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チンチラの疾病

2019年10月28日 月曜日

チンチラの腸管吻合(自咬による腸管脱出)

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは、自咬症により腸が脱出し腸損傷を招いたチンチラの症例です。

犬猫同様、腸が損傷・壊死を起こした場合、患部を切除後、腸管を吻合する必要があります。

チンチラは体重が雄で600g、雌で800gが上限の平均とされます。

これはウサギのネザーランド種(小型品種)の3分の2から2分の1に当たる体重です。

当然、腸管の直径は小さく吻合の難易度は高くなります。

チンチラは腸重積が原因で直腸脱となるケースが多く、その場合は重積部周囲を切除後に腸管吻合を行うのが最善とされます。

そんなチンチラの腸管吻合をご紹介します。


チンチラのポテチ君(3歳、去勢済、体重450g)は2週間前に当院で去勢手術を受けられました。



去勢手術後の患部の写真です。



術後2週間で縫合部は癒合したので、抜糸を行ってエリザベスカラーを外しました。

しかし、帰宅されたのちに患部を自咬し、腸が飛び出しているとのことで慌てて再受診されました。

脱出した腸は床材(チモシー)にまみれ、自咬して損傷が認められました。

細くて脆弱な腸管ですから、炎症・損傷が疑われる部位は切除する必要があります。

ポテチ君を全身麻酔します。



下写真黄色丸は脱出した腸管です。



患部をしっかり生食で洗浄します。



自咬で開いた患部をさらに近位(頭側側)に向けて切開します。



脱出した腸の全容です。



下写真の黄色丸は腸損傷を示しています。

腸管は、内出血や血行障害もあり、うっ血色を呈してます。

いずれ壊死を招くと推察されます。



脱出した腸の近位を腸鉗子で優しく挟みます。



把持した腸鉗子の間を外科鋏で離断します。



離断した直後です。



離断した腸の断面です。



向かって左側が約2㎜、右側が約1.5㎜の腸管の内径です。

この2つの腸断面を吻合します。



腸間膜からの出血が認められたため、バイポーラ(電気メス)で止血します。



次に6-0モノフィラメント合成吸収糸(黄色矢印)で腸管を単純結紮縫合していきます。

髪の毛よりも細い縫合糸です。









腸管の漿膜、筋肉、粘膜下織の全層を針で貫通して縫合します。









このようにして腸管の全周を4か所縫合します。

糸が細すぎて分かりずらいと思いますが、下写真が完成形です。



次いで、脱出腸管を腹腔内に戻します。



自咬の結果、裂けた腹筋層を縫合します。





皮下組織も縫合します。



最後に皮膚を5‐0ナイロン縫合糸で縫合して終了です。

吻合した腸管は約3週間で完全に癒合するとされます。

術後の合併症は腸の裂開、穿孔、腹膜炎、腹部での癒着、腸管の狭窄及び腸閉塞の再発などです。

術後5日までに腸穿孔による腹膜炎は発症します。

ポテチ君の容態については1週間は要注意です。



切除した腸です。



術後の栄養管理は、点滴や強制給餌による流動食を与えます。

下写真は、ポテチ君に青汁を強制給餌しているところです。



ポテチ君はしっかり流動食を飲んでくれます。



下写真は流動食のMSライフケア®を与えているところです。

ポテチ君の術後経過は良好です。

食欲、運動性もあり、6日後には退院して頂きました。

抜糸までの間(約2週間)は流動食を中心とした食生活で腸に負担をかけないようにして頂きます。

手術も大変ですが、術後の食餌管理は本人も飼主様も大変です。



術後2週目のポテチ君です。

抜糸のために来院されました。



傷口は皮膚癒合が完了していましたので、早速抜糸します。



抜糸後の患部です。

傷口も目立ちません。



大変な手術を受けることになったポテチ君ですが、術後の感染症もなく、腸の蠕動障害もなく無事回復されて良かったです。

術後に患部を自傷するケースは初めて経験しました。

去勢後に皮膚癒合は完了していたのですが、齧歯目の切歯は鋭いため、神経質な個体であれば、今回の様に癒合部を吻開してしまうようです。



ポテチ君、お疲れ様でした!






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投稿者 もねペットクリニック

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