部の洗浄を行います。



膿が無くなった分、眼元がスッキリした感じです。



歯周病が高度に進行しすると口腔内を覗いて歯に触れただけで歯根部のグラつきが触知されます。

その場合は当然抜歯から始めます。

しかし、重度の膿瘍を伴わない臼歯の場合、抜歯は容易ではありません。

ウサギの骨密度は犬の半分以下と言われます。

慎重に抜歯しないと顎骨が骨折します。

したがって、多くの症例は膿瘍の治療が中心となります。


犬猫と異なり、ウサギの場合はカプセルの様に膿を有壁性の嚢胞で取り囲みます。

このスタイルを取ることで、細菌や細菌毒素が全身に回ることを防いで入るとも言えます。

そのため、抗生剤を投薬しても感染部位の細菌に薬剤が直接ダメージを与えることは難しいとされます。

内科的治療と共に、必ず排膿処置を並行して実施する必要があります。



また臼歯の根尖膿瘍は顎骨融解をもたらす場合があります(特に下顎骨)。

状況に応じて、この融解部を外科的に切除することもあります。

今のところ、まる君の患部は骨融解はありませんが、膿瘍が消退するまで治療は続きます。

まる君、治療頑張って行きましょう!




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投稿者 院長 | 記事URL

ウサギの感電(家電のケーブルにはご注意を!)


ウサギは何でも齧ります。

ウサギの歯は、常生歯という持続的に伸び続ける形態である以上、絶えず硬いものを齧って歯を摩耗させていかないと過長歯となります。

過長した歯棘が口腔内に傷害を与え、最終的に食欲減退に至ります。

齧り木だけ齧るウサギの場合は何の心配もありませんが、齧る対象が家電製品のケーブルであったら?

というのが、今回のテーマです。


ミニウサギのクルチェちゃん(1歳、雌)は家電製品のケーブルを齧ってから、食欲がなく口の周辺が腫れているとのことで来院されました。

以下の3枚の写真をご覧いただいて、口の周辺部が赤く腫脹しているのがお分かりいただけますか?







下写真の黄色丸で囲んだ箇所が腫れています。




電気コードを咬んで、感電した犬の診察を過去にしたことがあります。

その時は口腔内の熱傷と胃内に通電した結果、胃潰瘍を伴っていました。

その犬の場合は、咬みきったコードをある程度の長さまで飲み込んでしまったための結果です。



今回のクルチェちゃんの場合は、ウサギであるがゆえに電気コードを口先で齧っていたために口吻部のみの熱傷でとどまったと思われます。

口腔内を確認するために、開口器を用いて検査します。



舌が暗赤色に腫れ上がって(黄色丸)、上皮が熱変性して剥離しています(黄色矢印)。



水は何とか飲めるようですが、チモシーやペレットは厳しいかもしれません。

抗生剤とステロイド剤を処方させて頂きました。

しばらくの間は流動食でつないでいただく必要があります。

ウサギをケージから放って室内を徘徊させる習慣があるご家庭は、くれぐれも家電製品のケーブルを齧ったりしないように、細心の注意を払って下さいね!





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投稿者 院長 | 記事URL

ウサギの代謝性骨疾患(食餌にはくれぐれもご注意を!)

食餌から摂取する栄養分で体は作られています。

バランスの崩れた食餌をペットに与えることは、結果として大切なペットを病気にしてしまう事です。

以前から、食餌に含まれるカルシウムが欠乏することで起こる代謝性骨疾患についてはコメントしてきました。

この代謝性骨疾患は、犬猫では比較的少ない疾患だと思います。

それは、ドッグフードやキャットフードが完全食でそれだけ食べていれば、栄養学的に問題ないからです。

その一方で、いかにエキゾチックアニマルでは多いことか!

当院HPのサイト内検索で代謝性骨疾患を入力してみて下さい。

結局、エキゾチックアニマルには完全食なるフードが存在しないため、何種類かの食材を組み合わせる必要があり、飼主様がそれを十分認知していないがために、栄養不良による疾患が引き起こされます。




さて今回、ご紹介しますのはこの代謝性骨疾患が原因で骨折に至ったウサギの話です。

ライオンラビットのミミちゃん(8歳、雌)は前肢に力が入らないとのことで来院されました。



レントゲン撮影を実施しました。

下写真の黄色丸の箇所をご覧ください。

両側上腕骨の中央部が斜骨折しています。





ミミちゃんは特に高い場所から飛び降りたりしていないとのことです。

レントゲン写真から骨密度が非常に低く、骨の向こう側が透けて見えるような感じです。

年齢から考慮して、代謝性骨疾患の可能性が高いと考えられました。

過去の経験から、このような骨密度の低い骨を骨髄ピンや創外固定を実施しても骨癒合を期待することは厳しいと判断しました。

ひとまず、ギブスで外固定して栄養状態を改善させてから、次の手を考えることとしました。

ガス麻酔を行う中でレナサームという熱可塑性キャスト剤でギブスを作ります。







前肢が不自由になりますが、飼主様にも頑張って頂いて介護の必要性をお伝えしました。

問題はミミちゃんが退院された8日後です。

今度は後肢が折れてしまったとのこと。

下がそのレントゲン像です。



特に右の脛骨遠位端が斜骨折で骨折端が皮膚を突き破り、解放骨折の状態です(下写真黄色丸)。



解放骨折をしてから患部は糞便などで汚染されています。

むしろこの個所については、残念ながら感染症を考えて断脚することを提案させて頂きました。

飼い主様によっては、このような場合は安楽死を希望される方もみえます。

ミミちゃんの飼主様は、このような状態でも是非、頑張って乗り越えてほしいという意見でした。

断脚手術をすることとなりました。



出血が予想される血管を縫合糸で結紮していきます。





非常に痛々しくみえるミミちゃんですが、術後の経過は良好です。



流動食を口へと注射器を用いて飲ませます。

大変、気に入ってるようで流動食をたくさん飲んでくれます。





今回の代謝性骨疾患になった理由は、まだ小さい頃からミミちゃんは食餌の好き嫌いが激しかったそうです。

チモシーやペレットは拒否し、えん麦(エンバク)から成る嗜好品(おやつ)は喜んで食べるので、食べてくれるのならと飼主様もえん麦をずっと給餌していたそうです。

この点が代謝性骨疾患を引き起こした原因のようです。


ミミちゃんは無事退院されたのち、流動食を給餌する時に誤嚥され、それがもとで呼吸不全に陥り、逝去されました。

非常に残念な結果でしたが、小さい頃からの食生活が大人になった体を作っていることを忘れないでください。

生命を維持するために必要な栄養は必ず与える努力を忘れないでください。

取り敢えず、食べるからといって嗜好品に走ると栄養不良性疾患に至ります。





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投稿者 院長 | 記事URL

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