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プレーリードッグ・ジリスの疾病

2013年9月28日 土曜日

プレーリードッグの炎症性肉芽腫

プレーリードッグは、当院では10年前まで、フェレットに並んで来院数の多かったリス科の動物です。

検疫上の問題、歯芽腫(オドントーマ)の問題などで減少を続け、現在国内では希少種とされています。



今回は、当院のプレーリードッグの中でも最高齢といえるハナちゃん(雌、10歳)をご紹介します。


ハナちゃんは陰部周辺が2年以上前から炎症を起こし、その都度、抗生剤を処方してきました。

しかしながら、良くなったり悪くなったりを繰り返して完治に至っていません。

それというのも自傷行為が背景にあり、患部がどうにも気になってしまうためです。


加えて10歳の現在、下写真の矢印に示すように白内障も成熟期まで進行しています。



下写真の黄色丸の箇所が腫脹している陰部周辺です。



今回は今まで以上に患部の腫脹が著しいとのことで来院されました。





実は、この腫瘤は外陰部と肛門の傍らに位置しており、これらを隠してしまうくらい大きなものです。

これまでは、この位置を自分で咬んで、皮膚炎を起こしている程度でした。

しかし、これくらいの大きさになりますと腫瘍の可能性も考えて細胞診を実施することとしました。





上写真は細胞診の結果です。

多数の好中球と類上皮細胞が混在して認められます。

腫瘍細胞は認めらず、炎症性肉芽腫という病変であることが判明しました。

プレーリードッグの自傷行為は、徹底しています。

強靭な切歯を用いて患部を自咬しますと、皮膚は容易に欠損して、修復のために肉芽組織を形成します。

細菌が、その肉芽組織に侵襲しますと炎症はさらに進行し、状況に応じて過剰な肉芽が増生されます。

患部が自傷行為の対象にならないように防御できれば良いのですが、プレーリードッグには難しいでしょう。

患部を外用消毒や抗生剤・抗炎症剤の投与で治療していく方針です。




なるべく患部を気にせずに生活して下さい。

ハナちゃん、宜しくお願いします!



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投稿者 もねペットクリニック | 記事URL

2013年3月 9日 土曜日

プレーリードッグの歯切り

今ではすっかり来院数の減ったプレーリードッグですが、10年ほど前の当院では2,3日に1回の割合で切歯過長の歯切りを実施していました。

なぜプレーリードッグが減ってきたのかというと,検疫の問題で海外からの輸入が禁止になったこと。

それに加えて、歯芽腫(オドントーマ)がプレーリードッグに多発する点も関係していると思います。


硬いものを常時咬む習性のあるプレーリードッグは、切歯の歯根部が球状に石灰化を起こします。

この病態をもってオドントーマと言います。

この根尖部の球状石灰化が進行すると、鼻腔狭窄・鼻汁・眼球突出になり鼻呼吸ができなくなり開口呼吸を呈する個体もいます。

呼吸不全から心臓肥大になる個体や消化器の鼓張症に至るケースもあります。

あるいは呼吸不全から鼻炎、気管支炎、肺炎に至るケースもあります。

当院で治療を受け、最終的に亡くなられたプレーリードッグは、ほとんどがオドントーマによるものです。


このオドントーマの予防には、定期的な切歯の調整が重要です。

本日、ご紹介するプレーリー君は歯切りに来院されました。



このプレーリー君、実に動きが俊敏で助手が抑え込むのに苦労しています。

写真を撮ろうにもフォーカスを合わせるのに苦労します。





何とか保定して、口の中を診てみました。

下写真の黄色印にあるように、下顎切歯がVの字に伸びすぎているのが分かります。



早速、専用ニッパーでカットします。

7~8年前はマイクロエンジンで切歯のカットをしたりしましたが、問題なのはプレーリーは元気な子が多く、高速回転する円刃で口を切ってしまいそうになること度々で止めました。

