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犬の疾病

犬の肛門腫瘍とレーザーメス

こんにちは 院長の伊藤です。

5月から7月にかけ、ほぼ毎日手術の予約が入ってしまい、体力的に乗り切れるか少し不安です。

特にウサギの避妊手術の依頼が多く、5月だけで8件ありました。

手術の効率化・細分化を目指すうえで当院も半導体レーザーメスを導入しました。

レーザーメスについては、その概要をこちらにコメントしましたので興味のある方は参照下さい。


さて本日ご紹介しますのは、犬の肛門腫瘍です。

シーズーのマロン君(去勢済、11歳7か月)は4年位前から肛門に腫瘤が認められ、次第に大きくなってきました。





肛門周囲腺腫の疑い(下写真黄色丸)があり、7歳の時点で去勢手術を実施いたしました。

去勢手術の効果を期待したのですが、腫瘤は少しずつ大きくなり、新たに別の腫瘍(白丸)も出て来ました。



本来、細胞診を実施してから外科的切除に至ります。

ただ肛門腫瘍の場合は、細胞診では悪性・良性の鑑別は確実性に欠ける言われています。

すでに腫瘍は大きくなっており、切除してから病理検査に出すことにしました。



消毒後の患部です。



患部から6時方向にある腫瘍は、牽引しますと蔓が伸びる感じで栄養血管を含んだ茎状の組織(下写真黄色矢印)が認められます。



半導体レーザーに装着するプローブの種類は多く、血管や管腔臓器を切断する時に使用するユニバーサルバイポーラー(下写真)を6時方向の腫瘍に使用しました。



血管ならばこのバイポーラ-で4mm径までシール切断が可能です。

下写真の黄色矢印がユニバーサルバイポーラです。

腫瘍の茎にあたる部位を挟んで切断をしていきます。







こんな感じで切断します。

茎の中の栄養血管も完全にシールされて出血は認められません。



次に腫瘍本体の切除ですが、チゼルハンドピース(下写真黄色矢印)を使用しました。







これで切除完了です。



次に九時方向の腫瘍です。



この腫瘍は細径コニカルプローブ(下写真黄色矢印)を使用して切除します。



こちらの腫瘍は、浅在性で底部周囲組織への固着は認められません。





レーザー切除の煙が漂っていますが、これで腫瘍切除は終了です。





九時方向の腫瘍切除後の皮膚縫合を行いました。



これでお尻周りがすっきりしたね、マロン君!



摘出した腫瘍を病理検査に出しました。

6時方向の腫瘍の病理所見です。

低倍率です。



高倍率です。



こちらの腫瘍は肛門周囲腺上皮腫と診断されました。

軽度の異型性が認められ、悪性腫瘍です。

単発性の腫瘍で、大きくなる前に摘出できて良かったです。



次に9時方向の腫瘍です。

低倍率です。



高倍率です。



こちらの腫瘍は、肛門周囲腺腫であることが判明しました。

肛門腫瘍の中で肛門周囲腺腫の発生率は80%以上を占めます。

肛門周囲腺腫は、雄で非常に多く発生し、雌では稀です。

高齢で未去勢の雄に認められ、アンドロジェン依存性が高いとされてます。

この肛門周囲腺腫は良性腫瘍であり、数か月から数年かけて次第に増大していきます。

増大する一方で、患部は通常無症候性で痛みを伴うことは少ないとされます。


肛門周辺は血管が豊富に集まっており、加えて肛門腫瘍にはさらに栄養血管が集結しています。

したがって外科的摘出にあたり、出血量は多量になる場合があります。

今回、使用した半導体レーザーは出血を極力抑えることが可能であり、それは手術時間の短縮にもつながります。






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投稿者 院長

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