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院長ブログ

2023年8月22日 火曜日

猫の下部尿路疾患(本篇 恥骨前尿道造瘻術)

こんにちは 院長の伊藤です。

先回、猫のデュオ君がストラバイト尿石症により排尿障害に至った話(猫の下部尿路疾患 序章 排尿障害)を載せました。

今回はその続きとなります。

排尿障害から急性腎不全になってしまったデュオ君を救うためには、新たに尿道を作り排尿できるようにする手術が必要です。

骨盤腔内の尿道を乳房へと移動させて、乳房から排尿をさせる手術法に恥骨前尿道造瘻術があります。

この術式であれば、会陰部尿道形成術に比べて術後の尿道の再閉塞が経験的になく、今回こちらを選択しました。

恥骨前尿道造瘻術の術式やその詳細はこちらをクリックしてご覧下さい。


さて、デュオ君を全身麻酔にかけることとなります。

腎機能が低下していますので、細心の配慮で麻酔をかけます。



気管挿管をしてイソフルランを流します。



デュオ君は体重が6.5kgで肥満傾向を示しています。



下腹部の正中線にメスを入れます。



皮下脂肪が分厚く入っています。



極力、皮下脂肪を切除していきます。



腹筋にメスを入れます。



下写真黄色丸は膀胱です。

排尿障害が続いていたため、膀胱炎も合併症で起こしており、膀胱壁は肥厚しています。



次に膀胱を牽引して、骨盤腔に入り込んでいる尿道の太い部分にアプローチします。



下写真の分厚い脂肪層の中に頭を出し始めたのが尿道です。



下写真黄色矢印の示す尿道をなるべく牽引して引き出します。



尿道をなるべく長めに鋏で離断します。



下写真黄色丸が気団した尿道の断面を示します。



離断端の尿道を鉗子で優しく把持します。



尿道離断端を縫合糸で引っかけて牽引します。



次に尿道にいちばん近い乳房を鋏で丸くくり抜きます。



くり抜いた乳房から外側から鉗子で離断した尿道端を把持し、牽引します。





下写真黄色丸は尿道端を乳房に引き出した所です。



デュオ君の尿道は体格の割には細く感じました。

これはデュオ君は1歳位で去勢手術を受けており、その影響もあると思います。

下写真は離断した尿道端ですが、黄色丸内の縫合糸で尿道端を牽引しても、皮下脂肪が非常に分厚いために、尿道を皮膚に縫合しても皮下方向に引っ張られることになります。



これを回避するために、出来る限りの皮下脂肪を削り取ります。





何とか、尿道端が皮膚に安定して収まりそうになったところで、皮膚を仮縫いします。



下写真から尿道端を皮下組織と皮膚に特殊な縫合で縫い込んでいきます。

尿道を傷めないように細心の注意をして、縫合を始めます。



この縫合法の詳細はこちらをクリックして下さい。



デュオ君の尿道は細いため、同心円状に縫合する際に6か所を縫合するのが限界でした。





この縫合法で患部に6か所、糸を通して、最後に一本ずつ順番に結紮していきます。



尿動口の拡大写真です。



下写真で尿道の結紮は終了です。



排尿が確実に出来るようにバルーンカテーテルを患部の尿道に挿入します。





これでこの手術は完了となります。



バルーンカテーテルのカフに精製水を入れて膨らまします。

これでカテーテルを引っ掛けて患部から引き抜くことは出来なくなります。



患部に抗生剤を塗布します。



バルーンカテーテルの端はペットシーツに包み、排尿量をシーツの重量を計量して確認して行きます。

尿道にカテーテルを挿入していますので、強制的に排尿は完了します。



麻酔から覚醒し始めたデュオ君です。



大変な手術となりましたが、無事手術は終了しました。



術後はデュオ君は乳房から排尿するというスタイルになりますから、慣れてもらう必要があります。

次回はデュオ君の術後の回復偏をご報告します。

デュオ君、お疲れ様でした!





