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フクロモモンガの疾病

フクロモモンガの骨代謝障害

フクロモモンガは餌に対する選り好みが強い動物です。

基本は雑食性の有袋類です。

犬に対するドッグフードの様に栄養学的に研究され、それだけ与えておけば後は必要ありませんというモモンガフードは、今のところありません。

一般には、モモンガ用ペレットを中心にして野菜・果実、昆虫用ゼリー・チーズ・コオロギ等の動物性蛋白質をバランスよく給餌する必要があります。

特に幼体の時期に、良質のタンパク質とカルシウムを摂取できないと骨代謝障害を引き起こします。

これまでにも、当院のHPでの爬虫類の疾病でトカゲやカメレオンの骨代謝障害について詳細をコメントさせて頂きました。

フクロモモンガも同様に、この骨代謝障害になり易いのです。



本日、ご紹介しますのは骨代謝障害になってしまったフクロモモンガの親子です。

クリコ君(1歳、雄)とイズミちゃん(年齢不明、クリコ君の子供・雌)の2匹です。



2匹共に歩行を診てますと、下半身特に腰をくねくねさせて、どちらかというと前足が駆動となる匍匐前進(ほふくぜんしん)で移動します。

後肢は軽度の不全麻痺を呈しています。







親子そろって、後肢にしっかり力が入ってない感じです。

歩行を動画でアップ出来たらよかったのですが、画像ではこの匍匐前進を上手く伝えられないのが残念です。



飼い主様にお伺いすると、幼体時に好き嫌いがあり、ゼリーや果実を中心とした食生活をおくっていたそうです。

フクロモモンガは英名、sugar gliderと呼ばれるくらいに甘いもの好きなんです。

当然のことながら、果糖や糖分ばかりの摂取では成長期にしっかりとした骨を作るために必要なカルシウムが不足します。

血中のカルシウムが不足すれば、少ないけれどカルシウムが貯蔵されている骨からカルシウムが血中に放出されます。

結果として、骨の強度が不足して脊椎骨や長管骨、関節、指骨に至るまで変形が生じます。

クリコ君の左肢の足首から伸びている指骨が外反している(黄色丸)のがお分かりでしょうか?





クリコ君は幼体時の骨代謝障害の影響で骨の変形が生じたようです。

骨代謝障害を起こして、間がなければ、カルシウムやビタミンD3を与え、食餌の内容をバランスのよいものに変更することで治療することが可能です。

クリコ君の子供のイズミちゃんはまだ回復できる可能性があると思います。

クリコ君は変形してる骨を治すことは難しいけど、骨密度を高めて歩行時の疼痛感を改善することが可能でしょう。

哺乳類、爬虫類に限らず成長期のバランスのとれた食餌の重要性をご理解いただけたら幸いです。







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投稿者 院長 | 記事URL

フクロモモンガの自傷行為(その1)

