寄生虫/うさぎ

2012年9月17日 月曜日

ウサギキュウセンヒゼンダニ感染症の治療経過とウサギ蟯虫症

先日、ご報告させていただいたウサギキュウセンヒゼンダニの治療報告です。

足裏に痂皮(かさぶた)ができ、非常に痒がるため来院されたウサギ君ですが、この痂皮の中にウサギキュウセンヒゼンダニがしっかり見つかりました。

その時の写真がこれです。

黄色丸で囲んだ部位が痂皮を形成しているのが分かると思います。





セラメクチンを投薬して1週間後にお越しいただいた患部の写真は次の通りです。






赤丸で囲んだ部位をご覧ください。

セラメクチン投薬前(黄色丸)に比べて、痂皮が無くなりすっきりしているのがお分かり頂けると思います。




あらためてセラメクチンの効果を実感しました。

加えて、排便した糞便にウサギ蟯虫(Passalurus ambiguus)が排出されました(黄色矢印)。

虫体は5~10㎜くらいです。

今回、排泄された虫体はすべて死んでいました。



ついでにこのウサギ蟯虫は雌で子宮内に卵をたくさんを持っていました。

虫体があまりに大きいので顕微鏡写真をつなげてみます。





このウサギ蟯虫はウサギの盲腸と結腸に寄生します。

蟯虫はウサギの肛門まで出てきて、肛門周囲の皮膚に産卵をするという変わった産卵法をとります。

排泄時に虫卵が便の表面に付着して、他のウサギへの感染源となります。

あるいは、ウサギが自分の肛門周囲を舐めて再感染することもあります。

さいわいなことに、この蟯虫に感染しても無症状ですむことが殆どです。

成長期のウサギの場合は、増体が悪かったり毛艶が悪くなったりはあるようです。

一般的には、駆虫にパモ酸ピランテルやイベルメクチンが使用されます。

今回は、ウサギキュウセンヒゼンダニの駆虫のために使用したセラメクチンが蟯虫を駆逐してくれたと思われます。




ウサギ蟯虫のフルスケール顕微鏡写真まで見せられるとは思ってみなかった方は
 

 
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2012年9月14日 金曜日

ウサギキュウセンヒゼンダニ感染症


ウサギのツメダニ感染症の多くは背部の皮膚に病変が生じるケースが多いです。

しかし今回の感染症は、皮膚よりも足裏や耳介部に寄生して顕著な痂皮(かさぶた)を生じています。





まず四肢の足裏ですが、黄色丸に示すように痂皮が形成されています。





ウサギ君自身も非常に足裏を気にして舐めたりしています。

加えて、耳介部の縁にそって痂皮(黄色丸中)が形成されています。





この耳介部もかなり痒いらしく、肢をつかって掻いたりしています。

早速、患部をメスの刃で掻把(ひっかくこと)して、顕微鏡で確認したところ下の写真の様にダニを発見しました。



以前、ウサギのツメダニ感染症をウサギの疾病に載せました。

ツメダニの特徴は皮膚にフケがたくさん生じるところに特徴があります。

今回のダニはウサギキュウセンヒゼンダニと言いまして、特に耳道内に入り込み耳の中にコーンフレークのような耳垢を形成します。

このキュウセンヒゼンダニは、皮表の脱落表皮と組織液を摂取しつつ、体表部で生活をします。

それでも、ウサギからすれば非常に患部は痒みを伴います。

このウサギ君は、そこまで感染症が進行していませんが、早く治療しておかないと特に足裏は、ソアホックに移行しそうな勢いなので要注意です。

早速、セラメクチンという薬剤を投与して治療を開始致しました。

寄生するダニの種類によっても、症状・病変部が異なりますので注意が必要です。



ウサゴキュウセンヒゼンダニなんて舌を咬みそうと思われた方は
 

 
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2012年7月 3日 火曜日

ウサギのマダニ感染症

この梅雨の時期は湿気も最大となり、外耳炎はじめとして皮膚病の動物が増える時期です。

そして、外部寄生虫の感染が増えるのもこの時期です。

本日ご紹介しますのは、ウサギのマダニ感染例です。



どこにマダニが喰い付いているかお分かりでしょうか?

