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猫の疾病

猫の子宮蓄膿症(その2)


本日、猫の子宮蓄膿症の第2弾をご紹介させて頂きます。

犬の子宮蓄膿症と比較して、猫の子宮蓄膿症はそれほど多くは遭遇しないと思います。

猫の飼主様からすれば、子宮蓄膿症になるとどんな症状が現れるのか関心をお持ちと思いますので再度コメントします。



猫のミナちゃん(7歳9か月、雌)は陰部から血の混ざったおりものがたくさん出てくるとのことで来院されました。



陰部を見ますと血液の混ざった膿が出ています。



早速、レントゲン撮影を実施しました。



下写真・黄色丸で異常な患部を示します。

太くしたソーセージのようなものが黄色丸内にあふれているのがお分かりいただけると思います。

このソーセージにあたるものが子宮です。







結果、子宮蓄膿症と診断しました。

血液検査の結果、脱水症状と白血球数が23,000/μlと少し高いくらいで麻酔にも十分対応できると判断しました。

子宮蓄膿症は全身感染症とみるべきで早急に対処しないと命の関わります。

早速、子宮摘出手術を実施することとなりました。

全身麻酔をします。



全身麻酔下のミナちゃんの下腹部ですが、少し膨隆しているのが分かると思います。



開腹直後、膿で膨満した子宮が飛び出してきました。

メスのサイズと比較しても子宮が大きく腫れています。



バイクランプで卵巣動静脈を速攻でシーリングして子宮を摘出します。



避妊手術と異なり、膿を腹腔内に漏らさないように確実に子宮を摘出しなければなりません。

麻酔覚醒直後のミナちゃんです。



摘出した子宮です。



しばらく入院して頂いて、ミナちゃんは無事退院されました。



一般に避妊手術をしていない犬も猫も、シニア世代と言われる7歳以降になると子宮蓄膿症を発症するケースが当院では多いようです。

陰部から血様おりものが出てくる、水をたくさん飲むようになった、嘔吐をする、下腹部が腫れているなどの症状が出て来ましたら、子宮蓄膿症の可能性があります。

0歳児のうちに避妊手術を出来る限る受けて、子宮蓄膿症を未然に防いで頂きたく思います。

手術は無事成功しても、術後に子宮内にいた細菌が全身に回って敗血症に至るケースも経験しておりますので要注意ですね!





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投稿者 院長 | 記事URL

猫の扁平上皮癌(ナナちゃんに捧ぐ)


ヒトの腫瘍の闘病と同様、腫瘍に罹患した動物の闘病も辛く大変です。

飼い主様と動物、そして我々病院スタッフとの2人3脚で治療を進めていきます。

寛解といって、腫瘍を殺して治癒できれば良いのですが、人医同様、獣医の世界もまだ負け戦となることが多いです。

それでも、たいせつな家族であるペットに、少しでも腫瘍の苦しみから解放してあげたいというのが飼主様の切なる思いです。



猫のナナチャン(雑種、9歳、雌)は顔面がただれて眼がみえない状態であると来院されました。



顔面の左半分が原形をとどめないくらいにただれて、眼球はあらぬ方向を向いています。





交通事故などによる外傷ではなく、時間をかけて少しづつこのような状態になったとのこと。

まずは、レントゲン撮影をしました。





皮膚の一部が石灰化していますが、頭蓋骨・顎・歯根部への病変は認められませんでした。

鎮静をかけて患部から細胞診を行いました。

下写真は低倍像です。



次いで高倍像です。

大型の扁平上皮細胞がたくさん認められます。

核は分裂を盛んに行っています。

加えて、細菌感染があり好中球も多数出現しています。



結論から申し上げれば、扁平上皮癌(グレード3)です。

悪性の腫瘍で、猫の場合は病巣がびらん状を呈することが多いとされます。

好発部位は鼻・眼瞼・耳介です。

治療法は外科的摘出のみか、放射線治療を併用します。

犬の場合もそうですが、この扁平上皮癌にあっては化学療法の有効性は確立されていません。

当院では、腫瘍の治療にあってはいくつかプランを提示して、飼主様の意向を尊重して治療指針を決定していきます。

今回、ナナちゃんの腫瘍は単独で独立したものではなく、外科的摘出は不可能です。

費用の点から放射線療法も継続できない点から、どの程度の効果はあるか不明ではありますが化学療法で進めて行くこととなりました。

犬の扁平上皮癌のがん細胞はシクロオキシゲナーゼ2(COX‐2)という酵素を発現しており、このCOX‐2を標的とする非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAID)による治療が試みられています。

