モルモットの疾病
モルモットの子宮平滑筋腫
こんにちは 院長の伊藤です。
これまでも、特にウサギの血尿は子宮疾患の可能性が高いということを述べて参りました。
ウサギ以外にもチンチラ、モルモットも同様のことが言えます。
本日は、モルモットの血尿に端を発し、試験的開腹に至った症例です。
モルモットのグッピーちゃん(雌、6歳)は血尿が出るとのことで来院されました。
尿のサンプリングがすぐにできませんでしたので、まずは膀胱や子宮の状態を確認するため、エコー検査を実施しました。
下エコー図の白矢印が膀胱です。
その下部に黄色丸が子宮にあたりますが、白く描出される高エコー・パターンを示します。
高エコーは硬い結節性の病変を示唆します。
下の写真2枚も同じく高エコーの子宮を描出しています。
子宮腺癌であれば、早急な対応が必要となります。
飼い主様のご了解を得て、早速試験的開腹を実施しました。
全身麻酔のための導入ボックスへぐっぴーちゃんに入ってもらいます。
ガスマスクによる維持麻酔に変えます。
皮膚、皮下組織、腹筋とメスを入れます。
開腹して子宮と膀胱を確認しました。
下写真の黄色矢印は膀胱、草色矢印は子宮体部、白矢印は子宮体腫瘍です。
赤丸は子宮体部の出血した後で、黒ずんでいるのがお分かり頂けると思います。
下写真のように子宮体部は硬く結節様を呈しています。
子宮体部全体が腫脹しており、腫瘍化しています。
子宮体部に突出する形で球体上の腫瘍が形成されています。
詳しく観察すると膀胱と子宮体部が高度に癒着しています。
既に膀胱と子宮の癒着を外すことは不可能です。
膀胱を全摘出することは命に直接かかわりますので、残念ながら閉腹することとしました。
閉腹前にせめて、子宮体部に突出している球状の腫瘍をバイクランプで焼いて摘出することとしました。
切除した腫瘍です。
細胞診をしたところ、葉巻型の核が認められました。
これは子宮を構成する平滑筋が腫瘍化した平滑筋腫です。
平滑筋腫は良性の腫瘍です。
ただ今回は、子宮体部から突出した腫瘍だけを見ましたので、子宮体部の腫瘍がどんなタイプかは不明です。
子宮腺癌である可能性もあります。
全身麻酔覚醒後のぐっぴーちゃんです。
腫瘍が周囲の組織との癒着が進行して外科的摘出が出来ない場合は、残念ながら内科的治療に切り替える必要があります。
抗がん剤による化学療法です。
犬や猫のレベルであれば、多くの抗がん剤は点滴で投薬する形が多いです。
一方、モルモットになると静脈点滴が困難で、経口投与できるタイプの抗がん剤になります。
そこで、上手く抗がん剤のタイプが腫瘍と合致すればよいのですが、今回残念ながらありません。
ぐっぴーちゃんは、術後5日目に急逝されました。
モルモットの場合、外科的摘出が命運を分けることは間違いありません。
最近はウサギの場合、1歳未満で避妊手術を希望される飼主様が当院では増えています。
一方、モルモットやチンチラになりますと避妊手術まで希望される方は限りなく少ないです。
モルモットで4,5歳になり血尿が出たとなると子宮疾患を疑うことになります。
そして、今回の様に開腹しても時すでに遅く、腫瘍が転移して切除不能になっている場合もあります。
避妊手術がおそらくベストな選択と考えられますが、それができないなら少なくとも4,5歳になった時点で動物病院で定期検診を受けられることを強くお勧めします。
エコーやレントゲン等で事前に産科疾患を見つけることが可能でしょうから。
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これまでも、特にウサギの血尿は子宮疾患の可能性が高いということを述べて参りました。
ウサギ以外にもチンチラ、モルモットも同様のことが言えます。
本日は、モルモットの血尿に端を発し、試験的開腹に至った症例です。
モルモットのグッピーちゃん(雌、6歳)は血尿が出るとのことで来院されました。
尿のサンプリングがすぐにできませんでしたので、まずは膀胱や子宮の状態を確認するため、エコー検査を実施しました。