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投稿者 院長 | 記事URL

2023年1月 1日 日曜日

新春のご挨拶

明けましておめでとうございます。

院長の伊藤です。

昨年末、当院を受診・治療を受けて頂いている患者様におかれましては、大変ご迷惑をおかけいたしました。

私が12月5日にコロナに感染し、出勤出来なくなり、その2日後には当院のドクター2名がさらにコロナ感染し、さらにその2日後にはスタッフが1名罹患となりました。

1週間で4名のコロナ感染となると診察業務は継続不能です。

クラスター感染で、罹患していない他のスタッフへの感染拡大をストップするため、3日間業務を停止しました。

加えて、1週間ほど診察は停止し、投薬やフード類の対応の受付業務に徹しました。

私が現場に復帰するまでに2週間ほど必要としました。

40度の熱発が3日間続き、後遺症として味覚障害と右腕、手指の関節炎で字を書くこともままならなくなりました。

元旦の現在、何とか手術に対応できるまでに復活出来ました。

我々の仕事は、救命救急的な業務もあり、病院を閉めいている期間、当院をご利用頂いている患者様の病態急変を懸念してました。

幸いなことに、命にかかわる一大事に至ることなく、業務再開できたのは幸運でした。

そんな年末バタバタした当院ですが、心機一転、診療に邁進しますので宜しくお願い致します。





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2022年7月11日 月曜日

素敵なプレゼント

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは、当院へ飼主様から頂いた素敵なプレゼントをご紹介させて頂きます。

飼い主様は愛玩鳥(ムラクモインコ)を初めとしてリチャードソンジリス等を飼育されています。

その飼主様からのプレゼントの品々を、宜しかったらご覧になって下さい。

下写真は、鳥の貼り絵を施した袋です。





次に飼育されてるムラクモインコの模型です。

羊毛フェルトを素材とした精巧なマスコットです。









さらに下写真は、当院の看板犬のドゥ(ゴールデンレトリバー)を可愛くデフォルメしたマスコットです。







作成して頂いたプレゼントは、作成にあたり大変時間を要したと思います。

大切に受付に飾らせて頂きます。

ありがとうございました!





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2022年4月19日 火曜日

アーカイブシリーズ ウサギの子宮腺癌(その8 子宮水腫を伴う症例)