猫での効果の程は不明ですが、費用も廉価で済む点から、NSAIDであるピロキシカムをしばらく投薬して頂くこととなりました。





7か月後のナナちゃんです。

左側の顔面のびらんが治まり(眼球の傷害はありますが)、右側の瞼と頬のびらんが発現してます。






8か月後の写真(下)です。

右側の顔面びらんが縮小してきました。






9か月後の写真(下)です。




10か月後の写真(下)です。







11か月後の写真(下)です。





ナナちゃんは、11か月前に比べて腫瘍がいい感じで抑えられています。

ピロキシカムの効果があったとみるべきでしょう。

このままいけば、完全寛解にたどり着くのではと淡い期待を持ちました。



しかし、この写真を撮った2週間後にナナちゃんは亡くなられました。

局所リンパに腫瘍が転移し、四肢に力が入らなくなり、食欲廃絶の結果でした。

最後はご家族に見守られての往生であったと聞きます。





癌治療を1年弱継続できたのは、ひとえに飼主様のナナちゃんへの愛情のたまものです。

ピロキシカムは扁平上皮癌の進行をある程度抑制できたと思っています。

この治療を継続された結果、ナナちゃんは1年弱延命でき、その間に飼主様はナナちゃんとの思い出も作れたと思います。


合掌


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投稿者 院長 | 記事URL

きのこのつぼ?!(猫の壺形吸虫感染)

最近、仔猫を拾われて健診のため来院される飼主様が多いです。

野良の生活を経験している仔猫たちは、色んな物を摂食します。

その結果、寄生虫感染している個体も多いです。


ミックス猫のきのこちゃん(体重1.1kg、約2か月齢、雌)は、飼主様に拾われて当院に受診されました。



きのこちゃんの生まれてからの2か月は、動向が把握できてません。

まずは猫エイズ・猫白血病の血液検査を実施しました。

いずれも陰性でした。

猫ノミ、ミミヒゼンダニ、回虫、フィラリアの予防のためにレボリューションをつけます。

次に検便をします。

結果、何種類かの虫卵が検出されました。

まずは、壺形吸虫の虫卵です。

高度の感染を受けています。



この壺形吸虫の虫卵は良く見ると、表面が亀の甲羅のような模様をしています。





この壺形吸虫の生活環はちょっと変わっています。

終宿主は猫なんですが、第1中間宿主がヒラマキモドキガイで第2中間宿主がカエル、ヘビです。

おそらく、この界隈は自然もあり、きのこちゃんはカエル等を餌にしていたようです。

さらに別の寄生虫卵も見つけました。



これは猫鈎虫の虫卵です。

猫鈎虫の生活環は、母親の胎盤を介して胎児の頃に既に感染をうけているか、あるいは母猫の乳汁を介して授乳期に感染を受けるかしています。

さらに、もう1種見つけました。

下写真は、形態が鞭虫という虫卵に類似していますが、実は消化管内に寄生するタイプの毛細線虫です。

毛細線虫は膀胱内に寄生するタイプが一般的と言われてます。



きなこちゃんの場合は、どちらかというと少数派の寄生虫が3種類も寄生しており、今回ご紹介させて頂いた次第です。



早速、駆虫剤を投薬して経過をみていくこととしました。



野良出身の猫は、おなかに色んな寄生虫やウィルス感染をしている可能性があります。

もし、仔猫の野良猫を保護される予定のある方は、必ず最寄りの動物病院で健康診断を受けて下さいね。

きのこちゃん、お疲れ様でした!



