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フクロモモンガの疾病

フクロモモンガのストルバイト尿石症


こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介するのはフクロモモンガのストルバイト尿石症です。

フクロモモンガの尿の性状については、健常時は酸性尿なのかアルカリ尿なのかも調べられていないように思います。

手元の資料・文献も記載がありません。

以前、ハムスターの尿石症(ストルバイト尿石)で治療の難しさをコメントさせて頂きました。

興味のある方はこちらをクリックして下さい。

ハムスター以上にフクロモモンガはその詳細は不明点が多いとされます。



フクロモモンガのシモンちゃん(7歳4か月齢、雌)は、何年か前から尿石(ストルバイト)があるということを他院の獣医師から指摘されており、また定期的に尿検査を受けていたそうです。



ただシモンちゃんは排尿障害とか血尿とかは全くありません。

そこで当院に転院されてから、定期的な尿検査を実施させて頂いてます。

その中で、たまたまストルバイト尿石を検出する機会がありました(毎回、ストルバイトが出るわけではありません)ので、紹介させて頂きます。

下写真はシモンちゃんの尿を顕微鏡で確認した像です。

低倍率像です。



高倍率像です。



明らかに形状からストルバイト結晶(リン酸アンモニウムマグネシウム)です。

量的にもそこそこの尿石が存在していると思われました。

これまでにもたくさんのフクロモモンガの診察をさせていただきましたが、ストルバイト結晶を認めたのはシモンちゃんだけです。


犬猫の尿pHは基本酸性尿です。

そして、犬猫のストルバイト尿石症の原因は、尿中のリン酸アンモニウムマグネシウムが過飽和状態であること。

そのための条件として、感染性スツルバイトの場合は尿路感染、ウレアーゼ酸性菌、アルカリ尿、遺伝的体質、食物が関連しています。

無菌性スツルバイトの場合は、食物性あるいは代謝性の因子が無菌性スツルバイト尿石形成に関連しているとされます。


ハムスターの場合もストルバイト尿石の形成要因が不明ですが、フクロモモンガはさらに分かりません。

恐らくは、犬猫に準じた要因で生じるものではないでしょうか。


シモンちゃんはフクロモモンガの雌の平均体重が95~135gのところ、260gという立派な体格をされています。









フクロモモンガは雑食性で、食餌の嗜好性が強く、バランスの取れた食餌を維持するのが困難とされます。

甘いものが好きな個体が多く、昆虫ゼリーや果実系を好む傾向があります。

多くの果実はタンパク質やカルシウムが足りません。

シモンちゃんはフクロモモンガ用ペレットを中心に昆虫やゼリーを与えているようです。

偏った食生活が尿石の原因ではないようですが、詳細はわかりません。

シモンちゃんのこれまでの尿pHは7~9というアルカリ尿で安定しています。

そうなるとフクロモモンガの尿pHは、ハムスターのアルカリ尿と同じなのかもしれません。

今回、このストルバイトの治療としてヒルズのS/dという療法食を試験的に食べてもらうこととしました。

4日後に尿検査をしましたが、ストルバイトは陰性でした。

フクロモモンガはアルカリ尿だとすれば、今後ストルバイト尿石は生じると思われます。

シモンちゃんは今のところ、尿路疾患は認められていません。

不明点は多いのですが、フクロモモンガの尿石症について今後、調査していきたいと思います。




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投稿者 院長 | 記事URL

フクロモモンガの自傷行為(その3)


フクロモモンガの自傷行為を以前から報告させて頂いてます。

本日はこの自傷行為、その3と言うことでご紹介します。


フクロモモンガのいいちこちゃん(1歳、雌)は食欲不振と言うことで 当院を受診し、気管支炎の疑いで内服を続けていただいてました。

10日ぐらい経過したところで、いいちこちゃんは自らの尻尾を齧るようになったそうです。

この時点でエリザベスカラーを装着して尻尾の自傷を喰いとめるべきだったかも知れません。

さらに10日ほど経過して、再診を受けられたいいちこちゃんの尻尾は壊死を起こしていました!



下写真は壊死を起こした尻尾です。



患部の剃毛をしたところ、壊死している箇所と健常な組織との境界が分かります。



緊急の状況なのですぐに断尾手術を実施することとしました。

ガスマスクに入れ、全身麻酔の導入を行います。



麻酔がかかったところで、自作のマスクにかえて患部を消毒します。





動脈からの出血を抑えるために黄色の紐で止血します。



患部をメスで切開したところ、膿が出て来ました。

この位置まで細菌が侵攻しているようなので、少し上をVの字に再切開します。



次に尾椎をロンジュールで砕いて摘出します。



電気メスで出血を確実に止めます。



尾椎を取り出して、余剰の皮膚を縫合して終了です。



実はフクロモモンガの問題はこれからです。

術後の管理が最大のポイントです。

患部を再度咬むことのないようフェルト地のカラーを装着します。



以前も自傷行為で述べたことですが、フクロモモンガは感染症に非常に弱い動物です。

その割に神経質で術後の患部は、気に入らなければとことん齧ろうとします。

傷口が完全に治るまで気を緩めることが出来ないです。

そもそも今回の症例も、なぜかいいちこちゃんが尻尾に関心を持って齧りだしたことが発端のようです。

何が原因でスイッチが入るかわからないのが、フクロモモンガひいてはエキゾッチクアニマルの難しい所でしょうね。

いいちこちゃん、傷口に関心を持たないでくださいね!




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投稿者 院長 | 記事URL

アメリカモモンガのコクシジウム感染症

モモンガと言えば、フクロモモンガが最近ではポピュラーになってしまいました。

一方で、少数ですがアメリカモモンガの愛好家の方もみえます。

アメリカモモンガは齧歯類リス科モモンガ亜科に属するモモンガでリスの仲間です。

フクロモモンガは有袋類であり、カンガルー目フクロモモンガ科フクロモモンガ属に属します。

フクロモモンガはどちらかというと猿のイメージに近いのではないでしょうか?