下エコー図の白矢印が膀胱です。
その下部に黄色丸が子宮にあたりますが、白く描出される高エコー・パターンを示します。
高エコーは硬い結節性の病変を示唆します。
下の写真2枚も同じく高エコーの子宮を描出しています。
子宮腺癌であれば、早急な対応が必要となります。
飼い主様のご了解を得て、早速試験的開腹を実施しました。
全身麻酔のための導入ボックスへぐっぴーちゃんに入ってもらいます。
ガスマスクによる維持麻酔に変えます。
皮膚、皮下組織、腹筋とメスを入れます。
開腹して子宮と膀胱を確認しました。
下写真の黄色矢印は膀胱、草色矢印は子宮体部、白矢印は子宮体腫瘍です。
赤丸は子宮体部の出血した後で、黒ずんでいるのがお分かり頂けると思います。
下写真のように子宮体部は硬く結節様を呈しています。
子宮体部全体が腫脹しており、腫瘍化しています。
子宮体部に突出する形で球体上の腫瘍が形成されています。
詳しく観察すると膀胱と子宮体部が高度に癒着しています。
既に膀胱と子宮の癒着を外すことは不可能です。
膀胱を全摘出することは命に直接かかわりますので、残念ながら閉腹することとしました。
閉腹前にせめて、子宮体部に突出している球状の腫瘍をバイクランプで焼いて摘出することとしました。
切除した腫瘍です。
細胞診をしたところ、葉巻型の核が認められました。
これは子宮を構成する平滑筋が腫瘍化した平滑筋腫です。
平滑筋腫は良性の腫瘍です。
ただ今回は、子宮体部から突出した腫瘍だけを見ましたので、子宮体部の腫瘍がどんなタイプかは不明です。
子宮腺癌である可能性もあります。
全身麻酔覚醒後のぐっぴーちゃんです。
腫瘍が周囲の組織との癒着が進行して外科的摘出が出来ない場合は、残念ながら内科的治療に切り替える必要があります。
抗がん剤による化学療法です。
犬や猫のレベルであれば、多くの抗がん剤は点滴で投薬する形が多いです。
一方、モルモットになると静脈点滴が困難で、経口投与できるタイプの抗がん剤になります。
そこで、上手く抗がん剤のタイプが腫瘍と合致すればよいのですが、今回残念ながらありません。
ぐっぴーちゃんは、術後5日目に急逝されました。
モルモットの場合、外科的摘出が命運を分けることは間違いありません。
最近はウサギの場合、1歳未満で避妊手術を希望される飼主様が当院では増えています。
一方、モルモットやチンチラになりますと避妊手術まで希望される方は限りなく少ないです。
モルモットで4,5歳になり血尿が出たとなると子宮疾患を疑うことになります。
そして、今回の様に開腹しても時すでに遅く、腫瘍が転移して切除不能になっている場合もあります。
避妊手術がおそらくベストな選択と考えられますが、それができないなら少なくとも4,5歳になった時点で動物病院で定期検診を受けられることを強くお勧めします。
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投稿者 もねペットクリニック 院長 | 記事URL
モルモットの毛包上皮腫
こんにちは 院長の伊藤です。
モルモットには、皮膚等の上皮系腫瘍が多発します。
今回は、モルモットの毛包上皮腫についてコメントさせて頂きます。
アビシニアン・モルモットのベッカム君(雄、5歳)は頭頂部に腫瘤が出来たとのことで来院されました。
アビシニアンという品種は、モルモットの中でも体全体につむじがあり、巻き毛モルモットとも呼ばれています。
どちら側が頭か分からなくなりますね。
下写真黄色丸がベッカム君の頭頂部にあたります。
患部を触診しますと内部が充実感があり、皮膚が一部擦過により出血・痂皮形成が認められます。
患部の細胞診を実施させて頂きました。
下写真は細胞診の画像です。
無核角化扁平上皮細胞の集塊(黄色丸)が目立って混在しています。
一部には基底細胞腫に類似した細胞(下写真)が認められます。
細胞診は毛包上皮腫との診断結果でした。
この毛包上皮腫は良性の腫瘍です。
特にベッカム君の場合は、頭頂部の腫瘍なのでチモシー(乾草)等に頭からもぐりこんだりすると傷を受ける場合も出て来ます。