それ以降は、マニュアルの専用ニッパーでカットしています。



カットした切歯の断面を金ヤスリで研磨していきます。





研磨する時も気をつけないと思いっきり、ヤスリを咬みますので切歯が欠けてしまう事もあります。

いずれにせよ、ハムスターやシマリスとはパワーが違う齧歯類ですので、スタッフ共々俊敏性と処置の正確さが要求されます。



これでまた、硬いものがしっかり齧ることが出来るようになったプレーリー君でした。




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投稿者 もねペットクリニック | 記事URL

2012年8月22日 水曜日

プレーリードッグの腹壁ヘルニア(受難その2)


話は、先回のプレーリー君の腹壁ヘルニア手術後の経過から始まります。

下の写真が術後のものです。



手術後、数日経過したところで傷口をプレーリー君が齧ったとのことで来院されました。

嫌な予感はあったのですが、ステンレスワイヤーで縫合した部位もこの通りです。



エキゾチックアニマルは、ここまでやるかというくらい、気に入らないと傷口を自咬するタイプがいます。

プレーリードッグはまさにその典型だと思います。

早速、患部を洗浄消毒してトリミングし、先回同様ワイヤーでの縫合を行いました。







問題は患部をいかに保護するかに尽きます。

プレーリードッグの強靭な切歯から患部を守る手はないか、とのことで飼主様と検討をして下の写真のような装具をつけました。




厚手のビニール剤で亀の甲羅のごとく頚部から腰部にかけて保護しました。

この装具の問題点は、完全に体を曲げることが出来ませんので、まさに亀そのものの動きしかできません。

本来、動きが俊敏で気をつけないとこちらが咬まれてしまう動物です。

この装具を装着することで、緊張感がなくなり、こちらの意のままに掴んで移動することが出来ます。

ちょっと可愛そうな感じもしますが、プレーリー君のためです。

約2週間我慢してもらい、無事抜糸いたしました。


抜糸後、何日か経過して、またしても治った皮膚を齧ったとのことでプレーリー君がやって来ました。

皮膚癒合が完了してからなので、そんなに酷くはありませんが患部を齧るというよりは舐める感じです。





この状態になりますと再度の縫合は無理と考えました。

患部をウェットな状態に保ち、皮膚欠損部をドレッシング剤(特殊なスポンジ)で保護して肉芽組織の再生を促す治療に切り替えました。

数日おきに来院して頂き、患部を洗浄消毒し、肉芽組織を増生するクリームを塗布し、ドレッシング剤で患部を被覆する治療を継続しました。

勿論、あの装具を装着してです。

その後、2か月経過して何とか皮膚も癒合して装具も不要となりました。

その間の写真も載せると小冊子が出来てしまうほどなので、また次の機会にします。

皮膚が治った完成形が下の写真になります。






結局、自咬症に始まり何度も縫合処置やドレッシング処置を経て完治するに至りましたが、2か月半ほどの日にちを要しました。

プレーリードッグに限らず、エキゾチックアニマルは自咬症対策が非常に難しいと痛感します。

完全な患部の防御に尽きると思いますが、その気質・体型・ライフスタイル等々により、犬・猫のように完成されたものはありません。

今後もきっと試行錯誤を繰り返していくと思いますが、少しでもエキゾチックアニマル治療向上へつながればと思っています。





エキゾチックアニマルは手術後の傷も気に入らなければ、ここまで自咬してしまうことに
 

 
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投稿者 もねペットクリニック | 記事URL

2012年8月20日 月曜日

プレーリードッグの腹壁ヘルニア(受難その1)