実は下写真の黄色い丸の中にしっかり存在しています。



犬猫含めてマダニは被毛の薄い箇所を狙ってきます。

まぶたの周辺、口唇部周辺、耳介部周辺がよく寄生される部位です。

以前、ウサギのツメダニ感染症でその詳細をコメントいたしましたが、このマダニは若干異なります。




まぶたの皮膚を一部、口器が鋭く咬みついていました。

口器をちぎれないように取り除いたのが下の写真です。



このウサギ君ですが、屋外で散歩している間にどうやらマダニの感染を受けたようです。

マダニ類は幼ダニ、若ダニ、成ダニのいづれの時期においても吸血活動を営む節足動物です。

ツメダニなどのように顕微鏡で見ないとわからないダニと違って、大きさは数ミリに及ぶ大型のダニです。

加えて、刺咬症以外に吸血時にいろいろな病原体を媒介します。

日本ではキチマダニが野兎病を媒介することで知られています。

野兎病はヒトにも感染する人畜共通伝染病です。

治療法としては、口器を取り残さないように(要は頭部をちぎらないように)皮膚から引きはがします。

もっとも、今回のような単独の感染なら容易なことですが、多数寄生の場合は殺ダニ剤や滴下式駆虫薬を投与します。

一般的に流通している滴下式駆虫薬の中でもフィプロニル(フロントライン®)やセラメクチン(レボルーション®)ではマダニには効果がありません。

イミダクロプリド&イベルメクチン(アドバンテージハート®)やイミダクロプリド&ペルメトリン(フォートレオン®)を投与することで駆除します。


実際のところ、ウサギの外部寄生虫駆除薬は認可されたものは存在しません。

あくまで犬猫用に認可されたものを転用する形となります。

当然、間違った使用法ですと副作用を生じて死亡するケースもありますのでご注意お願いいたします。




ウサギの外部寄生虫にも色んなタイプがいるのに驚かれた方は
 

 
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2012年6月23日 土曜日

ウサギのコクシジウム症

コクシジウムはウサギでは好発する寄生虫症です。

コクシジウム(Eimeria属)はウサギの腸管に寄生するタイプは12種類あるそうで、多くが2種類以上のコクシジウムに混合感染しているといわれています。

加えて肝臓に寄生するコクシジウム(E.stiedai)というタイプもあります。

一般に成熟したウサギがコクシジウムに感染しても、多くは不顕性感染と言って症状は表向き何もないケースが多いようです。

しかし、これが幼弱の個体が感染しますと下痢や体重減少を引き起こし、重症例では死亡したりする場合もあります。

今回、ご紹介するのは3か月のウサギ君です。



水溶性下痢便が続くとのことで受診されました。

便は下の写真です。



早速、検便を実施しました。

顕微鏡下で以下のコクシジウムのオーシスト(卵)が見つかりました。








黄色い矢印が示しているのがコクシジウムのオーシストです。

治療法としては、サルファ剤やトリメトプリム・スルファジアジン合剤を投薬することで駆逐します。

問題となるのは、12種類あるコクシジウムの内、交叉免疫と言って1種類のコクシジウムに感染したからと言って残り11種類のコクシジウムには免疫ができたわけではありません。

いづれにしても幼弱個体ではこのコクシジウムは要注意ですね。




 
コクシジウムのオーシストを初めて見たという方は
 

 
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2012年4月14日 土曜日

ウサギのツメダニ感染症

ツメダニ(Cheyletiella spp. ) の寄生性皮膚疾患をご紹介します。

このツメダニはウサギのみならず、犬猫にも寄生します。

特にツメダニは表皮の角質層に寄生し、ライフサイクルは35日間です。

約1か月強で次世代に交代します。

このツメダニ感染症は症状として、背部・肩甲骨間・尾根部に寄生し、白く大きな鱗屑を認めます。

次いで、脱毛が起きます。

この段階で非常に痒みを感じる個体も多いです。

場合によっては、ヒトにも感染は起こります。人畜共通感染症とされています。




今回のツメダニ感染患者はロップイヤーのサスケ君です。

背中の鱗屑がひどいとのことで来院されました。

下の写真にあるように背部の脱毛と鱗屑が認められます。

赤丸の部分・赤の矢印に集中して鱗屑・脱毛があります。







加えて、飼主様もサスケ君と接触した腕に強い痒みを感じると申告されています。

患部に密着したセロハンテープをスライドガラスに張り付け、顕微鏡で検査しました。




多くのツメダニが被毛の中から検出されました。





上の写真はツメダニの卵です。




顎の部分を拡大しますと下の写真のようになります。

この顎で食い付かれるとさぞかし痛いでしょうね。



治療法としては、イベルメクチンやセラメクチンの投薬できれいにツメダニを駆除出来ます。

健康で正常なグルーミングができる個体は、ツメダニの感染があっても、無症状であることが多いとされています。

ツメダニは宿主から離れても10日間は生存するとされています。

そのため、ケージ内の敷料は紙製に変えて、毎日廃棄できるようにし、ケージ内の掃除を徹底することが大事です。




ツメダニが気持ち悪いと思った方は、こちらを



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