フクロモモンガはストレスに対して敏感に反応します。

ストレスとは飼育環境(温度・湿度、ケージの大きさ、餌の内容、他のモモンガとの干渉等)によって、心身に及ぼす負担を今回は指していいます。

ストレスの発散を、イヌのようにカーテンを咬み破ったり、靴を破壊したりといった外的破壊行為にモモンガは走りません。

自分の体を咬んだり、爪で傷つけたりする、いわゆる自傷行為をします。

以前、フクロモモンガの咬症でこの自傷行為の一例を紹介しました。


今回、ご紹介しますのはぷうちゃん(♀、6か月齢)です。

耳を気にして肢で引掻くとのことで受診されました。

よくよく拝見しますと既に左の耳がかさぶたに覆われており、耳の中を覗こうとしたところ、耳の付け根(下写真黄色矢印)から耳が取れてしまいました。



取れてしまった耳介部です。



恐らく何日も前から耳を掻破して細菌感染を起こし、結果として耳介部が壊死を起こしたものと思います。

なぜ耳介部を引掻き始めたのかは、本人にしかわかりません。

特に外耳炎を起こしているわけでもありません。

フクロモモンガに限らず、エキゾチックアニマルは気に入らないと徹底して自分の体を傷つける傾向があります。



ぷうちゃんの場合、取れてしまった耳介部の付け根、ひいては外耳道を保護するためにも、エリザベスカラーを装着しました。

二次的な自傷行為を防ぐためにも必要な措置です。



その約3週間後、ぷうちゃんが受診されました。

先回の左耳同様に右耳がかさぶたが出来て壊死を起こしているようだとのこと。



上写真黄色丸の右耳介部が出血を起こしており、恐らく爪で掻破したであろうと予測されます。

付け根の部分を診てみますと、下写真のようにすでに耳根部は壊死して外耳道が露出しています。



左耳が綺麗に治癒した段階で、エリザベスカラーを外したら反対側を自傷した模様です。

壊死して落ちた耳介部です。



結局、左耳介部の時と同様にエリザベスカラーの登場です。



残念ながら、ぷうちゃんの場合は両耳が無くなってしまいましたので見た目の印象も変わります。

早くぷうちゃん、良くなって下さいね!



これまでフクロモモンガの自傷行為をたくさん治療して参りました。

結果、どの箇所を気にして攻撃するだろうなという予測が、少しできるようになってきました。

今回の様に耳介部を自傷して、患部が治癒すれば、気も休まるだろうと思うのは早計です。

本人からすれば、もう片側残っているから自傷の対象にしてしまう場合もありということです。

エリザベスカラーにしてもストレスの原因です。

カラーを外して無防備になったところで、そのストレス解放の対象を健全な自分の体に向けてしまうこともあります。

ガチガチにカラーで防御したからといっても、それで自傷行為は終結したわけではありません。

その点がフクロモモンガの難しい点です。

要はストレスのない飼育環境を目指す方が手っ取り早いと思います。

スキンシップを好む動物なので、単独飼育の場合はまめに遊ぶ時間を作るとか、伴侶を新たに飼育するとかの方法も一つです。

飼育ケージが狭く高さもないようなら、もう一回り大きなケージを用意するというのもありです。

個体ごとのキャラクターも絡んできますので、それを読み取る飼主様の努力も必要でしょう。

外傷に対しては、自滅型のケースが多いのがフクロモモンガの弱点で、今後広くこの自傷行為のケース事例を載せていきたいと考えています。



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投稿者 院長 | 記事URL

フクロモモンガの去勢手術(変法 その2)

先回、フクロモモンガの去勢手術の変法を簡単にご紹介させて頂きました。

今回、その術式で手術をご希望された もん太君 をご紹介します。

もん太君ははるばる横浜から手術を受けるために来院されました。

東浦に滞在される時間も限りがありますので、早速手術に入ります。

その間、飼主様は名古屋城はじめとした名古屋見学をされるそうです。





先回の術式の説明の通り、陰嚢にメスを入れずに直接精巣動静脈や精管を露出させ、結索していく方法です。








フクロモモンガは傷口を気にする個体も多いのですが、不思議とこの変法では患部を気にするケースが少なくなりました。



特に麻酔にかかわる問題も無く、無事に手術は終了しました。

術後の患部の管理が非常に重要です。

自咬症にならないよう、かつ頚部に負担をかけないよう自作のカラーをつけます。







もん太君は麻酔の覚醒が速やかで、ケージの中をぶら下がって徘徊しています。



あとは横浜の動物病院で抜糸をして頂くようお願い致します。

最近は、フクロモモンガの飼主様の飼育に関わる意識が高く、早期の去勢を希望されケースが多いようです。

特に単独で飼育される場合は、発情に伴うストレスから自咬症へと移行する症例が多いのがフクロモモンガです。

去勢をすることで、ストレスから解放され、性格もマイルドに変わることが多いと思います。

もん太君、はるばるお疲れ様でした!




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投稿者 院長 | 記事URL

フクロモモンガの去勢手術(変法)

フクロモモンガの去勢手術について以前、ブログにコメントさせて頂きました。



コメントした時は、まだ術式としては、陰嚢に切開を加えて精巣を2つ摘出する方法の紹介でした。

手術法としてはその従来法で問題はないのですが、フクロモモンガの陰嚢はなぜか陰嚢の首に当たる部分が非常に長く、術後モモンガが患部を気にして自咬する症例もありました。