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投稿者 院長 | 記事URL

猫の全臼歯抜歯処置

以前、猫の難治性口内炎というテーマをコメントさせて頂きました。

猫の歯肉口内炎は、難治性口内炎や慢性潰瘍性歯肉口内炎やリンパ球性形質細胞性歯肉口内炎等など色んな呼び方をされています。

最近では、この歯肉口内炎を口腔後部口内炎と呼ぶようになってきました。

今回、ご紹介させて頂きますのはソマリのまる君(4歳、去勢済)です。

まる君は1年近く前から歯肉口内炎でよだれがあり、食欲がふるわなく悩んでみえました。

当院でステロイド剤(デポ・メドロール)による内科的治療を継続していましたが、次第にステロイドも効果が弱くなってきました。


結局、飼い主様の意向を伺って、臼歯を全て抜歯する全臼歯抜歯処置を実施することとしました。

猫の難治性口内炎の記事にも書きましたが、全臼歯抜歯処置により、患者の多くは食生活が改善されます。


下写真は、全身麻酔をかけ始めのまる君です。



下写真で口腔内の歯肉炎の状況がお分かり頂けるかと思います。

臼歯歯肉及び周辺組織が発赤、腫脹、潰瘍を起こしています。



上写真を拡大したものです。

黄色丸の部分が炎症を起こしています。



ダイヤモンドバーを用いて臼歯の歯根部を分割します。





下写真の黄色丸は、上顎部の臼歯を抜歯した後です。





上写真は左下顎部の臼歯抜歯の跡です。

抜歯した後の抜歯窩周囲の骨をロンジュールでトリミングしています。



抜歯後は抜歯窩を綺麗にトリミングした後に歯肉を縫合します。



下写真の黄色丸は歯肉の縫合が完了したところです。









以上の処置で、全臼歯抜歯処置は無事終了しました。



この処置後は、暫くの間は内科的治療(ステロイド、抗生剤、免疫抑制剤など)が必要です。

最終的に数か月以内に内科的治療も必要なくなることが多いです。

その中には、この全臼歯抜歯を実施しても際立った改善が認められない症例もあります。

そんなケースではその後、切歯や犬歯を全て抜歯する全顎抜歯をとることもあります。



その後のまる君の経過は良好で食欲もしっかり戻っています。




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投稿者 院長 | 記事URL

仔猫の上部気道感染症

当院の周辺地域は、なぜかこの数週間、仔猫を拾われて健康診断を兼ねて来院する方が増えています。

その仔猫の何割かが、今回ご紹介します上部気道感染症に罹患しています。

上部気道感染症の特徴的な症状は、くしゃみ・鼻の漿液性または粘液性鼻汁・目やにです。

ヒトの風邪に似た症状から猫風邪とも言われます。


野良で拾われた もなかちゃん は生後約28日齢 です。



写真をご覧のとおり、目やに・膿性鼻汁による鼻づまり・くしゃみの症状です。





猫上部気道感染症の原因は細菌、ウィルス、真菌が挙げられます。

その中でも特に、猫ヘルペスウィルス(FHV-1)、猫カリシウィルス(FCV)が猫上部気道感染症の80%を占めるとされています。

この2つのウィルスは感染力が強く、一度感染を受けると保菌状態となり、ストレスによって神経細胞に潜伏するヘルペスウィルスは間欠的に排出されますし、カリシウィルスにあっては、生涯にわたって排出される場合もあります。



次は生後50日齢の拾われた仔猫(名前はまだありません)です。



結膜炎が酷く、目やにで瞼がしっかり開けられない状態です。





仔猫が運よく、母猫の初乳を飲むことができても5~7週で移行抗体は消失します。

この移行抗体が消失する時期に、母猫がすでにこれらのウィルスに感染している場合、鼻汁や眼脂に大量に含まれるウィルスを仔猫が口や鼻や結膜を通して取り込むことにより、感染が成立します。



多くの検査機関でFHV-1やFCVの血清検査は可能です。

しかしながら、この2つの感染症は治療法も同じですから、検査で鑑別する必要はないと思います。

仔猫の場合、これらのウイルス感染後に速やかに細菌感染が合併症で起こります。

そのため、まずは細菌感染症の治療を優先して行います。

つまり、抗生剤の投与・抗生剤点眼を今回の仔猫ちゃん達に実施しました。

加えて、熱発や脱水で食欲不振があれば点滴が必要ですし、栄養チューブから給餌を行います。

状況に応じて、抗ウイルス療法としてL-リジン塩酸塩やネコインターフェロンを投与します。

以上が一般的な治療となりますが、5日以内に治療に反応が認められない場合、免疫力を抑制する猫白血病(FeLV)・猫エイズ(FIV)の感染を受けている可能性があります。

そうなるとFeLV・FIVの検査が必要となります。

いづれにせよ、生まれて間もない仔猫たちは色んな病原体の感染を受けている可能性があります。

少しでも、気になる症状があれば、かかりつけの獣医師のチェックを受けて下さい。




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投稿者 院長 | 記事URL

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