こんにちは 院長の伊藤です。

4月現在、狂犬病予防接種やフィラリア予防、春の健診などのイベントが集中しています。

飼い主様には、長時間御待ち頂くこともあり、ご迷惑をおかけして申し訳ありません。

新作をまとめる時間が取れず、今回アーカイブシリーズを載せます。

先月、ウサギの子宮腺癌シリーズをアーカイブで紹介させて頂いてましたが、その続きとなります。

ウサギの子宮疾患の中で腹部が大きく腫大する疾患で、子宮水腫があります。

子宮水腫は発情の全ステージで発症するそうで、性ホルモンとの関連はよく分かっていません。

今回は子宮腺癌と子宮水腫の合併症の事例です。

それでは、ご覧下さい。








こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは、ウサギの子宮腺癌です。

雌のウサギは、5歳前後からの子宮疾患が非常に多く、腺癌の発症率がその大部分を占めます。

今回で子宮腺癌の症例報告も8例目になりますが、合併症で子宮水腫を認めたケースです。

当院での子宮腺癌に関わる記事に興味のある方はこちらをクリックして下さい。



雑種のくろちゃん(雌、4歳10か月齢、体重2.5kg)は腹部が大きく腫れてきたとの事で来院されました。

下写真黄色矢印が示すように腹部は腫大し、横にも膨満しているのがお分かり頂けると思います。





レントゲン撮影を実施しました。

レントゲン像の黄色矢印は内容物で高度に腫大した子宮を示します。



側臥の状態です。

黄色丸が内容物で腫大した子宮の側面を表しています。



エコーで患部を調べてみました。

下エコー像は子宮内に液体が多量に貯留しているのを示します。

黄色矢印は炎症で剥離しかけている子宮内膜や腫瘤と思われます。



レントゲンとエコーから子宮水腫の可能性が疑われました。

水腫以外にも何らかの産科疾患が隠れているかもしれません。

腫大した子宮が胃腸を圧迫するため、クロちゃんは元気・食欲が極端に落ちているとのことです。

飼い主様の了解を頂き、卵巣・子宮全摘出を実施することとしました。



点滴のラインをつなぎ、メデトミジン・ケタラールの麻酔前投薬処置を施し、イソフルランで維持麻酔を行っています。



下写真の剃毛部が大きく腫れている(黄色矢印)のがお分かり頂けると思います。





下腹部の正中線にメスを入れます。





腹筋の下に認められるのは、腫大した子宮です。



慎重に子宮を体外に出していきます。





左子宮角が捻転して右側に変位していました。



メスの柄の目盛で比較すると子宮角の大きさがイメージ出来ると思います。



卵巣子宮をこれから全摘出します。

バイクランプを使用して卵巣動静脈をシーリングします。



下写真黄色丸は腫大した左卵巣を示しています。

卵巣に病変があるのは明らかです。





卵巣動静脈、子宮間膜動静脈を順次シーリング、離断を展開していきます。





両側の卵巣動静脈をシーリングし、メスで離断した後に両側卵巣、子宮角、子宮頚部を体外に出したところです。



両側の卵巣は結節状に腫大(黄色丸)しており、左の子宮角は水腫(黄色矢印)を呈していました。



子宮頚部を結紮し、離断、断端部の縫合をして卵巣・子宮全摘出が完了します。









腹筋を縫合します。



最後に皮膚を縫合して終了です。



クロちゃんのお腹周りがスッキリしたのがお分かり頂けると思います。



全身麻酔から覚醒直後のクロちゃんです。



ほどなく意識はしっかり戻られました。



摘出した卵巣・子宮の重量は447gありました。

体重の5分の1にあたる重量です。

随分、お腹が重かったと思われます。



左子宮角はほぼ正常な太さを保っていますが、内出血を伴いうっ血色を呈しています。

左卵巣は正常卵巣の4~5倍の大きさを示しています。





右卵巣は大きく腫大した子宮角で隠れていますが、正常の大きさを保っています。





左卵巣に割を入れたところです。

割面は膨隆しています。



右子宮角を切開し、内容物を確認します。



明らかな子宮水腫で、内容物はさらっとした漿液です。

子宮水腫は黄体期を含めたすべての発情ステージで生じるため、発症要因としてのプロジェステロンをはじめとする性ホルモンの関わりは不明とされてます。



摘出した臓器を病理検査に出しました。

病理医からの診断は子宮腺癌(悪性腫瘍)でした。

左卵巣の低倍率像です。



下は中等度の倍像です。

左卵巣では、充実性の癌増殖巣が形性され、癌細胞群は腺管状の配列を呈しています。

一部、骨軟骨巣に転じている組織も認められます。



高倍率像です。

卵円形異型核を持つ内膜上皮様の癌細胞です。



左卵巣の病理像を載せましたが、両子宮角も同様に癌細胞が浸潤していました。

子宮内膜由来の子宮腺癌であり、左卵巣を巻き込んだ可能性が示唆されるとのことです。

病巣は切除した組織断端に露出しておらず、完全切除であるとの診断です。

手術前のレントゲン撮影では、肺野の癌転移は認められませんでしたが、クロちゃんは腫瘍細胞の播種性転移やリンパ節転移については今後のモニターリングが必要です。


クロちゃんは3日間の入院後、元気に退院して頂きました。



2週間後に抜糸で来院されたクロちゃんです。





毎回、子宮腺癌の報告例で申し上げておりますが、雌のウサギは1歳前後には避妊手術をお勧めします。

早期の避妊手術で子宮腺癌の発症を抑えることが可能です。

今回のクロちゃんも大変な思いをして手術を受けられたと思いますが、開腹した時点で主要臓器に腫瘍が転移しているケースもあります。

クロちゃん、お疲れ様でした!




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2021年1月 1日 金曜日

新年のご挨拶

新年明けましておめでとうございます。

院長の伊藤です。

昨年は新型コロナウィルスの影響で、患者様・飼主様に多大なご迷惑をおかけしました。

待合室での密な状態を回避するため、春から飼主様各自・車内で待機して頂き、電話で来院を促すスタイルを取って来ました。

7月・8月と猛暑の時期を経て、この冬も同じスタイルを取らせて頂くことになります。

まだまだ先が見えない新型コロナウィルス対策は、1月以降も続きます。

私たち一人ひとりにとって、これは大きな試練です。

当院スタッフ共々、日々出来ることを地道に励行していきたいと思います。

そして、何より皆様のご健康・ご多幸を心より祈念いたします。

今年も宜しくお願い致します。






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