プレーリードッグは皆さんご存知のように検疫上の問題で、2003年に輸入禁止となり、今ではなかなか見かけることも少ないリス科の齧歯類です。

性格的には人懐っこい所がある一方で、発情期にはかなり攻撃的な個体も多いです。

今回、ご紹介するのは、腹壁ヘルニアといってお腹の筋肉の一部が裂けて、そこから腹腔内の内臓や脂肪が脱出する疾病を指していいます。

このオグロプレーリードッグ君(以下プレーリー君)は下腹部の背中側に腫瘤が出来て来院されました。

細胞診で脂肪腫の可能性が高く、試験的に開腹することとなりました。





電気メスで患部を整理していきますと、何やら背筋に裂け目が生じており、そこから腹腔内の脂肪が飛び出していることが判明しました。



上の写真の黄色の丸で囲んだ箇所がその裂け目(ヘルニア孔)です。



このヘルニア孔をしっかり縫合して、穴埋めをしてから皮膚を縫合して事なきを得ました。





患部を齧れないように、また緊張のかかる場所なので皮膚の結紮力を高めるためにステンレスワイヤーで縫合しました。

プレーリーは激しい動きをしますので、たとえば回し車で遊んだりとか他の個体と遊んだりした折に、たまたま筋肉が断裂を起こしたのかもしれません。

患部を保護するため、エリザベスカラーを利用することは多いのですがプレーリーの場合は、カラーのストレスで食欲減退、攻撃力増強などのマイナス面が多く、一旦何もつけずに退院して頂きました。

もとより体型的な問題(洋ナシ型体型)のため、カラーを簡単に外してしまう事もあり、プレーリーの術後管理の悩みの種でもあります。


このまま皮膚が治癒するまで、おとなしくしていれば何も問題はなかったのですが。

これから、プレーリー君の受難が始まります。(とは言っても自分で招いた受難ではあるのですが。)

続きは次回のブログで。



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2012年7月29日 日曜日

ジリスの大腿骨骨折整復手術

本日、ご紹介するのはジリスの大腿骨骨折手術です。

感染症法第8章(感染症の病原体を媒介するおそれのある動物の輸入に関する措置)第54条に基づき、2003年からプレーリードッグの輸入が禁止になったことから、リチャードソンジリスが生態や外見がプレーリードッグに似ている輸入可能な動物として知られるようになりました。

リチャードソンジリスのベルちゃん(体重600g)は、飼主様が誤って踏んで大腿骨を骨折してしまいました。



下のレントゲン写真の黄色い丸の中が骨折している大腿骨です。





大腿骨の骨髄腔は約2㎜となく、骨折端から大転子(骨盤に近い側の大腿骨端)までの距離は3㎝もありません。

ジリスは大腿部の筋肉群が非常に発達しており、骨折部へのアプローチは大変難しいです。

大腿骨の整復には何通りもの手術法がありますが、小型のエキゾッチクアニマルですので術後の生活がストレスなく送れるためには、骨髄内に1.2㎜のピンを打ち込んで固定するピンニング法が最善と判断しました。

ピンニング法の弱点は、骨折部の回転運動に耐えられないことです。

術後にベルちゃんが激しい運動を控えてくれると良いのですが、こればかりは神のみぞ知るです。

早速、手術を実施しました。







上の写真に骨折した大腿骨の骨端が認められます。

斜めに大腿骨が割れた骨折端がお分かりになると思います。

いわゆる斜骨折と呼ばれる骨折形態です。



骨盤に近い側の骨折端(近位端)へピンを入れているところです。



近位端にピンを貫通させたら、今度はドリルのハンドルを180度向きを変えて遠位端へとピンを入れます。






骨折部をピンが貫通して固定できれば成功です。

この状態はレントゲン写真の方が分かりやすいと思います。







上の写真の黄色い丸が骨折部です。ピンが両骨折端をつないでいるのが分かります。



あとは筋膜や皮下組織を縫合して終了です。



ベルちゃんは長時間に及ぶ麻酔にも頑張って耐えてくれました。

麻酔覚醒後も特に暴れることもなく、手術当日はおとなしくしてくれました。

翌日、ベルちゃんに入っている段ボール箱に2つの大きな穴が開いていました。

ベルちゃんが齧った後です。でも脱走することなくその場に居てくれてました。

以前にプレーリードッグの大腿骨骨折の手術でピンニングを実施した際に、翌日ピンをプレーリー君が引き抜いて愕然とした経験がありますので、今回はエリザベスカラーも装着し万全の対策を施しました。

入院中は特に問題も起きず無事退院の日を迎えたベルちゃんです。



あとは骨折部が癒合してピンを抜去できる日(2か月ぐらい先)まで、大変だけどおとなしく過ごしていて欲しいと願います。




エキゾチックアニマルの骨折手術は術後の生活管理もとても重要!
 

 
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