さらに頭部に荷重がかかるのもストレスに成り得ます。
自傷行為の対象となることも想定されます。
飼い主様のご要望もあり、腫瘍を摘出することになりました。
頭部を剃毛しました。
剃毛すると随分大きな腫瘍であることがお分かり頂けると思います。
全身麻酔を施すため、イソフルランを流し込む麻酔導入箱に入って頂きます。
十分麻酔が効いてきたところで、伏臥姿勢に移します。
頭頂部の皮膚は緊張していますので、腫瘍のマージンを十分に取って切除することが出来ません。
今回は良性腫瘍なので、皮膚を切開して皮下の腫瘍を摘出する方法を選択しました。
皮膚を切開しますと粟粒状の腫瘍が顔を覗かせています。
皮下に残存する腫瘍を滅菌綿棒できれいに取り除きます。
皮膚を縫合して終了です。
無事麻酔から覚醒したベッカム君です。
摘出した腫瘍です。
割面は毛根が中心部に存在しており、黒色に変化していました。
胎児期の毛芽に類似する細胞が、成熟した毛球を模倣した構造物や毛嚢漏斗部へ分化して生じる腫瘍とされます。
毛包上皮腫はチーズ上の顆粒状内容が充実した腫瘍とされます。
その90%以上が良性腫瘍とされます。
基本的には外科的摘出を行なうことで、再発は稀とされます。
手術の経過もよく元気にベッカム君は退院して頂きました。
その後、残念ながら脊椎損傷と思われる後躯麻痺がおこり、手術の5週間後に急逝されました。
ベッカム君とは3年近くお付き合いさせて頂きましたが、非常に残念です。
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モルモットのリンパ腫
こんにちは 院長の伊藤です。
モルモットは、頚部に腫脹が認められることが比較的多い齧歯類です。
頚部に腫脹がある場合、患部を穿刺してその内容を確認すると膿瘍(歯根部の炎症による)であったり、化膿性リンパ節炎であったりすることが多いです。
本日ご紹介しますのは、そういった炎症性の病変ではなく血液の腫瘍といわれるリンパ腫の症例です。
モルモットのいちごちゃん(5歳5か月、雌)は、頚部が腫脹して呼吸が苦しそうで、元気食欲が消失してきたとのことで来院されました。
頚部が黄色丸に示したとおり、腫大しているのがお分かり頂けると思います。
頚部の腫脹から頸静脈が圧迫され、眼球も突出気味になっています。
患部を触診しますと硬い腫瘤が認められます。
膿瘍の様に内部に液体が貯留する波動感はなく、硬結している感じです。
早速、細胞診を実施しました。
下写真は低倍率像です。
次は高倍率像です。
リンパ芽球様の細胞が多数認められます。
残念ながら、いちごちゃんは悪性のリンパ腫であることが判明しました。
多中心型リンパ腫に分類される表在リンパ節が腫脹するタイプのリンパ腫のようです。
モルモットのリンパ腫については、レトロウィルスの感染が発生に関与していると推察されていますが、その詳細は不明です。
食欲不振に始まり、リンパ節の腫大、肝臓・脾臓の腫大、削痩から体重減少に至ります。
私の経験では、犬の様に完全寛解に至ることは難しく、最終的には死の転帰をたどるケースがほとんどです。
治療法として、フェレットのリンパ腫に準じてステロイド療法を実施します。
いちごちゃんは、ステロイドの内服を続けて頂きましたが、投薬14日目にして急逝されました。
飼い主様が異常に気付かれてから、リンパ腫の展開が非常に早く残念な結果となりました。
齧歯類の場合は、食欲廃絶から食滞にいたり、死の転帰を取るケースが多いです。
食滞についてはこちらを参照下さい。
小さな体格であり持久力がないこと、かつ草食獣である点で食欲が一旦消失してから復帰するのに時間がかかることが、治療をさらに困難にします。
如何に早く、リンパ節の腫れに気づくかが、治療のカギとなります。
一日一回はスキンシップを取って、触診をすることをお勧めします。
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投稿者 もねペットクリニック 院長 | 記事URL