ご存知のようにフクロモモンガの切歯は鋭利で、自咬症に陥ると回復にまで手こずります。

フクロモモンガの外科は術後、モモンガが気にならないように皮膚をまとめるのが難しいです。

したがって、陰嚢の首にあたる箇所を切断して陰嚢ごと摘出する方法を考案しました。

今回はその術式を簡単にご紹介します。


去勢手術を実施させて頂いたのは、フクロモモンガのチロル君です。






下写真の赤丸にありますのが、フクロモモンガの陰嚢になります。

陰嚢が長い首でつながっているのが分かります。





上写真のように光をあてますと精巣動静脈や精巣靭帯が浮かんで見えます。

この脈管系をまとめて首の付根付近で摘出します。

下の写真はその処置の風景です。

詳細は、企業秘密のため(?)ぼかしの写真でご容赦下さい。





下写真は術後の患部です。

従来なら精巣の入っていない陰嚢が長い首を伸ばしてだらんとしているところですが、すっきりしています(下黄色丸)。



麻酔覚醒後、エリザベスカラーをして痛そうなチロル君です。

お疲れ様でした!



約1週間で患部はきれいに皮膚癒合し、経過良好です。

最後に摘出した陰嚢です。



フクロモモンガの飼主様で去勢を考慮中の方、術後の綺麗な傷口をご希望の方、本法をご検討してみて下さい。





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投稿者 院長 | 記事URL

フクロモモンガの虚脱(ショック状態)

昨日は、爬虫類の脱水症状のコメントをさせていただきました。

本日は、フクロモモンガの虚脱についてご紹介させて頂きます。

爬虫類の脱水症状と同じく、飼主様でどんな状態になったら、病院で診察を受けるべきであるか悩まれている方が多いようです。

本日のフクロモモンガ君にしても、もう少し早くお連れ頂けたら状況が好転したかもしれません。

他にフクロモモンガを飼育されている飼主様のご参考になればと思い、コメントさせて頂きます。

このフクロモモンガ君は、数日前から食欲が全くなく、だんだん元気もなくなってきたとのことで来院されました。





すでに診察した時点で、眼を開けることもできず体を動かすこともままならない状態です。



このフクロモモンガ君はまさにショック状態に陥っています。

簡単に申し上げれば、ショックとは血圧の低下により末梢循環が著しく傷害され、末梢の組織の代謝障害や広範囲の細胞の酸素欠乏症、主要臓器の機能不全をおこした状態をさしていいます。

ショック状態が長時間続きますと組織障害は回復不可能となり、致死的状況となります。

特に脳は酸素欠乏に弱い点から、脳死する可能性も出て来ます。

このフクロモモンガ君は、食欲不振からの飢餓状態、そして低血糖になり、虚脱からショック状態に移行したと考えられます。

特に、このフクロモモンガ君は生後6か月でありながら体が極めて小さく、健康な時から食の細い個体であったそうです。

低血糖・脱水症状及び低体温症になっており、救急処置としてまずこれらの症状の改善に取り組みます。

犬猫ならこんな時は速攻で静脈に留置針を入れてブドウ糖などの点滴を開始しますが、血管の確保が小さい動物なので出来ません。

口から直接、ブドウ糖を強制的に投与します。



すでに上手に嚥下ができない状態なので、誤嚥しないよう注意を払って少しずつ飲ませます。

脱水状態の改善のため、皮下にリンゲル液を輸液し、ショック対策にステロイドの注射をします。



この処置後、インキュベーター内で体を温め、経過を診ることとしました。

一時、自分で動き回るようになり、ホッとしたのもつかの間で、翌日フクロモモンガ君は亡くなられました。

ショック状態を改善することに終始せざる得なかった点が残念です。

恐らく低血糖症からの高度のショックによることが死亡の原因と思います。


フクロモモンガは幼体時の食欲に応じて、体格の個体差が大きい動物です。

これはどのペットにも言えることですが、成長期は十分な栄養を与えて下さい。

それに応じた免疫力もついてきます。

それでも病気に罹患して、最悪ショック状態に陥った場合、バイタルサイン(患者の生きている徴候)をみて飼主さんにご判断頂きたい点があります。

1:意識があるか?  刺激に応じて覚醒するかを確認。

2:呼吸をしているか?  胸郭の上下運動で呼吸の有無を判断して下さい。

3:歯肉の色はピンクか? 貧血や低血圧だと蒼白色。低酸素症だと紫(チアノーゼ)。

4:ピンクの歯肉を指で押して1~2秒でピンクに戻るか? この戻る時間をCRT(末梢血管再充填時間)と言います。
 
 
血圧低下や末梢循環の悪化でCRTは延長します。

最低でも以上の点をチェックして、問題があるようならすぐ病院で受診して下さい。





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