一方、アメリカモモンガは空を滑空するムササビのイメージに近いと思います。

今回、ご紹介しますのはアメリカンモモンガのペアです。

アメリカモモンガのモモタ君(雄・年齢不明)とチョコちゃん(1歳、雌)です。





特にチョコちゃんは軟便・下痢便が長らく続くとのことでの受診です。

黄色丸が軟便を示しています。

自分で踏みつけてケージ内を汚しています。



特に際立って不調を示す臨床所見はないのですが、軟便が長引くということは寄生虫検査を含めた検便が必要です。

早速、検便をした結果、コクシジウムが検出されました。



拡大写真です。



サルファ剤をしばらく投薬して駆虫を実施します。

フクロモモンガでは圧倒的にジアルジア感染症が多いのに対して、アメリカモモンガはコクシジウム感染症というのは興味深いことです。

フクロモモンガのジアルジア感染症に興味をお持ちの方はこちらをクリックして下さい。





もしアメリカモモンガを飼育されていて、長きにわたる軟便が認められましたら、動物病院で検便を受けることをお勧めします。

モモタ君もチョコちゃんと一緒に駆虫をすることとなりました。

ペアと言うことは、2匹同時に治療を進行させなければ、病原体を移しあうこととなりますので止むを得ませんね。

そんなアメリカモモンガですが、輸入規制対象動物ということで取り扱っているショップも非常に少ない、今後希少種となると思われます。




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投稿者 院長 | 記事URL

フクロモモンガの白内障

犬猫同様、フクロモモンガも白内障を発症します。

外見的には眼球の水晶体に当たる部分が白濁し始めます。

フクロモモンガは採食したり、滑空したり、活動の殆どを視覚に頼って生きています。

白内障もステージが進んできますと失明に至ります。

今回、ご紹介させて頂きますのはフクロモモンガのベイビーちゃん(2か月齢、雌)です。



上写真の黄色矢印で記した水晶体の部分が白くなっています。

日常的にはフクロモモンガは縮瞳の状態でいることが多いため気づかれないことも多いです。



フクロモモンガの白内障の原因は、先天性と後天性の2種類があります。

後天性の場合は栄養学的にはビタミンA欠乏症に起因するとされています。

また糖尿病の合併症状として後天的に白内障になるとの報告もあります。



先天性の場合は遺伝による白内障です。

ベイビーちゃんはまだ2か月ということで明らかに遺伝性白内障です。

フクロモモンガの母親が脂肪分や糖分の多い食餌を長期間にわたって与えられ、白内障の子供が生まれる例が多いようです。

治療法としては、適切量のビタミンAを含んだ食餌療法や白内障治療用の点眼薬投与ですが、あまり効果の程は期待できないでしょう。

フクロモモンガの寿命は10年以上とされますので、ベイビーちゃんはこれから長い人生があります。

白内障による視覚障害と付き合っていかなくてはなりません。

飼い主様のある程度の介護も必要となってくると思われます。

ベイビーちゃん、頑張ってください!




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投稿者 院長 | 記事URL

フクロモモンガの自傷行為(その2)

フクロモモンガは愛情欲求の強い動物です。

特に単独飼育の場合、飼い主様とのスキンシップを絶えず要求します。

幼体の頃から飼育するケースであれば、まめにスキンシップをとることで、飼主様にも早くから慣れてくれることと思います。

しかし、飼主様の都合で構ってあげられないようになりますと次に起こる問題は自傷行為です。

先回、この自傷行為(その1)をコメントさせて頂きました。


今回、その2として自傷行為のバリエーションをご紹介させて頂きます。

自傷行為の結果としての外傷であったり、皮膚病であるのに、意外にも自傷行為が原因であるという事実を、飼い主様がご存じないことが多いです。

何らかのストレスが原因で自傷行為を行っているんだぞ、ということを知るための一助となればと思います。


フクロモモンガのモコちゃん(2か月齢、雌)は足の裏が皮膚病で爪も一部取れてしまっている(下写真黄色丸)とのことで来院されました。



過去にも別件で足の爪を全部自分で剥いでしまった症例を経験しています。

まだそれほどひどいわけではないですが、このまま治療しないと指を咬みちぎる段階までいくと思われます。





結局、外用薬を使用しても、自身で患部を舐めたり咬んだりして生じた疾病ですからあまり意味がありません。

まずは、患部にアプローチできないようにカラーを装着します。

1週間ほど患部が舐められなければ、患部の回復は良好となるでしょう。

しかし、このエリザベスカラーはこれまでにも色んな素材・形状のものを考案してきましたが、これが決定打というところまで至っておりません。



フェルト生地のカラーは軽量で皮膚にも優しいメリットがあります。

しかし、生地としての腰が弱い点、横向きの力で強く牽引されると簡単に伸びてしまうといった欠点があります。

腰の強さを追及するとレントゲンフィルムを細工してカラーにするのも一案ですが、頸の周囲の皮膚に食い込んで皮膚が切れて大変なことになります。

今回は四肢の指に口が届かないようにポンチョ的な大きさで、しかもラッパのように上に向かせず、シャンプーハットの様にかぶせるだけの形状にしてみました。

従来のカラーの形状に比べて解放感があり、装着後の大暴れはありません。





捕食時の姿勢は両前足で餌を持ってというスタイルですが、顔を餌に近づけていわゆる犬食いスタイルでも摂食可能です。

あとは患部の消毒と抗生剤の内服で経過観察となります。

もこちゃんからすれば、この治療もストレスです。

一日も早く回復されることを切望します。



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