モルモットのセンコウヒゼンダニ症
こんにちは 院長の伊藤です。
モルモットは一般的に外部寄生虫の感染で皮膚疾患に至るケースが多いです。
今回、ご紹介するのはセンコウヒゼンダニ感染症です。
イングリッシュモルモットのライゼ君(雄、年齢不明)は激しい脱毛、落屑(ふけ)があるとのことで来院されました。
下写真黄色丸に部分が脱毛、皮膚の発赤が認められる部位です。
患部をさらに拡大します。
下写真の黄色丸は落屑がたくさん溜まっています。
痒みと落屑が酷い点から外部寄生虫の感染を疑い、被毛と皮膚にセロテープを圧着させスライドガラスに張り付けて顕微鏡検査をしました。
下写真はその鏡見像(低倍率像)です。
下は高倍率像です。
この寄生虫はモルモットセンコウヒゼンダニです。
皮膚を穿孔してトンネルを掘り、孵化した第2世代が再度穿孔を繰り返して、皮膚にダメージを与えていきます。
感染を受けたモルモットは、体幹部から四肢末端に至るまで極度の掻痒感を呈します。
掻痒感故に搔き毟って、細菌性皮膚炎を引き起こす個体も多いです。
病変部の皮膚は乾燥・肥厚し、食欲不振・体重減少を招きます。
基礎体力のない個体では致命的となる場合もあります。
治療法としては、イベルメクチン(駆虫薬)の内服を1週間続けていただきます。
駆虫が成功すれば、皮膚炎も改善して発毛も始まります。
ライゼ君、しっかり治していきましょう!
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投稿者 もねペットクリニック 院長 | 記事URL
モルモットの皮下膿瘍(その2)
こんにちは 院長の伊藤です。
モルモットの皮下膿瘍、特に好発部位は頬から頚腹部にかけて発症することが多いです。
しかも来院される場合は、この皮下膿瘍がほぼ極大になられてから受診されるケースが多いのも特徴です。
毛深い動物のため、やむを得ない場合もあります。
以前、この皮下膿瘍についてはコメントさせて頂きました。
詳細はこちらをご覧下さい。
モルモットのフウちゃん(1歳、雌)は頸の下が腫れてしまったとのことで来院されました。
下写真黄色丸の箇所が腫脹しているのがお分かり頂けると思います。
フウちゃんは頚がかなり腫れているため、頭部を下に下げることが出来なくなっています。
触診で明らかに皮下に液体状の貯留が認められます。
経験上、膿の可能性が高いとは思いますが、場合によっては出血による血液貯留なのか、浸出液が貯留しているのか不明です。
まずは試験的に患部を穿刺することとしました。
下写真は18Gの注射針で穿刺しているところです。
穿刺跡から膿が出て来ました。
患部を優しく圧迫していきます。
強い汚臭を放つ、水っぽい膿が出て来ました。
下写真黄色丸が多量に出ている膿です。
次に膿を包んでいる嚢胞内を穿刺した箇所から、消毒薬を注入して何度も洗浄・排液していきます。
大きな腫脹も取れて、多少すっきりした表情のフウちゃんです。
嚢胞内にブロメラインというタンパク分解酵素の入った軟膏(壊死組織除去剤)を注入します。
フウちゃんは1週間抗生剤の内服を継続してもらいます。
1週間後のフウちゃんです。
食欲・元気も出て来ました。
頚の下周りがすっきりして腫れも落ち着いたのがお分かり頂けると思います。
当初、受診した時は皮膚に穿孔した穴や炎症起こしている部位は認められませんでした。
ひょっとしたら、口腔内をチモシー等で穿孔して傷を受けたのかもしれません。
以前、モルモットの皮下膿瘍のブログにも書きましたが、細菌感染を受けて膿が形成されると膿を被嚢化(カプセル状に包むこと)して、細菌の拡散を防ごうとします。
被嚢化も早期に気づけば、短期間で回復は可能です。
ウサギもそうですが、モルモットも細菌感染に弱い動物ですから早め早めの処置が必要です。
フウちゃん、お疲れ様でした!
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投稿者 もねペットクリニック 院長 | 記事URL