アーカイブシリーズ

2024年6月11日 火曜日

フトアゴヒゲトカゲの粘液肉腫

こんにちは院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは、フトアゴヒゲトカゲの粘液肉腫という悪性腫瘍です。

フトアゴヒゲトカゲは眼瞼部周囲の腫瘍が多いです。

過去の記事を紹介しますので、興味のある方は下表題をクリックして下さい。

フトアゴヒゲトカゲの扁平上皮癌フトアゴヒゲトカゲの眼瞼部肉腫

今回は、眼瞼部に発生した悪性腫瘍である粘液肉腫を載せます。


フトアゴヒゲトカゲのちくわ君(雄、体重460g)は2か月前から左眼球に腫瘤が生じ、次第に増大したため当院を受診されました。





腫大した瞼の拡大像です。



正面から見た画像です。



左の眼瞼部(下写真黄色丸・黄色矢印)が腫れているのがお分かり頂けると思います。





反対の右眼瞼部は正常です。



ここで左眼瞼部を細胞診したところ、検査センターの病理医からは炎症系細胞が認められるものの、異型細胞(腫瘍細胞)は無いとの診断でした。

過去に細菌感染の炎症と細胞診で診断され、抗生剤を暫く投与したものの改善は無く、さらに患部腫大した結果、腫瘍であった経験があります。

今回も同様に腫瘍の可能性があると考え、外科的摘出を勧めさせて頂きました。


イソフルランで麻酔導入を行います。



7分ほどで麻酔導入は完了です。





自家製の麻酔マスクを装着して、維持麻酔を実施します。





麻酔が安定したところで、患部を露出させるために眼瞼に支持糸をかけます。





眼瞼3か所を支持糸で牽引します。







患部は眼頭に位置する腫瘤で、瞼の内側から発生しているのではありません。

アプローチするには瞼に切開を加える必要があります。

眼球に傷をつけないように、綿棒を切開部の瞼の下に入れて瞼の切開を行います。



切開部の下に綿棒が認められます。



さらに眼頭に向けてメスを進めていきます。



下写真黄色矢印に腫瘤が顔を覗かせています。



上瞼の真横に切開を加えました。

眼球と腫瘤の位置関係が明瞭となりました。



眼球の眼頭側にある腫瘤をこれからバイポーラで摘出を試みます。



腫瘤(下写真黄色矢印)摘出にあたって、眼球へのバイポーラによる火傷を回避するために、腫瘤に支持糸(青矢印)をかけて牽引します。





腫瘤は眼球に発生したものではなく、第3眼瞼から生じたと思われます。



バイポーラで切除しています。

切除部(黄色矢印)から出血は思いのほか多いです。





腫瘤を切除しました。



残っている腫瘤組織を切除します。



ジワジワと静脈性出血があり、暫くガーゼで圧迫止血を併用します。



止血が完了したところで、瞼を縫合します。



5-0ナイロン糸で縫合します。



瞼の縫合は完了です。



眼、眼瞼内の血餅を生食で洗浄します。



眼瞼は腫脹していますが、眼球は動いてます。



全身麻酔覚醒直後のちくわ君です。

比較的短時間で覚醒し、インキュベーター内を徘徊してます。



麻酔や疼痛などのストレスが加わるとフトアゴヒゲトカゲは下顎部が黒くなります。







流涙があり痛々しい感じがありますが、ちくわ君頑張ってくれました。



手術翌日のちくわ君です。

術後の瞼の腫れと流涙は昨日に続いて認められます。





下顎の黒変は少し改善しました。

ちくわ君は術後3日目に退院して頂きました。



摘出した腫瘤です。





この腫瘤を病理検査に出しました。

病理標本の中等度倍率の所見です。

粘膜下に異型性を示す紡錘形・多角形・類円形腫瘍細胞の錯綜状、束状の増殖により構成されてます。



高倍率の画像です。

腫瘍細胞の有糸分裂像が多数認められ、細胞間質には著しく粘液様成分の産生が認められます。

結論として、粘液肉腫という診断名が下されました。

粘液肉腫は間質における粘液産生が特徴的な悪性腫瘍です。

切除断端に一部腫瘍細胞が認められるとのことで、取り残した腫瘍細胞が存在している可能性があります。



術後3週間のちくわ君です。

抜糸のために来院されました。

瞼の開閉も健常時と同様に出来るとのことで、経過は良好です。



爬虫類の場合は、抜糸までに脱皮が重なったりするためスケジュール調整が難しいです。



縫合した眼瞼部は痂皮が形成されていますが、いづれ脱落しますし眼球運動にも支障が出てません。

流涙系も機能しており、涙の産生も大丈夫です。

ただ腫瘍が完全摘出出来てない可能性がありますので、要経過観察させていただく必要があります。





ちくわ君、お疲れ様でした!




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投稿者 もねペットクリニック

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