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ハリネズミの疾病

2018年7月23日 月曜日

ハリネズミの卵巣腫瘍(性索・間質性腫瘍)

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは、ハリネズミの卵巣腫瘍です。

今年の5月、6月はハリネズミの腫瘍摘出手術(特に子宮腫瘍)が集中してありました。

連日のようにハリネズミの開腹手術となりました。

ハリネズミは本当に腫瘍が多い動物種だと再認識します。

現在、そのデータ―をまとめてますので、近々にこの場で紹介させて頂きます。




ヨツユビハリネズミのみんとちゃん(3歳8か月齢、雌)は血尿が酷いとのことで来院されました。

以前、みんとちゃんは当院で乳腺癌の摘出手術を受けました。

ハリネズミの乳腺癌に興味のある方はこちらをクリックして下さい。



下写真はみんとちゃんの一回分の尿(血尿)です。



出血量も多く、元気食欲のないみんとちゃんです。



みんとちゃんの年齢、症状から産科系の疾患はまず疑いないと判断しました。

1年ほど前に乳腺癌の手術を受けられてから、また別件での手術となると飼い主様的にも悩まれるところだと思います。

しかし、子宮腺癌が絡んでいますと時間の問題です。

飼い主様にもご決断頂き、開腹手術を行うこととなりました。

イソフルランによる導入麻酔を行います。



少しずつ、麻酔が効いてきます。





麻酔導入が出来たところで、外に出て頂き維持麻酔に変えます。



生体モニターのためにセンサーを接続し、切開部を消毒します。





手術の準備が出来ました。



皮膚の正中部にメスを入れます。



皮下脂肪を切除します。

軽く腹部を圧迫しただけで、みんとちゃんの陰部からは出血が認められます(下写真黄色丸)。



腹筋にメスを入れます。



腹膜を切開したところで、尿が溜まった膀胱(下写真黄色矢印)が飛び出してきました。



続いて膀胱の隣に子宮が確認できます。

子宮が貧血色を呈しているのがお分かり頂けると思います。



膀胱がこのままですと背側面に位置する子宮の摘出が困難になりますので、膀胱を穿刺して尿を吸引します。



下写真は卵巣と子宮の全容です。

赤矢印は左卵巣(うっ血色)、青矢印は右卵巣(のう胞状)、白矢印は子宮壁漿膜面に発生した白色の腫瘤です。

この3点がまず異常所見として認められました。



注意深く左卵巣をバイクランプでシーリングしていきます。





シーリングした卵巣動静脈をメスで離断します。





同様に、右の卵巣動静脈もシーリング後に離断し、子宮頚部を縫合糸で結紮します。







私の場合は、子宮頚部を2か所にわたり結紮します。



次いで、子宮頚部をメスで離断します。



子宮頚部断端を吸収糸で縫合し、卵巣子宮全摘出は完了です。



次に腹筋を縫合します。



最後に皮膚を縫合して手術は完了です。



下写真をご覧いただくとお分かり頂けると思いますが、陰部から出血が激しく下のタオルが赤く染まっています。





出血量の補正のために皮下にリンゲル液を輸液します。



ほどなく、みんとちゃんは麻酔から覚醒し始めました。






大変な手術でしたが、頑張ってくれました。






さて、今回摘出した卵巣と子宮です。

開腹している写真で示した矢印の色と合わせてあります。

左卵巣(赤矢印)の腫大が著しく、うっ血色を呈しています。

右卵巣(青矢印)は腫大傾向を示しています。

白矢印は子宮角漿膜から派生している腫瘤です。



裏側からみた写真です。



側面の写真です。



病理所見としては、みんとちゃんの子宮は内膜が肥厚してポリープを形成していました。

ポリープの一部は子宮内膜間質肉腫という腫瘍細胞が見つかりました。

下写真は子宮内膜が過形成されている病理写真(低倍率)です。



子宮内膜に生じたポリープの中拡大像です。



下は上述写真の白矢印(子宮角部)を拡大した写真です。

低悪性度の平滑筋肉腫の腫瘍細胞が認められます。



下は上述写真の赤矢印で示した左卵巣の写真(低倍率)です。

左卵巣には血液を含んで拡張した嚢胞様構造が認められます。



下写真は左卵巣(中拡大像)です。

この左卵巣には大型類円形・多角形細胞がシート状に増殖しています。



下は上写真の強拡大像です。



犬のライディッヒ細胞腫に近似した細胞の所見(大型類円形、多角形細胞のシート状増殖)が認められました。

ライディッヒ細胞腫について興味のある方は、こちらをクリックして下さい。


みんとちゃんの左卵巣は性索・間質性腫瘍という卵巣腫瘍でした。

性索・間質性腫瘍の中でもさらに間質細胞腫瘍というタイプに分類されるようです。

この間質細胞腫瘍はステロイドホルモンを産生することもあり、結果としてエストロゲン過剰症や雄性化、長期にわたる無発情などの臨床徴候が現れることがあります。

ただこれは犬の卵巣腫瘍における知見であり、ヨツユビハリネズミにおいてはまだはっきり分かっていません。

ちなみに右卵巣は正常所見でした。

みんとちゃんの場合は、左卵巣の性索・間質性腫瘍、子宮内膜過形成及び子宮内膜ポリープ、低悪性度平滑筋肉腫という疾患であったことが判明しました。

病理医から卵巣・子宮摘出は完全であり、予後は良好であろうとコメントを頂きました。

いずれにせよ、今後は要経過観察です。



退院時のみんとちゃんです。

元気食欲も戻り、無事退院できて良かったです。







次いで、退院後2週目のみんとちゃんです。



本日は抜糸のため、来院されました。




傷口も綺麗に治っています。



みんとちゃん、お疲れ様でした!





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投稿者 院長

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