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歯・口腔の疾患/犬

2020年3月10日 火曜日

犬のエプリス(線維腫性エプリス)

こんにちは 院長の伊藤です。

暫くぶりの記事になります。

読者の皆様方、お待たせして申し訳ありませんでした。

本日ご紹介しますのは、犬のエプリスです。

以前、このエプリスについてはコメントさせて頂きました。

興味のある方は、こちらをクリックして下さい。


エプリスとは、歯肉に形成された良性の局所的な増殖性病変を指す臨床用語です。

人医と獣医学領域ではエプリスの分類が微妙に異なったりします。

大きく分けて、エプリスは炎症性(反応性)エプリスと腫瘍性エプリスに分類されます。

炎症性エプリスは、線維性、肉芽腫性、血管腫性、巨細胞性エプリスなどがあります。

また腫瘍性エプリスは、線維腫性や線維肉腫性、骨形成性などが挙げられます。


本日ご紹介しますのは、腫瘍性エプリスに分類される線維腫性エプリスです。

ウェルッシュコーギーの蘭丸君(14歳4か月齢、雄、体重14.8kg)は下顎の歯肉に腫瘤が出来てるとのことで来院されました。

フードもしっかり噛めずにこぼすようになりました。



蘭丸君は怒りやすい性格のため、なかなか口の中をしっかり確認することが出来ません。

エリザベスカラーをつけた状態で患部をチェックし、外科的に摘出を前提で全身麻酔をかけることとなりました。

これから蘭丸君に麻酔前投薬を打ち込みます。



気管挿管したところです。



黄色矢印は患部のエプリスを示します。





切歯がエプリスの中に埋没するような状態です。



硬性メスを用いて、腫瘤基部に切開を施します。







下顎の歯槽骨の辺縁に沿うようにメスで離断していきます。



歯肉自体は硬い組織ですが、エプリスは脆い感触です。

強くピンセットで把持すると崩れてしまいます。





下写真黄色丸は切除したエプリスです。



切除した患部周辺の殆どの切歯は、既に歯根部からの動揺が確認されました。



切歯を抜歯します。







ひとまず、切歯を3本抜歯することになりました。

まだ腫瘤の取り残しが認められますので、新たにメスで切除します。





掻把子を使用して、可能な限りエプリスを外します(下写真)。





さらにもう一本切歯を抜歯します。





抜歯することで、エプリスとその入り込んでいた歯肉領域まで切除出来ました。



下写真は、切歯の抜歯跡です。



この抜歯跡に抗生剤を挿入します。





切除した歯肉創縁を縫合します。







縫合完了です。



麻酔から覚醒するまで蘭丸君の経過を見ます。

恐らく、覚醒するとそのまま咬みつきますのでマスクを装着します。





下写真は摘出したエプリスです。





その病理所見です。

低倍率像ですが、腫瘤は肥厚した異型性の無い歯肉粘膜により覆われています。



下写真は、中等度の倍率です。

豊富な膠原繊維間に反応性骨形成(黄色丸)が認められます。



下写真は高倍率像です。

多形性に乏しい腫瘍性紡錘細胞がシート状・錯綜状に増殖しています。



蘭丸君のエプリスは腫瘍性のものであり、線維腫性エプリス(末梢性歯原性線維腫)であることが判明しました。

歯周組織由来の良性腫瘍とのことです。

完全摘出後の経過は良好であり、骨への浸潤性や遠隔転移性は報告されていません。

今回のような良性腫瘍のものから、各種の肉腫(線維肉腫、骨肉腫)や扁平上皮癌など口腔内に生じる腫瘤状病変が存在します。

早期発見、早期切除は大切ですね。



麻酔の覚醒からすぐにマスク装着となりましたが、今後、食餌はしっかり食べれるようになると思います。

蘭丸君、お疲れ様でした!






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投稿者 もねペットクリニック | 記事URL

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