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筋骨系の疾患(整形)/犬

2022年12月26日 月曜日

犬の関節リウマチ

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは、犬の関節リウマチの症例です。

関節リウマチは、免疫介在性多発性関節炎のひとつに分類されます。

免疫介在性多発性関節炎は、自己免疫の異常によって起こる関節炎で、免疫機能が自らの関節を異物とみなして攻撃することで、関節炎が多発する病気です。

レントゲン上では、免疫介在性多発性関節炎は、骨が溶けたように見える「びらん性」の関節炎(関節リウマチ)と、そのような変化を起こさない「非びらん性」の関節炎(突発性免疫介在性多発性関節炎)があります。

今回ご紹介しますのは、この関節リウマチです。

関節リウマチを発症しやすい犬種としては、ミニュチュアダックスフント、チワワ、トイプードル、シェットランド・シープドッグ等が挙げられます。

関節リウマチの原因は正確には分かっていませんが、関節内に抗原が侵入し、免疫複合体が持続的に産生されると免疫介在性慢性炎症を生じることとなります。

この慢性炎症で関節痛や滑液の増量、あるいは生理活性物質の放出により、骨や関節の破壊が始まります。

完治が難しい病気で、関節の痛みを伴いながら少しずつ確実に進行し、末期になると関節が溶け、苦痛を伴う症状が出ます。



ミニュチュアダックスのリリーちゃん(15歳7カ月、雌、体重6.0㎏)は5年ほど前から、手根関節や足根関節を触ると痛がり、肢に力が入らないとの症状が出て来ました。

5年前の時点ではレントゲン上では骨びらんは認められなかったのですが、試験的にプレドニゾロン(ステロイド剤)を投薬して関節腫脹は引き、痛みも落ち着きました。

その後は、リリーちゃんの状態に合わせてプレドニゾロンの投薬量を調整しながら対応させて頂いたのですが、プレドニゾロンを増量しても効果が徐々に弱くなってきました。



特に前足の手根関節に力が入らず、アザラシのような歩行形態をとるようになって来ました。



下写真3枚はリリーちゃんの手根関節を中心に撮ったレントゲン像です。

手根関節を構成する骨のうち、中間橈側手根骨と尺側手根骨が溶解して(下写真黄色矢印)物理的に関節機能が破壊されています。





橈尺骨遠位端と一部融解した手根骨との間隙には、骨新生は認められず(下写真黄色丸)体重が荷重される度に疼痛を引き起こしていると思われます。

骨破壊や関節間隙の狭小化から骨びらんの所見が認められ、関節リウマチであることが分かります。

また血液検査でC反応性蛋白(CRP)値は2.3㎎/dlと高値を示しています。



正面から見ますと手根関節の腫脹と外反変形が確認されます(下写真黄色丸)。






犬の場合、全体重の7割近くが前足に荷重されます。

リリーちゃんの場合は、後足の関節はまだ骨びらんの所見はありません。

しかし、前足の手根関節は既に関節としての機能はなくなっており、炎症を抑えることと患部のかかる荷重を軽減するためにギブス等の装具による外固定が必要となります。



歩行する場合、前足が体重を支えられずに頭部が前のめりにスライドしてしまいます。

加えて、姿勢を戻すために前足をアザラシの歩行の様に手根部をブラブラさせてバランスを取ります。







両手根関節内側面は、関節と皮膚と床面との干渉で皮膚の内出血は生じ、細菌感染も合併症を起こしています(下写真黄色丸)。

関節リウマチの治療はプレドニゾロンが主体のため、その免疫力の抑制で細菌感染を引き起こしやすい体質になっています。



関節リウマチは、プレドニゾロンの単独投与で寛解に至らないケースが多く、ヒトではレフルノミド疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)を併用することもあるそうです。

今後の展開では、りりーちゃんもこれらの併用薬も検討したいと思います。



一般的に予後が悪いとされる関節リウマチですが、関節が日常的に破壊進行されていきますので、サポーターや装具を使用して歩行の補助、介護の生活が必要となります。

大変ですが、りりーちゃん頑張っていきましょう。






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投稿者 もねペットクリニック

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